2026年6月20日 テレビ高知
殺処分される猫を減らそうと、保護猫活動に取り組むNPO法人があります。警戒する野良猫と“我慢比べ”の捕獲、資金不足、減らない保護猫の数…。多くの困難に直面しながらも、メンバーは“人間の責任”と向き合い、熱い覚悟を持って保護活動を続けています。
【写真】「不幸な猫をなくしたい」奔走するNPO法人「しまんとねこ」の活動を画像で見る
■小さな命を抱き上げ「この子は道路に捨てられていた」
高知県西部の四万十市で猫の保護活動に取り組む「NPO法人しまんとねこ」は、四万十市中村百笑町にある「へそ天」を活動拠点施設にしています。取材したこの日、法人の理事を務める永島尚世さんが、2匹の子猫を抱いていました。
「ミャー!ミャー!」
不安そうな表情で、母猫を探して一生懸命鳴き続ける、手のひらほどの小さな子猫。その猫を両手で抱き上げながら、永島さんがこう明かしてくれました。
永島尚世さん:
「この子は、道路に捨てられていたそうです。しょんぼり⋯。遺棄は犯罪です」
そう言いながら、永島さんは子猫を優しく包み込むように抱きかかえました。生後間もない子猫は、母猫と離れてしまうと、自分の力だけでは生きていくことができません。ここには、そんな猫たちもやってきます。
■殺処分を減らす「TNR」と「TNTA」
永島さんが理事を務める「NPO法人しまんとねこ」では、「TNR」や「TNTA」といった保護活動を行っています。
【TNR活動】…野良猫を捕獲(Trap)→不妊・去勢手術(Neuter)→元の場所に戻す(Return)活動。
【TNTA活動】…野良猫を捕獲(Trap)→不妊・去勢手術(Neuter)→環境などの事情で元の場所に戻せない猫を人との生活に慣れさせる(Tame)→希望者へ譲渡(Adopt)する活動。
理事長 中川愛さん:
「もともと、理事長である私と永島さんがそれぞれ個人で保護猫活動をやっていました。そして話をするうちに『一緒に1つの施設にして、不妊・去勢の啓発も兼ねてやっていきたい』ということになり『しまんとねこ』を立ち上げました」
理事長 中川愛さん:
「私も永島さんも共通して言えるのは『これ以上、野良猫を増やしたくない。かわいそうな猫をつくりたくない』というのが一番の思いでした。『共存』とまではいきませんが、人と猫が『共生』していけたらいいなと」
■「猫を助けるため…」責任感が強い理事が代表にならない理由
こうして発足した「しまんとねこ」ですが、冒頭で紹介した永島さんは、法人の代表である「理事長」の座には就かず「いち理事」として法人を支えています。
理事 永島尚世さん:
「『永島さんが理事長やったらええやん』って声もあったんですよ。理事長の中川愛さんも言ってくれたけど…」
理事 永島尚世さん:
「でも自分は『思いを行動にしたいタイプ』で、トップが走っちゃうと『みんなが置いていかれる』。中川愛さんにしっかり『抑え』として理事長の役割にいていただいて『何かあったらストッパーになる』という役目をしていただいています」
「猫を助けるためなら、後のことを考えず夢中で行動してしまう」という永島さん。そんな自身の性格から、NPO法人の代表は「冷静に行動できる中川さんにお願いした」といいます。
活動拠点の「へそ天」では毎月第3日曜日に、猫と気軽に触れ合い保護・飼育方法について相談できる「オープンハウス」というイベントが開かれていますが、このイベントでも、永島さんは自ら忙しそうに駆け回っていました。
そんな永島さんは、同じ理事のメンバーからも厚く信頼されています。
理事 江口広喜さん:
「永島さんは『自分でなんとかできれば』と動く人ですね。僕らは『無理だ』と思ったらお断りしますけど、彼女は『断るのは後回しにして、猫のためならできるだけ、なんとか努力する人』です」
■捕獲器に「かかった!」地区で繰り広げられた猫との攻防
「しまんとねこ」が行う「捕獲→手術→戻す」の「TNR活動」を取材しました。やってきたのは、四万十市の北西部、佐田地区です。
四万十川沿いの山間にあるこの地区では、空き家や倉庫などに住み着いた野良猫の糞尿被害が問題になっていて、地域の人たちが「しまんとねこ」のサポートを受けながら「TNR活動」を行っています。
地区の副区長を務める宮﨑聖さんも、自宅で猫を飼っている“猫好き”で、活動に参加しています。
佐田地区 副区長 宮﨑聖さん:
「自分も猫が好きで、地域の猫も好きなので、全ての猫に『幸せになってもらいたい』という思いもあって活動しています」
メンバーは、空き家などの「野良猫が捕まりそうな場所」にいくつかの捕獲器を設置し、様子を見守ります。すると、とある住宅の敷地内に設置した捕獲器に、1匹の猫がやってきました。
現れたのは1匹の三毛猫。エサの匂いに釣られてやってきましたが、「どうしよっかな〜…入っていいのかな〜…」という表情で周囲をキョロキョロ。なかなか捕獲器に入ろうとしません。
しばらく経ってようやく捕獲器の中に入っていきましたが、警戒心が強く仕組みも理解しているのか、扉が閉まるための板を踏まず…。エサを捕獲器の外までくわえて、外で食べ始めました。
そして三毛猫は、残りのエサを食べようと再び捕獲器に入り、その後ろにキジ白の猫が続けて捕獲器へと入っていきました。そして…
捕獲器「ガチャン!」
メンバー「かかった、かかった!」
捕獲されたのは、後から入ったキジ白。三毛猫は間一髪、捕獲を免れました。
捕獲器の中で「うわぁぁぁ!」と言わんばかりの表情で驚き、じたばたと暴れるキジ白。実はこのキジ白は、前回のTNR活動でも捕獲され、すでに不妊・去勢手術済みの猫でした。
それを知っている永島さんが捕獲器の元へ駆け寄りドアを開けると、パニック状態のキジ白、ピューっと逃げていきました。そして捕獲器の中を確認すると…
永島さん「おしっこ、ちびった(笑)」
怖かったねぇ、キジ白ちゃん…。
ただ、このキジ白はすでに人に慣れていて警戒心が薄く、その後メンバーたちがいる場所まで戻ってきて、捕獲器を積んだ軽トラックの荷台にも上ってきました。こうしたことから、このキジ白がまた捕獲器に入ってしまう可能性もあり、永島さんは「かわいそうだ」と、一晩だけこの猫を連れて帰ることにしました。
メンバーはこの日、合わせて8台の捕獲器を仕掛け、現場を後にしました。
そして翌朝、捕獲器には、前日捕獲できなかった警戒心が強い三毛猫を含む5匹が、捕獲器にかかっていました。お腹を空かせたのか、はたまた油断したのか。人間を見て驚いた様子でしたが、しばらくすると猫たちは落ち着きました。
■ワゴン車の中で不妊・去勢手術
捕獲した猫を連れて活動拠点の「へそ天」に戻ると、そこに1台のワゴン車がやってきました。「移動手術車」です。
「移動手術車」は、ワゴン車などの中に手術台、麻酔器、滅菌機器などを搭載した車で、過疎地域での医療支援や野良猫の不妊去勢手術などに活用されています。
やってきた移動手術車は、連携する動物病院の車です。「しまんとねこ」は、こうした手術の場所を提供し、補助金申請のサポートなども行っていて、この日は、他の地区で捕獲された猫や、個人が保護した猫も連れられてきました。
猫を連れてきた女性:
「この子は、自宅の床下で雨をしのいで…。外におったけど『猫が好き』というのもあるし、かわいそうなけん『助けたい』という気持ちで…」
猫の繁殖力は非常に強く、メスは生後半年ほどで妊娠が可能となります。出産は年に2〜3回で、一度の出産で数匹を産みます。繁殖を抑えることで、殺処分される猫を減らすことにつながります。
高知県内で殺処分される猫は、保護猫活動の高まりや自治体の不妊・去勢手術に対する補助制度の充実により、10年前と比べると7分の1ほどにまで減少しました。それでも直近2025年度は100匹を超えていて、その大半は、生まれたばかりの子猫です。
(2015年度:897匹 2025年度:121匹 収容中に死んだ猫も含む)
この日は19匹の猫が手術を受けました。元々住んでいた場所に戻される猫には、耳の先をV字型にカットされます。そうした猫は今後、繁殖せず、「地域ネコ」として住民たちに見守られながら“一代限りの命”を全うするのです。
■資金・スペース不足、高額な医療費「安易には引き取れない」
立ち上げから任意団体として活動してきた「しまんとねこ」は、2025年からNPO法人となり、これまで350匹近くの猫の手術をサポートしてきました。現在は11人ほどで活動し、SNSで情報を発信して、活動に賛同する人からの寄付・物資支援・オリジナルグッズ販売での収益を運営にあてています。
しかし、それだけの数の手術をサポートしても「不幸な猫」は減らず、活動資金も十分ではありません。さらに施設のスペースにも限りがあるため、新たに猫を受け入れるのは難しい状況です。
理事 永島尚世さん:
「最近は減りましたが『拾った猫をあそこに連れて行ったら、なんとかしてくれるんじゃないか』と言われたことはありました。ただ、ここでお預かりするとなったら、ワクチン、ウィルス検査、猫風邪の治療など、いろんな医療費がかかります。そうした治療をしないと他の猫に病気や風邪をうつすので、安易なお預かりはできないです」
■「猫からもらう幸せの方が大きい」目指すは「保護」がない世界
本来は人と良好な関係を築き、一緒に暮らすことができる猫ですが、地域によってはエサやり・糞尿の始末をしてくれる人がおらず、道路で交通事故に遭い死んでしまう可能性もあります。
このため永島さんたちは「捕獲→手術→戻す」の「TNR活動」だけではなく、「捕獲→手術→人に慣れさせる→希望者に譲渡」の「TNTA活動」も重要だといいます。
永島さんたちは、数か月かけて猫を人に慣れさせたり、数時間おきに授乳が必要な子猫のため夜中に何度も起きて世話をしたりしています。それでも「大変だとは思わない」と、永島さんは笑顔を見せます。
理事 永島尚世さん
「正直『大変』とは思わないんですよ。猫たちからもらえる『幸せ』の方が、はるかに大きいので。この世界から『保護活動』という言葉がなくなることが目的です。猫は『まっすぐ生きているだけだ』ということをわかって、思いやりを持ってくれる人が増えたら『保護』という言葉がなくなると思うので、私はそういう世界を目指したいです」
【取材後記】
そもそも「不幸な猫」が出てきてしまうのは、飼い猫や世話をする猫の不妊・去勢手術の費用を出さず、猫を捨てたり放置したりすることが背景にあります。つまり「人間の責任である」とも言えます。「不幸な猫」をこれ以上増やさないため、この機会に保護猫活動について、みなさんも考えてみてはいかがでしょうか。