おはやうとリコピンさんのお通りだい

/夏だものベルトを抜いてアッパッパ

/信玄も身震いをする猛暑かな

/雲の峰もう山の端を数えない

/曲がり初む胡瓜は夏のご愛敬

/採れ過ぎて古漬け先に糠の床

/ソルダムやサンタローザや夏熟れる

/冷え冷えのビール天ぷら夏野菜

/逞しき南瓜の蔓辺径教へ

/桔梗の白きが生(あ)れて水遣りぬ

/プチトマトの簾うれしき夏の朝

/むくつけきゴーヤは花の可憐かな

/夜を焦がす花火涼しむ窓越しに

/西瓜採って手にずっしりと畑の子

/きっと、屹度朝はつめたき水汲みに

/リコピンさ~ん、トマトは干され懇ろに

/リコピンの濃縮されて天日かな

/百日草と百日紅が咲きにけり

ほぼ同時に咲きましたね。

 

倉石智證

夏闌り。

/夾竹桃紅に流れてモノレール

/感応式凌霄花(のうぜんかずら)紅い花

/ぶら下がる三日見ぬ間の胡瓜かな

/立ち漕ぎの少女に赤いカンナかな

/畑に出て夕餉が決まる茄子トマトピーマンしし唐夏の賑ひ

/半夏生蛸の握りを入れてみた

/かーさんの自慢肉味噌茄子、胡瓜

/ピッツァひとつ娘に教へんとバジルかな

/新宿から南アルプス緑濃し

/トンネルを越えて翠巒(すいらん)夏の山

/黒富士のやや大人しく山開き

/魚の目を擦る魚の日ではないが

/百日草あと何日て云ふところ

/世に棲みて藤の花には帰り花

/土砂降りや鬼の行水ありまして

/初蝉や聴いた聞こえたやうな気が

/やれ励め西瓜畑の西瓜には

 

倉石智證

 

夏の朝。

夏の深い影を出たり入ったりして

朝は未だ他のものに溶けていたものが

やうやう陽が上がるとともに影に集まり出して

黒く影を落として

つぷつぷと話しをし出し

朝の内だよねとジャンケンを出し

パーが来る前にば様を庭に降ろした

おぼ子に還れ

靴を脱がせるとほんたうに気持ちよさそうに

ゆれる梢の下で

深い影の涼しく

さばさばとば様は少し笑ふ

昨夜の永い夜の深刻なくぐもる闇から出でて

夏の朝の深い影を出たり入ったりする

夏野菜の朝採りだよ

たんと採れたよと伝えるが

眼に追ふほどでもない

手押し椅子がぐらッとゆれる

ショートステイへお出かけだよ

黒い影から一歩出て

年寄りには耐えきれない暑さだね

 

倉石智證