戦場パプアニューギニア 太平洋戦争の側面 | 健全なVINYL中毒者ここにあり

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‘ガダルカナルが著名なのに、現在でもニューギニアが知られていないのは、明らかに戦中の報道統制の後遺症である’、らしい。ニューギニアでの戦争は厳しい規制により、一名の報道班員もいないまま進行したという。著者の奥方のお兄さんがニューギニアで戦死したという公報が昭和21年に届き、著者(大正2年生まれ)は直後からニューギニアでの戦いについて独自に調査を始めた。

 

本書は日本の戦争ではなく、その土地ニューギニアが主題。地理、ひとびと、植生、生物など、日本軍が悩まされ、そして活用したその特性について図を交えて示す。多くの将兵が死に、そして同時に多くが生きながらえたのは、まさしくその特性のせいだ。厳しい環境に悩まされはしたが、穏やかな原住民と豊富な食料があった。以前紹介した(★)この本(★)この本(★)この本などから引用されている部分も。

 

数多くのイラストは、日本に送られてきていた戦死した義兄さんからの便りによるのだが、余裕のある静かな現地の様子が偲ばれる。表紙の絵のような美しい世界に、一方的に外世界から踏み込んできた鉄の暴風雨。読後には申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 

平成5年

中公文庫

奥村正二 著

 

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