大阪芸大発 著名人教員の紙上講義】(9)舞台芸術学科教授 島田歌穂さん
2009.03.29 大阪朝刊 23頁 大阪総合 写有 (全1,704字) 

 ◆声の引き出し増やせ

 ミュージカルには「歌」と「芝居」と「踊り」の3つの要素がありますが、基本は絶対に芝居であってほしいんです。歌と踊りは、芝居の中でその場面の感情をより豊かに表現していくための手段。芝居の気持ちが盛り上がったときに、気がついたら歌になってた、踊りになってたというところを目指したい。「はい、ここから歌です」「はい、ここから踊りです」と表現が分離しないよう、とにかく一貫した芝居の流れをつくってほしいんですね。

  《島田さんが教授を務める舞台芸術学科は、演技演出▽ミュージカル▽舞踊▽舞台美術▽舞台音響効果▽舞台照明-の6コースがあり、それぞれ基礎から専門的なことまでを学ぶ。島田さんはミュージカルコースの歌の実技を指導。いかに芝居として歌を表現するかを教えている》

 まず、大切な楽器である身体の使い方を覚えながら歌にとって大切なリズム、メロディー、ハーモニーを楽譜通りにきちんと歌えるようになること。そして歌詞を台詞(せりふ)としてしっかり解釈し、それをメロディーに乗せていく。つまり歌詞イコール台詞として表現する。これがミュージカルの歌なんです。

 それで、台詞の声と歌う声を分離させずに、どうつなげていくかもポイントです。歌詞を台詞として言ってみて、その中で、うまく声がつながっていくところを探してほしいんですね。

 そして、自分のいろんな声を探しましょう。キャラクターのトーンとかリズムとか、テンポ、息の使い方、響き、音色…。それぞれの役柄なりの声を見つけ、自然に台詞と歌をつなげていく…。とにかく、声の引き出しをいっぱい持ってくださいね。

 あとは、実際に舞台に立ったときに空間をいかに埋めていくかです。自分の声が気持ちよく響く場所を見つけてください。その響きを舞台いっぱい、会場いっぱい、宇宙いっぱい、とイメージを広げて息を流していく。そのイメージが本当に大事です。

  《島田さんの授業では、ほとんどが実技中心に進む。この日は発声練習のあと、学生たちがソロで順番に歌った》

 みんなの前で歌うって緊張するもの。でも、オーディションや本番になったら、ここで歌うより10倍も100倍も緊張すると思う。それは当たり前のこと。緊張した状態でも深いところから声を出すことができるかは、ふだんの「ブレス(呼吸法)」や「発声」の訓練次第なんです。緊張してるなって思ったら「ブレス」を思い出してね。いかに肩の力を抜きお腹の底まで息を入れられるかです。基本を大切に自分らしい自由な表現を身につけていきましょう。

  《島田さんはミュージカルだけでなく芝居、美術など芸術全般を見たり聞いたりすることも重要と説く。「とにかく今はどんどんいろいろなものに触れていってほしい。日本人なんだから、能とか歌舞伎とかの『和もの』にもね」と話した》

 ミュージカルでやっていくのであれば、とにかく声を出してナンボと思ってください。ミュージカルのオーディションでは、最初に歌で落とされちゃうことも多いので。みんな頑張りましょうね。

 (山口淳也)

 ◆神戸で来月、京都で5月に舞台公演

 島田歌穂さんが出演するミュージカルレビュー「DOWNTOWN FOLLIES Vol.6」が4月28日に神戸、5月2日に京都で行われる。島田さんらのパフォーマンスと管弦楽の生演奏が人気の舞台で、出演は島田さんのほか、玉野和紀さん、香寿たつきさん、吉野圭吾さん。神戸公演は午後7時から新神戸オリエンタル劇場(TEL078・291・9999)、京都公演は午後5時から京都芸術劇場春秋座(TEL075・791・8240)で。

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 【プロフィル】島田歌穂(しまだ・かほ)

 女優。昭和49年に子役でデビュー。57年にミュージカル「シンデレラ」で初舞台。62年に「レ・ミゼラブル」のオーディションでエポニーヌ役に起用され脚光を浴びる。現在、ミュージカルからストレートプレーまで幅広く活躍。平成19年の紀伊國屋演劇賞個人賞などを受賞した。15年4月、大阪芸大の舞台芸術学科助教授となり、19年4月から教授。

 撮影・桐山弘太

産経新聞社

大阪芸大発 著名人教員の紙上講義】(8)放送学科教授 小林大作さん
2009.03.22 大阪朝刊 25頁 大阪総合 写有 (全1,754字) 

 ◆関西弁は「第2共通語」!?

 日本語のアクセントというのは共通語に限らず、音の高低で決まるんです。例えば「あ」という音節と「め」という音節があるとします。「あ」を高く「め」を低く言うと天気の「あめ(雨)」となります。逆に「あ」を低く「め」を高く言うと食べる「あめ(飴)」となります。漢字で書けば違いが分かるんですが、声に出したとき、どっちか区別できるようにしないといけません。

 名詞を例にとると、飴は「平板型」、雨は「頭高型」と分類し、ほかに尾高型、中高型の計4種類の型があります。でも、アクセントのつけ方は地方によって違うから、全国に向けての伝達方法としては混乱するんです。そのために生まれたのが「共通アクセント」。これを学んでいくことが、しゃべりの仕事をする上での基本になるんですね。

 だけど、東京に行ったタレントさんは、ほとんど共通語に近い東京言葉でしゃべるんですが、なぜか最近の関西芸人さんなどは関西弁で通しますよね。昔は考えられなかったんですよ。関西弁は「第2共通語」なのかという感じがしてきます。

  《小林さんが教授を務める放送学科。1年で放送の基礎を学んだあと、制作、アナウンス、広告の3コースに分かれ、専門的な知識や技術を身につける。小林さんはアナウンスコースのゼミのほか、基礎的な「共通語のアクセント」の講義も担当し、共通語のアクセントの変化の法則性などを教えている。より実践的な、アナウンス現場で将来役に立つだろうというものから優先的に教えているという》

 動詞の原形の場合、例えば「着る」「笑う」「泣く」などはみな「平板型」の動詞です。平板ではないのは「起伏型」というんですが、これは「見る」「受ける」あたりかな。見るは「み」、受けるは「け」が高く、また平板といっても、着るは「る」が、笑うは「らう」、泣くは「く」が高いんです。「着る」が変化して「着よう」となると、「笑う」は「笑おう」に、「泣く」は「泣こう」となりますが、アクセントの変化も基本的には一緒で、後ろから2つめが核(高さのピーク)になって、その後低くなるんです。

 動詞が変化したときに、現場でアクセントをどうつけるか困ることがあると思います。そういうときに「着る」がどう変化するかを覚えておけば、平板型の動詞は基本的に同様の変化をするんです。起伏型も同じで、その場合は「見る」の変化を覚えておくんです。その法則をうまく活用して乗り切ってほしいですね。できるだけ省エネ、裏技的に覚えましょう。

  《3、4年が対象の小林さんのゼミでは、ラジオやテレビなどの現場経験をもとに、専門的な知識と技術を学生らに伝授している。卒業制作では、研究成果を論文ではなく、CDに30分以内の「録音構成」でまとめることを課す。今年度、来年度のテーマは「私のめざす音声表現」》

 目上の人へのあいさつは大切です。また敬語を使えない人がいますが、これはいけません。敬語についてはテレビを見ていてよく思うんですが、変な使い方をするリポーターがいます。例えば普通の小学生へのインタビューで「ご出身はどちらですか」と聞いたり、中学生に「ピアノのレッスンはおいくつのときから始められたんですか」と聞いたりしているんです。明らかに年上でも目上でもない人に、そこまで丁寧に言わなくていい。子供には子供に対する聞き方があるんです。「ぼく、どっからきたの」でいいんですよ。このような場違いな敬語は使わないよう気をつけてください。

 ただ、判断の難しいときもあるんです。そのときはどうするか。迷ってください。相手の立場的なこととか知名度とか、いろいろあるでしょう。TPOを考えて、臨機応変にやってくださいね。

 (山口淳也)

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 【プロフィル】小林大作(こばやし・だいさく)

 フリーアナウンサー。大阪芸大放送学科卒業後、CMナレーションが初仕事ですぐにFMラジオのDJとしてデビューし、以降、関西のラジオのほか、テレビでも「ズームイン!!朝!」(読売テレビ系)の関西担当初代キャスターなどを務めた。現在のレギュラーは「小林大作のメモリーズ・オブ・ユー」(ABCラジオ)など。平成19年4月、大阪芸大放送学科教授に就任した。

 撮影・前川純一郎

産経新聞社

大阪芸大発 著名人教員の紙上講義】(7)音楽学科専任講師 森川美穂さん
2009.03.15 大阪朝刊 23頁 大阪総合 写有 (全1,530字) 

 ◆自分のスタイル確立を

 この歌をあなただったらどう歌いますか? 自分の歌い方がわからないまま歌うのはよくないことですよ。

 ステージで歌うとき、お客さんにこびる必要はまったくありません。どういうステージであっても、自分のスタイルが出せるかが問われます。スタイルを確立することが大変重要なのです。

 自分のスタイルを探すためには歌い込むことです。声が出たからと思って、そこで満足したらダメです。私の経験上、ほとんどの人が声が出た段階で練習を終えてしまうのですが、それを一歩超えることが求められます。歌い込まないと体が覚えません。

 歌っていうのは最初からまとめようとしたらいけません。世の中で一番、意識してまとめてはいけないのが歌だと思います。歌い込んで、さらに歌い込むことによって自分のスタイルが確立され、そうなると歌が勝手にまとまってくるのです。

 歌い込むことによって、「これは自分の曲だ」「自分の声の質を生かしている」という自信が出てきます。その歌を歌いきれれば「うまいね」という領域に入り、聞いている人もあきさせないでしょう。

 《大阪芸大のレッスンスタジオ。防音装置が完備され、機材も録音スタジオ並みの質と量を誇る最新鋭の設備。現役のボーカリスト、森川さんと3年次の学生が1対1で歌と真剣に向き合う。個人レッスンによって学生に歌の神髄が吹き込まれていく》

 あなたが描いているプロ歌手になるという夢をあきらめないでください。これから就職活動も視野に入れなければいけないし、卒業後のことも頭をよぎるでしょう。しかし、卒業してからでも音楽はできるはずです。何歳になってからでもやり直しはできます。30歳になっても、60歳になってからでも「始めよう」と思ったときがスタートなのです。

 ジャンル、タイプの異なる歌をいろいろと歌うのも必要です。そうすれば得意分野が自然と分かってきます。そのうえで、自分の歌を10曲くらいもってください。古い曲もあれば、最近の曲も入れましょう。夢を追い続け、ステージに臨みましょうね。

 《音楽学科はポピュラー音楽コースと音楽制作コースからなる。森川さんが担当するポピュラー音楽コースの教授、講師陣は全員が第一線で活躍中のアーティストたちだ。学生たちは授業でアーティストから刺激を受け、技能の向上を図っている》

 歌を歌うときは集中してくださいね。これは私が歌ってきて気づいたことです。つまり、経験から学んだことなのです。

 集中するといっても歌は1曲につき、たかだか4~5分です。集中したうえで、主人公になったつもりで歌いきってください。それが生きた歌になり、伝える歌となります。

 《授業はここで会場をレッスンスタジオから広いホールに移し、ミニコンサートに。多くの学生が詰め掛けるなか、森川さんが歌を披露。透明感のある声質とパワフルさは健在だ》

 私は歌が好きなので、歌っているときは至福の時です。歌い続けていけるのは、自分のスタイルを確立しているからです。それは愛する歌、愛する人がいるからです。

 人生は1回しかありません。これからも前を向いて、果敢に歌い続けていきます。

 (三宅統二)

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 【プロフィル】森川美穂

 もりかわ・みほ 歌手、女優。昭和60年、シングル「教室」でアイドル歌手としてデビュー。同期に中山美穂、南野陽子、浅香唯らがいる。62年、シングル「おんなになあれ」を機にアーティスト路線に変更し、「学園祭の女王」と呼ばれる。劇団四季のミュージカル「アイーダ」をはじめ、テレビドラマ、映画にも多数出演。歌唱力が買われ、平成20年4月から大阪芸大音楽学科ポピュラー音楽コース専任講師。

 撮影・門井聡

産経新聞社