恋愛小説家 -36ページ目

1日の終わりに

眠る前に、おやすみ

目覚めたら、おはよう


いいことがあったら報告

残念なことも報告


ありがとう、とても嬉しい

ごめんね、だいじょうぶ


当たり前のことを

当たり前にできるしあわせ


1日の終わりに感謝

微笑むように目を閉じる


あなたがいてくれた今日と

あなたがいてくれる明日に


ただただ感謝


蜜柑

温室のガラスは割れたまま
何年もほったらかしにされていた

痩せた蜜柑の木は
夏になるとアゲハの幼虫がつき
葉をみんな食べてられしまうから
蜜柑はまるで実らない

ふっくらした青虫に触ると
耳たぶや求肥みたいな感触がする
私はそのぷくぷくした体をつまみたくて
よく温室に忍び込んで遊んだ

蜜柑の木を荒らすくせして
蜜柑色の角をだして
蜜柑の腐った臭いで人を威嚇する小さな青虫

何も実らない蜜柑の木は
本当に何も齎さなかったのかというと

そうでもなかったのかもしれない
蝶になったアゲハが庭を舞えば
私はしあわせだったし
それで良い気がしていた


蜜柑だってそんな自分を

まんざらでもなく思っていたはずだ

きっと

わたしをみつけて

かくれんぼが得意でした。

人が思いも寄らない場所や物陰に

自分のからだがすっぽり隠れるだけの隙間を見つけて

息を潜めて鬼がやってくるのを待ちました。

 

もういいかい

もういいよ

 

はて、もういいよと叫んでから随分待っている気がします。

いつまでたっても、誰の足音も声も聞こえません。

 

だんだん不安になってきました。

でも、この絶好の隠れ場所から飛びだして

無防備に見つけられてしまうのも格好悪いと思いました。

 

もう少し待つことにします。

 

いったいどれほど時間が過ぎたのでしょう。

あの子はいなくなっちゃったねと、

みんな、とっくに他の遊びを始めているのかもしれません。

あんまり上手に隠れるのも考え物です。

 

手足を、蚊に食われたようです。

蝉の声しか聞こえません。

私はただひとり、隠れていました。

早く見つけてほしいと願いながら。

  

恋愛小説家

 

Laughter In The Rain

雨の日も好きよ

 

どんなに寄り添って歩いても

小さな傘からはみ出して

しっとり濡れた右肩が愛しい

 

傘を忘れても平気

服が水玉模様になるし

散歩した街並みが目に浮かんだり

 

夜桜の下で雨宿りをしたこと

ひどい天気だったのに楽しかったね

シャワーみたいな雨粒が

外とふたりの世界にカーテンをかけた

 

通りすがり陽気な花見客に

お尻を触られたっけ

それなのにあなたときたら

相手を怒るよりも

びっくり顔した私を笑うんだもの

それもまた可笑しくて

 

Oo, I hear laughter in the rain
Walking hand in hand with the one I love
Oo, how I love the rainy days
And the happy way I feel inside


Laughter In The Rain 」 Neil Sedaka

等しい

子どもの頃、毎週見ていたドラえもんでは

いつも威張りんぼうのジャイアンが

「お前の物は俺の物、俺の物も俺の物」と

すばらしく自分勝手な持論を主張していましたが

 

大人になって、少し疲れた現実の世界では

いつもふざけてばかりのあの人が

「あなたのことは僕のこと。僕のことはあなたのこと。」と

いきなり真面目になって言いました。

 

いつも自分のことばかりでごめんね

私も何かの役に立てばいいのにと

言いかけた私を、たしなめるように。


それだけで、もう十分。

十分すぎて泣きたくなりました。

私たちには、それ以上もそれ以下もない

ただ等しいということが、嬉しかったのです。


 

45L

荷物をコンパクトにしたくて、MDケースを掃除しました。

MDなんてほとんど絶滅しているのでしょうが

90年代後半~00年代前半の10年間ほどの間に

本当に何枚も、ダビングしていたんですね。
 

13年以上働いたCD&MDプレイヤーは処分します。

壊れかけて高周波な電磁波まで放つようになったので。

そこで、ポータブルMDを復活させてみました。

このポータブルMDが壊れたときこそが、

すべてのMDとお別れするときです。

 

ああ、なんて時代錯誤な私。

 

半透明のゴミ袋に投げ込まれる、昔聴いた音楽。

この曲だけは好きだけど、あとのは別にそうでもなかった。

でも捨てる前にもう一度・・・なんて思ったら

復活するのもあったりして、

音楽はタイムマシンみたい。

 

ポイポイ

 

45Lに詰まった私の抜け殻たちに

勢いに乗って別れを告げようと

ヘッドフォンをしたまま外に出たら

残念、もぬけの殻のゴミ捨て場。

 

知る人ぞ知る、ここ横浜は

「分けて出すのがハマルール」だそうです。

なんのこっちゃ?

 

ちからとかゆうきとか

恋愛小説家

 

今日はちょっと嫌なことがあったし

やることなすことタイミングが悪くて

目的地にひたすら遠回りしているみたいで

気分が萎びてへなへなと座り込んでしまった

 

だけど君のことを思い出したら

どういう訳か「大丈夫」と思えた

全部まとめて振り返ったとき

今日の嫌なことだって

どうでもいいことに思える日がきっとくる

 

人を惰性に陥らせるような

胸を焼くつかえまで

すっと洗い流す清涼剤

やり過ごせる力と勇気

教えてくれてありがとう

 

君がいてくれてよかった

他の人じゃだめなんだ

 

随想 100729

飛ぶように過ぎて行った7月の夕焼け。

 

恋愛小説家

 

お祭りのかき氷のように舌が赤くなる「練乳いちご」を

夜中にシャクシャク鳴らして食べました。


時の流れは早いもので

去年の「時間をはずした日(7月25日)」から季節は一巡り。

振り返ると、日々は笑いあり涙ありの繰り返し。


たとえば、夕方の空のグラデーションを眺めつつ

「今日もいい日だった」と太陽を見送り、

夜には冷やし中華の錦糸卵が上手に焼けて(←ささやかな特技)

「いただきます!」と意気揚々に一口食べたら、

酸味の効いたスープで特大の口内炎が焼けるほど痛み

眉間にシワを寄せながら食べることになったとしても。

 

でも、いい日だった。そう思えることが嬉しいです。

 

繰り返す口内炎については

「すでに持病じゃない?」と言われることもありますが、

確かにそうかもしれませんね。

一つ治ると、別の場所があやしくなってきて

一年の半分ぐらいは何かしら出来てます。イテテ・・・。

(それにしても今回のは大きい。)


この時期、庭先のガラクタに朝日が当たって

気持ちよい日向を作っています。

 

6時前、めずらしく早起きして窓を開けようとしたら

ガラクタの上に子猫が気持ち良さそうに寝そべっていました。

音を立てたら逃げてしまうから、開けられません。

きっとしあわせな夢でも見ているのでしょう。

9時ごろにはジリジリに暑くなる、南向きの窓です。

 

朗報、悲報、他愛もないことや

はたまたこんな風に、何の役に立たない話題など。

大小かかわらず何かニュースがあるときに

一番最初に伝えたいひとは誰ですか?


クラブオデット

恋愛小説家

 

「クラブオデット」と書かれた、年季の入ったマッチ箱。

これは、元はといえば私の大叔母さんが持っていたものです。

少し火薬くさい小箱の中には、黄ばんだティッシュのカタマリが2つ。

ティッシュをそっと開くと、青い石のついたネックレスが入っています。


私から見て、大叔母さんというのは

祖父母の姉妹(母の叔母さん)ということになりますが
法事かなにかで会ったとき、大叔母さんが私の母にくれたものを
ずいぶん前に私が譲り受け、今もこうして手元にあるのです。

 
「たぶん、叔母さんのだから、良い物じゃないかな」と、

母は言っていましたが、はたして。

 

恋愛小説家

 

旧いデザインの、宝飾品。

これがガラスなのかプラスチックなのか、それとも本物の宝石なのか

私にとって、そんなことはどうでも良いのです。 

 

大切にしたいのは物質の真偽ではなく、

大叔母さんがこれを母によこした気持ちや、

それを私が受け取ったというつながりです。

 

一見すればただの不用品かもしれない、

「クラブオデットのマッチ箱と、ティッシュに包まれたネックレス」。

だからこそ素敵な価値があると思うのです。

たとえこれがニセモノだとしても、私の中ではホンモノなのです。
 

クラブオデットの所在地は熱海。

寂れかけた熱海の歓楽街に、

オデットのネオンはまだ光っているでしょうか?

かつては大叔母さんも訪れたのでしょうか?

いつか旅をしてみたら、探してみたいと思います。

 

月光浴

昨夜のこと。


昼に洗った洗濯物を、夜になって干しました。

そのまま2階の窓辺で体育座り。

ひざを抱えて正面に昇った満月を見ていました。

大事なひとがくれた

きれいな石を月にかざして

目には見えない、光の粒々を浴びました。

こんな時間が好きだなぁと思いながら。

 

背中を丸めた私の

頭上30センチほどにぶら下がっているのは、

昨日着ていた白いTシャツ。


私は流行に疎く、服装もかなり適当で

ファッション誌を買ったことはただの一度もありませんが

(500円あればチョコレートを5枚買っていましたね)

そのシャツの、適度に身体にフィットする感触が好きです。


しっくりくるやわらかさ。

華美じゃなくても、ここちよい。

何事もそれが一番いい。

 

子どものころに、縁側でお月見をしたのです。

これからの人生において、幾度窓が変わったとしても、

月がきれいな夜には同じようにひざを抱えて

夜空を眺めていたいと思ったのでした。