New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。


――――◆◇◆◇◆ アルバム 歌詞と解説 ◆◇◆◇◆――――


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★ たくさんの自殺志願者を救ってきた「COTTON100%」がNHK日本の100冊に選ばれました。


★ 動画ページ  【 1.Shino Tanaka 】 【 2.Toshi 】 【 3.Mr.ピーン 】


★ライブスケジュール



「縁」というのは不思議なもので、出会いたくても出会えない時もあれば、あれよあれよとつながる時もある。

たぶん縁とは、おたがいの準備が整って初めてつながるものなのだ。
そして必要な縁は、神様かお陰様が何度も何度もあなたを試す。
あなたが気づくまで試し続ける。

主催者のひとり、まゆは2年ほど前、今日のライブ会場となる「うちのじっか」で、笑いヨガの講座を受けた。
その参加者の一人が AKIRAの追っかけをしていたというので存在を知ったが、日々の生活で忘れてしまった。
今年の4月台湾ツァーで追っかけをしている彼女とまた出会い、5月に『COTTON 100%』『アヤワスカ!』を読み始めるが、キワドイ内容に挫折する。
するとオンラインの笑いヨガグループで沖縄のくりちゃんが歌った『これはあなたの人生』という歌に感動する。
こんな素敵な歌を作った人はどんな素敵な人だろう?と検索したら…あの本の著者、杉山明!
そこで『COTTON 100%』『アヤワスカ!』を読み返したら感動する。

もう逃げても逃げても AKIRAに連れもどされるって感じだね。
 こうまで AKIRA情報がしつこく届くので、やっと自分からAKIRAライブを検索して、6/6埼玉県行田市ネアリカフェス、7/5鎌倉ライブへいき、号泣感動して主催を決意する。
今日の4人の主催者は、藤原まゆ、土屋恵、船水裕子、酒井秀雄である。


2026年10月17日(土)静岡県伊東市「うちのじっか」にてライブ
ベランダから海を見下ろせる絶景である。


オーナーの両親がやっていた民宿をリノベーションして、イベントやフリースペースとして使えるようにした。
オーナーのおもてなし料理も絶品で、みんなはここに泊まれる。
愛知のさつきが北海道から来てくれ、山口、広島、兵庫、大阪、京都、愛知、千葉、栃木、神奈川、東京、静岡などから仲間が集まる。
すごい全国ネットワークだなあ。
鎌倉ライブで主催者と知り合った愛知のさつきはなんと北海道から直接かけつけてくれた。
さつきも『勇者の石』絵本の講演で呼ばれるようになってきたのだ。


一部は2階で笑いヨガをおこなう。
おもしろかったのは、ジブリッシュ(Gibberish)という、でたらめ言葉で話すワークだ。
これは演劇のトレーニングに使われたり、脳疲労の解消:にも使われる。
思考をやめて無心になり、リラクゼーションをうながす。
笑いヨガが前座をやってくれると会場があったまるので、大歓迎だ。

今日は特別に『勇者の石』オペラ(2時間)とミニ AKIRAライブ(30分)でいこう。
落ち込んでいるAさんに出てきてもらい、みんなでAさんに祈った。
「祈りの歌」


驚いたのは、参加者のしのぶちゃんが、オペラの舞台であるサウスダコタの大学に通っていたという!
スーフォールズやラピドシティ、マウントラッシュモアなど何度もいっているという。
アメリカの辺境であるサウスダコタを知っている日本人に初めて会ったわ。



「勇者の石」オペラはまたもや大きな感動を巻き起こした。
ほとんどが 初AKIRAライブの人たち(笑いヨガ関係)なのに、号泣鼻水大会ですわ。
2階で笑って、1階で泣いて、忙しい。



ミニ AKIRAライブでしめようとしたらさらに盛り上がり、今度はダンス大会だ。(笑)

1、ハイボクノウタ
2、これはあなたの人生
3、Hug yourself
4、PUZZLE
5、えん
6、ありがとう

やっぱ笑いヨガの人たちは感情が解放されてるねえ。
主催者から送られてきた感想は、
「言葉にならないくらい感動した!」
「ダメな自分を受け入れ、自分を好きになることで生きるのが楽になった」
「このライブで人生が変わった!」
などなど、打てば響くような一体感のライブだった。
効果のないセミナーに何十万も注ぎ込むより、たった3時間の AKIRAライブで人生が驚くほど好転する。
「ジウンを好きになりたい」「うまくいかない」「もやもやする」あなた、下のライブスケジュールで来られるライブを探して、肉体をムーブせよ!

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ミュージカル界に革命を起こした音楽劇「ウレシパモシリ」が帰ってきた。

全曲 AKIRA歌のミュージカルである。


2011年、東日本大震災の被災地で俳優阿部よしつぐは、 AKIRA歌に衝撃を受け、音楽劇「ウレシパモシリ」の脚本を書き上げる。
日本のミュージカルは大手が独占し、インディーズのミュージカルは育たない。
しかし2012年に発表された音楽劇「ウレシパモシリ」は感動の嵐をまきおこし、1度見た人は2度3度、口コミで瞬く間に広まり、大成功を収めた。
2014年にはザムザ阿佐ヶ谷にて69回の公演がおこなわれ、通算3千人以上を動員する。
オレもよしつぐもあまりの反響におどろき、「この作品は人々の人生を変える力がある」と確信する。



その後よしつぐは劇団四季や「えんとつ町のプペル」などで実力派俳優として活躍する。
初演から24年、よしつぐは「ウレシパモシリ専用劇場をつくる」という夢を掲げ、今回さらにバージョンアップした「ウレシパモシリ」が帰ってきたのだ。


あらすじ
戦後間もない頃の日本。
哲治・聖兄妹のもとへとある外国人がやってきた。
見かけはお世辞にもいいとは言えないがバカがつくほどの御人好し。
そんな彼が、次々と珍事件を巻き起こしていく。
その中で、関わる人が皆忘れていた大切なことに気づき始める。



2026年東京中野「劇場MOMO」にて音楽劇「ウレシパモシリ」
10月14日(水)ー20日(日)AKIRAゲスト出演。10月15日(木)

この劇の主役はフランスから日本にやってきたジェルマンだ。
彼ははバカがつくほど純粋で、自分のことなどほっといて人につくす。
よしつぐが「天然のジェルマンを見つけました!」といっていたよしみっちゃんの演技に何度も泣かされた。
すべての役者から自我が消え、メッセージを伝える媒介者となっていた。
たまちゃんの演技と歌、よしつぐのボーカル、脚本と演出の精度、すべてがバージョンアップされ、物語に引きずり込まれる。
そして出会うのだ、、、本当の自分に。


犬役の天才アーティストそら


子供の頃の無邪気で好奇心と思いやりに満ちた自分だ。
自然に流れ落ちる涙は、本来の自分と再開できた喜びの涙だ。


この普遍的な物語はたくさんの人を「良き心を持った自分」に立ち返らせ、たんぽぽの種子のように散らばり、世界を美しい花でおおってゆくだろう。

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ポトラッチとはネイティブアメリカンの伝統で「与え尽くし」を意味する。

昔は盛大なおもてなしで、家の中の持ち物をぜんぶ与え尽くしてしまったそうだ。
「そんなことしたら生活できないでしょう?」
スー長老にきくと、「また次のポトラッチでもらえるからだいじょうぶ」と笑っていた。
いわば金やものにはこだわらないという太っ腹さを示すものであり、江戸っ子の「宵越しのゼニは持たねえ」に似ている。
ポトラッチを主催するのは裕福な者であり、貧しい人や老人、働けない者、未亡人などへ富の再分配なのである。
「勇者の石」のようにネイティブアメリカンは弱い者を敬い大切にする。
西洋の「弱肉強食」ではなく、日本人と同じ「共栄共存」の思想がベースにある。


主催者のとしは奥さんさゆりんの誕生日に毎年 AKIRAプライベートライブをしてきた。
まさに現代日本のポトラッチマスターである。
全員の飲食から手みやげの AKIRA新刊「勇者の石」、飛鳥照雄さん、ムーの編集長三神たけるさんの共著まで用意されている。


作家の飛鳥さん、奥津さん、鍼灸師伊藤さん(初参加)、スポーツトレーナーの矢野さんが招待された。



会場のイタリアンレストラン「ONDA」のマスターは何日も前から心のこもった極上の手料理を用意してくれる。


急きょここでも「勇者の石」オペラをやることにした。
飛鳥さんいわく「まるでハリウッド映画のようだった!」と、大好評だった。

奥さんの誕生日に友人たちを招いて AKIRAライブを与え尽くすって真似できないくらいすごいことだ。
長老スーは言った。
「あなたが今送り出したものを、あなたは未来で受け取る」




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第6章 イーグルアイズ 3・5P

S「今週末にあるパウワウというダンスコンテストで優勝すれば、1000ドルの賞金が出る。その賞金をぶんどって、3人で豪遊するぞ」
A「おお、みんなでハワイ旅行にいきましょう。世界一アロハシャツとピナコラーダが似合わないスーを見たい!
ぜひ1000ドルをぶんどるダンスを教えてください!」
S「ならばゴーストダンスの聖地バッドランズにいくぞ」

ラピドシティから1時間車を飛ばすと、スーは牧場のまえで止めた。
A「うわっ、バッファローってこんなに大きかったんだ。牛の2倍くらいあるじゃん」
S「ああ、バッファローは貴重な食糧でもあり、毛皮はテントや服にもなる。そしてもっとも神聖な精霊でもあるのだ」
A「それにしてもうしろの山は、この世の終わりみたいな風景ですね」
天にむかって針のむしろのようにとがった岩山がそそり立ち、悠久の時を刻んできた地層の線がよこに走っている。
S「悪い土地バッドランズ……わしらはマコシカと呼んでいる。この峻厳な岩山には動物も住めない。野兎の死体を探すコンドルくらいじゃ。50万年の歳月をかけて雨と風が刻んできた死の土地だ。
アメリカ政府はわしらの伝統を犯罪とみなし、ダンスを徹底的に取り締まった。祖先たちは死の土地に隠れて死者やバッファローの魂をよみがえらせる幽霊の踊りゴーストダンス踊った」
スーは岩山を登りながらいう。
S「今だからバラすが、おまえとのスエットロッジでわしも意識を失いかけたんじゃ。あんな過酷なスエットロッジは何10年ぶりだからなあ。
もうろうとなったわしにワカンタンカの声が聞こえた。このまま祖先の知恵を封印していたらインディアンも人類も滅ぶ。よそ者であるこいつにすべてを伝えろとな」
はじめてスーの本音を知ったぼくは、岩山のような責任に押しつぶされそうだ。
A「はたしてぼくにそんな資格があるのでしょうか」
S「ワカンタンカの采配を疑うな。着いたぞ」
ぼくが息も絶え絶えにふりかえると、地の果てまでつづくグレートプレインが広がっていた。
A「わあ〜すごいながめ。巨大なバッファローがごま粒ほどに見えますよ」
S「よし、基本の2ステップから教えよう。右へワン・ツー、ワン・ツー。左へワン・ツー、ワン・ツー。
そんなディスコダンスじゃ賞金どころか、笑いもんになるだけじゃ。自分で踊るな。大地のエネルギーや風の動きに身をまかせるんじゃ」
突然、雷鳴が響き、激しい雨が打ちつけてくる。
S「休め、そこの岩陰で雨宿りじゃ」
A「自分のダンスが踊れるようになるまでやめません!」
S「勝手にしろ強情者め。人生とは嵐が過ぎ去るのを待つんじゃない。嵐とともに踊ることを学べ」
ぼくは目を閉じて、雨と風を感じてみる。肩や背中を連打する雨のリズム、風の強弱と角度、横風に身をまかれると、体が螺旋のように旋回する。
雨に打たれて熱で浮かれた幻覚か。岩影が人型になってぬけだしてくる。それもつぎつぎと影が集まってくる。自分の体が操り人形のようにくねくね踊ってる。土砂降りの雨を全身に浴びながらも、踊りを止めることができない。
S「やめろ!」背後から突然の怒鳴り声で正気にかえる。
S「なんじゃ、今の動きは。あの動きはまさにゴースト……祖先の踊りじゃった。わしがまだ子供のころ、じいさんに連れられて秘密の集会で見た動き、この世のものとは思えぬ死者のダンスじゃ。なぜおまえがそれを……
いいか、パウワウは楽しむための祭りじゃ。絶対にそのダンスだけは踊ってはいかんぞ!」

こんなどしゃ降りにもかかわらずイーグルが頭上を旋回している。
S「世界の見方を4つ教えよう。勇者の石で犠牲者から勇者の視点に変えれば世界が変わると教えたじゃろ。
アリの視点、人間の視点、木の視点、イーグルの視点。
この4つの視点を知ることによって、おまえは世界を変えられる。
おまえはボロボロに落ちこんでわしのところにやってきた。世界で自分がいちばん不幸だと、自分のことしか見えない視点。それがアントアイズ。アリの視点じゃ。
おまえは自分にわしらの知恵をさずかる資格がないといった。世間の常識や人の目を気にして挑戦することをあきらめる。それがヒューマンアイズ。人間の視点じゃ。
この岩山からは巨大なバッファローがゴマ粒に見えるといい、世界を高い視点からながめる。それがトゥリーアイズ。木の視点じゃ。
しかしどんなすばらしい知識をもっていても木は動くことも話すこともできない。
イーグルは木よりも高い大空を自由に飛びまわり、獲物をとり、世界に積極的にかかわる。それがイーグルアイズ。神の視点じゃ。
イーグルアイズを獲得するには、おまえのこざかしいエゴや世間の常識でジャッジするな。
正義や善悪を捨てて、人間の愚かさを受け入れろ。
だめで弱くて情けないおまえ自身も、あるがままに愛せ」

7、「イーグルアイズ」
Am E7 G D     F C Dm E7
アントアイズはアリの視点だ  そう 彼らは世界の姿を知らない
ほら 落ちこんだときは世界を見失う  自分のことしか見えない盲人だ

Am E7 G D     F C Dm E7
ヒューマンアイズは人間の視点だ  みんな 常識 道徳 他人に縛られる
失敗を恐れ なんにも挑まずに  短い人生が瞬く間に過ぎ去る

Am E7 G D     F C Dm E7
トゥリーアイズは木の視点だ  ほら 高い位置から世界を見わたせる
深い叡智をたくわえているのだが  なんにも語らず 動くこともできない

Am E7 G D     F C Dm E7
イーグルアイズは神の視点だ  そう はるかな大空 自由にかけめぐる
いいか ジャッジや分析 比較なんか捨てちまえ  
世界を見つめる巨大な目になれ

 Am F G C     Dm E7
Ho hey ho hey! You gotta the Eagle eyes 
在るがままに世界を見つめろ
Am F G C     Dm E7 F E7 A
Ho hey ho hey! You gotta the Eagle eyes
在るがままにおまえは完璧だ

第7章 パウワウ 4P
ラピドシティの公園には、派手な衣装をつけた子供たちから若者たちが集まり、インディアンジュエリーや伝統衣装を売る店、バッファローステーキやタコス屋までいろんなブースが会場のまわりにならんでる。
白人観光客はもちろん、数百人を超える人々でごったがえしていた。
「おまえは今日1000ドルの卵を産むニワトリじゃ」
ちょっとセクシーなインディアンドレスを着たリリーがぼくの肩をだく。
L「風変わりなファンシー・ダンスや風になびく草のようなグラス・ダンス、男女混合で踊る社交ダンスや部族の英雄の踊りもあるわ。
あんたが出場するのは独創性を競うファンシー・ダンスよ。スーにアロハを着せてやりましょ!」
有名なスーを旧友たちがとりかこむ。
「こいつか、おまえの最後の弟子は!スーともあろう者がこんなちんけな東洋人を選ぶとはな。おっと失礼、あんたがたくさんの焼石を耐えた猛者だってのは誰もが知ってるよ」
A「あの、本番まえにちょっと腹ごしらえしてくるよ」
スーの弟子というだけで注目されるぼくはその場をはなれた。
 
タコス屋台にむかってかけだした腕を乱暴につかまれる。
赤いカウボーイハットのおやじとチンピラみたいな2人の若者が立ちふさがった。
「アメリカ中のメディスンマン志願者が、イエローモンキーにスーを奪われたっておまえを憎んでるぜ。ちょっとつきあってくんねえか」
でっぷりと腹の出たカウボーイおやじに引っぱられ、人目の届かないテントの裏に連れていかれる。
「俺がスーのもとへ送りだしたこの若者が追いだされ、顔に泥を塗られたぜ。くらえ!」
チンピラにはがいじめにされたぼくの腹にカウボーイおやじのボディーブローがめりこみ、ほほがひしゃげるほど強烈な右フックにぼくはすっ飛ばされる。
芝生に転倒したぼくをチンピラふたりがけりまわす。彼らがはいていたカウボーイブーツのつま先の金具がわき腹に食いこむたびに激痛が走った。ぼくがなぐりかえして乱闘になったらスーが汚名を着せられる。うっ、上腕や太ももにも金属のけりが連打される。全身が痛みで麻痺し、ぼくはボロぞうきんのように打ち捨てられた。
「いいざまだ。もうこれでモンキーダンスは踊れねえだろう」
カウボーイおやじの吐いたつばがぼくの首筋にねっとりとはりついた。
 
司祭のアナウンスが会場に響く。
「つぎはファンシーダンスです。参加者は入場口へお並びください」
スーはぼくをダンサーたちの最後尾に並ばせる。
S「風も花も木もダンスを踊っている、おまえはおまえのダンスを踊れ!」
退役軍人が入場行進の先頭に立ち、ぼくもダンサーたちとアリーナへ入場行進する。会場全員が起立し大きな拍手で迎えられた。勇壮な大太鼓が鳴り響き、歌い手たちがふりしぼるような高音で歌いだす。
ぼくをけりまわしたチンピラが1メートルもある羽飾りをつけて踊りだした。まるでニワトリがエサを突いてるようなダンスなのに、会場からは大きな拍手が鳴り響いた。
チンピラはぼくをふりかえると、どうだといわんばかりにニヤつく。
「さあ、ファンシーダンスは誰が賞金をゲットするのでしょうか? ラストエントリーは、海外から初参加のジャパニーズ、AKIRA!」
やばい! 殴られた痛みで腕があがらない、足が動かない。尻尾を巻いて棄権すればスーが笑いものになる。
バッドランドでいっしょに踊ってくれた死者たちよ、長い眠りから目覚めよ!
「あっはっは、なんだあのスモウレスラーみたいなステップは!なよなよした踊りはゲイシャガールか!」会場からバカにした笑いが聞こえる。
痛みとともに踊れ。腕を風にゆだねる、上半身がイーグルのように旋回し、腕が翼のように羽ばたきはじめる。
幽霊たちが大地の底からはいだしてきた。見えない影たちがぼくをあやつり、ともに踊りはじめる。
「まさか、あれは葬り去られたゴーストダンスじゃないのか!?」
ぼくの背後に無念の死を遂げた亡霊たちが集まってくるのを感じる。会場からはブーイングと悲鳴があがる。
客席に動揺が走り、観客がざわつきはじめる。目をおおい、耳をふさぐ人までいる。
「気持ち悪い踊りはやめろー!楽しい祭りをだいなしにするつもりか!」
混乱を制するようにスーが立ちあがり、会場を一喝した。
「あれはあなたたちの祖先だ!」
観客たちは息をのんで、地の底からはいでてきた祖先とむきあう。忘れてしまいたい過去、奪われた誇りと連帯、葬ったはずの悔しさと無念、失われた楽園、大地の母は髪を切られ、腹をえぐられ、トラクターにひっかかれた肌が真っ黒いかさぶたにおおわれた。
踊り終えて亡霊は去り、ぼくは芝生に倒れこんだ。
 武骨な手が首と膝の裏に伸び、ぼくをだきあげる。
「ふっ、おまえみたいなむこう見ず、見たことないわい」
スーはぼくをだきかかえたまま、ブーイングが降りそそぐ会場を歩いてゆく。預言者モーゼが海をふたつに割ったように人波があとずさる。
「スーも地に落ちたもんだわ、弟子にあんな踊りを許すなんて」
ささやかれる罵詈雑言に見送られ、会場をあとにした。
 
駐車場にもどると、受賞者の発表が聞こえてきた。もちろんぼくの名前はない。
A「ごめんスー、ハワイへ連れてけなかったね。賞金どころか、完全な敗北だよ」
S「ふっ、なぜおまえが負けたかわかるか」
スーがエンジンをふかしながらふりかえった。
S「おまえが挑んだからじゃ。挑まない者に敗北はない。
負けの少ない人は強い人じゃなく挑まぬ人じゃ。負けの多い人は弱い人じゃなくたくさん挑んだ人じゃ。人は敗北からしか学べん生き物なんじゃよ。負けろ、負けろ、たくさん負けろ。負ければ負けるほど人生は豊かになり、人間はやさしくなれるんじゃよ」
スーがぼくのひたいを人差し指で弾く。
「なあAKIRA……あっぱれな負けっぷりじゃったぞ!」

8、「ハイボクノウタ」カポ2
1、C /B Am /G F G7 C
 塾に通う子供たちがホームレスのおじさんを笑う
「ああなったら終わりだね」
切符を買うおばあちゃんに列のうしろで男が叫ぶ
「なにをとろとろやってんだ」
Am Em F E7 Am Em F G7
弱いものに手をさしのべる それがほんとの強さなんだ
敗北の味知るものだけが人を救えるから
C /B Am /G F /E Dm G7
負けろ 負けろ 負けろ 敗れる痛みを知りなさい
負けろ 負けろ 負けろ 失う勇気をもちなさい
傷つく数だけ強くなる やさしい獣よ さあ立ちなさい
 
第8章 ビジョンクエスト 6P
S「ビジョンクエストはラコタ語でハンブレチアといって、泣いてヴィジョンを求めるという意味じゃ。
ビジョンとはおまえが生まれてきた魂の目的であり、おまえの果たすべき役割じゃ。
人のこない森の奥に4日間ひとりでこもり、飲まず食わずでひたすら祈り、ビジョンを探し求める。すると夢を伝っておまえにメッセージが届けられる。その動物や精霊がおまえの守護霊、トーテムになる。
これから聖地マトパハ山へゆく。
ラコタ族の英雄クレイジーホースがビジョンクエストをおこなった場所だ。4日間おまえは母なる大地に埋葬され、新しいヴィジョンとともに生まれてくるんじゃ」
ぼくたちは山のふもとに車をとめ、スーは州立公園の登山道じゃない道を登っていく。火山のようなごつごつした岩でできていて、低い灌木しか生えていない。
「見ろ、あの崖にある穴こそクレイジーホースがビジョンクエストをおこなった秘密の洞窟じゃ。雨風もしのげるし、危険な野生動物も近づけない。真実のビジョンを求めるにはもってこいの場所じゃ」
頂上に近い岩に穴があいている。龍の口にでものみこまれる気がして身震いした。
ぼくは儀式に必要なものをつめたリュックを背負って崖をよじのぼり、伝説の洞窟にはいずっていった。
「おーいAKIRA。そこに平らになった場所があるじゃろ。タバコをくるんだ76個の布で結界オーサをつくれ。真ん中にチョークチェリーの木を1本立て、イーグルの羽を結べ。そして入口に貝の皿を置いてお供えのスピリットフードをならべ、セージで場を清めろ。
いいか、小便はペットボトルにとっておけ。のどの渇きに耐えられなかったときに飲むんじゃ。4日後の朝、わしが迎えにくるまでは結界のなかから一歩も外にでちゃいかんぞ」
下のほうから太鼓と歌が聴こえてきた。ひとり言のような祈りにぼくは耳を澄ます。
「大いなる精霊よ、あなたが選んでくれたわしの最後の弟子です。わしのレッスンに歯を食いしばってついてきてくれました。まだまだ未熟ですが、やさしく強い心をもっています。
祖先の知恵がもしアメリカで消えても彼によって遠いアジアへ受け継がれていくかもしれません。どうか彼を守り、魂を清め、ビジョンを与えください」
ぼくは洞窟のなかで声を殺して泣いた。どこの馬の骨かわからないガキを拾い、毎日大切なレッスンを惜しみなく与えつくし、我が子のような愛情でつつんでくれるスーに感謝があふれてあふれて、涙が止まらなくなる。 
まつ毛をぬぐってのぞくと、もうスーはいない。
暗い洞窟から外をながめると、眼下に森、そのむこうに平原がひろがり、かすかながら人家のようなものも見える。
ぼくはクレージーホースのように英雄でもないし、強くもない。臆病で意気地なしで、ひとりじゃなにもできない淋しがりやだ。
はじめは蓮華座を組んで瞑想していたが、夜が訪れ、忍び寄る孤独と不安に震えだす。 
 
2日目はのどの渇きと空腹が襲いかかってくる。
さらに渇きよりつらいのは孤独だ。
日常は忙しくて思いださない過去の記憶がよみがえってくる。
彼女にフラれた悲しみ、社会の底辺に落ちた絶望感、サンダンスへの恐怖、未来への漠然とした不安などがつぎつぎと襲いかかってくる。
ぼくは自分のことしか考えず、他人にも感謝せず、自分がどう見られているか他人の目におびえ、自分を誰かと比べ、自分で自分を軽蔑し、否定し、責める。人の幸福をねたみ、うらみ、嫉妬する。ぼくが生きているというそれだけで、人を不快にさせている。生まれなきゃよかった。死んだほうがよかった。誰かこのネガティブチェーンを断ち切ってくれ!
 
3日目にはいると渇きと空腹が麻痺してくる代わりに、現実と想像の境界がまじりあい、幻覚がはじまった。
岩の陰影が人に見えたり、人の顔をした鳥が飛んでいったり、ふと洞窟の奥に人の気配を感じた。
暗闇に目をこらすと、しゃがんだ人影のようなものが浮かびあがった。少年だ。なぜか確信が降ってくる。12歳のクレージーホースだ!
 「ふっふっふ、思いっきり絶望すればいい。中途半端な救いなど求めるな。Hit the bottom.どん底に叩きつけられてはじめて思い知る。人が人を100%理解するのは不可能だということを。そして他人を理解できないという絶望を知った者だけが人と自分を許すことができるのだ。おまえの準備ができたようだな。地獄へ落ちろ!」
ぼくが幼いころ、父は酒を飲んでは暴れ、わめき散らしながら母やぼくを殴りつける。父の暴力に耐え切れなくなった母は5歳のぼくを置き去り、1歳になる妹を連れ家をでた。それ以来ぼくは母親に捨てられたというトラウマに苦しめられることになる。
ああ、なぜあんな家族のもとに生まれたのだろう。ぼくがどんなに愛しても、ぼくは捨てられる。ぼくは愛される資格のない人間だ。愛してもらえないなら、はじめから誰も愛さないほうがいい。
ああビジョンどころか、こんなことをしていたらぼくは発狂してしまう! 
 
4日目はずっと雨が降っていた。天から救いの糸を垂らすような白い雨だ。渇きも空腹も感じない。感情が壊死して、嵐のまえの静けさなのかネガティブな記憶の攻撃が不気味におさまっている。
雨音が消えたので外をのぞくと、月明かりに虹がでていた。
「こんな真夜中に虹がでるなんておかしいな」
虹が小刻みに震えだす。待て待て、また幻覚か。虹はゆっくりとくねり、ねじれ、巨大な蛇に変わっていく。虹の蛇だ!
正気にもどるひまさえ与えず、うわっ、こっちへむかってくる!
虹の蛇が洞窟が崩れるような叫びをあげた瞬間、ふわっと翼があらわれた。ぼくは七色に輝くウロコに陶酔し、洞窟の結界へすりよった蛇によじのぼった。蛇は身をひるがえして上昇する。蛇の首をまたいでしがみつき、下界を見ると、ブラックヒルズの森がブロッコリー畑のように小さくなっていく。サウスダコタの暗い大平原にラピドシティやスーフォールズの明かりがまたたいている。
不思議と恐怖はない。どころか蛇を古い友人のように感じる。
蛇「あなたが本当にひとりぼっちかどうか、自分の目でたしかめなさい」
えっ、蛇がしゃべった?ぼくの頭がいに直接響くテレパシックな感覚だ。
虹の蛇はシアトルの明かりを最後に真っ暗な太平洋上を猛スピードで突き進んでいく。あっという間にオアフ島をすぎ、アジア大陸の光が近づいてくる。まぶしいくらい輝く金の龍、日本列島だ!
 
もっとも明るい東京を北にむかうと、蛇はぼくの実家の庭に降り立った。ぼくらは恐る恐る窓から両親の寝顔をのぞく。
「彼らの夢にはいっていきましょう」虹の蛇がいう。
母は幼いぼくを置きざった罪悪感にさいなまれている。
「ごめんなさい、ごめんなさい、幼いあなたにさびしい思いをさせて」
父も自分自身の弱さを後悔している。
「愛する家族に暴力をふるうなんて、おれは最低の男だ!」
ぼくはずっと被害者というトラウマに悩まされてきたが、もしかするといちばん苦しんでいたのは彼ら自身だったのかもしれない。
ぼくは犠牲者の視点を勇者の視点に移動させてみる。
あの家族から逃れたくて少年時代から独立心を育み、海外へ飛びだした。もし仲のいい家族だったら今のぼくはない。
ぼくがぼくになるためにはどうしてもあの家族が必要だったんだ。
スーと出会うため、ぼくの人生で起こったすべてのできごとが必要だった。ぼくはスーと出会えた今の自分が好きだ。だからぼくは今、ぼくの全人生を肯定する!
 
蛇「さあ、サウスダコタにもどりましょう」
ぼくは両親に別れを告げて虹の蛇にまたがる。見あげれば天の川が輝いている。ラコタ族は天の川を『魂の道』ワナギ・タチハと呼び、物質世界を去ったあと魂の道をとおって祖先たちの住む国へ帰っていくという。
スーがいっていた。「白人牧師は神を信じないものは地獄へ落ちるなんていうが、偉大な祖先がかわいい子孫をいじめるなんてばかばかしい。死んだ祖先はいつも残された家族を守ってくれるんじゃ」
気がつけば長年背負ってきた肩の重荷がなくなっているではないか。
虹の蛇はまたたく間に大平原へもどり、なつかしいスーのログハウスに降り立った。リリーが明日もどるぼくのために鹿肉のシチューとコーンブレッドを準備している。
食欲が急によみがえり、グウーっとお腹が鳴った。
「あら何かしら今の音?まるでAKIRAが帰ってきたように感じたんだけど」
スーがいないと思ったら、森のほうから太鼓の音が聴こえてくる。マジかよ、スーはこんな夜中に森をとりかこむ2キロのメディスンサークル(聖なる輪)をハンドドラムをたたきながらぼくのために祈ってくれているのか。
ぼくはスーの愛情に胸がはち切れそうになる。
「大いなる精霊よ、どうかAKIRAにビジョンを与えてください。すべてのつながるものに祈ります。ほおうぅぅぅー、ミタクェオヤシン」

9、「ミタクオヤシン」
C A7 Dm Fm C G7 F C
この世界が滅んでも声からして歌うから
ひとりぼっちじゃないときみのために歌うから
C /B Am /G F /E Dm G7 
あなたが花をながめるとき 花もあなたを見つめている
あなたが鳥の歌を聴くと 鳥もあなたに耳を澄ます

Gm A7 Dm Fm G7 Cm E♭m F7 B♭ D7 G7
ミタクオヤシン すべてのつながるものへ
7つの世代を越えて夢を伝えていこう

C A7 Dm Fm C G7 F C
この世界が滅んでも声からして歌うから
ひとりぼっちじゃないときみのために歌うから
なんど傷ついたってどんな馬鹿にされたって
ひとりぼっちじゃないときみのために歌うから
きみのために歌うからX2  CM7

第9章 サンダンス 5P
4日間のビジョンクエストが終わり、スーがビジョンを読み解いてくれた。
S「なるほど、虹色の蛇がおまえを家族と和解させてくれたのか。
どうやらおまえの使命は、異なるものを虹でつなぎ、和解させる『ピースメイカー』、つまり調停者じゃな。
おまえの守護精霊とインディアンネームは、虹の蛇、レインボー・サーペントじゃ!」
サンダンスでもおまえを守ってくれるはずじゃ。さあ、泣いても笑っても最後の卒業式じゃぞ。
このサンダンスのあと、おまえはこの家をでる。
わしは祖先たちから学んできた知恵をすべておまえに伝えたつもりじゃ。もう思い残すことはない。生きている痛みを思いっきり楽しめ!」

ついに運命の4日間がはじまった。
真夏とはいえ朝晩は15度くらいに冷えこむ。
12人の踊り手たちは暗いうちからスエットロッジで身を清め、日の出とともに東のゲートから円形会場にはいる。
スーは儀式の司祭を10年ぶりに引き受けた。スーの弟子というぼくの甘えを断ち切り、ひとりのサンダンサーとして参加させるための決断だ。
部族長がスーに拡声器をわたした。
「ミタクェオヤシン、わたしが今回の司祭を務めるスーだ」
若い参加者がざわつく。すでに伝説となった人物が司祭を務めることを知り、ただならぬ責任を再認識しているようだ。
「勇敢なる太陽の踊り手たちよ。サンダンスは『ウィンワンヤンク・ワチピ』、太陽を見つめる踊りという意味じゃ。きみたちがおこなったビジョンクエストは個人のビジョンを求める祈りだった。しかしサンダンスは大いなる精霊ワカンタンカと祖先、そして部族全体にささげる祈りじゃ。
だいじょうぶだ。きみたちならできる。『オワキヘ!』」
スーに勇気づけられたダンサーが全員で叫んだ。
「ぼくならできる『オワキヘ!』」
ダンサーの最年少は15歳のチャイトン、最年長は41歳のマトスカなど合計12名だ。
直径20メートルほどの円形会場には、世界の中心をあらわす高さ5メートルほどのチャン・ワカンと呼ばれる精霊の木がそびえ、赤いタバコタイの帯がそよぐ姿は感動的だ。
 勇壮な太鼓とともに年長者と女性たちが高音で歌いだす。
「ワカンタンカ・ウンシマライェ(大いなる精霊よ、慈悲を恵みたまえ)」
ダンサーは上半身裸で赤い腰巻を巻き、首に赤いタバコタイの帯をさげ、頭と手首にセージの輪をはめ、ツーステップで踊りはじめた。
これから4日間、朝夕のスエットロッジをおこない、一滴の水も食事も禁止され、日の出から日没まで太陽にあぶられながら毎日12時間も踊りつづける。
ダンサーたちがイーグルの骨でできた笛を吹きながら踊っていると、上空をイーグルが旋回しはじめた。イーグルがやってくることは大いなる精霊に祝福されたという吉兆を意味する。
8月のようしゃない日差しがダンサーをあぶりつづける。日中は35度を超えていた。しかもサウスダコタの夏は乾燥している。
1日目に15歳のチャイトンが倒れた。日陰に運びこまれるが、セージに浸した水が数滴、口に落とされただけだ。
30分ほどで会場にもどったチャイトンは雷鳴のような拍手で迎えいれられた。
2日目には41歳のマトスカがよろけて足をくじき、待機している救護車で病院に運ばれる。
マトスカもまたギプス姿で踊りに復帰した。
命がけな儀式なだけに介護係や救急係もきちんと用意されている。
インディアン社会の特徴は、弱いものを大切にすることだ。
いっしょに暮らしていると、彼らは未開どころか、高度に洗練され、自然の理にかなった生き方をしていることがわかる。
助け合い、支え合い、敬いあい、みんなでひとつの命を生きているのだ。
 
3日目にはぼくも体力の限界に達していた。
ぼくはもう踊るどころかふらふらと立っているのがやっとだ。倒れたい、このまま意識を失い、なにもかも投げだして大地にだかれて眠りたい。
スーにすがりつくような視線を投げかける。もういいでしょ、ここまでがんばったでしょ。あなたが選んだ弟子は根性なしの弱虫です。
何度もよろけ、つまずき、もうだめだというとき、ぼくは祖先が見ているというイーグルを見あげた。すると一滴のしずくがほほを打つ。
うおぉぉぉー祝福の雨だ!なんという歓喜、歓喜、歓喜。ダンサーたちは天をみあげ、口をはり裂けんばかりに開き、祝福の雨を全身で味わう。干ばつにしおれた草が生き返るようにダンサーたちは目を合わせ、うなずき、生命力をとりもどしていくのがわかる。
この雨がなければぼくは確実に倒れていただろう。
あのときスーがいった言葉、「世界は鏡でできている」。
人間と自然が響き合っていることを極限状態で思い知らされた。
 
最終日、ダンサーたちはひとりの脱落者もなく、渾身の力をふり絞って踊りきる。
祭りのハイライトである最後の苦行がはじまった。
ぼくはスーの待つ精霊の木へとふらふらの足どりで歩いていく。
S「しゃべるな。おまえの気持ちは痛いほどわかっている」
スーはぼくの胸肉をぐいっとつまみあげ、先をとがらせたイーグルの爪を刺した。「うううっ」、とてつもない激痛に歯を食いしばって耐える。ぐいぐい回転させながら爪を押しこまれるたびに鈍い痛みが全身にひろがっていく。ぷちんと、反対側の皮がやぶれ、爪が貫通した。あざやかな鮮血が腹を伝って赤い腰巻を黒く染めていく。バッファローの革ひもで木から吊ったロープとつながれる。
スーの顔がぼやけ、ブレ、父と母の顔が重なっていく。彼らは痛みをとおしてぼくに大切なことを教えてくれた。それを今全身で理解した!
母よ、あなたが産んでくれたからこの命を感じられる。
父よ、あなたが育ててくれたからこの痛みを感じられる。
今こそトラウマを引きちぎるときだ。ぼくは精霊の木へ感謝の祈りをささげると、バッファローのように大地をけり、全身全霊でうしろむきに走りだす!
「ありがとうーーーー!」
日本語の絶叫とともに、胸の皮がぶっちぎれる。うしろむきに吹き飛ばされ、ドスンとやわらかい岩にぶつかり、樹木のような腕でだきとめられた。
スーだ。いつもぼくのうしろにはスーがいた。岩山で夕日をながめたときも、草原で風に吹かれたときも、バッドランドで雨に打たれたときも、ひとりで洞窟にこもっていたときでさえ、スーがいてくれた。ぼくはスーの想いにずっと守られてきたんだ。
「最後までよくがんばった。おまえはわしの誇りじゃ」
ぼくは赤ん坊のように顔をくしゃくしゃにして泣きだした。
「がんばれたのはぜんぶスーのおかげなんだよう、スーに恥をかかせたくなかったんだよう、スーの誇りになりたかったんだよう」
スーはうしろからぼくをぎゅうとだきしめてくれた。
「わしの仕事は終わった。おまえはわしであり、わしはおまえ、世界そのものじゃ」

10、ウレシパモシリ
C G Am F C G F Fm C
わたしは大地 わたしは大空 わたしは月 わたしは太陽
わたしは花 わたしは鳥 そしてわたしはあなた
1
ふたつの道を目の前にして 自分自身が迷ったときは
道ばたの石をめくってごらん そこにわたしがいるから
自分で積んだ不幸の壁に 閉じこめられておびえる夜は
星を見あげて話してごらん そこにわたしがいるから
Am Em F E7 G7
わたしとあなた へだててる線が消えてく
わたしたち 同じ愛から生まれたの

わたしは大地 わたしは大空 わたしは月 わたしは太陽
わたしは花 わたしは鳥 そしてわたしはあなた

わたしは涙 わたしは笑顔 わたしは孤独 わたしは怒り
わたしは許しわたしは祈り そしてわたしはあなた

わたしは試練 わたしは学び わたしは光 わたしは命
わたしは愛 わたしは神 そしてわたしはあなた
 
第10章 別れ 2P
4ヶ月お世話になった家を出るぼくの荷造りをリリーは手伝いながら、スーが寝室で着替えている間に耳打ちする。
L「スーはサンダンスの4日間で寿命が10年くらい縮んだんじゃないの。あんたの足がふらつくたびに飛びだしていきそうになるのをあたしが何度も押さえつけたのよ。もう小学生の運動会じゃないんだから。
毎晩家に帰ってからもあーでもないこーでもないってあんたのことばっかり話しつづけてるし、AKIRAが断食してるあいだはわしも食わないって、自分も断食してたのよ。あら、もどってきた。今のはないしょね」
S「準備はできたか」
ぼくはきたときと同じバックパックに荷物をつめ、スーに教えられたストーキングの掟どおり痕跡を残さないように掃除を終えた。
A「永遠に住みつきたいけど、またニューヨークにもどります」
S「おっと、おまえにスー大学メディスンマン学科修士課程の卒業証書をわたそう」
スーの知恵がぜんぶつまってるというタバコの革袋だ。赤石の火受けがついた子牛の骨のパイプと厳選した薬草のスーブレンドがつまっている。
「ええっ、だってこれ、スーの宝物でしょ」
「大事なものほど人にあげろってポトラッチで教えたじゃろ。わしは今日から禁煙する」
「ぷっ、絶対うそ」リリーが吹きだす。

スーとリリーがラピドシティのバス・ディーポ(ターミナル)まで送ってくれる。
リリーはぼくの足が地面からはなれるほどハグしてくれる。
L「いつでもコーンブレッドを食べに帰ってらっしゃい。人類が滅亡してもあたしのレストランは開いてるわよ」
スーの野太い腕にだきしめられる。スーに感謝の言葉を告げようとしたが、ダメだ。「サンキュー」じゃあまりにもたりない。
S「なにもいうな。おまえの気持ちはわしがいちばんわかってる。
わしの人生最後の弟子よ。知識は過去、知恵は未来じゃ。わしの伝えた知識の上に自分の体験を重ねて知恵にしていきなさい。
わしの未来の弟子たちをたのんだぞ。大切なことを学んだら、つぎはそれを人に教えることを学ばねばならない。
最後に世界一美しい別れの言葉を教えよう。
ウーニッシュ。美しいままでいてくださいという意味じゃ。
わしと会ってるときもおまえは美しかった。だから別れたあとも美しいままでいておくれ」
ぼくは彼らの見える席にのりこみ、ガラス窓に顔を押しつけ、彼らを笑わせる。バスが走りだし、彼らが視界から消えた瞬間、思わず最高部座席にダッシュしてうしろの窓から手をふる。
 満面の笑顔で手をふるリリーが泣き崩れるのをスーがだき起す姿が遠ざかっていく。ふたりのシルエットがお人形のように縮んでいき、小さな点になって、……消えていった。
つきせぬ泉のごとく湧いてくる感謝を胸に、ぼくは目のまえにつづく道を見すえた。

11、彼岸桜
1 、G D Em Bm C G Am7 D7
あなたにもらった愛情にわたしはなにを返せただろう
G D B7 Em Bm C G Am7 D7  G
こごえるひな鳥つつむように ぬくめてくれた深い愛

悲しい時には肩をだき 迷う時には(背)中を押す
どんなに世界が変わっても あなたへの感謝は変わらない B7

Em Bm7 Am7 D7 G C G Am B7 
彼岸桜がきよく散ってゆくのは 命をつぎに手わたすため
Em Bm7 Am7 D7 G Am Bm F#7 B7 D7
またねって手を振る最後のうしろ姿も 桜吹雪がかき消してゆく

G D Em Bm C G C D7
さくらさくら キラキラ輝け 命いっぱい咲き誇れ
冬を忍んだものたちに喜びの春が贈られる
さくらさくら ハラハラ舞い散れ もっときれいに咲くために
涙の落ち葉で人生は豊かに花開くC G D7

G D Em Bm C G Am7 D7
あなたに笑われないように 涙ぬぐって歩きだそう
どんなに心が曇っても あなたはわたしの日の光

第11章 スーの死 2P
スーのライフレッスンから1年後、ぼくはニューヨークアカデミーという美術学校にかよっていた。現代アートの巨匠アンディ・ウォーホルから奨学金をもらい、アーティストとしての道を歩みはじめたんだ。
スーの息子ポキュから突然電話があった。
「スーが倒れた。あんたの名前を何度もつぶいやいている」
ぼくは急いでグレイハウンドバスにのりこんだ。
スーのライフレッスンによってぼくの人生は変わった。
「ミタクェオヤシン」(私とつながるすべてのものに感謝します)
本当にすべてはつながっていた。自分を愛することができるようになると、ぼくを生んでくれた親、ぼくを支えてくれる仲間たち、ときにぼくを批判する人たちまで愛おしくなる。道ばたの花や街路樹、蝶や鳥にまで「ぼくはここにいるよ」とつい話しかけてしまう。
スーのレッスンのおかげで、自分をとりかこむ世界そのものが愛おしくて愛おしくてたまらなくなったんだ。
 
ぼくがかつて住んだスーのログハウスにかけつけると、わずかの間に年老いたリリーがかけよってきてだきしめてくれる。
「おかえり、かわいい息子よ。スーはうわごとのようにあんたを呼んでいたよ」
ポキュのバーベキューで会った親族たちが集まっていた。
ぼくはベッドにかけより、スーの骨ばった手をにぎった。
「スー、AKIRAです。あなたの最後の弟子です」
スーはゆっくりとやせこけた顔をこちらにむけると、唇の両端があがっていき、なつかしい微笑みがよみがえる。
「ああAKIRAか、わしの体は老朽化したんでおまえの心に引っ越すことにしたよ。同居人を喜ばせたいなら、いっぱい笑え、いっぱい愛せ、人生という果実を味わいつくせ。
おまえに最後のレッスンを授けたくて、天国へいくのをしぶっておったんじゃ」
「はい、最後のレッスンを伝えてください!」
「最初のスエットロッジで人間を愚かなまま信じろっていったじゃろ。わしもおまえも生きている人間はみんな愚かじゃ。だから少しでも幸せになろうとそれぞれの道を選び、みんな必死で生きておる。必死で生きてない人間なんかひとりもおらん。
だからおまえの一生をかけて、おまえが出会うすべての人にこのひと言を伝えていってほしいんじゃ。
アタニキリ!(Atanikili)あなたはすばらしい! とな。
泣いている人も、落ちこんでる人も、自分を責めている人も、病気の人も、障がいをもっている人も、お金のない人も、家のない人も、おまえを憎む人も、敵対する人も、罪を犯した人すらも、命あるものすべての人はすばらしい勇者なのじゃ。
それがわしの最後のレッスン、最後の弟子への最後の遺言じゃ。いってみろ」
ぼくはスーの胸に顔をうずめてだきしめた。ごつごつした肋骨から衰えていく鼓動が伝わってくる。
ぼくはありったけの感謝をこめてスーに叫んだ。
「スー、アタニキリーー!」(スー、あなたはすばらしい!)
スーは満足げに微笑みながらまぶたをゆっくりと閉じる。
その日の夕方、スーは魂の道である天の川をとおって祖先の国へ旅立っていった。
 
12、「今日は死ぬのにもってこいの日だ」
C E7 Am /G F Dm G7
おまえが生まれるとき 世界は笑い おまえは泣く
おまえが死ぬとき 世界は泣き おまえは笑う

C C7 Am /G F Fm C
Today is a very good day to die
愛する子供たちよ 旅立ちの時がきた
Today is a very good day to die
父なる太陽と母の大地へ返る E7
Am F G7 C E7 Am F D7 G7
What a peaceful mind 空は澄みわたり
What a beautiful world 風が歌いだす

さよならなんていらない
いつか帰ってくる ここへ帰ってくる
さよならなんていらない
また憎み合うために また愛し合うために

今日は死ぬのにもってこいの日だ
生まれ変わるのにもってこいの日だ

第12章 受け継がれる教え 2P
ぼくは日本に帰国してからスーの教えを『勇者の石』という歌にしてライブで伝えつづけてきた。
ある日、『勇者の石』を聴いた障がいをもつ子供のお母さんが泣きながらステージにかけよってくる。
「私たちはずっと自分を運命や社会の犠牲者だと思ってきました。でも本当は、勇者だったんですね!」
翌年、その子が入院している病院でボランティアライブをおこなうと、お母さんは別人のように自信にあふれ、こういった。
「私は障害をもつ娘を誇りに思います。そしてこんなすばらしい勇者を生んだ私も勇者なんだと思えるようになりました」
子供の障がいという現実はなにひとつ変わらないが、現実を見る視点が『犠牲者』から『勇者』に変わっただけで、世界はみずみずしい輝きをもって立ちあらわれてくる。
そのお母さんは今、全国から講演に呼ばれ、『勇者の石』の話を伝えている。
 
スーから授かった『勇者の石』という教えは波紋のようにひろがっていき、スーが亡くなってから30年の月日がたった2017年、『勇者の日』が日本記念日協会から正式認定を受け11月11日に制定された。
テレビやネットの「今日は何の日?」というコーナーで『勇者の日』が紹介されるようになったのだ。以来毎年全国で『勇者の祭典』が開かれている。
今年は10年目の勇者の日は、11月7日土曜日埼玉県草加市アコスホールで祝われる。
毎年ぼくも出演するので北陸や前からお越しください。
『勇者』というのは、障がいや心の病、病気やケガ、地震や災害など、それぞれの『試練を越えてきた人』だ。
世の中に試練をくぐらない人は誰ひとりいない。つまり生きてる人全員、そしてあなたが勇者なんだ!
『勇者の日』は、ひとりひとりが「あの試練があったから今の自分がある」と感謝し、自分自身を勇者としてだきしめる記念日になる。
障がい者だけでなく、すべての人がちがいを認め、たがいを讃え、この青い惑星でともに生きていく『家族』であると知る日なんだ。
スーはこの世を去ったが、そのメッセージは『勇者の石』として世界にひろまっていくだろう。

このオペラを聞いてしまったあなたもスーの弟子です。
おそらくスーは天国でピースパイプをくゆらしながら、あなたにこう言うでしょう。
「おまえが大切なことを学んだら、つぎはそれを人に教えることを学ばねばならない」
あなたの愛する家族に、悩んでいる仲間にスーの知恵を伝えていってください。

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「勇者の石」購入可能
8万円。(分割OK) M12号。606×410mm。


メールが届いた早い者勝ち。
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メッセンジャー:杉山明




Sold


「勇者の石」オペラ(2時間ver)

脚本、語り、歌:AKIRA(43P。語り90分+歌30分=2時間)
 1、Traveling man
第1章 スエットロッジ 3,5P
2、風のきた道
第2章 勇者の石 4P
3、勇者の石
第3章 ムーンタイム 2,5P
4、ムーンタイム
第4章 朝のレッスン 2P
5、名もなき命
第5章 偽りの歴史 2,5P
6、Something great
第6章 イーグルアイズ 3,5P
7、イーグルアイズ
第7章 パウワウ 4P
8、ハイボクノウタ
第8章 ビジョンクエスト 6P
9、ミタクオヤシン
第9章 サンダンス 5P
10、ウレシパモシリ
第10章 別れ 2P
11、彼岸桜
第11章 スーの死 2P
12、今日は死ぬのにもってこいの日だ
第12章 受け継がれる教え 2P
13、勇者の石

「Traveling man」Cハープ
Am F G C E7 Am F G Am
すべての大人を軽蔑し すべての人間を憎んでた
手当たりしだいに噛みついた 狂犬のような19歳
無謀なあやまちくりかえし 無力な自分に涙した
ひとつだけわかっていることは
ここにいちゃだめだっていうことだ
F C G C E7 F C G Am
I am a Traveling man  なにがいったいしたいんだ
I am a Traveling man  わからないから探すんだ
I am a Traveling man  なんでそんなに急ぐんだ
ここでくたばるか さもなくば 逃げるかだ
2
アメリカっていう怪物の 剥きだしの牙を見たかった
世界を牛耳る化け物に おろかにも挑む20歳
サンフランシスコからバスに乗り 巨大な亀の島を横切った
NYブロードウエイの安宿で ゴキブリと祝うHappy birthday
I am a Traveling man  なにがいったいしたいんだ
I am a Traveling man  わからないから探すんだ
I am a Traveling man  なんでそんなに急ぐんだ
ここでくたばるか さもなくば 逃げるかだ

第1章 スエットロッジ 3・5P
S 「おまえがこの灼熱地獄を最後まで耐え抜いたら、、、弟子にしてやろう。途中で逃げ出すなら、二度とわしのまえにあらわれるな。
母の子宮から再び生まれ直す再誕生の儀式、スエットロッジをはじめる!」
ラコタ族の長老スーのしわがれ声が暗闇に響く。
密閉されたテントにたき火で熱した焼石が運びこまれ、裸の上半身をあぶりはじめる。
S「偉大なる精霊ワカンタンカよ、私はあなたの待つ天に帰る日が近いと感じています。遠い祖先から受け継いだラコタ族一万年の智慧をこの日本人の若造に授けてよいか、判断してください」
スーがバケツの水をひしゃくですくって焼石にかけた瞬間、散弾銃のような蒸気がぼくの胸を撃ち抜く。
A「うわっ、熱! これを3時間も耐えつづけるなんて絶対不可能です」
S「この祈りで耐えろ。私とつながるすべてのものに感謝しますという意味だ。ホゥ、、、ミタクェオヤシン」

27歳のぼくは3年前に日本からニューヨークへ移住した。
日本からいっしょにいった彼女はぼくに愛想をつかし、サンフランシスコにいってしまった。絶望したぼくは昼間から安ワインをあおり、自暴自棄な生活を送っていたんだ。
そんな生活から逃れるため、ヒッチハイクで旅をはじめる。
夜はホームレスといっしょにシェルターと呼ばれる教会の救護施設に寝泊まりする。
アメリカの底辺が集まるシェルターには黒人やインディアンも多く、人種差別で仕事に就けず、アルコール問題や貧困にあえいでいる。
旅の途中でインディアンたちから聞いた噂では、「スーという賢者がサウスダコタに住んでいる」という。
生きる希望をなくし、社会の底辺をさまよっていたぼくは、スーに救いを求めてやってきた。

A「もしあなたに見放されたら、死のうと思っています」
S「ふん、勝手にのたれ死ね。おーいポキュ、この坊やを追い返すためにどんどん焼石を運んでくれ」
ピースパイプという羽飾りのついたキセルを吸うと、薬草の煙がはいってくる。
S「おまえは親に感謝できるか」
いきなりの質問にぼくはむせる。
A「ごほっ、ごほ、父は酒乱で暴力をふるい、それに耐えきれなくなった母は5歳のぼくを捨てて家を出ていきました。ぼくの人生を狂わせた親たちに絶対感謝なんかできません」
S「許せない自分を許せ」
焼石から飛び散る蒸気が裸の胸を直撃し、奥歯が折れるほど噛みしめて耐える。
S「おまえは友に感謝できるか」 
A「自分をふくめた人間そのものが信じられません」
S「愚かなまま人間を信じろ。
おまえは花や鳥や動物たち、祖父なる太陽や父なる空、祖母なる月や母なる大地に感謝できるか」
A「自分のことだけでも手いっぱいなのに、自然のことなど考える余裕もありません」
S「世界を丸ごと抱きしめろ」
戦争や災害や不平等だらけの世界を抱きしめられるわけねえじゃん。
ったく、このじじい頭おかしいんじゃねえか。
「おまえはそうとうひねくれた人生を送ってきたようじゃな。わしにはおまえのねじ曲がった根性を治すことはできん。このへんでギブアップしろ」
「北京ダックになってもあきらめません!」
「ちっ、強情なガキだ。絶対こいつを追い返す。ポキュ、残りの焼石を全部もってこい!」
3時間くらいたったのか、ぼくは火傷に痛む胸をおさえながら何度も倒れそうになる。
意識が混濁して、現実と想像の境界線が消えていく。あっ、死んだおばあちゃんが笑ってる。お母ちゃんに抱かれたときの心音が聴こえる。虫に驚き、花に見とれ、自然のふところで遊び、ぼくとつながるすべてのものに守られていた日々がよみがえる。

夢から引きもどすようなスーの声が響く。
S「くそっ、信じられん。こいつ最後までもちこたえやがった」
ぼくはスーの腕に倒れこむと、引きずられるようにテントをでる。
太陽の光に目がくらみ、そのまま大地にころがった。
A「うわあ、空気がうめえ! 世界がこんなに美しかったなんて!」
首を曲げて胸を見ると、小さな火ぶくれが無数に散らばっている。うえを見ると逆光になったスーの顔がのぞきこんでいた。
S「くやしいが、わしの負けじゃ!今日のスエットはおまえを追い返すためインディアンの猛者でも逃げ出すほどの焼け石をつかった。
しかしおまえが気を失いそうになるたび、さまざまな力がやってきておまえを支えていたのが闇の中に見えた。おまえの祖先、家族、仲間たち、自然界の精霊までやってきていた。
おまえ自身はへなちょこでも、おまえはたくさんのものに守られている。
本当のおまえが何者なのか、思い出す旅がはじまるぞ」
 
2、「風のきた道」
G Em C D 7 G Em C D 7 G
命はめぐる ウーニッシュ ホーX2
わたしは祈る ウーニッシュ ホー
美しいまま ウーニッシュ ホー
いてください ウーニッシュ ホー
G D Em C D7 G G7 D7 G Em Am D7 
風のきた道 命の根っこへつづく道
生まれて最初の風を吸いこみ 最後の風を吐く
風のきた道 命の根っこへかえる道
幾千の影に守られてぼくは生かされてるC B7 Em D CM 7 Am D7 G

第2章 勇者の石 4P
S「夏の卒業試験サンダンスまで4ヶ月、おまえの根性を叩き直す。おまえが根をあげたらケツをけって海のむこうまでぶっ飛ばしてやる」
A「どうぞ、飛行機代が浮いて助かります」
S「口のへらぬやつだ。とほほ、まさかわしの最後の弟子がこんなひねくれ小僧とは先が思いやられるわい。さあ日が暮れるまえに最初のレッスンを授けよう」
スーは急に真顔になって空を見上げ、グレートスピリットにピースパイプをかかげた。
S「こいつに勇者の石を伝えます」
スーは70歳とは思えない健脚で小高い岩山を登ってく。
儀式を終えたスーは羽飾りを脱ぎ、風にそよぐ銀の長髪にすり切れたリーバイスジーンズ、よれよれのダンガリーシャツを着て鹿革のポンチョをまとっている。
夕日がスーの顔に照りかえし、まるでグランドキャニオンを流れるコロラド川のような深いしわを浮きたたせた。
S「人はこの世に生まれるまえに、一生かけて運ぶ運命の石を自分で決める。神様や他人が決めるんじゃない。自分で決めるってのが重要なんじゃ。自分が経験したい人生によって、石の重さや大きさを選ぶ。
わしらの聖なる数字は4なので、4種類の運命の石がある。 
ひとつ目、亀の子サイズの石は子供の石じゃ。小さくて運びやすいから、苦労の少ない人生を選んだことになる。
健康で、美しく、頭もよい。金持ちで、あたたかい家族に恵まれ、なにをやってもうまくいく。人生を楽しむことが彼の学びじゃ」
A「それって誰もがうらやむ理想の人生じゃないですか」
S「ところがわしらはこう考えるんじゃ。小さい石を選んだ者は、魂がまだ幼児のようだから、重い石を運べないとな。
2個目の石はアライグマサイズ。若者の石じゃ。
何度か生まれ変わって青年ほどに成長した魂は、自分が何者か、どんな使命をもっているか、体をはって挑むんじゃ。けつまずき、ころび、しょうこりもなく立ちあがる。勇敢で、自信過剰で、傷つきやすい魂、挑戦することが彼の学びじゃ。
まるでこんなへき地にヒッチハイクでやってくる無鉄砲なおまえのようじゃ」
A「ふん、どうせぼくなんか狂犬病のアライグマですよ」
S「3個目の石は鹿サイズ。大人の石じゃ。
何度も生まれ変わって成人した魂は、自分のことより家族や仲間たちを守り支える人生を選ぶ」
やべ、なんかちょっとおもしろくなってきた。生まれ変わりなんて信じないけど、気がつくと身を乗りだしていた。
S「たくさんの生まれ変わりをくりかえし、長老にまで成長した魂は、巨大なバッファローサイズの石を選ぶ。それが……勇者の石じゃ。勇者とは、障がいや病気、事故や災害、大いなる試練をくぐる者じゃ」
風のように語られるスーの言葉と裏腹に、ぼくは天地がひっくり返るほどおどろいてスーにつめよる。
A「日本で障がい者や病人は、かわいそうな人、不幸な人、弱者と教えられてきました。しかしインディアンは彼らを魂の最高レベルに達した勇者と呼ぶなんて、きれいごとにはごまかされませんよ!
ぼくの母親は26歳から足を引きずって歩く中途障がい者になりました。ぼくは友だちにからかわれ、母だってどんなにつらい思いをしたかわかりません。それのどこが勇者なんですか!? 自分で苦労を選ぶやつなんかひとりもいない。みじめな母の気持ちも、障がい者をもった家族の苦労も知らないあんたにいわれたくない!」
 スーは静かに目を閉じ、長い沈黙に沈む。
ゆっくりとスーの無骨な手がぼくの背中に伸び、お日さまの香りがする胸にだき寄せられる。
S「……よくがんばってきたな。
幼いおまえも、おまえのお母さんも、やはり勇者だと思う。
お母さんはおまえに大切なことを教えるために、苦しい役割を引き受けてくれたんじゃろう。もちろん意識ではない、魂がそれを選んだ」
こんな荒唐無稽な迷信にだまされちゃいけない。しかし木もれ陽のようなスーの胸に包まれていると、自分の弱さもみにくさもすべて許されたような気がしてくる。
S「わしもおまえも誰もが、人生のほとんどは思いどおりにいかん試練の連続じゃ。現実が変えられないのなら、現実をながめる自分の視点を変える。
犠牲者の視点から勇者の視点に変えるんじゃ。
もともとわしらには不幸や不運という言葉がなかった。祖先たちはそれを『贈り物』ギフトと呼んだ。つまり不幸を魂を成長させるチャンスだと考えたんじゃ。
犠牲者の視点から現実をながめると、不幸を嘆き不平不満ばかりをたれ流す人生で終わってしまう。しかし同じ現実を勇者の視点からながめると、自分に誇りがもて、試練に挑む勇気が湧いてくる。
おまえは障がいをもった母親を犠牲者と憐れむか、勇者と誇るか、どっちが幸せじゃ」
A「ううむ、たしかに試練を与えてもらえるくらい魂を成長させた勇者と考える方が誇りがもてるような気がします」
S「おまえが雨に降られようと、彼女にふられようと、この世界に起こるすべては『現象』でしかない。
その現象を不幸や幸福とおまえが意味づけしている。
昨日ラブレターをもらってこの世は天国といっていたおまえが、今日ふられたらこの世は地獄という。世界はまったく変わっていないのにおまえが幸福と不幸のレッテルをはっただけ。つまり『おまえの意味づけが世界を創りだしている』んじゃ。
わしもじいさんからこの話を聞いたときはおどろいたよ。最初は信じられなかったけど、この考え方をしたほうが自分もたくさんの人も救われる気がしてきたんじゃ。
この世に苦労したことのない人間などおらん。つまり生きている者全員が勇者なんじゃ」
A「生きている者全員が勇者、、、ぼくの知り合いや友だちにも障がいや病気や事故で苦しんでいる人たちがいます。彼らに勇者の石を伝えれば、かわいそうな人や不幸な人のレッテルをはがして、犠牲者から勇者と気づけるかもしれない!」

3、「勇者の石」
G D Em Bm  C G Am D7
人はこの世に生まれるまえに自分で背負う石を決める
生まれ変わるたび挫折を重ね、きみの魂は強くなる

亀の子ほどの重さの石は苦労を知らぬ子供の石
美と健康と富に恵まれなにも恐れず遊びつづけろ
アライグマほどの重さの石は目ざめはじめた若者の石
挑み倒されまた立ちあがり本当のきみを探しつづけろ
だいじょうぶだよ きみならできるから 運ぶ命を運命と呼ぶ
Let’s keep on carrying the rock of the brave

赤い鹿ほどの重さの石は悲しみを知る大人の石
津波のごとき困難に耐え愛するものを守りつづけろ
バッファローほどの重さの石は神が讃えし勇者の石
重い病や障害を越えみなに勇気を与えつづけろ
だいじょうぶだよ きみならできるから 運ぶ命を運命と呼ぶ
Let’s keep on carrying the rock of the brave

第3章 ムーンタイム 2・5P
S「うちのじゃじゃ馬を紹介しよう。妻のウォーキング・リリーだ」
スーは森のなかにある廃材で建てたログハウスにぼくを招き入れた。
リリーは60代なかばとはいえ、とってもおちゃめだ。真っ白い髪を三つ編みに結い、大きな目をくりくりさせてジョークを飛ばす。
L「あら、おいぼれジジイのガラクタ遺産を継ぐのが、かわいい東洋人とはね。
さあ、お祝いしましょう。焼きたてのコーンブレッドに、メインはローズマリーに3日間寝かせた鹿肉のシチューよ。これを食べれば、あんたもあたしと寝たくなるわよ」
S「おいおいリリー、わしの弟子を寝取ったら、おまえのプッシーにダイナマイトをつめて月まで飛ばしてやるからな」
スエットロッジではあんなに威厳のあったスーも下ネタジョークでは負けてない。
ぼくはあまりの美味しさに鹿肉のシチューを3回もおかわりしてしまった。
スーはスエットロッジで疲れたのか、ロッキングチェアーでガマガエルのようなイビキをかきだした。口もとによだれたらしてるし、こんなマヌケづらの師匠についてだいじょうぶかよ。
L「AKIRA、この粗大ゴミをベッドに捨てにいくよ」
ベッドに放り投げられてもスーは熟睡したまんまだ。スーのモカシンを脱がせたリリーが鼻をつまむ。
「クサッ、この靴下1週間もはいてるね。メディスンマンとしては一流でも生活者としちゃサイテーさ。
あたしが気づかないと一生同じシャツ着てるし、英語のスペルはむちゃくちゃだし、ニワトリを町に売りにいったら、父親の薬代がないっていう女に財布ごとだましとられるし。
あんたもスーの弟子になったんだから、この金言を肝に命じなさい。
『神ごと以外はろくでなし』(He is useless except God things)」
いったリリーも聞いたぼくもカウチに倒れこんで爆笑した。
『ユーズレス』って直訳したら『使えねえ男』=ろくでなしじゃん。
ぼくは正直ほっとしたよ。スエットロッジでは閻魔大王だったスーが等身大の人間にちぢまったからだ。

L「AKIRAきてごらん、きれいな月だこと」
リリーに呼ばれて外にでると、はちきれそうな満月が夜空に輝いている。
L「あの月はおばあさんなのよ。あたしたちは父なる太陽、母なる大地、祖父なる空、祖母なる月って呼んでいるの」
リリーは白髪になった三つ編みをゆらしながら木からつるしたブランコを揺らしている。
L「グランドマザームーンはムーンタイムのときに女の知恵を授けてくれるの。ムーンタイムは生理のことよ。生理は月と同じ28日周期だから、女は月のリズムで生きてるの。
女は生理がはじまると、ムーンロッジというテントにはいる。家事も掃除もやらなくていいし、食事も運んでもらえるし、毎日女たちが体をふいてくれからまるで女王様気分よ」
A「でも女王様って、ひまをもてましませんか」
L「あははっ、ムーンタイムの女性は大事なお勤めがあるの。グランドマザームーンと瞑想するの。
グランマザームーンにいろいろ質問すると、夢の中で答えを教えてくれるわ。
生理が終わってムーンロッジから出ると女子会があって、祖母なる月から授かった知恵を女たちで分かち合うのが伝統なのよ」
A「そうか、現代の女性は生理をネガティブなものと思いこまされてるけど、神聖な浄化の時間と考えると女性であることに誇りがもてますね」
L「だって男は争いで命を奪うけど、女は命を与えるでしょ」
老女はおちゃめにウィンクすると、月に飛び立つようにブランコをこぎはじめた。
4、「ムーンタイム」
CM7 FM7 G7 CM7 E7 Am FM7 Em7 Am9
Grandmother Moonが微笑む 女は月と語らう
大いなる力と分かちがたく わたしは結びついてる

男は命を奪い 女は命を与える
喜び悲しみをつづれ織り わたしは母になる
CM7 Em7 CM7 Em7 
It's a moon time 聖なるとき It's a moon time 浄化のとき
Am /G# G F# FM7 G Am9
月は満ち欠けをくりかえす 永久の愛に出会うため
 
第4章 朝のレッスン 2P
S「AKIRA、起きろ!朝の散歩につきあえ」
ふああ、老人は朝が早いなあ。ソファーに寝袋でよこたわっていたぼくをスーがゆすぶります。
S「朝起きて最初にやることは、祖父なる太陽に感謝することだ」
A「ぼくが感謝しないでも太陽はかってにのぼってくるでしょ」
S「バカもん、ショーニー族のテクムセが言った。
朝起きたら、太陽とおまえの命に感謝しなさい。
どうして感謝するのかわからないなら、おまえの中に罪がとぐろを巻いている証拠だとな。まあ、朝の一服をしろ」
スーは儀式用のピースパイプではなく、自分のキセルで香草をブレンドしたタバコ、キニキニックを差し出した。
「このパイプはわしが子牛の骨を削り、この地域でしか採れない赤石の火受けをつけた。
ピースパイプがインディアンの聖書なら、わしの知恵はぜんぶこのタバコ袋につまってる」
さすが一流の薬草シャーマンが厳選したスーブレンドだ。心がほどけてすがすがしい気分になってくる。
ぼくはスーの早歩きに追いつこうと、枝に腕をひっかけ、傷から血がにじんでくる。
スーは細い枝から丸い葉っぱを一枚摘んでぼくにわたす。
S「このウィッチヘーゼルをにゃんにゃん噛んで腕につけておけ」
A「ウィッチって魔法使いですよね。あっ魔法のように血も痛みも止まりました」
S「ああ、インディアンの万能薬じゃよ。切り傷や虫刺されはもちろん、のどの炎症や生理痛、解熱や湿疹、腰痛や頭痛まで効くんじゃ。
わしらが病院にいくようになったのはここ数10年の話じゃ。それまでの何百万年間はメディスンマンが薬草をつかって病を癒してきた。
メディスンは神聖な薬という意味じゃ。メディスンマンは医者であり、薬剤師であり、カウンセラーであり、教師であり、部族の指導者じゃ」

川の飛び石をわたるスーについていく。
うわっ! ぐらついた石にぼくは川に足をつっこむ。靴がずぶ濡れだ。
「おまえ、しっかりしろよ!」ぼくは石を指さして怒鳴った。
「ああ、石もおまえにしっかりしろっていってるぞ。
そのまま自分の指を見てみろ。人さし指は石をさしてるが、ほかの指はどこをさしてる」
「えっヤバい、中指も、薬指も、小指も、自分をさしてるよ!」
「しかも、親指はどうじゃ」
「うわっ、空をさしてるよ。それってワカンタンカにしっかりしろってっていっちゃったってこと! 取り消します、ワカンタンカ様じゃなく、この石ころにいったんです」
「いいか、小さな石ころでも、名前も知らない草花でも人を癒してくれる薬効がある。グレートスピリット・ワカンタンカがこの世に降ろしたものでむだなものなどひとつもない。
薔薇や蘭のように高い値段で取引される植物だけじゃなく、お金にならないたくさんの植物たちがこの星の命を支えているんじゃよ。
人間だって同じじゃ。
不登校だろうと、失業者だろうと、ホームレスだろうと、たとえ罪を犯した者だろうと、この世にむだな人間など1人もいないのじゃ。
たくさんお金を稼いだり、たくさんの人に賞賛される人が世界を支えてるんじゃない。汗を流して働き、不器用だけど必死で生きてる名もなき命が支えてるんじゃ」

5、「名もなき命」
1、G D Em Bm C G Am D7 X2
昭和天皇が言った「雑草という草はない」
名もなき草花たちがこの星を生かしているんだ
人間だってそうさ 偉人や金持ちだけじゃない
世界を支えているのは名もなき命 B7
Em Bm C G B7 Em Am D7
生きる価値のない人などいない 生きる意味のない人生などない

地位や名声なんてそんなのどうでもいいんだ
せいいっぱい今日を生きぬいた 自分を誇りに思え
仲間とともに悩み 家族とともに笑った
誰にもゆずれない名もなき命
2、
きみがくぐった試練はきみしか超えられなかった
そうだきみの人生は誰にもまねできなかった
きみの愛する人はきみにしか守れなかった
きみを守ってきたのも名もなき命
Em Bm C G B7 Em Am D7
生きる価値のない人などいない 生きる意味のない人生などない

父や母はなにも成し遂げなかった
だけどこの世にぼくを生み育ててくれた
彼らがくれたものはどんな宝石も勝てない
世界にたったひとつの名もなき命

第5章 偽りの歴史 2・5P
S「今日は本当の歴史を教えるために観光に連れていってやろう。大統領の顔が掘られたマウントラッシュモアへいったことがあるか」
A「あっ、それ写真で見たことある。いきたい、いきたい!」
広大な駐車場にはおびただしい車がならび、カフェにも人があふれ、みんな彫像をバックに記念撮影している。
スーもぼくにおねだりされてソフトクリームをなめているが、これほどソフトクリームが似合わない人間がこの世にいたとは!
A「うひょー、生で見るとこんなでかいのね。ワシントンとリンカーンはわかるけど、あと誰だっけ」
はしゃぎまわるぼくをスーはあきれ顔で見ている。
S「おまえはむじゃきでいいのう。白人にとって偉大な大統領はわしらにとっては殺人鬼じゃ。初代のジョージ・ワシントンはもっともたくさんのインディアンを殺し、三代目のトーマス・ジェファーソンはインディアンのイロコイ連邦の合議制民主主義を学んで独立宣言を書いたが、インディアンの強制移住政策をはじめた男じゃ。
黒人奴隷を解放したエイブラハム・リンカーンはスー族から奪った土地の保障金や食料を差し止めた。ノーベル平和賞のセオドア・ルーズベルトはインディアン虐殺を賛美し、絶滅政策を支持していた」
A「うわ、ぼくたちが教わってきた歴史とまったく逆じゃん」
ビジターセンターにはこの彫像ができるまでの歴史や写真などが展示されている。
S「このラシュモア山があるブラックヒルズはスー族にとって聖なる山だった。登山のような無礼をせず、山をまわりながら祈りを捧げたもんじゃ」
ダイナマイトの疑似体験ができるボタンを押すと、ドッカーン!
A「ひえ〜、聖なる山をこのダイナマイトで吹き飛ばしながら鬼の顔を彫ったのか。たしかにひどい話だ」
S「はじめ白人がせっせと柵を作るのを見たとき、ずいぶん奇妙な遊びだな、いったいどこがおもしろいんだろうとインディアンは頭をひねった。
アメリカ政府は我々の土地で金が採れることがわかるとすぐ没収した。
いきなり紙をわたされて、わけのわからぬサインとやらをさせられて、柵の外へと追い出される。仕方なく別の土地に住んでると、またもや紙にサインさせられ、つぎからつぎへと追い払われる。
白人ガンマン、バッファロー・ビルがこう言った。インディアンが約束を破ったことは一度もないし、白人が約束を守ったことも一度もないってな。
歴史というのは征服者の視点で書かれている。征服された我々の視点から見るとまったく逆になるのじゃ」

 スーが息子のポキュからプレゼントされたジープは、大平原を走ってゆく。
S「サウスダコタの山々はアメリカで最古の山じゃ。そのふもとに広がる大平原でわしらの祖先は野生馬にまたがり、バッファローを追っていた。
太古の昔バッファローを必要以上にとりすぎて人々は飢え、部族たちが争っているとき、白いバッファローにのった女性があらわれた。
グレートスピリットの使いプティサンウイじゃ。彼女は我々にピースパイプを与え、儀式や祈りの方法を教え、平和の道を説いてくれた」
A「やっぱグレートスピリットの使いは女性なのか。天照大神みたいだな」
S「母なる大地は誰のものでもない。人間のものですらない。母なる大地が生んだ動物や植物、すべての命は同じ母から生まれた兄弟なんじゃ。
香る花たちは私たちの姉妹であり、熊や鹿や大鷲たちは兄弟。輝く松葉一本一本が、砂浜が、深い森の霧が、草原が、羽音をたてている虫たち、すべてが神聖なんじゃよ。
川を流れる輝く水は、私たちの先祖の血だ。水のつぶやきは、私たちの曾祖父の声なんじゃ。
人は命の布を織らなかった。
人はただ、その中の一本の糸にすぎない。
だがおまえはグレーとスピリットの命そのものじゃ。自分がどれほど神聖な存在なのか、気づいてあげなさい」
 
6、「Something great」
1、G D C G Am Em D G
Something great 松の葉も 川辺の砂粒も すべて神聖なわたしの命
Something great ゆく川は祖先の血が流れ 水のせせらぎは祖母の子守歌 G7
C G Am7 D7 G C G Am7 D7
Something great あなたが闇におびえたら 小さな蛍にわたしを見なさい
Something great わたしはあなたのなかにいる あなたは神聖なわたしの命
「いっしょに歌ってください。ぼくのあとを追いかけるように歌えばその場で歌えます」
2、G D C G Am Em D G
Something great 花も虫も動物も人間も 母の大地から生まれた兄弟
Something great わたしはすべてに宿ってる 我らはひとつの命を生きている G7
C G Am7 D7 G C G Am7 D7
Something great あなたが孤独にこごえたら のぼる朝日にわたしを見なさい
Something great わたしは あなたのなかにいる あなたは神聖なわたしの命

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メッセンジャー:杉山明