大焚火、畑芥燃やす。

就中(なかんずく)焼き芋 !

/諸々の靈(たま)火に送る天上へ火の粉となりて肩にかかりぬ

/風力1 明日は西高東低の風の予報やけふ焚火の日

/線香の煙と共にお焚き上げ四十九日の経具燃やせり

/もののみな灰燼となりて火の眸玉

  また顕われて火に濡るるかな

/火燃やせば地清めゆく畑芥

/影法師火守の人の影伸びて

/陽の翳り畑の芥の黙燃ゆる

/高梯子わたしを誘そふ天辺へその天辺の徒長枝をなむ

/枯松の枝正月の前に伐る電動ノコを右手に翳す

/脚下にて義姉も危ぶむ枝打つや

/のどけしや小春に誘ふ剪定師

義兄夫婦は屋敷の李の剪定を始めた。

/のんびりと剪定の音小春かな

/枝打ちや枝落とす人拾ふ人

/富有柿に百目の熟柿持て帰る義兄は禁酒甘党になり

/焚火して起承転結さつま芋

/芋焼けて妻はお福に走るかな

 

倉石智證

林檎の木の剪定。

/ニュートンを空に描くなり林檎かな

/枯葉積む畑の芥や一輪車

/年越しの挨拶もまた梯子かな

/富有柿の百目に移り吊るされて

/枯露柿にこう吹かずなりぬるい月

/湯湯婆の股倉に妻の寝息かな

柿は一般的に世俗的な感じがする。土蔵とかを背景に柿が生っていたりするととても秋の風情を感じる。そこへゆくと林檎はどこかニュートンであり藤村もあって詩的である。冬空に柿色も林檎も青にとても映える。田舎の景色はそれぞれを暮らしにに引き立てゝくれるのである。百目柿に次いで昨日はリンゴの収穫と剪定をした。日当たりが悪いせいもあって例年と変わらず病気がちの林檎が多い。いいものはご近所さんにもらってもらって、あんまりひどいものはジャムに仕立てる。それはそれで愉しみなものだ。収穫が了はった木に対してはあらためて感謝しかない。ぼくらは老いていって君んちはまだまだ成長が著しい。嫉妬するわけではないが抛っておくわけにもいかないから今年はかなり強剪定にしたよ。どうかそこいら辺は分かってね。どうも今年もありがとう。

 

倉石智證

 

林檎可愛いや。

柞(ははそ)はの妣(はは)のその娘は───

母を亡くした妻が、林檎の木の下に来て手伝うと云ふ。リンゴ可愛いや。柞はの妣のその娘は、心細げにもなりけむ。師走になりて霜落ちて寒くなりけむに、空ばかりが晴て、林檎を収穫せむとする。亭主は梯子に上りて時に、ぽーん、ぽーんと樹下に林檎を投げる。をもしろきかな。道を挟んで真向いのお家の若いお嫁さんに林檎を胸に抱いて行ってあげる。また小学生の子どもが通れば声を掛けて、そのお母さんにもリンゴはどうですかと、幼い子供は眼をくりくりさせてお母さんを見やる。そんなこともあってふる里は師走に、日は釣瓶と落ちゆきて、風も少しく出て来たよ、妻ヨはよお家にお入りや、寒くなって来たよ、ぼくは大丈夫梯子の人のスーパーサイヤ人、もう少し剪定を続ける。母を亡くした娘のいと心細げに林檎の木の下に来て、何か手伝うことはありしかと云ふ。柞はの妣を亡くしし妻の、とりとめも無やりんご可愛いや。

 

倉石智證