ヒロシマのデルタ。
娘は廣島にゐる。唐突に原爆ドームの前にたたずむ。それから蹌踉として原爆資料館に巡る。鬱蒼としたタイムカプセルに導かれて、跫(あしおと)が消えて刻の音が途絶えるといつしか1945,8/6のその時にゐるのだ。ピカドンは怖いね。弁当が炭になってゐる。
「廣島や玉子喰ふとき口開ける」(西東三鬼)。外表に出ると街中は春の気配が漂ってゐる。開花宣言が列島の西の方からやって来て、ゼフィロスが乙女らの翠の髪を撫でてゆく。さうだ広島焼を食べに行かう。もう電車の時間まで公園で平和でも眺めてゐよう。
原民喜「永遠のみどり」
ヒロシマのデルタに
若葉うづまけ
死と焔の記憶に
よき祈よ こもれ
とはのみどりを
とはのみどりを
ヒロシマのデルタに
青葉したたれ

































