アメリカ映画とキリスト教 -120年の関係史
1,760円
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おすすめ度5
難易度3
総評
アメリカ映画にキリスト教の影響があるのは分かるけど、実際どんな影響を与えているのかは、日ごろキリスト教になじみの薄い日本人にはよく分からない。
この本はアメリカ映画とキリスト教との関係史を丹念に描くことで、いかにキリスト教の影響がアメリカ映画に強いものか、またどのような影響を作品に与えているのかがよく分かる。
映画に関する本、キリスト教に関する本はあまたあれど、両者を橋渡しする良書はあまりないので、本書は貴重な一冊。
アメリカ映画を深いところで楽しむきっかけになる。
コメント
キリスト教がアメリカ映画に影響を及ぼしているのは分かるけど、その影響ってそんなに大事なことなのと人によっては思う。
激しい銃撃戦、怒涛のカーチェイス、凄まじい爆発、ド派手なアクション。
現代アメリカ映画の特徴とも言えるシーンは特に何も考え無しに観ていても面白いと言えば、面白い。
例えば、ターミネーターのアクションシーンは別にキリスト教のことを知らなくても楽しめる。
ターミネーターに関してはこちらの記事を!
ダダンダンダダン、ターミネーターの魅力にしつこく、しつこく迫る!?
まあ、何となく観て楽しむのもいいのだが、彼らのド派手な戦闘シーンはアメリカ独特の価値観が入っているかもしれないことは頭に入れといたほうがいいかもしれない。
「ここで注意しなければならないのは、アメリカ独自のキリスト教的価値観の影響を強く受けた映画を、これまで日本の観客も無批判に受け入れてきたという点である。2050年以内に終末が訪れることを、5人中ふたりが信じている国で作られた映画を、我々は単なる娯楽として消費し続けているのである。その善し悪しは別にして、日本の観客が無自覚的にアメリカ的価値観に同調し、アメリカ映画によって繰り返し提示される善悪二元論や終末観、そしてアメリカン・ヒーローに代表されるメシア観を取り込んでいる可能性は否定できない」p183.
キリスト教の国でもない日本で終末が訪れますというバリバリ黙示録的世界の作品を何と無しに観るのは実は危ないことなのかもしれない。
これって、いつの間にか自分と違う価値観を無批判に受け入れることですからね。
アメリカ映画に潜む価値観を無自覚に受け入れることの危険性を著者は秀逸な例えで説明してくれている。
「日本においてアメリカのキリスト教と映画の関係を知ることの意味はどこにあるのだろうか。これは例えて言うならば、アメリカから輸入された食品のパッケージに記載された「原材料」を見る行為に似ている。食の欧米化が進んで日本の人々の体型が変化してきたように、習慣的にアメリカの大衆文化に慣れ親しんできたことにより、日本に住む人々(特に若年層)の「心の習性」や価値観も変化してきたのでないだろうか。我々は、アメリカから持ち込まれたファストフードを食べ続けることは、その「原材料」から、身体に悪影響を及ぼすことが分かっている。一方で、映画に代表されるようなアメリカ文化の「原材料」については、主原料であるアメリカの宗教性を含めて、これまであまり注目されてこなかったのである。アメリカ映画を観る日本の観客も、自分たちがいったい何を「原材料」にして制作されたものを取り込んでいるのかを知り、吟味する必要はあるだろう。」p185.
本書を読んで、アメリカ映画の「原材料」のひとつであるキリスト教が何であるのかについて学んでもらえればと思う。
*アメリカ社会と宗教の関係を考えるには以下の書籍もおすすめ!
宗教からよむ「アメリカ」 (講談社選書メチエ)
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反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)
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