子供のころ、誰もが自分だけの「基地」をもっていた。
大人には絶対教えない秘密の花園だ。
「基地」は治外法権で、大人の常識や法律も通用しない。
「基地」を教えるやつは、親友のみである。
「基地」は悪事をおこなう場所だ。
大人の悪口を言ったり、家から盗んできたお菓子を食べたり、おままごとや禁断の「お医者さんごっこ」をしたりする。
100％の自由が保障されている楽園だ。
オレは世界中心地よい「基地」を探し歩き、スリランカのウナ（ウナワトゥナ）に見つけた。
名作映画「2001年宇宙の旅」の原作者アーサー C クラークはウナを「地球上で最高の磁場をもつ場所」と呼んだ。
クラークは1956年、スキューバ・ダイビングのためにスリランカに移住し、死去するまで過ごした。
「この島、スリランカは一つの小宇宙である。
この島の何十倍もの大きさの国々が抱える程の、沢山の様々な文化や風土がここにはある。
ここで何を得るかは、あなた自身にかかっている。
もしあなたがホテルのバー、あるいは、ほこりだらけの西洋化されたコロンボのストリートから、一歩も外に出ようとしなければ、一週間も経たずに退屈のうちに終わってしまうことだろう。
それはまた、あなたにとって良い事かもしれない。だけれども、もしあなたがこの島の人々や歴史、自然、芸術といった本当に重要なものに興味関心があれば、私が気づいたように、あなたも気づくことでしょう。
この島を巡るのに、自分の一生が十分でないことを。」
アーサー C クラーク
出典: 『The View from Serendip』Arthur C. Clarke著 Random House刊 1977年（邦題: 『スリランカから世界を眺めて』早川書房刊 1988年）
オレも毎年ウナに「帰省」する。
自分の魂と3ヶ月間語り合う里帰りだから。
オレはまったく知らなかったが、聖地ウナの起源は古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」（紀元前3〜5世紀）にまでさかのぼる。
「何千もの木、ココナッツ、ヤシの木が並ぶ海岸線、家や霊廟、ガンダルバス、シッダ、そして禁欲主義者など、それらの中に住む無数の宝石をちりばめた天の妖精の海岸は神と悪魔がしばし訪れたという」
「ラーマーヤナ」の主役、猿の戦士ハヌマーンは、誘拐されたシータ王女を救うために、負傷したラクシュマンを癒さなくてはならない。
ハヌマーンは悪魔の王ラヴァナから4つの薬草を取り戻すためにインドにもどり、山全体を持ち上げて戦場に運ぶとちゅう、ウナワトゥナに「倒れる」。
「ウナワトゥナ」の地名は「倒れた」という意味だ。
現在、日本の僧侶が建てた「House of Buddha」塔の近くにハヌマーン記念塔がある。
1640年植民地時代にオランダ人はウナワトゥナに着陸しゴールに向かった。
オランダとポルトガルとの激しい戦闘が行われ、400人を超える死者が出てオランダが勝利する。
オランダ人はウナワトゥナに「Unawatuna病院」や「Nooit Gedachtホテル」などを建てる。
現在ウナは美しいビーチ沿いに個人経営のゲストハウスやレストランがならぶ静かな村である。
しかし王様の弟が15階建の高級ホテルを建設中だ。
オレの「基地」だったウナは、これから世界的リゾートになっていくんだろうな。
大人になっても「基地」をつくろうよ。
草木でカモフラージュしてもいいし、北千住のホームレスのようなブルーシートでもいい。
あなたの悪事も楽しみも許される場所、
あなたが100％自由であるサンクチュアリ（神聖区）、
基地をもとう！
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