バンコクでの滞在先はツアーについていたホテル。
何しろ、航空券とホテル、送迎と市内観光付で6万円ほどの格安ツアーです。
あまり期待はしていませんでしたが、意外や意外、充分快適に過ごすことができました
。
この頃には少し旅の余裕を自分なりにアレンジすることが出来てきてました。
なので一泊は、少しランクアップして自分でホテルを別に予約してみました。
荷物のパッキングを済ませ身軽になって、一泊旅行にお出かけです
。
滞在先はThe Dusit Thani。
バンコクでも指折りの高級ホテル、タイ語で天国の街を意味するそうです。
ファシリティもサービスも、とても素晴らしかったです。
チェックインの際、
「ワンランク上のお部屋を案内出来ますが、日中、改修工事をおこなっているので、騒音が…」とオファーが。
日中は部屋にいませんから、もちろん快諾しました
。
さすがに立派なお部屋です。
さて、この部屋である出来事がありました。
バスタブにお湯をはって入浴剤を入れようとすると
「ん???何だ、コレ。」
お湯は出ているのですが、何やら木くずのようなものが混じっています
。
語学は不得手なので、説明もおぼつかないだろうしと、
自分で何とか取れれば…とお湯をはりなおして掃除してみるものの、
木くずのような混入物は容易に流れおちてはくれません。
諦めも早い私は、「万事休す」とルームサービスに救援依頼。
ほどなくしてホテルの担当者が部屋を訪ねて来てくれました。
(よくあんな英語が通じたものです…
)
バスタブを確認した彼女は、早速ハウスキーピング係に連絡してくれました。
他の部屋もまわっているのか、なかなか連絡がつかない様子で、
担当者は平謝りしてくれます。
が、一方で指示しているであろう先には、「そんなに…」というほど怖い形相で急き立てています
。
ようやく部屋に来てくれた彼女は、まだ20代になるかならないかの小柄な女性。
なかなか落ちない汚れを、洗剤を変えたりしながらせっせと洗い流してくれます。
担当者と世間話をしながら、その様子を見つめていると時折彼女と目が合います。
その瞬間が訪れるたび、それを遮るのは従業員の声。
何語かで彼女に指示を続けます。
(英語でないので、何の会話か不明でしたが、何しろワーワーと言い合いをしているかのようなリズムで、いたたまれない気分になったのも事実
。)
30分ほどして清掃を終えた彼女には、担当者から次の指示を受けています。
「キレイにしてくれてありがとう」と告げると、言葉を発することなくはにかむような笑顔を残して彼女は部屋を後にしました。
その後、担当者は私に改めて詫びると、彼女もまた次のクレーム先に向かっていきました
。
「主たるものと従たるもの」
このとき、私は気づかないようにしがちな、歴然とした現実の実体験に接していました。
ゲストである私、
その快適な滞在を保証するホテル担当者、
そして彼女の指揮によって動く実際の労働にあたるハウスキーピングレディ。
一見すると厳しすぎるように感じる担当者の所作ですが責めはなく、彼女もまた与えられた立場に正しく、適格に役割をはたしているだけなのです。
社会はさまざまな立場の人で構成されていて、そのそれぞれに領分と役割がある。
そしてこの難しい現実に対峙するときに忘れてはいけないのは何か。
私なりに導きだした答えは…





