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【国家認定試験】 放屁士 問題の傾向と対策 <3級編>

お作法内で少し触れましたが、このサイトを、国家試験の放屁士資格を取得するために欠かさずチェックしてくださっている読者様がいらっしゃるようなので、昨年までの試験についてその概要をまとめ、本年度試験の傾向と対策について考えてみたいと思います。


まず、この資格が一体どのようなものなのか、ご存じない方のために簡単に説明しておきましょう。


■放屁士3級
 この資格は大変に取得が簡単で、「人前で堂々と放屁が可能」であればまず合格できます。
 放屁に関する常識レベルの知識と、「放屁のつもりが排便をしてしまう」というようなケアレスミスをしなければ大丈夫で
す。
 ですので、あくまで自己放屁の管理責任までしか負えない資格となっています。
 また、4年生大学の放屁系学科を卒業するだけでもこの3級は授与されることになっています。



■放屁士2級
 知識・実技ともに一定以上のレベルが要求されます。
 放屁の作法や技術を他者に教授することができます。
 放屁ショップでのアドバイザーや、放屁クリニックのアシスタント業務が可能です。


 
■放屁士1級
 放屁事務所を開設できる、プロの放屁士です。
 大学や専門学校での講師資格を兼ねます。
 流儀や作法などの全知識を持ち、法や国家の制限を受けずに自由自在に放屁することができます。
 放屁会話を許される唯一の資格です。
 放屁関連で大きな事件や裁判などがあった際に、法廷に参考証人として呼ばれたり、TVの報道番組にコメンテーターとして招かれる場合もあります。



さて、放屁士受験講座の第一回は、すべての基礎屁力を試される3級からです。

非常に基礎的ではありますが、すべての放屁技術に通ずる基本中の基本となる要綱であり、特に放屁で身を立てようと考えていない一般の方にもぜひとも取得しておいていただきたい資格ともいえます。



では、昨年の出題からピックアップしながら、今年の3級対策を練っていきましょう。



【筆記 3級(午前)】


昨年は3級でもかなり応用的な内容を問われるものが多く出題されました。年々受験生のレベルが向上しており、簡単に取得できてしまうと本部も考えたようです。



問1 次の言葉の読み方を記し、それぞれの意味を簡単に説明しなさい。(各10点)

  a.屁膜  b.屁汁  c.泡屁  d.包屁  e.頻屁



(正解)
 a.ひまく  流動便時に優しく放屁することで、臀部の谷間に一瞬形作られるシャボン玉のような球体の外側部分。
 b.へじる  流動便時に力強く放屁した結果、霧状に流動便が飛散することがあり、その飛び散った液便のこと。
 c.ほうひ  流動便時に、通常排便だと予測して排出したが、大半が放屁で、その激しい噴出によって液便が泡状になること。
 d.ほうひ  屁に包まれるさま。
 e.ひんひ  基準を超える単位時間当たりの放屁が発生すること。


<解説>
 今回はなぜか流動便に関わる出題が多かったようです。屁単体での知識よりも、複合的な知識を求められているのです。
 bは「ひじゅう」という誤答が多く見受けられました。cとdも同じ読みですので、ひっかかりやすいといえるでしょう。
 用語問題では、以前ぼんぼん丸氏が記事にしてくださったような四文字熟語も多数出題されますので、確実に押さえておく必要があります。



問3 次の文を読み、正しいものには○、間違っているものには×を書きなさい。(各10点)

 1)屁・大便・小便に優劣をつけるとすると、やはり大便に軍配が上がる。

 2)妻が夫の帰宅を多量の放屁とともに迎えた。

 3)昨日一日の放屁の回数、質、香りをすべて記憶しているのは正常なことだ。

 4)なるべく、入浴前に放屁を済ませておき、浴槽内では放屁しないことがエチケットである。

 5)とても香りが強い屁が出そうだったので、握りっ屁にして友人に振舞った。


(正解)
 1)×  2)×  3)○  4)×  5)×



<解説>
 正誤問題は運転免許の筆記試験と同じで、「なるべく」や「したほうがよい」などの設問はほぼ×と見ていいでしょう。
 この中で要注意は、とりわけ2)と5)ですね。2)はなぜ間違いなのかと納得が行かない受験者も多かったようですが、すぐに移動する玄関先でいくら多量に放屁しても、香りがそこに残ってしまいますし、玄関の扉も開放されていますから、あまり意味が無いというのが×の理由です。リビングで上着を受け取りながら、であれば○だったということですね。5)も、友人に振舞うことはなんら問題がありませんが、わざわざ手で握っているというところに邪道さがありますから、当然×となります。
 引っ掛け問題が多数出題される傾向がありますから、問題文をよく読み、落ち着いて回答しましょう。


問4 それぞれの状況下での、もっとも正式作法に近い放屁方法を簡単に説明しなさい。(各20点)

 1)満員電車内  
 2)起床時
 3)友人の結婚式場
 4)(会社・学校での)朝礼時



(正解の一例)
 1)なるべくドアが開かない側へ少しずつ移動し、バッグなどは可能な限り肩から提げ、両手でつり革をつかむなどしてバンザイに近い姿勢になる(痴漢行為やテロではないという意思表明)。発車してすぐに、大いに放屁し、目が合った相手と次の駅まで見つめ合うようにする。

 2)過去記事参照

 3)あくまで主役は新郎新婦なので、放屁で故意に目立つことは許されない。お色直しや歓談時を狙い、厳かに自席で執り行うことが望ましいが、同じテーブルの同僚や友人よりも、悲しみに暮れる新婦のご両親に振舞うのも粋である。

 4)尻スピーチとして、全員の前であきれるほど多量な放屁を見舞う。



<解説>
 毎年出題される作法問題ですね。いくつかの流派がありますが、ほぼ共通した流儀に関する問題しか出ないことも特徴のひとつといえるでしょう。また、正解が複数存在するのも非常に特徴的です。3級の問題ということで、どれも非常に基礎的かつ簡単なものですので、特に説明は要らないでしょう。



【実技 3級(午後)】


さて、午後からは通常実技試験となります。
前夜からの食事、飲み物などが勝負の分かれ目になる場合もありますので、試験日にあわせて戦略的な食事を組み立てることも必要です。



実技1 音・香りの出し分け
 
 制限時間内に、試験官が要求した音や香りを持つ放屁を行う試験です。
 判定は、屁音審(ひねしん)と屁香審(へこうしん)と呼ばれる審判が立ち会います。


 昨年の出題は、


  1)無音放屁/硫黄系
  2)水気の多い濁流音/ゆでたまご系


の2点のどちらかを出せば合格でした。
 これは3級を受けようと志す貴兄にはなんらハードルにはならない試験ですので、割愛します。



実技2 屁歌唱


 この実技で不合格となる受験者が多いと言われている、難関です。
 試験官が要求した歌を、放屁に音階をつけて歌います。
 3級ではまだ単音のみで合格となりますので、それほど難しくはないのですが、緊張のあまり力みすぎたり、実技1で放屁しすぎたりしてしまい、狙った音階が出ずに歌が成立せず、失敗してしまうようです。受験者の5%前後が、音階の調整に集中するあまり、暴力的に多量の脱糞をしてしまい、その場で不合格となっているというデータもあります。
 実技1で放屁しすぎず、緊張が激しいと感じたときは少し休憩する余裕を持ちましょう。

 ちなみに昨年の出題は、「翼をください」でした。




3級に関する解説は以上となります。
2級、1級と比較して非常に簡単になっておりますので、みなさんも腕試しで受験されてみてはいかがでしょうか。

では、3級以外の対策については次回以降となります。
どうぞお楽しみに。


(筆 褐色の危肛子)

怪異談 御屁芳一(おならほういち) 終章

怪異談 御屁芳一(おならほういち)


終章 芳一怨霊に迫られる…そして怒濤の結末


 その日は朝から寺中てんやわんやの大騒ぎとなりました。寺中と言っても二人きりですが。芳一を布団の中に寝かせつけたまでは良かったのですが、今後の対策を練るのが精一杯。ぽん海は仕方ないとして、何しろ肝心の老和尚までもすっかり狼狽してしまい、いつもの高僧らしき落ち着き、貫禄はどこへやらという具合です。


 二人共に寺の中を無意味に歩き回って、


「拙僧としたことが迂闊じゃったぁ」「ほんと、まさかこんなことになりますとはね」「あのときはどうしたのじゃったかのう」「どうしましょう」



のやりとりを繰り返すばかりです。やがてともかく医者を呼んでくるのが一番だということになり、ぽん海が麓の町まで走って、「怨霊騒ぎに巻き込まれたくない」と嫌がる医者を、何とか連れて戻ったのが夕刻近くでした。その頃にはやっと和尚も落ち着きを取り戻し、老躯にむち打って対決に挑もうとしております


「今度こそあのような失敗をしてはならぬのじゃて。それこそ当寺院の恥となるからのう。えーっと、魔除けのお経は何じゃったかいのう…あ、これじゃこれじゃ」


古い書庫から魔除けの教典を引っ張り出し、読経の復習に余年のない老和尚です。


 医者が、漢方を処方して何やらかにやら手当をしますと、芳一は何とか意識を回復しました。医者が和尚に心配顔で言います。


「やるだけのことはやりました。この御仁は急性栄養失調ですな。何より静養が肝心かと…」

「しかしじゃのう、今夜この法師には最大の危機が訪れますのじゃ。今夜だけは何とか乗り切って貰わねばならぬのじゃて。体力が持てばよいが…」


「それではこれとこれとこれを調合しますから、お粥にして食べさせることです」


ぽん海が医者の出した薬草を言われたとおり粥にして芳一に少しずつ食べさせますと、やや元気を取り戻し、少し声も出るようになった芳一です。


「どうもありがとうございます…おかげさまで少し元気になってきました。でも、肝心のおならが…いつものように出てこないのが…心配なんです


喝ぁつ!この期に及んで、そんなことを心配するとは!屁どころではござらぬぞ。怨霊がそなたの命を今夜奪いに来るのじゃて!」


 そうだった、もう潮時だから、今夜は和尚の助けを借りて怨霊の招きを拒絶することに決めたのだった。もう平曲は当分控えるのだから、おならが出なくてもいいのだ。そう気を取り直す芳一ですが、少しずつ元気になるにつれて、腹がぶっぶっと張り始めて造屁作用が復活し始めたのが感じられます。どうもいつもと感じが違うのです。『おっかしいな~。何かつかえているみたいだな~』


そんな不安をよそに老体に鞭打つて緊張している和尚の声が聞こえます。


「ささ、芳一殿、丸裸になられよ。今から魔除けの準備をせねばならぬて」


和尚の言うとおり丸裸になる芳一です。以前の丸々とした小太りの体型が見る影もなく失せ、やせ細った身体が三人の前に現れます。


「さ、芳一殿、下帯も取ってくだされ」


下帯とは、昔の褌(ふんどし)型のパンツのことです。



ええ~っ!やだなー、恥ずかしいなあ…」


喝!冗談を言っておる時ではごじゃらぬぞ!ぽん海、例の下帯をお渡しするのじゃ」


「うぁーっ、くっさぁ~!きっつ~!」

芳一に近づいたぽん海が悲鳴を上げます。


「す…すみません。何しろこの5日間、狂った如く汗まみれになって演奏にうちこんでしまい、水浴びする暇もなかったんですよ…」

ほろほろと涙を落とす芳一です。


「いいんです、いいんです。怨霊に招かれるほどの至玉の技というものは、色々な犠牲を伴うものなんですね、キャハ」


そう慰めるとぽん海は顔をしかめつつも、芳一の身体中の汗を拭き、新しい真っ白な下帯を渡します。


「お、これは?」


「それは魔除け用の特別下帯でございましてな、経文がしっかり書けるように有り難い和紙で出来ておりますぞ。芳一殿のお師匠も履かれたのじゃて。履き心地は今ひとつでごじゃろうが、魔除け用であるじゃによって我慢なさるのじゃ」


「魔除け」という言葉を聞いて医者は身体を震わせながら言います。


「もう辺りは暗くなってきました。私も今から一人で山道を帰るわけにも行きません。どなたか送っていただければ幸いなんですが…」


そんな泣き言を口にする医者を和尚が叱りつけます。さすが高僧、いざという段になると頼もしい気力を示す力があるのでした。

喝ぁつ!何を仰る!どなたかと仰っても、当寺院には拙僧とぽん海しかおらぬ。拙僧もぽん海も、今から怨霊との対決に備えなければならぬのじゃ!怖かったら奥の座敷に引っ込んで布団でもかぶっておられよ!」


とんだ巻き添えをくって自分の運命を呪いたくなる医者ですが、老僧の気迫に圧倒され、半べそをかいたような表情になって、魔除けの作業を見守ります。

芳一、和尚、ぽん海

 ぽん海が硯を持ち、和尚は筆を手にして、特製下帯一枚の丸裸になった芳一の身体じゅうに、魔除けの経文を書き始めます。下帯の微妙な箇所に筆が来ますと、芳一の元々元気な身体のせいでしょうか、それとも有り難い経文のお陰でしょうか、芳一は迫り来る恐怖を忘れて


あへっ、和尚様、そこはくすぐったいっす

などとつい軽口が出るほどに回復してきました。

くわぁ~つ!そなたも黙って、このお経を心の中で一心に唱えるのじゃ!」


自分の置かれている状況の恐ろしさを思い出し、一番大事なことを言い忘れていたことに気づく芳一です。


「耳です!耳にも必ずご…ご注意をお願いしますう!」


和尚のうっかりで、耳を引き抜かれた師匠のようになってはたまりませんから、芳一も必死でした。


「分かっておる!分かっておるぞよ!」

 ドキドキする度に、下腹が張り、造屁作業の気配はますます強く感じられます。これほどの緊張感溢れる状況にあっても、放屁が一発も発生しないことに一抹の不安を覚える芳一でした。『このまま一生、以前のような放屁が不可能になったら、どうしよう…』


いよいよ漆黒の闇が辺りを覆い、いつもの武将が呼びに来る時間になりました。


「一人にしないで下さい~!せめて隣の部屋に~!」と半べそで哀願する芳一でしたが、すぐ側にいるのは危険なのじゃと一喝して、老和尚とぽん海は医者を連れて奥の部屋に引っ込み、経文を一心不乱に読み始めます。


 いつもの部屋の中央には芳一ただ一人、丸裸になって心細そうな様子で、老和尚から授かった魔除けの経文を一心不乱に黙読しています。耳にも勿論のこと、身体じゅうに「南無南無梵陀羅薩婆訶」といった有り難い魔除けの経文が黒々と書き込まれ、万全の構えが出来た筈でした。


 やがて夜気に不吉な妖気が漂い始め、不気味な風が障子を揺らし始めたかと思うと、ガシャン!ガシャン!という鎧を引きずる、例の不気味な音が響いてきました。いよいよその時が来たのです。

「芳一~!ほう~いち~っ!」

いつもの演奏の音も聞こえず、ひっそりと静まりかえった部屋の様子に首をかしげる武将の怨霊です。そのまま障子を思い切り開けて中の様子を窺うと更に大声で叫びました。


「こりゃ芳一!どこに消えたのじゃ!おるのは分かっておる!何をしておる!」

有り難い経文のお陰で怨霊には、芳一の姿は全く見えませんし、触ることもできないのです。一見頼りなげな老僧のことを思い浮かべ、さすがだな~と感謝する芳一です。



 安堵しながらも、こちらからは、ものすごい迫力の幽気がすぐ近くに迫っているのが分かり、今にも気絶しそうな芳一です。


うっ、こわーっ!今まで何とも思わなかったけれど、こんな怖いお方と一緒にいたのか…こわっ、怖すぎるぅ!』



怨霊武将2

 

いつもの芳一なら、この恐怖感、緊張感に耐えられず、すぐにも強烈な放屁音を出していたことでしょう。ところが幸いにも、今の芳一は、造屁機能は回復しても、放屁機能が変調状態になっていたお陰で、放屁音で気づかれることはなさそうです。やがて武将がすぐ側に来た気配がします。すぐ側で、身の毛のよだつように恐ろしい声が。


芳一さんったら!昨夜までのあなたはあんなに嬉しそうにしておりましたでしょうが。ねえ、いかがなさりましたのじゃ?あの連帯感は偽り?ねえったら、芳一さ~ん、出てきてよったら~っ!」


 今度は女のしわがれ声で不気味に囁くようにしてくると、そのあまりの恐ろしさに、芳一はいきなり腹にこれまで覚えのない激痛を覚えます。造屁作用も最高潮に達し、先ほどから腸内に充満したまま、放出されない未生の屁圧力が限界レベルに近づいているのです!



するといきなり耳も割れんばかりの大音声!


「許せん!いつまでも隠れておると、両脚を引き抜いて、力ずくでも連れて参るぞ!」


芳一がたまらず『ひえーっ、かんにんして下さいよ!』と心の中で叫んだその瞬間、突然バッキューン、ベリベリベリッ、ぶっぶぶーーっ!ぽろ…という怪しいまでの音の爆裂!


そして懐かしい臭いが…何故放屁作用が今の今まで機能しなかったのか、恐怖にうち震えながらも、一瞬のうちに事態を冷静に把握した芳一です。


『そっかー、分かったぞ!要するに便秘…いや、屁秘状態になっていたのだ!つまり、衰弱状態で摂取した僅かばかりの食事によって、辛うじて生じていた小さな運塊(雲固の一部)が、内部から私の糞門をしっかりと塞ぐようにとどまっていた。



それが原因で、私の並外れた造屁機能によって続々と生まれ出た新屁が行き場を失い、屁庫から溢れ、腸内にひしめき合い噴門近くの内圧をいや増しに高めて来た。



そして遂に内圧が限界点に達したとき、堅い運塊が弾丸の如く放出され、この時にバッキューンという音が生じた。


同時にその後を追うように、個体化せんばかりに密度の濃い放屁がぶっぶぶーーっ!という音を伴いつつ激しい勢いで奔出した、というわけなのだ!』


自分の琵琶法師生活を支える一つの重要な糧である放屁作用が無事であったことに安堵し、よかったよかったと一人微笑む芳一でしたが、じゃぁあのベリベリベリッという音はどう解釈するのだ?運塊は間違いなくただの一発という感触だったが…首をかしげて推理を続けようとした芳一の耳に、怨霊の突然の大声が聞こえ、自分のおかれている危機的状況をハッと思い起します。


「な、何じゃ、これは!」


 突然発せられた異様な爆音に引き寄せられて、ほとんど芳一に接するほど間近にしゃがみ込んだ怨霊の目の前に、芳一の一物(いちもつ)が突然現れたのです。ですが一物と言えるほどの大きさではありません。九州は福岡の銘菓の一つに「ひよこ」というのがありますが、ちょうどそんな大きさ、形です


 芳一の年頃では第二次性徴が現れて、そこそこの大きさになっていて当然なのですが、異性のことには目もくれず、ひたすら放屁音を平曲の一部として自由に操るまでに昇華させた、並々ならぬ修行研鑽活動が招いた必然の結果なのでした。年頃の芳一の体内では、精子造精機能として働くべき力の大部分が造屁機能に転換されていたのだと言えましょう。


『あっ、何で!』思わず声を出したくなるほど驚愕した芳一です。同時にあの「ベリベリベリッ」という謎の音の意味が分かりました。


それは、爆裂した第一弾の運塊が下帯の後部に穴を開け、続いて第二弾とも言うべき濃密度高圧力放屁の奔出が、その穴を間髪を入れずに引き裂き破砕した音だったのです。そう言えば音の締めくくりにぽろ…」というのがあったが、あれは下帯の外れた音だったのか!


 

 読者の中には「そんなことあり得ない~っ!」と仰る方もありましょうが、まさに「事実は小説より奇なり」ということが生じたのでした。

 爆風に煽られ、ハラリと落ちた下帯が芳一の目の下に見え、自分のヒヨコが哀れにふるふると震えています無論ヒヨコだけには経文が書いてありません


「こうしたらどうじゃ?」



怨霊武将

武将のごつい指がヒヨコを摘むようにして、引っ張るとびゅうと伸びます。


『い、いたた、いたたた、いて~っす、いてーっ!』ぶうっ、ぶぅぅっ!

あまりの恐怖と痛さに心の中で叫びまくる芳一です。


「よ~し、これを土産に持ち帰り、主上にお詫びいたすとするか、ほーれ!」

びゅーっ!べりべりべり!

「ぎゃおーうおうおう…!」

その場で意識が遠くなるのを感じて行く芳一でした…。


 ピヨピヨ ピヨピヨ ピヨピヨ 今日も小鳥たちの可愛らしい囀りが山寺の周囲の木々に響き渡り、一昨日の悪夢のような事件など全くなかったかのように、清々しい朝が来ました。


 事件の当夜、医者が夜道を一人で帰るのを怖がり、お寺に残っていてくれたお陰で、迅速な手当を受けることが出来て、幸いにも一命を取り留めたのです。丸二日も眠り通し、目を覚ました芳一は布団の中で痛みに耐えながら心から反省しておりました。


私は浅はかでありました。神仏や、怨霊を利用して自分の実力試しをしてみるなど、尋常の沙汰ではなかった。これも自らの力を過信した、傲慢のなせる技であったんだ…まことに申し訳ございません!南無南無…」


 その後も平曲に対する御屁芳一の姿勢は何ら変わることはありませんでした。ヒヨコを怨霊に引き抜かれた芳一は、それにもめげずに全国を行脚して、自らの新機軸トリプル奏法を研鑽し、平曲を奏で続けて行きました。芳一は、必然的にやや女性的な心根を備えるようになりましたが、何事も前向きの芳一は、それをも自らの語りにプラスして行ったのです。


 人気が更に高まっていったのも、天与の才だけでなく、まさにこの不断の努力の賜でした。いつしかこのお寺での事件も知れ渡り、世の人々から親しみを込めて呼ばれるようになりました。それは… 

玉無し芳一です。 


     終わり


後書き

 平家物語は軍記物語として、我が国の名作古典の一つであることに異議を唱える人はありません。作者不詳のこの名作は、諸国を行脚する、多くの琵琶法師達の共同作業で完成したとも言われております。この壮大な叙事詩は、諸行無常盛者必衰という仏教感を根底に置き、長く、多くの人の胸を打ってきました。全編雄渾な語りが主調音となっておりますが、驚くほど細やかで繊細な、いわば当時の女性でしか表現できなかったであろう、優しさが感得できる場面が所々に見られます。後白河院と建礼門院が出逢う、終章の「大原御幸」など、特にこのことが当てはまると思います。


 そうです、それまでのいわば男性的な語りにこの女性的な語りを加え、更に奥行きの深い名作になし得たのは、まさに年老いて寿命を全うするまで琵琶法師として諸国行脚し、自らの奏法で語り唄い、演奏し続けた、円熟した玉無し芳市の功績であったのです。このように確信するのは筆者だけでありましょうか。


                     ぼんぼん丸





怪異談 御屁芳一(おならほういち) 其の参

怪異談 御屁芳一(おならほういち)


其の参 芳一限界状況に到る



 ピヨピヨ ピヨピヨ ピヨピヨ 小鳥たちの可愛らしい囀りが辺りに響き、何事もなかったかのように山寺に静かな朝が来ました。芳一はぐっすり眠り込んでおります。本堂で老和尚と小僧のぽん海が心配げにひそひそ話し込んでおります。


「なに、芳一殿はやはり昨夜も、いずことも無く出掛けたとな…むむ」


「はい、何かに誘われるように裏木戸からお出かけになりました。見るも恐ろしい鬼火が、かの琵琶法師の周りを怪しげに飛び回り、それは、げにおどろおどろしうございまして、私の腰が抜けそうな光景でありました」


「やはりそうか…して方角は?」


「裏山の墓場の方でございます」


「うーむ、あの時と同じ状況になっておるようじゃな…。くれぐれも平家の亡霊には用心するようにと警告しておったのじゃが、案の定こういう事になってしまったか!かの法師の場合はすんでの所で手遅れになる所じゃったが、結局はあの始末。拙僧の名誉の問題でもある。二の舞は踏むまいぞ。これは何とか早急に手を打たねばなるまいて。で、琵琶法師は今どのような具合じゃ?」


「いかにも気持ちよさそうにぐっすりお休みになっております。」


喝ぁーつ!なぜ、『気持ちよさそうに』などと軽々しく申すのじゃ。ぐっすり眠っておることは推察できるが、『気持ちよさそうに』はなかろう。それは必ずや昏睡状態であるに違いない。昏睡状態じゃに決まっておろうが!さもあらん、さもあらん。先の琵琶法師の場合もそうじゃった。死霊と接する内に次第に生気を吸い取られて行くのじゃ…南無ボンダラブンダラソワカ」


老僧とぽん海

「でもあの方は、まるまる太っておられますから、何か…そのう…死霊に魅入られたとかいう危機感というものが、まったく感じられぬのでございますよ」


喝!喝ぁーつ!太っているから危機感がないとな?そなたは凡愚の如く外見に捕らわれて目が曇っておるぞ。何年この寺で修行しておるのじゃ、未熟者よ!肥えていようが、痩せ細っておろうが、死霊に魅入られた人間の危機を心眼で捉え得る力を持ち得ずして何が修行僧ぞ、喝ぁーつ!うーむ、今度は失敗は重ねまいぞ…しかし儂もこのように老いさらばえておるし、お前は頼りにならぬし…しかし、今夜にでも手を打たねばならぬし…バブ…バブ~」


 寄る年波に勝てず、神経痛、痛風、ヘルニア、いぼ痔に脱腸とさんざんな状態になっている和尚にとって、怨霊退散のお経を上げる気力を集中するのも困難な状態です。目の前の弟子のぽん海はまだまだ未熟で頼りにならず、おろおろ心配ばかりする和尚の心痛も、どこ吹く風なのです。芳一は心地よい睡眠をむさぼり続け、やがて夕刻近く目を覚まして老和尚のもとに挨拶に来ました。


「おかげさまでたっぷり眠れました。実に心地よい目覚めでございます」


老和尚の心配もどこへやら、芳一は実に清々しい顔をしております。不審げな顔で老僧が問いただします。


「昨夜は、何処かにお出かけと察しまするのじゃが、何をなさりに?」


「はあ、どこか御身分の高いお方のお使いだと申される方が呼びに来られまして、かくかくしかじかという次第。やはりこれは、亡き師匠と深い因縁のあります、平家の怨霊の方々であったと思いまする。私のつたない音曲にお耳を傾けてくださる方々の、いやまあ、質の高さがこちらにもビシビシ伝わってきまして、私も思いきり力が入った次第です。いやもう、何とも申せませぬ充実感を覚えまして、朝まで思う存分弾き語りをして参りました。お陰様で体も心なしか軽くなり、至って快調です」ぷすー。


 あっけらかんと怨霊との交わりを述べる芳一に、ただただ唖然とする和尚です。確かに一夜にして芳一の身体が若干細くなっている風ではありましたが、何せ小太り芳一です、多少の体重減でかえって引き締まったように見え、和尚の目には健康そのものに写ったのです。それに芳一の語調があまりにも明朗快活なのです。和尚は先程ぽん海を叱り飛ばしたことも忘れ、芳一の様子にすっかり目が曇ってしまいました。寄る年波に勝てぬ、まさに文字通りそうなってしまったようです。



『昨夜迎えに来たという者もおよそ平家の怨霊などとは無縁のもので、裏山の狸か狐の悪戯であったのではないか』



こう思ってしまったのでした。狐狸の類と一晩浮かれ騒いだとすればそれに越したことはありません。悪くても、せいぜい小便を飲まされた、雲固を食べさせられたというレベルで話は片づくものです。それに対し、平家の怨霊を撃退することは老和尚にとっては大変な大仕事です。出来れば二度とあんな事はしたくない、あんなことに関わりたくない、不覚にもそういう逃げの意識が、どこかにあったのでしょう、老和尚の頭の不安ベクトルは安易な方向に、即ち、今回は平家の怨霊などというシリアスな事件ではなく、裏山の狐や狸の他愛ない悪戯のなせる技であって欲しい、いや、そうに違いないのだ、という方にぐぐっと傾き、ベクトルの大きさもあっという間に急減したのでした


「そうですかいのう。それは何よりでごじゃった。じゃがのう、夜お出かけになるのは感心しませんぞ。くれぐれもご自愛下されや。いやはや、あなたのお元気そうなご様子を拝見できて拙僧も一安心しておりますじゃ、ふぉっふぉっふぉっ」


 昔の耳無し芳一はいかにも病的な痩せ形の人間でしたから、平家の怨霊、というイメージに合致しています。ところが小太り芳一です。その琵琶の技量はともかく、これはもう誰が見ても狐や狸の悪ふざけ、というイメージしか惹起させないのです。先に述べましたが、芳一の悲劇の一つはここにありました。この高僧、さしもの老和尚でさえも老いによる気力体力の衰えにより、弟子を叱り飛ばした心眼が曇り、芳一の危機を見抜くことが出来なかったのも、芳一にとってまことに不運なことでした。



「今夜もばっちり決めようと存じます」ぷっ。

ますます意気盛んな芳一です。そんな芳一を見てすっかり平家の怨霊のことなど忘れて安堵する老和尚です。


「裏山の狐や狸どもも幸せなことじゃ」


「はあ?」


「いやこっちの話じゃよ。くぉっくぉっくぉっ」


「面白いですね、和尚さん、きゃははは」


 ぽん海も合いの手を入れて上機嫌です。

 こんな具合に芳一の怨霊達との接触は続けられて行くことになったのであります


 そしてその夜も、たっぷりと食事をした芳一が、迎えの来るのを今か今かとを心待ちにしながら、はやる心を抑えるように、♪ぎーおーんべべんべんべーんぷーとやっております。その語りと琵琶と屁音の一人三重奏は、前夜の狂熱的墓場ライブを契機に更に一段の進化を遂げたようです。やがてあたりの木々がざわめき、「ガチャン、ずしん、ガチャン、ずしん」という、前夜と同じ重量感のある足音が遠くから聞こえ始めたかと思うと、あの太い声が。


「芳一~!」

待ってましたとばかり、飛び出す芳一です。


「は、はい、はいっ!芳一はここにおりまする、さあ参りましょう!」ぷーっ!

 その次の夜も、また次の夜も、毎晩このような具合で平家の怨霊の招きに応じて、怨霊達の前に座り、声を張り上げ、琵琶を弾じ、放屁を絞り出す芳一でした。4日、5日と経つ内に芳一の身体は見る見るうちに見違えるほどスリム化して行き、スリム化を越えてどう見ても病的な痩せ方になってきました。夜を徹して怨霊達の前で平曲を熱演していることがそもそも大変なエネルギーの消費になるのみならず、怨霊達はその本性上、芳一をあの世に連れ去ろうとしているのですから、彼らの放射する幽気が芳一を衰弱させていくのも当然でした。




 更に芳一の取る食事といえば、ぽん海が前日に用意してくれている精進料理を、朝帰りしたときにそこそこ食べるだけで、すぐに床につき、夜起きてはまた頂戴して、ということの連続です。精進料理ですから、芳一の人並み外れた造屁作用~放屁行為を維持していく上で、ぎりぎり最低限度のエネルギー補給にはなりましたが、飽食の芳一にとっては、明らかにカロリー需給バランスがこれまでとは全く逆になっていたのです。

 


同時に芳一自身、あれほどの食欲を誇っていたのに、こんなに少量且つ低カロリー食の連続が全く苦にならなくなっていました。さすが一流の芸術家でした。毎夜ハイレベルの聴衆の前で思い切り琵琶を弾じ、屁音を張り上げ、声を振り絞って熱唱する充実感は何物にも代え難く、腹一杯食べる、などと言うことはとっくにどこかに消え失せていたのです。


 こんな調子ですから、いかに小太り芳一といえども、見る見る痩せ細って行くのも当然でしょう。老和尚もぽん海も芳一がこんな状態になっていることはまったく気がついていませんでした。何しろ夜遅く外出しては朝まだきに帰り、夜起きてという繰り返しでしたから、二人と顔を合わせることはなかったのです。



 老和尚とぽん海は顔を合わせては


裏山の狐狸どもとすっかりお友達になって楽しくやっておるようじゃな。しかしあの法師の世遊び好きにもほとほと困ったものじゃ。可愛い雌の子狸とラブラブになっておったりして!」


「まさかー!キャッハハハ」

などと呑気に高笑いしているぐらいで、大して気にも留めていなかったのです。


 逗留6日めの朝でした。いつもの演奏を終えて寺に帰った芳一はさすがに足元がふらつき、何かに当たって音を出してしまい、ぽん海を起こしてしまいました。寝ぼけ眼のぽん海の目写ったのはあまりに変わり果てた芳一の姿でした。つい数日前まで見知っていた芳一の面影はまったく消え失せ、まるで衰弱が衣を着ていると形容する以外にないほどなのです仰天するぽん海です。


「やや!芳一殿、その姿は…」


「やあ…おはようございます、ぽん海さん…今日もよい日になりそうですね、ゴホゴホ」ふすー。

 屁音も哀れなほど張りがなく、蚊の鳴くように微かな風音になり、臭いも失せ果ててしまっております。


衰弱法市

 驚くぽん海に、いつもの笑顔で答える芳一ですが、さすがに声からも力が失せ、目に真っ黒な隈を付けて、にたっと笑う衰弱しきった姿はまさに鬼気迫る有様です


ぎょえ~~っ!それではやはり毎夜平家の怨霊達と!」


「はあ…ま…前から申していたではありませんか…でも、もう限界で、そろそろ…潮時かと思いますが…ゼイゼイ」ひゅ~…す~。


 芳一は、できればこれからも毎夜ずーっと、怨霊達の前での演奏が与えてくれる、文字通りこの世ならぬ充実感を味わいたかったのですが、これ以上有音放屁もままならず、声も出す力も失せ、完全に限界に達したことを悟ったのでした。



 それに自分の技量が師匠の域に達したことの確信も得ることが出来ましたし、また同時に肉体のスリム化という目的もごく短期間で成就したという満足感もありました。ここに来た目標はすべて獲得したので、そろそろここらで打ち切ろうという決心をしたのです。


 呆然と立ちすくむぽん海に、独り言のように芳一が言います。


「これで…十分だと思います。これ以上あの方々とつきあっていては…ゴホゴホ…もう身体が持たないかな~という感じです…私はまだほんの子供…まだまだこの世に未練があるっす。和尚様にお願いすべき時が来たようです…ゴホゴホ…いや、その前に何か腹の足しになるものを…あひ~んすす~。


かつての芳一からは想像も出来ぬほどの弱々しい語調でこう言うと、その場にへなへなと崩れ落ちるように座り込んでしまいました。そしてそのまま昏睡状態に陥ってしまったのです。その姿は哀れさを通り越して鬼気迫るものがありました。その場に腰を抜かしそうになりながら、叫ぶぽん海です。


「ワオ、ワオーッ!和尚様~っ、和尚様~っ!」


続く  ぼんぼん丸







放屁道(危肛派)~最終巻~

全四回にわたりお送りしてまいりました、危肛派放屁道のお作法、いよいよシーズン1の最終回です。

この先、解説が必要なシーンが現れたり、質問やリクエストがあった場合には、適宜お送りしてまいりたいと思います。


では今回のお作法もじっくり慌てず、できれば実演しながら読み進めてみてください。



【トイレ放屁】・・・それはもはや儀式


何を当たり前のことを、と感じた貴方はまだまだレベルが不足しています。
トイレで放屁する際にも立派なお作法があるのです。(昨年の"放屁士3級"実技試験にも出題されました)


男性の場合は、小便器の前に立ったままという状況があり、最中に屁意が出現した場合は、一旦放水を止め、手を洗って清めたうえで、大便個室に移動します。
(放尿しながらの放屁は絶対にいけません。どちらに対しても無礼となります)


ここはトイレですから、下半身を露出しても誰にも咎められることなく、もっとも自然に近いピュアな放屁を執り行うことが可能なのです。

普通に大便をする時と同様に、下半身の衣類だけを脱ぐだけでも構いませんが、時間的精神的に余裕がある時でしたら、全裸になることを強くお勧めします。


これは、全身御屁浄といって、無駄な衣類によって御屁様をさえぎることがないようにする慣わしです。

最近は和式便器も減りましたので、洋式便器に限ってご説明申し上げます。


大便時と同じように便座に座り、なるだけ隙間が無いように臀部を便器内に押し込みます。「便器に座っている」という安心感から大便に至らないよう細心の注意を払いつつ、たっぷりと放屁します。このとき、たとえ誰も周囲にいなくても、絶対に無音放屁は避けてください。トイレで無音という行為は、大変な失礼にあたります。壁がきしむくらいの音量がベストです。


すべて出し終えても、慌てて動かないでください。せっかく便器内部に閉じ込めた御屁素(おへのもと)が逃げてしまいます。ゆっくりと便座にはまり込んだ臀部を浮かせ、身体を離したらすばやく便器正面に跪き、顔を便器内に近づけ(出来れば顔を便器内に入れ)、全裸のまま深く瞑嗅します。このとき、両手を便器の両脇に添えて、抱えるような形がよいでしょう。安定します。


ある程度吸い終えたら、周囲に散った御屁素を全身に浴びるように手でかき集めます。(神社仏閣の護摩焚きの煙を浴びる要領です)
一連のお作法を終えたら、深く一礼し、衣類をまといます。
あとは何事もなかったかのように社会復帰してください。見える世間が変わっているはずです。


【デート放屁】・・・二人の愛を深める放屁


今までまったく触れておりませんでしたが、愛情表現としての放屁に関する作法になります。
御屁を愛しみ、放屁を愛する相手にも振舞うことで、二人の絆はよりいっそう深いものになるでしょう。


ただし、無理やりだったり強制がそこにあってはなりません。あくまで自然に、「これが僕の(私の)、貴方への精一杯の想いのたけです」という意味を籠めて、さりげなく放ちます。このとき、言葉で多くを語る必要はまったくありません。愛の篭った御屁様は、その音と香りだけですべてを雄弁に語り、相手へ届けてくれることでしょう。
少しでも多く、確実に想いを届けるために、なるだけ密接し、狭い空間を選んで放つことがお作法上の制限となりますが、それ以外はかなり自由度が高くなっています。


バースデー放屁、クリスマス放屁、バレンタイン放屁など、アレンジはYou次第
あなたの個性を打ち出し、相手のハートが咳き込むほど突き刺さる放屁を目指しましょう。



【映画館劇場内放屁】・・・ダラケたストーリーに渇を


公開日を心待ちにして座席まで予約して観覧した映画や演劇が、まったくの期待ハズレだった経験はどなたにでもあるはず。
そんなときの御屁様は、ご自分だけでなく、周囲で同じように飽き飽きした観客たちをも魅了します。
有音屁であることは絶対条件で、放出のタイミングも非常に重要です。


映画であれば夜のシーン、演劇ならば舞台装置の変更時など、会場が静まり返っている瞬間を見逃してはいけません。


すっくと立ち上がり、事前に照明スタッフと打ち合わせていた通り、スポットライトを全方向から当ててもらい、渾身の力をこめて会場中に響き渡るように何度も放ちます。


可能であれば、アリーナ→S席→A席→2階席とすばやく移動しながら御屁様を振舞います。


ここまでやり遂げれば、全観客からのスタンディングオベーションも期待でき、一躍スターダムにのし上がることうけあい。
そこはもうアカデミー賞授与式と見まがうほどの歓声に包まれることでしょう。
その後の報道陣の取材攻勢もご覚悟ください。
今後は普通に外出することもままならないかもしれません。



【各種試験中放屁】・・・受かるも落ちるも放屁次第


いかなる試験であれ、勝負は時のウン
ヤマが外れてげんなりしている場合ではありません。


さらさらと回答が進む前後左右の受験生たちを貴方の御屁様で魅了し、少しでもライバルを減らすほか道は無いのです。


こちらも他のお作法と同じく「超大音量有音屁」かつ「超高濃度芳香屁」でなければなりません。


無意味に起立したりすると、退出の合図かと勘違いされ、試験を途中で放棄しなければならなくなる場合もあるので、この場合は残念ですが着座のまま執り行うこととなります。


試験勉強のために深夜遅くまで勉学に勤しみ、その結果体内に蓄えたコンビニ弁当やカップラーメンの合成保存料、怪しげな油、中国産の野菜などのもつ猛毒成分もあいまって、貴方の御屁様の雅香は全員を完膚なきまでに魅了するはず。


この放屁が成功すれば、その試験で好成績ゲット・合格奪取などの「ご褒屁」も思いのままです!



【カラオケボックス放屁】・・・メロディに乗せてディープなエコーを


こちらはもう至極簡単です。


御屁意が到来しましたら、おもむろにマイクを下半身下着内に忍ばせ、臀部に直接あてがい、BOSEの天吊スピーカーから深いエコーと共に響き渡らせてください。余裕がありましたら、ミキサーのマイク音量を最大にすることも忘れずに。


ご自分が歌唱中であれば当然手持ちのマイクですが、誰か他の人が歌っている場合には大変不躾になりますがそのマイクを一寸拝借してください。臀部にあてがい、その御屁音(おひね)を皆で堪能したら、すぐさまそのマイクは返上してください。マイクヘッドの網目にほどよく染み込んだ雅香が、歌う者の歌唱力を飛躍的にアップさせ、誰もがボーカリストになったような幻想を抱くことができるでしょう。



その部屋に次に訪れるグループにもご利益は確実に残ります。



【ネットカフェ放屁】・・・半個室を活かせ


周囲の難民達に、「いつまでもこんなところで燻っている場合ではないぞ」という想いを籠めて、パーティション上部から皆に行き渡るように振舞います。半個室ですから、全裸になることを推奨します。
あとは他のお作法と同じです。なるべく大きな音で振舞いましょう。



【長電話放屁】・・・切りたい相手に見舞え


いつまでもいつまでもダラダラとどうでもいい話を続ける相手。
念屁と実屁の両方を見舞うのが礼儀ですね。


まずは受話器を直接臀部にあてがい、実屁の雅音を振る舞い、直後に相手に強い念屁を送り、雅香に包まれていただきます。

通話相手はもう長電話どころではない桃源郷に導かれますから、そうそうに電話を切るはず。


これですっきりさっぱりと電話を終了できます。
ビジネスシーンでも活躍しそうなお作法ですね。




いかがでしたでしょうか。

シーンによっては大変に難易度の高いお作法もいくつかあったとは思いますが、どれもこれもすべて精進するしか道はありません。


今まで何気なく、たいした思慮もなく放屁されておられた諸兄が、少しでも正しいお作法を体得されればと思い、全4回にわたり解説をさせていただきました。


今後も必要に応じて解説なりご相談に乗るなりしてまいりますので、少しでも疑問やお困りのことがございましたら、ご連絡くださいませ。


はぁ疲れた。



(筆 褐色の危肛子)

怪異談 御屁芳一(おならほういち) 其の弐

怪異談 御屁芳一(おならほういち)


其の弐 芳一怨霊の迎えに嬉々として応じる


 それは蝉時雨かしましい、ある夏の日の黄昏時のことでした。草深い山道を踏みしめ足早に先を急いでいた芳一は一際激しい霊気を感じたのです。生い茂った樹木や、腰の辺りまである灌木や足元の様々な草木に至るまで、何か尋常ならざる気配がありました。確かに近い、近いぞ!ある確信のようなものが生まれた芳一はそのまま足を速めます。するといつの間にか古びた山寺の山門の前に着きました。何かに引き込まれるように芳一は中に足を踏み入れます。まさに「引き込まれるように」という言葉がピッタリでした。『この寺こそが私が目指してきた寺に違いない。 ここの異様な気配は尋常ではないぞ。ついにたどり着いたのでは…』ぷっ、ぷぷ~


芳一2

芳一は異様な胸の高鳴りと、張り詰めた放屁音を感じています。

 

 ぷっ、ぷぷ~という耳障りな放屁音にお気づきのことでしょうが。栄養状態満点で若く元気な芳一の造屁能力は人並み外れており、緊張感を覚えるとつい下腹に力が入ってしまい、このように腸内屁庫から奔出してしまうのです。最初本人は、演奏道具の貴重な一つを無為に消費することに何やら勿体なさを感じたりもしましたが、常に前向きの芳一は、これも演奏前のチューニングとして不可欠の鍛錬になるのだと、考えを切り替え、自らの造屁能力の更なるアップを常に心がけることでこの問題を解決したのでした。


 感慨深げに境内に佇んでいる芳一を庭を掃除していた、ぽん海という小僧が見つけました。

「おや、お背中の琵琶とそのふくよかなお体、もしやあなた様は近頃世に聞こえる二代目芳一様ではありませんか?」


「二代目などとはおこがましくございますが、耳無し芳一として世人に聞こえております者は私めの師匠でございます。」ぷっ


 放屁の音と臭いに一瞬顔をしかめたぽん海でしたが、この時点では既に二代目芳一に代わって御屁芳一という名前が一般的になっており、その噂は十分聞き知っていますので、放屁を非難する様子など微塵も表しません。


「それはそれは、よくいらっしゃいました。ただいま和尚に伺いを立てて参りますので、少々お待ち下さい」


 小僧が寺の中に入り、やがて再び現れて「どうぞどうぞ」ということになり、無事にその寺に逗留することになりました。まさしくこの寺こそ師匠の芳一が耳を失うことになった因縁の寺でありました。

小僧に案内をされて一室に落ち着いた芳一は丁寧にお礼を述べて、早速べべんべ~んべ~んと平家物語の序章を奏で始めました。


 ~♪ 祇園精舎の~鐘の音~ぷぷ諸行無常の~うぉ~ぷーぷぷぷ~響き~ あ~り~ぶっべべんべーんべーんぶっぶーう~

 琵琶の音も、そこはかとなくもの悲しげで、芳一の歌う声も屁音もいよいよ物淋しさを増し、一日の終わりを惜しむかのようにカナカナカナカナカナカナカナカナカナカナと鳴き騒ぐ薄暮の境内の蜩の声も、奏でられている音曲に更に寂しさを添えるようです。


 さて、しばらくしてからお寺が出してくれた夕餉をご馳走になっている時、老和尚が現れました。かなりの高齢のようで、肉体的には相当にガタが来ている様子ですが、さすがに高僧だけあって話しぶりはしっかりしたものです。


「琵琶の音もお声も、久しぶりに素晴らしきものを耳にしましたぞ。それに笛の音ともまごう、いと珍しき音色の不思議さに胸打たれる思いですぞ。あなたの腕前も以前当寺に来られた、かの琵琶法師殿に勝るとも劣らぬものじゃよ。さすが師匠譲り、いやはや大したものですわい」


「いいえ、そんな。私の腕など師匠の足元にも及びません」ぶぶっ「私などまだまだかけだし者でございます」ぷすっ。などと謙遜しながら、老和尚に誉められて緊張しながらも、ますます自分の力に自信を深める芳一です。


「しかしのう、その曲は危険じゃによって、万一のことを考えて、この寺では平曲は弾ぜぬ方がよかろうと思うのじゃが…」


「でも師匠ゆかりのこの地で平曲を奏でることのみを楽しみに、こうして参ったのですから…」


「しかしじゃな、半端な腕の者ならともかく、そなたほどの腕前となると、あの事件を思い出し、なにやら不吉な思いがしてならぬのじゃて


『そなたほどの腕前』という言葉にますます自信を深め、気持ちの高ぶる芳一です。


「このお寺で師匠が平家の怨霊に招かれて、あんな事になってしまったと伺いましたが?」ぷぷっ。


年老いて鼻も耳も悪くなっている老僧には、芳一の放屁音ただの夜風の音ぐらいにしか感じられません。


「おうおう、その通りじゃて。拙僧の失態であのようなことになってしまったのじゃ。もうだいぶ昔のことになるが、いやはやあの奇怪な事件は、世にも恐ろしいものじゃった。南無カンダラバンダラハラソワカ!」


「私もこの近くまで参りましたとき、何かこの世ならぬ霊気を感じました。そしてついつい足がこちらに向かってしまったのです…」ぶぶっ。


「それはまた不思議な巡り合わせじゃのう。この寺は壇ノ浦の合戦にて哀れにも海の藻屑と消えられた、平家一門の方々のご冥福を弔うために建立されておるのじゃが、かの方々の思いの凄まじさは想像以上のものであったし、今も弱まることはないようじゃよ」


 老和尚の顔には恐怖と苦渋の色がありありと浮かんでおります。さすがにその様子を見た芳一は、敢えて怨霊達との遭遇を目指してここまで来た自分の無謀さを、一瞬後悔したくなる気がしましたが、どう考えても和尚の力を借りれば対策は万全の筈ですし、自分の技量が師匠の域に達しているか否かを試し、更に肉体のスリム化を成就せんとするこの絶好の機会を逃すわけにはいきません。


「でも、ご和尚のお力で我が師匠は一命を取り留めたと伺っておりますが…」ぷ?


「拙僧も未熟ながら必死で芳一殿をお救い申そうとしたのじゃが、結局迂闊にも耳を失わせることになってしまってのう…拙僧がもう少し気を付けておれば、あのようなことにはならなかったのじゃよ。南無ボンダラブンソワカ!」


「その怨霊達はまだ成仏せずにこの世にとどまっている、というわけでしょうか?もしそうでありまするなら

ば」ぷっぷーん!「仮に私の腕が師匠の腕の如く、怨霊共の心を揺り動かすほどのものとなっているのであれば」ぶぶぶ「私目も呼ばれることになるのではありますまいか!」ぶっぷっぷすー?


「同じことをもう一度彼らがするかどうかは分からぬが、怨霊達の悔しい思いが未だこの世にとどまっておることは確かじゃよ。そなたの師匠の事件以降、いったんは静まったように思えたのじゃが、彼らの思いの深さは尋常ではないようじゃ。山の気配、木々の気配にそれが感じ取れるようじゃて。拙僧もそれをどうしても鎮めることがかなわずに今に至ったことが悔しうてならんのじゃ南無ビンダラブンボンソワカ!」


「それなら私目も呼ばれる可能性は強い、ということですね!」ぷぷぷやっほー腕が鳴りますぷうぷう!


 とんでもないことを平然と述べる芳一に、現代っ子は何を考えておるのかわからんとばかり、仰天する和尚です。


「滅相なことを申すでないぞ。彼らに呼ばれることを待つなど、狂気の沙汰じゃ。拙僧もあの事件以来、そうとうに落ち込みましてのう。そのせいか、めっきり体力気力も衰え、今度あのようなことが起きたとしても、もはや拙僧の力では大したご助力は出来ませぬ故、くれぐれも平家の怨霊達には御用心なされますことじゃな。南無ボンダラベンダラハラソワカ南~無~南~無!喝!」


 「拙僧の力では大したご助力は出来ませぬ」という言葉にドキリとする芳一です。なるほど、さすがに相当な齢を召している様子がうかがえ、芳一も心の中で『ブ、大丈夫か~』と一瞬の不安がよぎりましたが、そこは若き芳一のことです、自らを勇気づけるように元気な声で言います。


「有り難うございます。私も師匠からくれぐれも用心するようにと、色々有り難い忠言を頂いておりますから。ただ万が一の折りにはご和尚をお頼みすることになるやも知れませんので、その節にはよろしくお願いいたします」ーぶぶ。


頼ってもあかんちゅーに!」


「まあまあ、そこを何とかお願いいたしますから~!」ぷっ、ぷ~ん


 こんな具合に逗留第一日目が何事もなく終わりました。勿論寝床に入る前に、いつもの修練を欠かす芳一ではありません、早速琵琶を取り、平家物語の序章を奏し始めます。


♪べべ~んべんべん べべーんべんべん べんべんべんべん
祇園精舎の~ぉ 鐘の声~ぇ ぶっ 諸行無常の~ぉ ひ~び~き~あ~り~
 ぷっぷっ 沙羅双樹の花の色~ぉ 盛者必衰の~ぉ 理をあらわす~ぅブブブ~          

   べんべ~ん♪

 外には夏の虫が鳴いています。ただ芳一の奏でる音曲が一際大きくなったとき、虫の音がピタリと止み、外の鬱蒼たる樹木草木のざわめきがが心なしか、いつもより大きくなったようでした。


 二日目の夜もだいぶ更けた頃でしょうか、何か一際もの悲しい風情を感じさせる夜でしたが、芳一が今夜も♪べべんべ~んべ~ん~ぷっ♪と平曲を奏でておりますと、ついに待ち望んでいたことが起こりました



ガチャン、ずしん、ガチャン、ずしん」という、金属音の混じった重量感のある足音が遠くから聞こえ始め、それが次第に大きくなってくるのです。『おお、これはもしや!』芳一が期待に胸をときめかせて、今か今かと待っておりますと外から太い声が聞こえてきました。


芳一~!芳一~!」

 それはいかにも名だたる剛碗の武将の声らしく、大地をも揺るがすばかりの大音響でありました。


『ついに来た!私の腕もまんざらではなかった。やったぞ!』


幾ばくかの恐怖はありましたが、喜びの方がはるかに勝っております。半ば感極まって芳一が返事をします。


「は、はい!ここにおりますーっ、芳一でございますーっ!」ぷーぷぷぷ


自分でも軽すぎるのではないかと一瞬恥ずかしくなるほどの、明るく元気な返事が出てしまいます。


「良き音色じゃ!そなた、以前もここにおった琵琶法師であるか?」

「いいえ、いいえ、その方はおそらく私めの師匠でございましょう。私はつい二、三日前にこの地に逗留し始めたばかりでございます」ぶ~ぶ。


亡霊には放屁の臭いなど何ら感じません。


「まあ、それはどうでも良いことだ。そなたの奏でる琵琶の音に感じ入ったのじゃからな。それに何とも言えぬ珍しき笛の音。いや、感じ入ったぞ!ついてはそちに頼みがある。そちのその音曲を是非とも我が主上にもお聞かせしたく存ずるによって、我が後について参れ!」



 目は見えずとも芳一には、その気配からして豪華な甲冑具足に身を固めた、いかにも名のある武将らしき出で立ちの男が眼前に立っていることが分かります。これはどう考えても平家の亡霊の一人に間違いありません。


「身どもの主上は実に高貴なお方じゃによって、くれぐれも粗相無きよう。」


はいはい、参りますとも!ははー。」ぶっぶー。


 喜び勇んだ芳一はその武将に手を引かれ裏山の方にてくてくついていきます。


『いよいよ大願成就、第一段階はクリアだ。次は私の歌を間近に耳になさって、亡霊の皆様が涙を流すほど感動なさるか、ということだな~。ここが正念場だぷっ。



 手を引かれて歩く芳一の足取りも軽く、思わず小走りになるほどです。芳一を取り囲むように、不気味ないくつもの青白い鬼火がひゅーひゅうと飛んでいることも感じ取られて、幾分背筋がぞーっとしはしましたが、芳一にはそれが大舞台に上る前のスポットライトの如く思え、いよいよ胸が躍るばかりでした。


 この夜の芳一がどこに連れて行かれて、どのような一夜を過ごしたかはラフカディオ・ハーンの「耳無し芳一」で述べられているのと、殆ど変わりませんのでここでは詳しいことは省略することにします。勿論怨霊達が要求したのは師匠の時と同じ壇ノ浦です。



 この夜の芳一の演奏が師匠のそれを上回るほどの素晴らしいものであったことは確かです。平家の亡者達も久々に聴き入る琵琶の音、法師の語りの素晴らしさに、「おお、おお」と身を震わせて感涙を流したのでした。


♪ その時 二位の尼殿 幼き安徳帝をしっかと抱きかかえ奉り給ひてぷぅ~う 
    いざ新しき都にぞ お供奉らんとばかり~ べべーん~うべんべんぷ~う♪ 


 壇ノ浦の段のクライマックスにさしかかりますと、ここが決め所とばかり芳一は琵琶の音も一層激しく奏で、一際悲痛な声を張り上げます。そしてあまりにもの悲しい琵琶と放屁の音色の絡み合い…。
墓場ライブ


 怨霊達は身も世もあらぬと言う風情で胸を掻きむしり、おいおい慟哭し始める者や、その場に泣き崩れる者やらの続出で、それはそれは盛り上がっていきます。



 芳一の方もこれ程の感情移入を示して聴き入ってくれる聴衆は初めてでした。時に寂しく、時に激しく奏せられる琵琶と放屁の音、時に哀れに、時に勇ましく発せられる芳一の語りが怨霊達の魂を激しく揺さぶり、その波動が芳一を触発して更に新たなるインスピレーションを与える、という具合で、まさに演じる者と聴く者との間の境界は消え失せ、至福の融合とでも言うべき、時空が成立したのでした。芳一はこの時、かつて師匠が体験した如く幽明境を越えてしまったのです。この至福の融合こそが、まさに生者にとって致命的な事態となるのでした。




 そんな後ろ向きのことなど、ついぞ頭に入らぬ芳一でした。帰路、先程の武将に送られて寺に戻る道で芳一は、さすがにどっと疲労感に襲われてはいましたが、これまで感じたことのない充実感を噛みしめておりました。『素晴らしい!たまらんなー、この感じ。この空間。もう余所では演奏する気が起きないなぁ。明日も頑張るぞー』どこまでも前向きな芳一です。


  続く  ぼんぼん丸