/水嵩を増して千曲に笹濁り

/水色の橋を湯滝に雪解川

/雪柳雪椿とに在りにけり

/ネコヤナギありて信濃や道の駅

/ネコヤナギ猫の寝ぶたさネコヤナギ

/雪原に降りてしの黒、寒鴉

/鳶低く魚野河原に雪白し

/彽徊する鳶の河原に雪白し

/蕗の薹北へ向かへば浅翠

/先ず一献今年の蕗に奉れ

/春は苦味冬眠の人出て来なさい

/蕗の薹雪にかしづくばかりなる

/雪女肌温かいて云ふ咄

/ふる雪やファジーなりゆく雪女

/スノーホール獣の途の途絶えけり

/蚊柱や雪虫の湧き雪の原

/天ぷらをビールの泡で流し込む

鼻に抜け出る蕗の薹はも

 

倉石智證

春風や…

/チューリップ手の鳴る方に芽吹くかな

/葉一枚剪って黒星病哀し

/剪定師君が代蘭を如何にせむ如何にせむとて君が代蘭を

/八ッに雪春は名のみの風寒し

/春の風ドレミファドンを踏みはずし

/撫でてゆく葦の芽吹きを鴨游ぶ

/花ほころぶハリーウッドや受粉時季

/山茱萸の清楚水仙のほがらか

/春風やナースコールのごとくゆく

/花無くて手持無沙汰や八つ手の葉

/湯湯婆(ゆたんぽ)の安堵股倉にやさし

/俤や湯湯婆の如婆なりき

/東風(こち)吹かばパンが焼けたと妻の声

/どちら様ですかと春の風

/愚か者の名前誹りやトランプのでも彼の人の馬耳に東風

/桜東風にははやく人の軽はずみ(軽佻)

 

倉石智證

/春兆春眠覚ます鳥の聲

/春は脚長村いっぱいを渡り来る

/初物の韮を飾りて温飩とす

/韮を採りに畑に出でて饂飩かな

/寛解の人ゐてスキーは今年無理

/スキー二本ならべて北のニュース聞く

/玉葱を太からしめて追肥かな

/仏の座残りしものを立カンナ

/一斉にナズナ生え来て落ち着かず

/絹さやに不織布剥いで棚作り

/寒冷紗剥いで春菜の生き生きと

/焦るなよスモモに花芽湧き出ずる

/ハリウッド妻が咲いたと高梯子

/花よりも団子がいいな蒼き空

/手に負えぬものに手を合わす荒れ地かな

/放棄地のそこここにある小春かな

粗土にもようやくほくほくと春の兆しが。

 

倉石智證