めぐりめぐる
冬限定のチョコレートが棚から消えて
季節が変わったことを知り、
「あのチョコが無くなったよ」と
報告しあった一つ前の冬を思い出しました。
願わくば次の冬もあのチョコレートが売られ
来年の今頃、同じ会話ができますように。
かみさまいぬ
牛なのか、羊なのか、何者なのかわかりません。
何だと思う?と、訊ねたら
神様の犬じゃないかなと、あの子が言いました。
それ以来、「かみさまいぬ」と呼ばれるこのお方は
私の部屋で平和と秩序を護りつつ
いつもそこにいて
角度によっては笑っているように見えるのです。
かみさまいぬには
かつて他の名があったのでしょうか。
知りたかったけど、もう分かりません。
だけど、私のところに来る運命だった。
だからちょっと長い6文字の名のままで
大切にすることにしました。
そして、下北沢で新しくうちの子になったみなさんも。
これらのモノたちは、ただの物ではなくて
新品でもお古でも、みんなそれぞれに旅をしてきたはず。
縁あって私の目とまり、手に取られ
陶器の重さで今にもやぶれそうな袋に入れられて
横浜くんだりまでやってきました。
これからも、どうぞよろしく。
マーガレットさん
台詞が二つしかないマーガレットさんでした。
たったそれだけでも口を開く間合いに
練習のたび冷や汗をかいていましたが
本番前に母が作ってくれた紙のお面は
どのマーガレットさんより、
他のどの花たちより、素敵でした。
わあ、いいなあ、
お母さん絵が上手くて!
その賛辞が何よりうれしくて
緊張しいでも誇らしく胸を張れた。
マーガレットさんの群の中にいる私を見るためだけに
仕事を抜けて来てくれた母に
今さらお礼を言いたくて仕方ありません。
燦々sunday
畳の上で日光浴する仲間たち。
今日も光合成に精を出しています。
ガラスの向こうは北風でも春っていいね。
新芽も出たよ。
昨夜は新月だったのですね。
遅ればせながら、願いを書いてみました。
願いというよりも、自分のための覚書のようなものです。
新月の日に植えた種は良く育つんだと、
木々や土を愛でる職人が教えてくれたのはいつのこと。
みんなで暗がりの原っぱにドングリを投げました。
何年も先の森を想像するのは
とても夢があって、楽しいことでした。
あのドングリはもう、芽吹いているでしょうか。
出かけないと勿体ない天気。
散歩でもして、ビタミンKを光合成。
(あ、それはビタミンDでしたね、失礼。)
間に合うかな、下北沢に行ってみよう。
笑っちゃうほどあっけない
親不知が虫歯になっているのを、ほったらかしのまま
歯医者に注意され続けて数年が経った。
よりによって下の2本は完全に横たわり、ほとんど歯茎に埋もれているから
これを取り除こうとすれば、かなり大工事になるのは目に見えている。
痛いし、怖いし、腫れるのやだし。
不要なもので、しかも悪くなりかけているなら
さっさと抜いた方がいいのは分かっていても
大人げなくはぐらかし、目を逸らしやりすごしてきた。
終わってしまえば笑っちゃうほどあっけないのも分かっているのに
臆病さは、ぐらぐらした乳歯を舌先で触れていた子どもの頃と変わらない。
口に広がる鉄の嫌な味を舐めていた時代と、何も変わらないのだ。
別れは、本当にいきなりやってきて
私のどの発言や行動が、相手を怒らせたのかさっぱり分からず
有無を言わさず急に消えるというものだから、さすがに堪えた。
最後の電話を切ったあと、もう会わないという現実に
一応、涙もぼたぼた零れ落ちた。
でも泣き顔と裏腹に、内心、心の奥底のどこかでは
もうこれから先、あの人に煩わされることもないんだとホッとしていた。
怖いぐらい冷たい部分を持っているのは何も男だけじゃない。
厄介な親不知だって、腐れ縁の恋人だって
痛みとともに抜き去ってしまえば
薄情なぐらい、跡形もなく思い出さなくなるのと同じことだ。
終わってしまえばあっけない。
うつつを抜かしていた自分に肩をすくめて、
やれやれと、笑っちゃうほど、あっけない。
Not so long ago
そういえば、いつかの今日は雨降りでした。
3月に入ってもまだ寒さは緩まず、一日中すっきりしない天気で
夕方になっても、夜になってもまだ、雨が降っていました。
人だらけの交差点や狭い路地を
ぶつからないように身を寄せて2人で歩きました。
雨脚が強まっても、小さな傘しか持っていなくて
それなのにあなたは、半分以上こちらに傾けて差すから
はみ出した肩がびしょ濡れになっていました。
大丈夫、大丈夫って言いながら。
たまに時計を見つつ食事を済ませて駅に戻り
コインロッカーに詰め込まれていたザックを取り出したら
急に、別れの気配が押し寄せてきて
何だか泣き出しそうな気持ちで、また歩きました。
そんなに長いこと、会えなくなる訳じゃないと分かっているのに。
脚の伸ばせない狭い湯船に膝を折って浸かり
どんなことを話しあったか、もう思い出せないけれど
誰よりも傍にいて、愛おしさでいっぱいなのにどこか儚く
切なさと嬉しさとが入り混じり、息苦しいほど恋していました。
いつ頃戻ってくるのか、曖昧なまま旅立ってしまっても
「いってきます」と「いってらっしゃい」を一つの合図に、
「ただいま」と「おかえり」を交換しあうまで、待っているつもりでした。
光と影が、夜と朝が、必ず繋がっているように。
ずいぶんと昔のことのように感じるのに
まだ、指折り数えられるぐらいしか経っていないなんて
信じられないほど、あなたとは色んなことがありすぎました。
うちへ帰ろう
反対には雨が降り出しそうな暗い色が挿している。
「蠍座のラッキーアイテムは折りたたみ傘だって!」
今朝、テレビの前で彼女が言っていた。
鞄に入ってるけど、帰るまでに役に立つか、微妙な天気。
俯きがちに歩く僕を追い越して行った二人乗りの自転車は
母親が後ろの子どもに、背中越しに話し掛けていて
どこか懐かしい光景に見えた。
「日が長くなったねぇ。」
ああ、母さん、元気かな。
さっきより濃い灰色に変わった空を見上げ、唐突に思い出したのは
いつか好きだった人の後ろ姿だった。
灰色のリュックサックに、角の折れた教科書を詰め込み
跳ねるように僕の前を歩いていたっけ。
なで肩からずり落ちる紐を直すのは僕の役目だった。
時々振り返り、いたずらっぽく笑う顔が素敵で。
しばらく立ち止まり、暮れる空を眺めていた。
しあわせだと思う日々に、舞い戻る記憶はどこか切ない。
今日は鍋にするから、白菜を買ってきてと、
彼女からのメールに、ふふ、と笑った。
さあ、うちに帰ろう。
1割程度の
他人のことは大事になさいと
教えられてきたから
決めるときは9割方自分びいき
有名店の名物がおいしいかどうかも
しましまの靴下が浮いているかどうかも
型落ちの化石みたいな携帯をいつやめるかも
あのひとがいい人かどうかも
私にとって上等かどうかは自分で決める
だけど1割程度の有り難い助言を
あなたから少しばかり、期待している
その1割が頑な思い込みを打ち負かし
色のついた眼鏡を外したりする
痛快などんでん返しを実は、期待している
おさがり
Macユーザーの方から、iPodを譲り受けました。
私のPCはWindowsなので
使いだすには、フォーマットしなければなりません。
・・・中に残っている、相手の世界を消すのは忍びない。
誰かに何かを贈ることは好きなのに
誰かから、何かを貰うことには慣れません。
とてもありがたいことで、恐縮で。
特に、この赤いやつ。
愛用されていたであろう、あちこち連れて行かれていたであろう、
手中におさまっていたであろう、名シーンに聴かれていたであろう、
いろんな背景もひっくるめての、おさがり。
新品で何かを買うよりも、贈られるよりも
ずっとずっとずっと、嬉しい。
大切にしよう、壊れても捨てないぞ。
そういう気持ちになりました。
だからしばらくは、中の音楽をお供にします。
ありがとうございます。




