家族葬。
葬儀前夜。
/隠国(こもりく)の未だ見ぬ国の遠の途
いざ待ちわびる今こそいかん
享年99歳にもなれば周りの人たちもみんなみんなあちらへ旅立たれ、残される人たちもみんな老いた人ばかりの人たちになる。葬儀はごく内輪のぼくらの家族葬と云ふことになった。枕経を誦まれ、南枕から北枕に、臨終経の読誦になった。小さく尹尹と響く鐘の音。お式の準備がだんだん整ってきました。祭壇には遺影のお写真、なつかしい笑顔だ。両脇には飾り花を立てる。まるでセレモニーと変わらぬくらいに華やいだ。庭木はぼくの剪定、松からヒバ、躑躅からツガ、ヤツデの葉っぱの整理まで、なんと全部危篤のときまでに間に合いましたよ~。ば様エライね、僕らに時間をくれたみたいだ。さあ億光年の彼方にお旅立ちです。守り刀を白布の胸の上に、姻族の数限りないまなざしに包まれて、明日には白木の卒塔婆に新しいお名前が記される。少しの烟と共にまるっきり入れ替わるんだね。ご来客が立ち去られた後の座敷にまたお一人になられた。静かだねまったく。まだ形骸があるうちに唇にお湿りをあげようか。
般若波羅蜜多
羯諦羯諦ぎゃていぎゃてい、
波羅羯諦
さあみんなで渡ろう。
法光あふれる永遠の国に。
倉石智證

















