ダダンダンダダン、ターミネーターの魅力にしつこく、しつこく迫る!? | チャンクロブックスー教養人への冒険

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今回は今年シリーズ新作が出て話題にもなったターミネーターシリーズ1,2について語っていきたいと思います!

 

*新シリーズは2の続編とめっちゃ強調しているから、その他のシリーズはなしで。

 

ターミネーターと言えば、

 

殺人を命じられたロボット、ターミネーターがどこまでもどこまでも任務を遂行すべくターゲットを追いかけるさまが不気味で、観る者に無機質なロボットへの恐怖を与える映画で有名です!

 

他にもマッチョなシュワちゃんことアーノルド・シュワルツェネッガーのはまり役映画で彼の演じるターミネーターが繰り広げるアクションシーンも見どころのひとつです。

 

・ムキムキのアーノルド・シュワルツェネッガー

 

*ターミネーターシリーズを見たことがなくても

このダダンダンダダンというBGMは聞いたことがあるのでは?

ちなみにこのリズムはターミネーターの金属の心臓の鼓動だそうな。

 

 

さて、今回はターミネーターがヒットしたのは、

 

ロボットが人間に反乱するというSFの基本プロットをかっこいいアクションで撮影したこと、

 

アメリカ的価値観を反映していること、

 

キリスト教的(特に黙示録)価値観を表現していること、

 

という3つの大きな要因があると考え、

 

ターミネーターの魅力に迫っていけたらと思います!

 

まず、物語のあらすじを確認しましょう!

 

 

 

 

2029年という近未来において、機械と人間は熾烈な戦争を繰り広げています。

 

核戦争を引き起こし、人類に反旗を翻したAI「スカイネット」が率いる機械軍はこの戦争に勝つために、抵抗軍のリーダーであるジョン・コナーを叩くために、ジョンが生まれる前に彼の母親サラ・コーナー(リンダ・ハミルトン)を殺せばいいと、過去にターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー)を送ります。

 

これに対して、抵抗軍からはカイル・リースが過去に送られ、サラを守ります。

 

いやー、SFタイムパラドックスによくある親殺しパラドックスという問題ですね。

 

過去にタイムトラベルして、自分の親を殺したら、自分はどうなるのというやつですな。

 

*タイムパラドックスと言えば、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

 

 

 

さて、今までウェイトレスとして働いているだけの普通の女の子だったサラ・コナーは突然ターミネーターに命に狙われる事態に訳が分かりません。

 

ですが、カイルとともにターミネーターと戦ううちに人類がこのままだと悲惨な未来が待っていることを悟り、戦いへの覚悟を決めます。

 

そして、カイルとサラは関係を持ち、ジョン・コナーが生まれるきっかけとなります。

 

そう、ジョン・コナーは未来から来たカイルとの子なのです。

 

まあ、カイルはジョンが生まれるのを見ることなく、未来から送られてきたターミネーターを倒す際帰らぬ人になってしまうのですが。

 

カイルが亡くなったあと、サラは次なるターミネーターに備えるとともに、AIが人類に反旗を翻した結果核戦争へと至る審判の日を避けるべく、厳しい訓練へと自分を追い込んでいきます。そして、亡きカイルの意志であるジョンをしっかり育てようと決意します。

 

ここまでが、ターミネーター1の主なあらすじです。

 

にしても、カイル・リースとサラ・コナーの関係はキリスト教的です。

 

息子ジョン・コナーのイニシャルは救世主であるジーザズ・クライシスと同じです。

 

これは聖母マリアに天使ガブリエルが処女懐妊を告げにきた話にサラ・コナーとカイル・リースの関係を重ね合わせているように思えます。

 

レオナルド・ダヴィンチ『受胎告知』

ウフィツィ美術館

https://www.uffizi.it/en/artworks/annunciation

 

さて、ここからターミネーター2のあらすじを紹介しつつ、その魅力に迫っていきましょう!

 

 

 

サラ・コナーは息子ジョン・コナーに軍事教育をし、来るべき審判の日に備え、南米あたりを放浪していました。

ですが、アメリカに戻ると精神病院送りに。

 

息子のジョン・コナーは養父母のところに預けられることに。

 

そんな中、ジョン・コナーを殺すために新たなターミネータ(T-1000型)が未来から送られてきます。

 

今度のターミネーターは液体金属でできており、姿を自由自在に変えることができ、身体を硬質化して武器を生成したり、触れたものに変身できるというかなりの強敵です。

 

*これチートだよね。

 

 

このような強敵からジョン・コナーの命を守るために、抵抗軍からはかつて敵だったターミネーターのバージョンT-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)が送られてきます。

 

前作の強敵が今度は味方として登場する様に驚きです。

 

さてさて、T-1000 はジョン・コナーを殺すべく、ジョン・コナーをひたすら追いかけます。この迫りくる強敵からジョン・コナーを守るべくT-800 は奮闘します。

 

このときバイクに乗ってカッコいいアクションを繰り広げるアーノルド・シュワルツェネッガーにしびれまくりです。

 

けど、単純にアーノルド・シュワルツェネッガー演じるターミネーターのド派手さだけで観ている人(特にアメリカ人)はカッコいいと思っているわけではないと思います。

 

このカッコよさは時代の流れとアメリカ的価値観を上手く反映させたところに起因するような気がします。

 

ターミネーター1が初公開されたのが1984年でレーガン政権の頃です。

 

*ロナルド・レーガン wikiより

Ronald Reagan presidential portrait.jpg

 

70年代、アメリカはヴェトナム戦争で政治的に疲弊し、ヒッピー文化を担った若ものたちは結局現実を変えられないことに絶望しました。

 

80年代は70年代の反動として伝統的なアメリカ、強いアメリカを求める声が強く、キリスト教右派の活動が活発となり、レーガン政権の誕生となりました。

 

このような時代背景を踏まえると、

 

圧倒的危機の中で自分から自身の運命を切り拓こうと戦おうとする主人公たちの姿は建国の頃自分たちの運命と戦った祖先の歴史を彷彿させ、アメリカ人は心躍るのかもしれません。どこか家族の絆を映画に肯定してもらってうれしいのかもしれません。

 

また、権威や権力が頼りにならない場合自分たちで自警して自分たちの身を守るのはよいことだという価値を建国の歴史においてしょっているアメリカでは、圧倒的破壊力で敵の身から自分の身を守るのはどこかスカッとするのかもしれません。

 

それと、ジョン・コナーを守るターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー)の姿がどこかアメリカ人にとっての理想の父親像に重なるのかもしれません。

 

アメリカはヨーロッパという自分たちの過去=父を否定し、大陸へと渡った人たちが人工国家です。

 

建国当時のアメリカには自分たちが参照すべき歴史、自分たちをまとめる価値観がありません。そのため、自分たちで「自由」を尊重する国家をいちから人工的に作られなければなりませんでした。この作業を担った人物たちは強くたくましかったのでしょう。

 

このような苦難に立ち向かった人々の強さをターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー)に読み取ることは可能かもしれません。

 

*アメリカにおける宗教を考える上でかなり学ぶことの多い本です。

アメリカ建国の物語にいかに聖書の物語が影響を与えているかがよく分かります。

 

 

 

ターミネーターは上手くアメリカ的価値観に訴え、魅力ある作品に仕上がっています。

 

さて、ターミネーターの魅力が引き立ったのは黙示録的世界観が時代的に受け入れやすかったこともあるでしょう。

 

80年代レーガン政権においてスターウォーズ計画が発表され、ソ連の核兵器に備えようとしました。

 

この核兵器対策がもし大変なことになったら、人類史上類を見ない悲劇につながるのではという恐怖がターミネーターにおいて「スカイネット」の反乱による審判の日というアイデアにつながっていたのだと思います。

 

また、この手の終末観が比較的受け入れやすかったのは世紀末が近かったことと先程も言及したようにキリスト教右派の台頭の影響もあるかと思います。

 

このようなことを踏まえるとサラ・コナーの終末を知って、世界の破滅を防ごうと危険を訴えるものの周りからはおかしな人に見えるという姿は黙示録的世界における預言者の姿に重なってみえます。


*ヨハネ黙示録の四騎士

ターミネーターの姿は黙示録に登場する第四の騎士(一番左側)に重なって見えなくもないです。

 

*アメリカ映画とキリスト教の関係を考える上では重宝します。

 

 

 

 

話があらすじの紹介から脱線しすぎましたね。ここで話を戻していきたいと思います。

 

新たな敵から追跡を一時的に振り切ったターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー)はジョン・コナーから無闇やたらと人を殺さないよう言われます。また、言葉が堅いから、言い方に注意しろと指摘されます。この辺の劇中中盤あたりのやりとりがロボットと人間の絆を結ぶ役割と果たしています。

 

*このときジョンから教わった「Hasta la vist a, Baby」(地獄で会おうぜ、ベイビー」はターミネーターの名言のひとつ。

 

*ターミネータの名言と言えば「I'll be back.」

 

さて、一時的にターミネーターの追跡を振り払っても、ターミネーターはしつこく、しつこく追ってきます。

 

ですが、まあ、ラストは強敵T-1000 を倒すんですな。

 

その際注目して欲しいのは、

 

ラストでの対比T-800とT-1000の対比ですね。

 

何故に旧式の型であるターミネーターが新式のターミネーターが勝てたのかは考えるべきポイントです。

 

当然そこには家族の絆があったからというのが解答のひとつなのでしょう。

 

僕はここにフランケンシュタインコンプレックスの克服の物語を読み取ることは可能なのかなと思っています。

 

 

 

 

 

*フランケンシュタインについては以下の記事を!

フランケンシュタインは造った人の名前だよ!ちゃんと知ろうフランケンシュタインとその系譜!

『フランケンシュタイン』は小説の技巧に溢れてる!?んでもって、作者は激動の人生を歩んだって!

 


*フランケンシュタイン・コンプレックスはこちらの記事を!

僕らはロボットをちゃんとプログラムできるのだろうか?アシモフのロボット工学の三原則を知ろう!

 

 

 

どうですか?ターミネーターの魅力は伝わりましたか?

 

これを機に過去のターミネーターシリーズを楽しんでもらえればと思います。

 

また、公開からしばらく経ちましたが、新作も機会があれば。

 

 

*にしても、監督のジェームズ・キャメロンにまつわる話も紹介しようと思ったのですが、脱線しすぎるので今回は無しで。キャメロンの他の作品を紹介する際の楽しみにしてくださいな。

 

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