随想 110119
先日のこと。
午前中に、後ろ髪引かれるようにお別れしたひとと
数時間後に、違う場所でバッタリ再会するということがありました。
ぶらぶら道を歩いていたら前方より見慣れた人物が。
「えっ、何やってるんですか!?」と、通りすがりの偶然(必然?)に感謝。
面白いなぁ、まったく。
恒例の仲間内でスキーに行く話が持ち上がり
(当然、私は滑り(れ)ません、温泉部隊であります)
車の手配を任されたのですが、昨今のレンタカー事情もさまざまで。
ネットで調べていたら数時間などあっという間。
出来るだけお得かつ快適に行けたらいいので頑張ります。
さらに、調べるとお得な週末プランなどを発見したりして
別件でもおでかけしたいと思っていた矢先に、渡りに船。
たまには男前に運転でもしないと腕が鈍ります。
春に向けて、仕事を含めあれこれシフト。
帰宅すると、届いていたメールに気になる案件がありました。
すでに20時を回っていましたし、遅いかなぁと思ったのですが
善は急げとばかりにダメ元で電話をしてみることに。
すると、ありがたいことに担当の方とつながり、少し具体的な話を聞けました。
この話がダメでも、初めから「ダメ元」と思っていたのですからいいのです。
でも、心に収穫があった気がして、少し機嫌がよくなりました。
思うに、私は何かにつけて気をまわし、譲りがちな性格をしています。
これが美徳のように良く働くときもありますが、反面裏目に出るときもある。
しかし、もう少し主張というものをしてもいいのかな?と思った次第です。
たとえば今回にしても、遅い時間に電話を掛けることに
「失礼だろうか、迷惑だろうか」という発想が先だちためらいました。
しかし「いますぐ話したい」というエゴを通したために、
運よく担当の人と直接話せた上、ついでにあれこれ相談したりして
もしかしたら、その話を進めていただけるかもしれないという
ささやかな期待も、感じることができたのですから・・・
結果オーライ。
自己アピール、バランス感覚、思いやり、視野は広くあれ。
遅ればせながら、2011年のテーマにいたします。
泣きたい気持ち
屋根と壁のある冷暖房完備の部屋に住み
名こそなくても気に入った物質に囲まれ
質素でも好きなときに食べたいものを食べ
ときどき発作的にコーヒーやチョコレートに目がくらみ
活字に飢えることもなく仕事もあり音楽もあり
眠くなればふとんに丸くなる
未来に不安を感じないことはない
けれどもこれが身の丈にあった満たされている日々
あなたがいなければいないまま
淡々とささやかにルーチンを繰り返していく自分が見える
小さな喜びを見出せば笑顔にもなれるはず
<しかしどこか味気ないような気がする>
屋根と壁のある冷暖房完備の部屋に
どんな写真を飾ろうかと相談したり
家具の色で悩んだら電話をかけたい
食事のメニューで真剣に頭を使ったり
次のコーヒー豆はどれにするか相談したい
新発売のチョコレートの品評会もしたいし
夜中に乾杯もしたい
いい本や音楽を分けあい
相手の温度を感じながら眠りたい
大切なことって、どんなことかと思うとき
泣きたい気持ちになった
泣きたいぐらい損ないたくないものが
あっちこっちに目について涙目になってしまう
私が何かの役にたてたら嬉しいと思っているのに
先にあなたが手助けをしてくれる
なんてしあわせなことだろうと思った
未来に不安を感じないことはないけど
未来に希望が見えなくなったこともない
相方
壁の向こうで彼の声
「相方が・・・」と誰かと話しているけど
それって私のこと?
あいかた
あいかた
繰り返してみると
お笑い芸人みたいだと思った
あいかた
あいかた
嬉しいようなくすぐったい響きに
コンビ愛みたいだと思った
お笑い芸人の中から一人だけ売れて
ピンになるのはよくある話だけど
私たちは一緒に
売れっ子になりたいもんだわ
ね、あいかた。
それぞれの人生
まどかは高校の同級生だった。
4つ離れた駅に住んでいて、通学中に一緒になれば挨拶ぐらいはする。
ハンドボール部の先輩に憧れ、しばらく付き合って失恋したのち、
いつの間にか、私と同じ中学出身のイシイとくっついていた。
そんな、友達と知り合いの中間ぐらいだったまどかとは、
一年生の時に同じクラスになって一時つるんで遊んでいたものの
徐々に疎遠になり、そのまま卒業してしまった。
私の憶えているイシイはなかなかお調子者で
中学の謝恩会で自作曲「メロンパン」を熱唱した。
濃すぎるグラサンとジーパン(あえてサングラス、ジーンズといわない)に
制服のワイシャツの襟を立てスタジャンに身を包んだイシイは
フォークギターを抱いて壇上に上がった。
その見た目からしてすでに面白かったのに、
CとG7をかき鳴らし「メ~ロンパン~」と繰り返した。
サビしかなかった。
それ以来イシイはメロンパンのひととして同級生に認知され
愉快なやつというポジションを不動の物にしたのである。
イシイとまどかは、開けっ広げに爽やかな恋をしており
二人のやることなすことは全部セットだったものだから
教師ですら知らない者はいないというほど知れたカップルになっていた。
双子のように同じ顔をして、いつでも仲睦まじく寄り添っているのだ。
高校を卒業して2年目の夏、バイト先のコンビニの前を掃いていたら
自転車に乗ったまどかとバッタリ出くわした。
久しぶり、どうしてこんなところに?と訊くより先に
彼女がまたがる真新しいママチャリに視線を落としてハッとした。
前輪の泥除けに貼られたシールには
見覚えのある丸っこい字で「石井」と書かれており
私はまどかがイシイ家に嫁いだことを知った。
イシイの実家はこの界隈で商店を営んでいたはずだった。
4ヵ月なの。と、まどかはお腹を撫でて、自分の早すぎる結婚を照れた。
本当に、早すぎるよと思ったけれど
いつも仲良かったイシイとまどかならば
若気の至りのまま、いつまでも添遂るんじゃないかとも思った。
自転車、気を付けてよ!なんておかしな激励をして別れたあとで
バーコードを読みつつ、上の空になっていった。
私はまどかに圧倒されてしまったのだ。
いきいきと、内側から滲み出るしあわせに満ちた微笑み。
イシイとまどかは、苦労するかもしれないし、するだろう。
けれども学生になっても大した目的もなく、ありきたりな恋をして
小さなことで浮き沈みし、親元にいてバイトに明け暮れる
充実しているとも思えない私には、彼女がひたすらまぶしかった。
あれからおよそ15年が経ち、私は不思議な夢を見た。
2歳ぐらいの男の子が、とてとて道を横切ってきて
追いかけてきたお母さんを見て、私は我が目を疑った。
「まどか?」
高校生の頃と変わらないまどかが、
イシイの自転車に乗っていた日と同じ姿でそこにいた。
ばったり出会った男の子は、10人兄弟の末っ子だという。
本当に、子だくさんすぎるよと思ったけれど
いつも仲良かったイシイとまどかが
若気の至りのまま、安泰に添遂げていることが嬉しかった。
目覚めても、本当にそうなんじゃないかと
真顔で思える自分が可笑しかった。
宵の明星、明けの明星
カーテンから漏れる室内の明かり。
誰かが待っている温もり。
皮つきのままかじるリンゴ。
ありあわせの材料で作る晩御飯。
お茶がいろいろおうちドリンクバー。
カーディガンに染み込んだ大好きな匂い。
夜中に乾杯ポテトチップ食べ比べ大会。
枕に沈む頭、目を閉じる瞬間。
宵の明星、明けの明星。
見えない時間があったって
昼も夜も一緒にいるよって、思い。
背中に回した腕をどんなにきつくしめても足りない。
ふいに鼻がツーンとしてフニャーンと泣く弱虫。
ああ、なんて素晴らしい日常。
当たり前すぎる点々がきらめいている。
★
どうにも気分が乗らなくて
一つのことに時間がかかって
分断された睡眠を繰り返しながら
いつしか朝が来てしまうことがあります。
けれどもたまには
こんな日があってもいいと思っています。
その二文字を
そのままだったり、ちゃん付けだったり
ニックネームだったり、暗号めいていたり
漢字だったりひらがなだったりカタカナだったり。
私を呼ぶ、あなたの声が好きです。
私を書く、あなたの字が好きです。
私の名が散らされた、あなたのメールが好きです。
そういえば私には、なかなか素敵な名前がついています。
父や母が、何かを願いつけてくれた、たからものだと思っています。
その二文字を呼んでもらえることが
どんなに素晴らしいことか、あなたは分かってくれるのですね。
そして、あなたにも、立派な名前がついていて
私はその名を口にするたびに、胸いっぱいになります。
同じ音の名前を持っている人もたくさんいるけれど
私があなたを呼ぶときは他の誰でもなく、たった一人を呼んでいます。
傍にいられるというのは、ただそれだけで幸福なことです。
私の名を、何度でも呼んでください。
そしてあなたの名を、何度でも呼ばせてください。
大切にしてくれて、うれしくて仕方ないから
ありがとうと、何度でも言わせてください。



