あふれるやうな───

あふれる心を聞くような気持ちだ/みんなが一生懸命なのだった/畑はないまぜになり/みんながそれぞれにいそがしい/背を低くして目立たないようにして雑草まで/だが意外とそれがしぶといのだった

/胡瓜はピークを越えたよ/身実を背に曲げて/いよいよ種作りに励むみたい/ほおっておいた南瓜がなにを思ったのか堰を跨いだ/まったく新しい未知の地に向かってゆくみたいに

/心慰める花は未だ/紫陽花は蔭に紫の色をひっそりと泛べ/毛蕊花の黄の花片は散り継いでは/また花に蜜蜂を誘う/これがどうと云ふばかりではないが/畑地に出ると/ああ、ひとつひとつにあふれる心を聞くような気持ちだ/午前六時、/這いつくばって雑草を取っていると/日が差し掛かって来た/シャッが袖口までびっしょりになる

 

倉石智證

デイの日にお花を添えて。

デイに行く/あなたはエバってもいいのですよ/えへんおほん/鼻歌まじりで眼を閉じている/ゐ心地はどうですか/スロープを下って芝生の上に/死のうが生きようがもうだんだんよくなって来たんですよね/えへんおほん/両手を胸の前に組んだ/最近はだんだん異和感なくむしろ板について来た/さあ、眼の見えないばーさんが歌うことには/♪ よ~かったよかった南無。/びしっと決めたねぇ/先ほどは千のご先祖様の前て/ほどほどでいいですからうまく歩けますように ! ですって /みんな、うまくいきますように ! ですって/さあ、時間が来ました/送迎のお車ですよ

ばーさんにはけふも花と作物を添えて

 

倉石智證

葱の植え替え。

/すっぽりと短パン脱いでそのまゝに

/園丁に躑躅の葉叢闇を為す

/ハグロトンボ日影の中に休み居り

/紋白蝶南瓜辺りを二往復

/めまといや腰屈めたる草引き夫

/植え替えや「トリセツ」を見て葱の秀(ほ)を

/葱坊主を切りてしままに忘れられ植え替えが好しさらに秀を切る

/ありがちな解答公文汗を掻く

畑の片隅に放ったらかしのままにして置いた葱を植え替えることにした。

畝を掘り耕す。片側の畝を枕高く。

稲の苗を植える要領で立てかけてゆく。

葱は新しく再生するのだそうだ。

葱は丈夫で根っこに棲む葱菌は菌をバリアーする優れものなんだそうだ。

冬を目指してガンバロー。

/さしずめ宝石だね通りをゆく紫陽花人よ

/つましくも秋刀魚の開き備蓄米よく噛めばホラ口中平和

/トルティーヤ食べて夏空イラン聞く

/冷や麦に完熟トマト飾りけり

/葱苗を買うて待ちゐる夕まぐれ

/故郷の山よく見えて種苗買う

/かーさんのポテトサラダに芋料理床に転がる芋うらめしく

/雲一つ破りて燕軒下へ

/「塔」に螺旋階段、

梅雨にはこんなあいさつもいいかなと思ふ。

1993野又穫「Nowhere-2」