病気お見舞い。

/富士色々百万遍の鳥の聲

/おんびんに言葉の意味や春炬燵

/病得て花の咲くのを知りにけり

/水仙の足元飾る百姓家

/うつむいてクリスマスローズ春告げる

/山茱萸や子供はマスクして家に

/枯芝に紅梳き込むや梅の花

/海を出てひげ根は牡蠣の恋心

/風流や風呂の窓から椿かな

/庭前の松に鳩ゐる眸眸紅く

/道に出て釜無川に春の風

/帰り来て恙無しやを線香に鉦打ち鳴らし恙無しやを

/串本やペンシルロケット三度まで長沢芦雪寅の画を描く

/春は鯛尾頭付を兜だけ

/目玉焼き押しくらまんじゅういちぬけた

退院した義兄の家に見舞いにゆく。

すっかり痩せちまったね。

眼鏡の奥の眼が昏ずんで、

「生存率5割なんだって」。

すっかり気弱な風である。

生きて帰って来ると死生観や哲学も変わるんだね。

もう多くの百姓仕事は手放すことにした。

 

倉石智證

雛祭り。

/春の潮廣島の牡蠣運び来る

/雛祭り雛四十を過ぎてしけり

/雛祭り雨降る中をあたたかな

/広島の牡蠣届きけり雛祭り

/雛祭り牡蠣尽くしとはなりにけり

/牡蠣尽くし一人五個ほど食べにけり

/平和が続いてくれるといいね雛祭り

/温飩に朧昆布の溶けゆけり

/楽しみは家族全員うち集い

やいのやいのとものを喰ふとき

/楽しみは喋ること無く喋り出し

ややにぎやかに了はりなき夜の

娘が出張先の懇意にしてゐる牡蠣業者から

牡蠣を送ってもらった。

 

倉石智證

甘美な殉教の雫、至高な天国へと旅発たれた───

(イラン、追悼の言葉)

/キシキシとアイゼンの音道つれに

/テント場に燈火(ともしび)灯り冬銀河

/仙丈に氷河隠して雪真っ白

TVで雪の仙丈ケ岳を登攀する人の映像を観た。

/もんじゃ焼きつつけば昔話かな

/菠薐草(ほうれんそう)自前自慢やお酢を掛け

/マスク取り鼻水啜り眼が痒い

/ホッピーの黒だ白だとおでん煮ゆ

/貼り紙を張り巡らせて二月尽

/三ン月のやる気自慢の空滑り

/政治家は面白き人恬(てん)として愧じぬ言葉を並べ立てたり

「人間の道徳と国際法のあらゆる規範を冷笑的に踏みにじる形で

ハメネイ師が殺害されたことに心から哀悼の意を表す」(プーチン)

「徹頭徹尾、不法で非道な侵略行為であり、最も醜悪な形の主権侵害だ」(北朝鮮外務省)

「法的評価は控えさせていただきたい」(高市)

 

倉石智證