ヒロシマのデルタ。

娘は廣島にゐる。唐突に原爆ドームの前にたたずむ。それから蹌踉として原爆資料館に巡る。鬱蒼としたタイムカプセルに導かれて、跫(あしおと)が消えて刻の音が途絶えるといつしか1945,8/6のその時にゐるのだ。ピカドンは怖いね。弁当が炭になってゐる。

「廣島や玉子喰ふとき口開ける」(西東三鬼)。外表に出ると街中は春の気配が漂ってゐる。開花宣言が列島の西の方からやって来て、ゼフィロスが乙女らの翠の髪を撫でてゆく。さうだ広島焼を食べに行かう。もう電車の時間まで公園で平和でも眺めてゐよう。

 

原民喜「永遠のみどり」

ヒロシマのデルタに

若葉うづまけ

死と焔の記憶に

よき祈よ こもれ

とはのみどりを

とはのみどりを

ヒロシマのデルタに

青葉したたれ

お彼岸よもぎ餅。

里芋畝作り。

“抱きつき外交”。

/お彼岸やとやかく云はずよもぎ餅

/よもぎ餅妻お隣に門を出て

/ノラボウナ青の賑ひアルデンテ

/里芋のはや土作り三つ鍬

/長ネギに擬宝珠が出て酢味噌かな

/芝桜まずおめでとう卒業子

/春先や苦土石灰で土作り

/風吹けば光となりて花の散る足元に散るしばし手を止め

/高市ッつぁんの抱き着き外交魂消たね

阿(おもね)ることの少し下品だ

/トランプの止めさへすればそれで済む

「平和と繁栄」字義の如くに

/あの人は人殺しだよ握手する掌の血の臭い怖気を奮ふ

/聞くならく32兆円あったなら

ガザ、ウクライナ安らけくこそ

/ムスカリやコロボックルの秘密めく

/村夫子ダイナモの音花の苑

世界中の請求書をトランプに付け回さんとね。

 

倉石智證

お彼岸墓参り。

3/18はじ様の命日。

/花無くばなんの顔(かんばせ)歳古りて

/死んだ人に花を手向けに彼岸入り

/放棄地に花採りにゆく水仙花

/さみしさはその色としも花浄土

/粗土を蹴飛ばしてみて芽吹き待つ

/トリセツの苦土石灰を繰り返し

/sns娘の送りきし梅見かな

/催花雨や花待たるゝを人も待つ

/催花雨を厠で聞きし手を合わす

/催花雨を厠越しにぞ聞きにける

/彼岸まで芋室の芋ありがたや

/お線香の烟目に入む彼岸かな

/花翳の石に冷えゆく彼岸かな

/掃苔や墓石洗ふ人や無く

/野蒜にも野趣なくなりて夕餉かな

/お彼岸や古き写真を並べ見る

/よもぎ餅明日天気になあぁれ

日々は花に時々刻々と過ぎてゆく。

 

倉石智證