能力を持つがゆえの哀しさ 『FREAKS フリークス 能力者たち』 | Blu-ray DVD Amazonビデオ 劇場最新作より、映画の感想・レビュー!

Blu-ray DVD Amazonビデオ 劇場最新作より、映画の感想・レビュー!

映画や音楽などについてのブログです。
読者がおもしろいと感じて頂ければ幸いです。

どうぞお気軽にお立ち寄りください。

マーベルとかDCの映画を観ていると、特殊な能力を持っていることで苦悩している主人公がいたりします。

とりわけX-MENのミュータントと呼ばれるキャラクターたちはその能力を持つがゆえに社会から差別されています。

ここで紹介する作品はマーベルとかDCのようなコミック原作の映画というわけではありませんが、話の設定はX-MENに近いものがあります。

ただし、X-MENとは比べ物にならないくらいダークで重いです。

そんな特殊な能力を持っていることがむしろ哀しく思えるという作品。

『FREAKS フリークス 能力者たち』(2018年 監督:ザック・リポフスキー、アダム・B・スタイン 出演:レキシー・コルカー、エミール・ハーシュ、アマンダ・クルー、ブルース・ダーン 他)

 

 

 

 

[→吹き替え版]

 

【あらすじ】──父親と2人で暮らす7歳の少女・クロエ(レキシー・コルカー)は、外の世界は危険であると教えられ、家の中で毎日を過ごしていた。

ある日、父親が眠っている間に外に出たクロエは、家の前に停まっているアイスクリームトラックの老人と出会う。

クロエの祖父であるというその老人は、クロエの母親が生きていること、そして自らの不思議な力について語る。──


☆好奇心でジラす冒頭シーン

本作の始まり方はなんとも浮遊感ある演出で来ます。

夢のような現実のようなフワフワした映像で、そこに父親と娘のやりとりが展開されます。

何やら娘に外には出るなと言い聞かせる父親と、寂しそうな娘。




あらすじを知らずに観たら、いったいどうしたんだ?と疑問を抱く始まりです。

娘のクロエのことを思っているようでいて、どこか高圧的にも見える父親のヘンリー。

あらすじを知ったうえである程度事情がわかっていても、なんだか不思議な親子関係に思えます。

端から見ると娘が監禁されているような構図にも見えて怖いです。

なんせ父親の方は外出してはいけない理由を娘には言っていないようで、なんとも怪しげなやりとりが続きます。

彼が何かを恐れているような様子です。

そしてテレビに映るのは親子にも関係のある事件の報道。

まず、いったい何があんたんだ?

何が起こったんだ?

と、ひたすら好奇心を抱きながら展開を追って観てしまう冒頭シーンがジレったくも興味を惹き付けられる演出です。


★クロエの能力が上がるにつれて盛り上がる後半

しかし、この冒頭のテンションのままストーリーが進むわけではなく、後半からしっかり盛り上げます。

父親との衝突でクロエの能力が徐々に強くなり始めます。



フリークスと呼ばれる者たちにはそれぞれ特殊な能力がありますが、クロエは人の意思を操る能力があります。

特殊能力を持つ者たちと、彼らを脅威と見なし隔離する人間たち。

テレビに流れる、フリークスたちが起こした事件のニュース。

クロエの能力が父親によって制御しきれなくなるにつれて明らかになる真実とともに、物語が加速し始めます。

冒頭のミステリアスな演出から一変して、後半はSFスリラーです。


☆クライマックスがやっぱりX-MEN

この普通の人間たちと、特殊能力を持ったフリークスたちの関係は、共存しようにもできないもどかしさが最後まであります。

そらクロエのような他人の意思を操ってしまう能力なんぞ悪用されたら恐ろしいですが。



こういう1人の少女に焦点を当ててみれば、スティーブン・キング原作の『キャリー』や『炎の少女チャーリー』を彷彿とさせるものがあります。

自分で制御しきれない能力が開花し、徐々にエスカレートしていく。

しかし、クライマックスの戦闘シーンはというとアクション要素も入り始め、母親の能力も相まってやはりX-MENです。



あるいは日本にも『ストレイヤーズ・クロニクル』という小説原作の映画がありましたね。

特殊能力を駆使して人間を守るというより、能力ゆえに恐れられ差別される自分たちを守るという哀しいプロットです。

それでも本作が後半でしっかり楽しませてくれるのは、やっぱりアクション要素で起伏を持たせた展開があるからです。


──本作の監督を務めたザック・リポフスキーとアダム・B・スタインは、スティーブン・スピルバーグによるクリエイター発掘のリアリティショー「On the Lot」の監督部門でファイナリストに選出され、本作がデビュー作となります。

広く劇場公開された作品ではないながら、この気鋭の新しいクリエイターによるSF作品に始まり、今後の活躍に期待が高まります。