薄霜。

春の影法師。

大相撲。

駅伝。

/ふる里はまだまだ続く花浄土花の下にて頭回らす

/仏の座鵯が背中を埋みゆく

/家庭ゴミ燃やして春の影法師

/水仙花今生の黄集めけり

/薄霜にジャガイモの芽あわてんぼう

/呼びかける人など無くて菫艸

/タンポポのいよいよ本領発揮かな

/ダンディライオン「タンポポ」と呼ぶ宥めつつ

/佐久長聖8位となるや伊那の風

3/22「高校伊那駅伝」

/春韮や餃子の仕込み昼間から

/眼眸痒し花粉症なら午後の風

/芍薬の正しく伸びて芽吹きかな

/春の水残してホースたゝみけり

/春場所や負けた力士の大銀杏

/濃き紅梅尾形光琳出で立ちぬ

/春スキー権兵衛峠越えゆきぬ

■今頃いつもならね藪原ゲレンデ…

今年は弱気くんが強まった。

それに言い訳がましくガソリン代もね。

こうやって一個ずつ消去していって、

本格的な老人になる。

清里ゲレンデに冬の背(そびら)を追いかけて。

青のしたたり、ペルシアンブルー。

ゲレンデは春がもうどっしりと居座ってゐる。八ケ岳から降りて来たんか。青の空、十五の心が吸はれんばかりだ。ちちちちちとカラマツの芽生えさへ刷毛翠に。5本も滑ればたちまちザクザクの春のゲレンデの様相になる。難儀だね。とっても油断ならない。たちまちスキーを雪玉に引っ掛けて大コケた。飛行機が八ケ岳を越えてゆくよ。飛行機雲に、ペルシアンブルー。春の雲はいいね。モノ思はせぶりな、それに愁いを隠しつつ。8時半開場から1時までの午前券。クワッドは30本。

帰宅後、缶ビールです。今シーズンにとりあえず感謝です。

 

倉石智證

/何気なし会話の止まる夕まぐれ医療ベッドに母娘で座り(2024,3/17)

1月にお看取りで退院して来て、それが一気に恢復して来た。

点滴も外れている。

たとへばはげしくしずかに動いていらしたのです

はげしく舌は食事を求めてはお喰いだれを

はげしく覚束ない目線を匙に投げかけたり

なによりもよく聞こえる耳は

部屋中の音を掬い取ろうと

離れているあなたの声も

あなた方の会話も追いかけようとして

でも、そこで食事を止める

 

何月何日はもう意味を持たない

大分先からもう季節は止まっているのですね

おおいにそこに今ゐないと云ふのは不思議じゃアありませんか

そこだけが鋳型のように刳り貫かれて

そこだけが冷えている

ぴちゃぴちゃと粥を啜る音も

お漏らしした体温も今は無い

 

無いと云ふことは誰に云へばいいのでせう

はげしく動悸がする

異議あり、と手を上げる

みんなは知っていることなんだけれど

死者は少しも休みたがらない

懇(ねんご)ろになってね

そしてね、生きてゐるときと同じやうにすごくやさしくなってね

風や吐息のやうになって傍に来て

そして何か困り事はないかと

ふたりしてベッドの端に腰を掛ける

 

なにしろ急ぐんですねって一顧だにせず、

四の五の云はず、アッと云ふの間に逝ってしまはれた。

(2025,3/29)

 

倉石智證