今回記事に書く映画はわざわざ感想を言葉にするべきか迷いながらで、書くのに苦労しました。
はっきり言ってつまらない作品だからですが、それでいて妙に印象に残ってしまった作品です。
あのDCコミックの作品をクロスオーバーさせたシリーズであるDCエクステンデッド・ユニバース(以下DCEU)の中で『マン・オブ・スティール』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』の3作品を手掛けたザック・スナイダーが、それらの作品よりも前に手掛けたDCコミック原作の作品です。
つまりDC映画でも、まだDCEUが始まる前、DCEUとはつながりがない作品で、そのタイトルは『ウォッチメン』
興行が振るわないまま終了をむかえたDCEUの方ですが、以前の記事にもある通り私個人としてはスナイダー監督の上の3作品は大好きで同監督の過去作品も気になっていたところで知った作品がこの『ウォッチメン』です。
スナイダー監督でしかもDCEU以前に同監督が手掛けたDC映画とあってこれはおもしろそうだなと思いながら観ました。
するとこれ、ヒーロー映画の中でも一際暗い、もっと言えばヒーローらしくないヒーロー映画です。
原作コミックは未読ですが、まあこの暗さは確かにDCらしいといえばDCらしいです。
あるいはザック・スナイダー監督の描く世界でもあるのでしょう。
しかしそれにしても鬱映画です。
『ウォッチメン』(2009年 監督:ザック・スナイダー 出演:パトリック・ウィルソン、マリン・アッカーマン、ジャッキー・アール・ヘイリー、ビリー・クラダップ、ジェフリー・ディーン・モーガン、マシュー・グッド 他)
【あらすじ】―マスクとコスチュームで身を隠したヒーロー集団「ミニッツメン」が第二次世界大戦などの戦争や政治に関与した後に、姿を消してから数十年後。
第2世代のスーパーヒーロー集団『ウォッチメン』が結成された。
アメリカ政府は彼らを政治の道具として利用し、ケネディ暗殺やベトナム戦争、ウォーターゲート事件やアポロ11号の月面着陸などの歴史的事件に関与させていった。
これによりアメリカは一時的には世界の覇権を握ったが、世界情勢は混乱の一途を辿っていった。
また、大衆による覆面ヒーローの自警行為への反発から、ウォッチメンの活動を非合法とするキーン条例が制定される。
そして1985年、ウォッチメンのメンバーの1人、コメディアン(ジェフリー・ディーン・モーガン)が何者かに暗殺される。
ヒーローの引退を拒んているロールシャッハ(ジャッキー・アール・ヘイリー)はかつての仲間たちと捜査を始める。―
☆正直カッコよくないヒーロー
本作に登場するヒーローたちは、まず決してカッコいい描写ではありません。
ウォッチメンの先代であるミニッツメンのメンバーが消えていった理由が犯罪者に殺されたり精神に異常をきたしたりとある時点で、普通に普通の人間ではないか!
で、冒頭に映るそのミニッツメンの格好が、言っちゃ悪いがカッコよくない!
なんか変なコスプレした集団が歴史上の写真に収められているといった図です。
まあそこをツッコミだしたら、やたらシリアス路線で描いているアメコミ映画はどれも、普通の格好の人間と変わったコスチュームを着たヒーローが真面目に対峙していてどこかおかしくもあるのですが。
そしてウォッチメンのメンバーの中でもDr.マンハッタンとコメディアンの過去が描かれるシーンを見たら、彼らを嫌いになる人も多いのではないでしょうか。
ベトナム戦争で協力してアメリカを勝利に導いたとありますが、それってそもそもヒーローが政治家により戦争に利用されてしまっているんですからね。
まあDr.マンハッタンがあの姿になった原因となる事故の話は同情しますが、あんな股間をぶらぶらさせていて素直にカッコいいとは思えません。
そしてコメディアンはやっぱりいかんだろ!となります。
ミニッツメンの頃に仲間の女性を強姦しようとしたんですからね。
DCEUでスーパーマンやバットマンなどの勇姿を味わった後だと、なんともげんなりする人物描写です。
★長尺なポリティカル・サスペンスと人間ドラマ
これってヒーローを使ってやる必要があるのか疑問に思える政治もののサスペンスです。
先述の通りミニッツメンの時代から政府に関与してきたとあり、ヒーローのコスチュームでそれをやる必要がなさげです。
実際ヒーローらしい特殊能力はほとんど前面には出ず、オープニングからヒーローの衰退を見せられる悲壮感。
いきなり仲間の1人が殺されるのかい!
唯一超人的なルックスと特殊能力を見せるのはDr.マンハッタンくらいです。
彼は原子力の実験中の事故で、テレポーテーションや分身、未来予知の能力を持っています。
っていうか、彼だけ能力が突出しすぎだろ!
にもかかわらず人間に対する興味を失い、助ける気がないというありさま。
見た目は青く光る身体で、股間はブラブラさせていて大丈夫かよと突っ込みたくなります。
日本での公開ではR-15になったそうだが、これが理由の1つなのでしょう。
しかし他にも理由がありそうで、それがナイトオウルⅡ世とシルク・スペクターⅡ世がいい雰囲気になって性行為に至るシーンですね。
やってることがやっぱり普通の人間で、「2人の邪魔して申し訳ないけど、こっちはヒーロー映画を見たいんですが」と割り込みたくなります。
そら『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』でもクラーク(スーパーマン)とロイスがお風呂場でイチャイチャするシーンがありますが、あちらはヒーローと普通の人間です。
これがヒーローどうしの男女となるとなぜが夢の壊れ度合いが半端ないです。
☆はっきり言って話が長いしつまらない
結論として私は本作をおもしろいとは思えません。
どれくらいつまらないかと言うと、私がDC映画と比べてどちらかと言うと思い入れが薄いマーベル映画の各作品群と比べても、それらよりもつまらないと言ったところです。
内容がしっかり呑み込めていないだけで、もう1回くらい観たらおもしろさがわかるかとも考えますが、この内容で163分という長尺をもう1回観る気力が湧きません。
同じスナイダー監督作品でもジャスティス・リーグ3部作とはえらい温度差を感じました。
原作を知っていて、その原作を好きと言える人でないと楽しめない作品かもしれませんね。
現実に起きた歴史上の事件に絡めて構築されたストーリーなのは良いのですが、それにしても硬派すぎて娯楽性とのバランスが取れていなさすぎるんです。
ここまで来たら普通にそこらにあるポリティカル・サスペンスを観るべきとなりそうです。
食べ物で例えれば、お子ちゃまな私にはおいしいのかどうかよくわからない珍味な高級料理と言った感覚です。
しかしアメコミを原作にした映画ってやっぱり、ハンバーグの味ぐらいのわかりやすいノリが欲しいですよね。
いいタイミングでカッコいいキャラクターが登場して活躍するテンポの良さと高揚感が必要ですよ!
本作は先述の通り、はっきり言ってカッコいいヒーローなんていないし、見せられるのはむしろ人間の闇や不完全さ、無力感ばかりです。
ここぞと言うところで気分が高ぶるような起伏ある演出というのがなさすぎるんです。
がんばって何度か観ればおもしろさがわかってくる作品かもしれませんが…。
少なからずそう思わせるだけの印象に残る異彩を放った作品ではあります。
それにキャラクター1人ひとりの映し方はジャスティス・リーグ3部作と同じくマッシブでカッコいいですしね!
また気力が湧いてきたらリピート鑑賞してみようと思います。
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