恋愛小説家 -81ページ目

箱に入った色とりどりのケーキ

そのむかし
私はいつも大人の顔色を窺い、
遠慮がちに行動する子どもでした。
 
友達の家に招かれたときに、
大きなお皿にお菓子がたくさん乗っていて
「さあどうぞ、召し上がれ」といわれても
他の誰かが手をつけなければ、待っていました。
 
黙って、私が食べたいお菓子を取られたら嫌だな・・・と
矛盾したことを考えながら。
 
でも、自ら率先して一番手になり
「いただきまーす!」と、手を伸ばす勇気がなく
ためらいがちに、モジモジと身を縮める
そんな自分自身に、気恥ずかしさを味わっていました。
 
満面の笑みで、お菓子をつかみ
「あーおいしい!」と言えたなら。
素直さも無邪気さも、子どもの特権なのに
物分りが良いと思われたくて、「遠慮する」。
 
表現が下手だったということも、もちろんあります。
でも実は、期待されてもいないのに
いい子ちゃんを演じていただけかもしれません。
  
湾曲した表現で取り繕うぐらいなら
まっすぐに、ほしい物に手を伸ばして
心からの感謝を伝えられたなら、自分も周りも幸せになれ
きっともっと、愛されたことでしょう。
 
大人になった私からのメッセージは
 
 箱に入った色とりどりのケーキを前に
 「どれがいい?」と聞かれたら
 自分の好きな物を、真っ先に選びましょう。
 

 
このところ元気がないから
気になって
昔のことを思い出してしまいました。
 
楽しいことをするために
不要な遠慮や心配など必要ないということ
教えてくれた、大切な人ですから。
 

ジンクス

恋愛小説家-0908fw
 

小さな町の観覧車

 

頂上でキスをすると別れない なんて

誰かが作ったジンクス

 

変に意識するから

 

せっかく空に届きそうなのに

おもちゃみたいな見慣れた町並みも

落ち着いて見られない

 

だんだんてっぺんに近づくと

 

正面に座る彼が

 

こちら側に移動してくるんじゃないかと

かすかに揺れるかごの中で

そわそわと身構えるのも嫌で

 

この鼓動が聞えないように

無関心なふりして

ずっとそっぽを向いていた

 

おめざ

いつもより少し早く目が覚めた、6時7分前。

携帯のアラームをオフにしようとして、あ、と思う。
熱帯夜の気だるさが抜けきらない部屋で

いきなり正気になった。
 
めずらしく、メールが来ている。

 
私が寝たのは2時だったから、
それから朝までの間にメールを送ってくる相手など

相当な夜型の人か、早起きの人だ。

 

正解は、夜型の人からだった。

 

梅雨が明ける前に会って、それ以来

ずっと音沙汰なかったのに、

こんな風に、ふらっとバーへ立ち寄るみたいに
私のことを思い出すみたいだ。

 

目が冴えてしまったから、送ってきたらしき

他愛もないメール。
 

夜明け前の暗い部屋で

液晶の明かりに目を細めつつ、何を考えていたんだろう。
淋しい気持ちは、少しぐらいましになったのかな


ずっとずっと昔に

早起きした朝、母からもらえる一粒のチョコレートが好きだった。
そんな、甘いものを口に含んだ時のような気分なのに

今日の“おめざ”は、少しほろ苦かった。

 

nude

裸のまま、

あなたは気まぐれにスケッチブックを取り出して

わたしを描いた。

 

そんな日がときどきあると

わたしは芯から幸福に満たされ、

パステルで引かれていく自分の曲線を眺めては

しずかに余韻に浸っていた。

 

黄味がかった紙の上で

平たい胸や骨ばった身体は

命を吹き込まれたように伸びやかで美しく、

すみずみまで愛おしさを纏っていた。

 

わたしの抱えていたあらゆるコンプレックスを

「全部、僕のたからものだ」とあなたはいい、

小さな特徴の一つもこぼさないように

やさしくほほえみながら
わたしを描いた。

  

裸のまま、

静かな部屋にパステルが走る音がする。

その瞬間がどれほど純粋で穏やかだったことか

  

いま ひとり思い返している。

 



退屈じゃない不毛じゃない

100回すれ違って、100回目が合っても
ただの1回も言葉を交わさない君
それでも 信じるというより感じる
退屈じゃない 不毛じゃない
 
僕だってたまには 彼女と遊ぶし
それなりに恋を楽しんでるけど
ずっと遠くで何をしていても
君が生きてさえいれば 毎日が余計に愉快だ

君からの連絡は
一言だって胸にしみて
活字からは声が聞こえて
顔まで目に浮かぶ
 
おかげで今日は少し機嫌がよくて

「何かいいことあった?」って
彼女は僕以上に嬉しそうだった
 
少し苦しい気分まで快感だなんて
どうかしてるけど
好きなんだ、君が、とても。
 

インカパープル

「たまには手料理をふるまうから。」と、

気が利く男気取りで買い物に出て行った。

帰ってきて、ゴソゴソと袋から取り出される、

エンゲル係数が高そうな食材たち。

 

使いかけがあるのに、わざわざ塊のパルメザンチーズ。

ちゃんと揃っているのに、瓶入りのハーブが3種類。

サラダにしか使えなさそうなエキストラバージンオリーブオイル。

 

これだから男の料理って。

 

冷蔵庫から目的不明の材料を出す。
とりあえず、切って火にかけている。
一体、何を作っているのかわからないけど

イタリアン・・・よね?
 
途中で気になって、キッチンに近づくと

「まあ座ってて!」と追い返される。

 

かすめ見た鍋の中には、鶏肉を焼いたものと
人参とタマネギ、インカパープルなる、紫じゃがいも。
一体、これは何というんだろう、名も無き料理。
それにしてもインカパープル。

なぜ見慣れた野菜を選ばなかったのか・・・

(まさか「響きがいい」とかいう理由で選んだんじゃ!?)

 
味付けも勘、調理時間も勘。

炒め煮にして、にんにく醤油ひと匙たらし、

白ワインを差してからコトコト。

 

少しは期待できるかと思いきや、すぐに前言撤回。

コトコトコトコト火にかけすぎて

すっかりとけて姿を消したインカパープルと、

やけに紫がかった煮物が完成。

おまけに、味が、薄すぎる・・・

「色が変な病院食みたい」といいかけて、理性で言葉を飲み込む。

 

そこからは、最初の勢いはどこへやら。

極めつけに、パスタの湯切りに失敗して

鍋をシンクにひっくり返した。

 

水ぶくれになった手首に氷をあてて

「慣れないことはするもんじゃないね」とふてくされる始末。

プライドが高い人には、何も言わないけど

肩を落とす様がなんだか無性にかわいくって、可笑しい。

 

ひりつく火傷のそばに、そっと唇を触れると

柔らかくて冷たかった。

 

懲りずにまた、手料理作ってよ。

あ、でも今度は買い物から一緒に連れてってもらいます。 

   

人生は楽しい


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「ただいま」
「おかえり」

長い長い帰路となりました。


東の空は明るい藍色で

蒸し風呂になっていた西側の部屋


寝静まっているころに

そっと雨戸を開いて風を入れると

嗅ぎなれた匂いに

「ここ」に帰ってきたことにほっとします。


いろいろあったのに、時間はたったの3日分足らず。


まだまだ知らない場所がたくさん

まだまだ知らないことがたくさん

まだまだ知らない人がたくさん


日本は楽しいし、人生は楽しい。

一生かけても知りえない宝物で

この世界は溢れているということに感謝したいと思います。


またいつものように働き

文字を綴る日々となります


番外編、おつきあいくださってありがとう。

愛知から静岡へ

出発して9時間、
やっと神奈川のふたつ隣へ


まだまだ混んでいる道で
赤いブレーキランプが

怒った王蟲の行列みたい


 

滋賀から三重へ


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出発して6時間、本州上陸と同時にヘビーな渋滞。

夜道のバイパスは運転そのものが催眠術です。 

ここはどこ?
 
予想、名古屋に22時ならば、3時に帰宅できるかなぁ。

おのれ、かに御前…
 
ドライブが趣味といってもさすがに参りますが、まあ何とかなるでしょう。

すべての道はローマに続く!
 
希望的観測では、深夜には道が流れ、明日は仕事に戻ります。

日ごろの夜更かしぶりが、こんな場面では役に立ちます。

 

夏の名残

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出発して2時間、渋滞がちな道を60キロ進んで兵庫県に突入@淡路島
 
つまり30km/hで進行中…
冗談でなく、夜が明けるかもしれませんね。
 
考えることは皆同じのようです。淡路の売店が長蛇の列で、

燃料のチョコレートが買えず仕舞い。

車よりも先に私がガス欠しそうです(笑)
 
西日でも天は高く、空の青さも棚田も秋の色をしています。