泣きたい気持ち | 恋愛小説家

泣きたい気持ち

屋根と壁のある冷暖房完備の部屋に住み

名こそなくても気に入った物質に囲まれ

質素でも好きなときに食べたいものを食べ

ときどき発作的にコーヒーやチョコレートに目がくらみ

活字に飢えることもなく仕事もあり音楽もあり

眠くなればふとんに丸くなる

未来に不安を感じないことはない

けれどもこれが身の丈にあった満たされている日々


あなたがいなければいないまま

淡々とささやかにルーチンを繰り返していく自分が見える

小さな喜びを見出せば笑顔にもなれるはず

<しかしどこか味気ないような気がする>


屋根と壁のある冷暖房完備の部屋に

どんな写真を飾ろうかと相談したり

家具の色で悩んだら電話をかけたい

食事のメニューで真剣に頭を使ったり

次のコーヒー豆はどれにするか相談したい

新発売のチョコレートの品評会もしたいし

夜中に乾杯もしたい

いい本や音楽を分けあい

相手の温度を感じながら眠りたい


大切なことって、どんなことかと思うとき

泣きたい気持ちになった

泣きたいぐらい損ないたくないものが

あっちこっちに目について涙目になってしまう

私が何かの役にたてたら嬉しいと思っているのに

先にあなたが手助けをしてくれる

なんてしあわせなことだろうと思った


未来に不安を感じないことはないけど

未来に希望が見えなくなったこともない