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身近で起こっている動物に関する事件や情報の発信blogです。

2026年7月5日 大阪日日新聞

 

 ⼤阪市⻄成区にある寺院「智崇院別院」 の境内に、⼀⾵変わった温かいパワースポットが⽣まれようとしている。⽝猫の保護活動を⾏う「Shu-Shu (シュシュ)」の代表、露原綾さんが今夏、オープンさせる保護猫・保護⽝シェルター「スプーン」だ。 この場所が⽬指すのは、⾏き場を失った動物たちを救うだけでなく、不登校や孤独、⽣きづらさを抱える⼈たちがふらっと⽴ち寄れる居場所になることだ。原点には不登校になった娘と歩んだ6年間の経験がある。

 

保護犬猫シェルター「スプーン」 命と孤独を救う居場所へ

不登校めぐる周囲の冷たい視線の中で

 活動の原点は6年前。当時、中学校に⼊学したばかりの露原さんの娘 ・ 芹華 (せりか)さんが不登校になったことがきっ かけだった。 

 

犬猫の保護活動を行っている露原さん=智崇院別院 (大阪市西成区)

 

  「(娘は)私に似てミスが許せない完璧主義な⼀⾯があって、知らず知らずのうちに⾃分を追い詰めていたのかもしれません」 

 

  当時は今ほど不登校への理解がなく、周囲から〝ママ友〟もいなくなった。学校側の協⼒も⼗分に得られない中、⺟娘は社会から孤⽴してしまう。

 

   だが、露原さんは「いろんな経験をさせてあげることが⼀番」と芹華さんをさまざまな場所へ連れ出した。好きなアイドルがいれば同じ熱量で寄り添った。そんな⽇々の中で出会ったのが、地元で⾏われていた地域猫のエサやりだった。

 

   最初は週に1回、決まった時間に地域の猫にエサをやるという⼩さな⼀歩からだった。しかし、この出会いが⺟娘の運命を⼤きく変えていく。

 

「自分にもできることがある」

 エサやりから⺟娘の保護活動は徐々に広がっていき、いつしか猫を拾った地域住⺠から露原さんの元へ連絡が⼊るようになる。このため、多い時には⾃宅に10匹もの保護猫がひしめき合っていた。 
 
露原さんに保護された子猫たち
 
  やがて、⽝猫の繁殖業者が適切な管理や経営ができなくなり、飼育する多数の動物が不衛⽣な環境に放置される「ブリーダ崩壊」によるレスキュー依頼も、露原さんの元に舞い込むようになった。
 
  ただ、⽣まれたばかりの猫を預かれば2時間おきにミルクを与えなければならない。
 
  「娘と『夜中担当』と『昼間担当』に分かれて、⼩さな命を繋ぎ⽌める⽇々でした」(露原さん)
 
  保護猫の世話で親⼦は⼤変な⽇々を送っていたが、ある⽇、⾃信を失いかけていた芹華さんに変化が訪れる。
 
 以前は露原さんが芹華さんの苦⼿な部分をフォローしていたが、ある⽇、芹華さんは「⾃分で全部やってみる」と宣⾔。部屋に猫を連れ、⼀⼈でミルクやりから排せつの処理などの世話を引き受けた。
 
  「この⼦たちには⾃分がついていないといけない」「⾃分にもできることがある」――。そんな実感が、少しずつ芹華さんの⾃信につながっていた。
 
  芹華さんの変化は、周囲の⽬にも明らかだった。保護ネコの譲渡を⾏うマルシェに参加した際は、他⼈と話すことが苦⼿だった芹華さんが、来場者の質問に堂々と答え始めた。「⼈との間に猫が⼊るだけで、驚くほど⼼が通じ合うようになるんです」と露原さんは振り返る。
 
  その後も⼤学受験の壁にぶつかるなど岐路に⽴つたび、芹華さんを前を向かせたのは猫たちの存在だった。今では露原さんの最も頼もしい相棒として共に保護活動を続けている。

孤独な人々に「必要とされる喜び」を

 露原さんはこうした経験から、動物が持つ癒やしと⼈を育てる⼒があると確信。保護猫活動と福祉を掛け合わせた「就労継続⽀援B型事業所」を⽴ち上げた。そこでも猫の存在が利⽤者の変化を後押しした。
 
  当初は「疲れた」「⾏きたくない」と事業所に通うのをためらう利⽤者もいたが、「作業の合間にネコちゃんに会える」「⾃分で作ったグッズが猫たちのエサ代になる」と利⽤者たちの背中を押す。休憩時間に職員と利⽤者が猫を中⼼にして会話を交わし、事業所の雰囲気もみるみる温かくなっていった。
 
保護猫へのミルクやり。生まれたばかりの子猫には2時間おきにミルクをあげる
 
  「おじいちゃんもおばあちゃんも、若い⼦も、みんな⼼のどこかで 『誰かに必要とされたい』 と思っている。猫の世話を通じて 『私がこの⼦を⽀えている』と思えること。その実感が明⽇を⽣きる活⼒になるんです」(露原さん)
 
  もちろん、活動は良いことばかりではない。「5年⽬を迎えた頃、どれだけ⼿を尽くしても救えない命に直⾯し、あまりにもショックで活動を辞めたいと思った」と露原さん。そんなに落ち込むなら辞めればいい」と周囲からも⾔われたが、それを引き⽌めたのは芹華さんだった。 
 
「やっぱり猫たちがかわいそうだから、もう1回やろうよ」
 

 悲しみを乗り越え、命の尊さを理解し、強くなった芹華さんの⾔葉に 「逆に励まされた」と露原さん。

今夏オープンする「スプーン」

 孤⽴しない温かい社会を⽬指し、露原さんがまもなく「智崇院別院」(⼤阪市⻄成区)の境内にオープンさせる保護シェルター。名称の「スプーン」は芹華さんが、⼩さな命をすくう思いや孤⽴した⼈々を〝すくう(救う)〟という意味で名付けた。 
 
高校卒業時の芹華さん(右)。母娘で保護活動に取り組んでいる
 
  「⽝や猫の命をつなぐ場所だけでなく、誰もがふらっと⽴ち寄れて元気をもらえる『パワースポット』にしたい。SOSを抱えている⼈が、気軽に集まれる場所になれば」
 
  ⼈間の⾝勝⼿な都合で「モノ」のように扱われ、捨てられてしまった⽝猫の残酷な現状に胸を痛めながらも、動物と⼈がつながる場を広げたいと考える露原さん。
 
  将来的には、このシェルターのモデルをさらに広げ、フリースクールや⽼⼈ホーム、さらには⼩学校の教室の隣など、社会のあらゆる場所に保護⽝猫を通じた居場所を作りたいという構想がある。
 
 「⼝にして、あきめなければ思いは絶対にかなう。やってみてダメならその時考えればいい。失敗はありません」 
 
  保護活動の⼀⽅で、就労⽀援事業所や弁当店、農園、美容サロンなども展開する露原さん。いずれも従業員の「やりたい」という思いから働き⼝をつくるために⽴ち上げたものだ。⾃らの収⼊を削りながら、⽬の前の従業員や傷ついた⽝猫に向き合い続ける。 
 
  1本のスプーンがすくい上げるのは、⽝猫の⼩さな命の灯⽕と、⼈々の明⽇を⽣きる希望だ。露原さん親⼦の挑戦はこの夏、新たな⼀歩を踏み出す。 
 
■Shu-Shuでは、保護⽝・保護猫活動やシェルター運営を⽀える寄付や⽀援を受け付けている。
問い合わせは露原さん(電話 080-4579-1971)。

2026年7月3日 朝日新聞

 

 高齢化に伴い、ペットの犬や猫の世界でも増えつつあるがん。手術や抗がん剤治療に加え、第3の選択肢として放射線治療を提供する「どうぶつ総合がんセンター」が、京都府久御山町の「KyotoAR動物高度医療センター」に併設された。13日から診療を始める予定だ。 

 

【写真】KyotoAR動物高度医療センター=2026年5月25日午後5時9分、京都府久御山町、日比野容子撮影 

 

 新施設で導入されるのは、人間用につくられた高精度放射線治療機器「リニアック」。狙った場所に的確に放射線を当てられ、正常な細胞を傷つけにくい特長がある。センターによると、リニアックを備えた施設は全国でもまだ十数カ所しかなく、近隣では大阪と岐阜にあるだけだという。

 

がんの放射線治療に使うリニアック。左からKyotoAR動物高度医療センターの神志那弘明センター長、どうぶつ総合がんセンターの岩崎遼太センター長=2026年5月25日午後7時23分、京都府久御山町、日比野容子撮影(朝日新聞)

 

  KyotoAR動物高度医療センターの前身となる施設は、動物にもMRI検査を導入したいと、2009年に久御山町の別の場所で開業。22年10月に現在地に移転してきた。今では神経科、呼吸器科、循環器科、腫瘍(しゅよう)科など七つの診療科目があり、地域動物医療の中核をなす存在だ。

 

 獣医師は非常勤も含め約30人、国家資格の「愛玩動物看護師」が約20人いるという。完全予約制で、受診にはかかりつけ医からの紹介が必要だ。京都だけでなく奈良や滋賀、北陸方面などからも診療に訪れるといい、年間800~1千件前後の専門診療を担当している。

 

■導入には費用などの壁 

 

 全国の動物診療の現場では、比較的安価で低出力の放射線治療機器(オルソボルテージ)は用いられてきている。しかし、高出力のリニアックは1台あたり数億円と高額な上、第1種放射線取扱主任者の資格を持つスタッフの配置や、放射線障害を防止するための遮蔽(しゃへい)構造の施設が求められる。このため、導入は進んでいないのが現状だという。

 

  「それでも、愛犬や愛猫に最高の治療を受けさせたいというニーズは、確実にあるんです」と、どうぶつ総合がんセンターの岩崎遼太センター長(43)は言う。

 

  大手ペット保険会社「アニコム損害保険」のデータによると、犬は4歳ごろから徐々に、猫は9歳ごろから急激に腫瘍疾患を原因とする保険請求が増えてくる。

 

 放射線治療は一般的に十数回の通院が必要となるという。遠方になると、費用面と体力面で飼い主とペットの双方に大きな負担がかかる。

 

  KyotoAR動物高度医療センターの神志那弘明センター長(54)は「これまでは、放射線治療を希望する飼い主さんには大阪や岐阜の施設を紹介せざるを得ず、ご負担をおかけしてきた。これからは最期まで一貫して診ることができる」と話している。(日比野容子)

2026年6月29日 yoga Journal ONLINE

 

犬と暮らす方法のひとつに、ペットショップではなく保護犬を迎えるという選択肢があります。保護犬というと殺処分の問題などもあり、なんとなく“かわいそう”というイメージを持つ人も多いかもしれません。でもここ数年は保護活動という言葉を耳にする機会も増え、実は保健所に持ち込まれる数は減ってきています。 ところが一方で、保護団体への相談件数は増加しています。その多くを占めているのが、昨今の高齢化社会ともリンクする、飼い主の高齢化による飼育困難の急増。高齢の飼い主の入院や死亡により、ペットを手放さざるを得ない人が後を絶たないのです(『ペトコトお結び保護犬・保護猫白書2026』より)。 

 

〈画像〉2026年6月13日に開催された「オシャレな譲渡会」の様子 

 

そんな暗さや悲しさが付き纏いがちな保護犬問題に対し、“おしゃれ”という真逆のキーワードを掲げて向き合う、唯一無二の譲渡会イベントがあります。それが、モデルの桐山マキさん主催のWolf Ladyによる「オシャレな譲渡会」。2026年6月13日に開催された、このイベントの様子をレポートします。 

 

Photo by Fumiaki Omori(f-me)

 

■あえて「オシャレな譲渡会」と名付けた理由は

 

2022年からスタートし、今回で18回目となる「オシャレな譲渡会」。自身も保護犬3頭と暮らすモデルの桐山マキさんが、保護犬と向き合って芽生えた、自分でも何かできることをという思いを形にしたプロジェクト「Wolf Lady」による、保護犬譲渡のためのイベントです。 

 

保護犬とは、飼育放棄やブリーダー崩壊など、さまざまな理由で動物愛護センターや民間団体などに引き取られた飼い主のいない犬。その保護犬の譲渡会というイベントを桐山さんが手掛けるようになったのは、現在も続けている保護犬の預かりボランティアの経験からでした。預かりボランティアとは、保護犬の家族が決まるまでの期間、家庭に慣れるため、自宅でお世話をする役割を担います。 

 

保護団体の預かりボランティアから色々と学ぶことが多く、それがイベントを立ち上げるきっかけになったという桐山さん。保護犬の「かわいそう」というネガティブなイメージを変えたいと、あえて「オシャレな譲渡会」と名付けたのだそう。「犬をお迎えしたい人だけでなく、偶然近くを通りかかったファッションやビューティに興味があるような人にも、ふらりと立ち寄ってもらえるような、オシャレで楽しいイベントにしたかったので、開催場所も表参道・青山という場所にこだわりました。保護犬の可愛さをもっと知ってもらい、保護犬が家族と出会うために、みんなが気軽に足を運んでくれるようなイベントにしたいなと思って」(桐山さん) 

 

■会場には保護犬との出会いだけでなく、さまざまな楽しみが 

 

なんといってもこのイベントの特徴は、保護犬の譲渡会を中心にしつつ、犬を家族に迎える予定がなくても、楽しめる空間になっていること。開放的で広々とした会場に足を踏み入れると、そこには保護犬に直接出会えるブースのほか、ペットグッズやファッションアイテム、雑貨、さらにはワークショップなどの多彩なブースが並び、マーケット感覚で見て回ることができます。

 

イベントのメインである保護犬ブースには、桐山さんの愛犬のお里でもある「BeSail Animal」と、「Pooch Dog Rescue」の2つ、そして会場2階には保護猫ブースも設けられ、同じく「Be Sail Animal」と「SPA」の、それぞれ2つの団体が参加。新たな家族を待つ保護犬と保護猫の中には、少し緊張した様子の元野犬もいれば、すやすやと眠るマイペースな子犬もいて、その可愛さに来場者の多くが足を止めて見入っていたのが印象的でした。 

 

会場内にはレスキュー現場での活動の記録も展示されており、普段なかなか目にすることのない保護活動の実態に触れることができます。加えてステージでは、保護活動にまつわるトークショーも開催。主催者である桐山さんと保護団体代表によるリアルな保護活動の話は、想像以上にハードな内容もあり、思わず来場者が驚いたり目を潤ませるシーンも。 楽しくオシャレな雰囲気にこだわって開かれているイベントですが、その柱となる保護活動への啓蒙のためにも、リアルな保護活動の様子を直接発信できるトークショーは大切な時間。足を運んでくれた人たちへ、保護犬と保護活動を知ってもらい、自分にもできることがあると気づいてもらえたら、というメッセージが込められています。 

 

イベントに訪れる人を楽しませてくれる最大の魅力となっているのが、「オシャレな譲渡会」の名にふさわしい、数々の出展ブース。アパレル業界で生じる廃棄レザーをアップサイクルしたバッグチャームやポーチ、犬と人が一緒に食べられるおやつ、安心安全な無農薬野菜、プレミアムドッグフードなど、気になるアイテムがずらりと並び、どこも大盛況です。ここで購入できる商品は全て、桐山さんが自信を持ってお勧めするものばかり。「実際にお取り寄せしている無農薬野菜や、ワンちゃんと食べられるおやつなど、自分が本当に欲しいものや好きなものにこだわって、出展者さんにオファーするようにしています」(桐山さん)

 

愛犬を連れて来場する人に嬉しいのが、体験型ブース。今回は、人気アーティスト、ヤナギダマサミさんによる似顔絵やプロカメラマンによる撮影、ドッグマッサージや犬のご飯の相談、さらには獣医による犬の健康相談など、犬が主役のブースも充実しています。 

 

■「迎える」だけじゃない。保護活動に参加する方法はいろいろある 

 

新たに犬を迎えようと思っていなくても、気軽に参加できる工夫がいろいろと施されているのも、このイベントならでは。入り口横ではチャリティフリーマーケットが開かれ、その横にはキッチンカーも。フリマを覗いたりランチを買ってひと休みしたりと、偶然通りかかった人が立ち寄りやすくなっています。 

 

また、イベントでの売り上げの一部は保護団体への寄付とするなど、自分や愛犬のために買い物をするだけでも保護活動に参加できる仕組みを実現。さらに会場では毎回、保護活動で大量に必要となる古タオルを回収しており、自宅で使わなくなったタオルを持ち寄るだけでも、保護活動をサポートできます。 

 

「保護犬に対してできることって、とてもたくさんあるんです。ここに来て、自分にもこんなことができるんだって知ってもらえたらなと思っています」と桐山さんがいうように、「オシャレな譲渡会」に遊びに行くこと、保護犬を知ることも全て支援に繋がるのです。保護犬や保護活動に興味があっても、何をしていいかわからないという人にとって、この譲渡会は「自分にできること」を見つける道標になるのかもしれません。 

 

■「誰でも気軽に立ち寄れる場所」を目指す

 

このように、構えずに訪れられるオープンなスタイルが功を奏し、このイベントでは今まで何頭もの保護犬・保護猫が家族と出会うことができました。例えば、会場の目の前を通りかかって足をとめた人が犬の里親になったり、特に犬好きではなかったけれど、偶然訪れて気づけば保護犬を2頭お迎えしたり・・・。人が集まる都心でのイベントだからこそ生まれる、動物と人との出会いがあるのです。そして犬や猫たちがその後幸せに暮らしている様子を見聞きすることが、主催者の桐山さんにとっての大きな喜び。「犬を迎える予定がなくても、以前犬と暮らしていてまた犬と暮らしたい人も、飼えないけれど犬に会いたいという人も、犬が好きな人もそうでない人も、みんなが集まって保護犬のことを知ることができる、そこからできることを見つけられる、このイベントをそんな場にしていきたいと思っています」(桐山さん) 

 

*後編では、モデルとして活躍する一方で、「保護犬のいない世界」を理想に掲げるイベントの主催者、桐山マキさんにその思いをお聞きします。 

 

■プロフィール:桐山マキさん 

大阪府箕面市出身。2005年、雑誌「PINKY」の専属モデルとして、モデルデビュー。STORY等様々な雑誌や、国連の出版物等の表紙・紙面で活躍中。また、自らの経験を活かして、保護犬をめぐる啓発活動をファッションやライフスタイルを通して展開している。 

 

取材・文/前田聡美 

撮影/大森文暁(f-me)

2026年6月27日 福井新聞ONLINE

 

動物虐待事件や多頭飼育崩壊の通報を受けるたび、私はいつも同じことを思う。 「なぜ、こんなことになるまで誰も止められなかったのだろう」と。

 

 近年、犬や猫をはじめとする動物たちを救うために、活動する保護団体が全国各地で増えている。行政だけでは救いきれない命を抱え、新たな飼い主へとつなぐ活動は、社会にとって大変重要な役割を果たしている。一方で、その陰で深刻な問題も起きている。本来ならば動物を守るはずの団体が、結果として動物たちを苦しめてしまう事例が後を絶たないのだ。

 

写真は犬のイメージ。本文とは関係ありません

 

先日、空港で出会った外国人旅行者に「なぜ日本へ来たのか」を尋ね、そのあとの旅や人生に密着する人気ドキュメンタリー・バラエティ番組で、千葉県にあるエキゾチックアニマルの保護施設が取り上げられた。長年にわたり多くの視聴者から支持されている番組だけに、その影響力は決して小さくない。

 

実は、その施設の運営者は、過去に当協会Evaと他団体が共同で刑事告発を行い、その後、動物愛護管理法違反により有罪判決を受けている。

 

当協会に寄せられた通報者からの写真を見ると、当時の施設内は本当に言葉を失うほど劣悪だった。室内の床はまさにゴミだらけ。その中に、壊れたプラスチックのケースや小動物用の飼育ケース、糞がいっぱいに積もったペット用のトイレが転がっていたり、汚れたタオルや毛布らしきもの、動物がいる場所にガラスの破片が散乱し、それらがどれもみな泥や草、動物の毛と糞と埃にまみれていた。

 

大型のオウムやカラスもいたから、すべての物に上から下へと滴り落ちた糞が固着していた。しかも他の動物に攻撃されたであろうハリネズミの死骸は皮だけになり、ぺしゃんこにつぶれていた。そして人間のトイレは、小鳥の部屋になっていて、壁紙は剥がれ、トイレの壁も給水タンクも便座もおびただしい糞と羽にまみれていた。そんなゴミと糞の間から犬や猫や鳥が、所在なくうなだれている写真に胸が苦しくなった。

 

今回、放映されたテレビ番組では、「愛と緑にあふれた命のシェルター」、「帰る場所をなくした動物を癒やしている施設」といった好意的な内容で紹介されていた。もちろん、現在の施設の衛生状態や飼育環境について、私は確認できているわけではない。だから、「今も問題がある」と断定するつもりはない。過去に動物虐待で有罪判決を受けた事実がある以上、メディアがその経緯や現場を十分に検証しないまま、視聴者に好意的な印象だけを与える形で紹介することには大きな違和感を覚える。

 

放送では、林の中の大きな一軒家で、犬や猫以外にもエミューや鶏、リクガメ、豚、ミーアキャット、コウモリ、イグアナなどの野生動物が約70頭暮らしていた。そこに通いのボランティア数名と短期滞在の外国人が数名で飼育をしている。どうみても人手不足だ。

 

しかも室内で数羽のコウモリが飼われていたのには驚いた。コウモリは多くのウイルスの自然宿主になりやすく、特に注意すべきは糞からの空気感染だ。乾燥した糞は細かな粒子となり空気中に舞い、それを吸い込むことで肺の感染症を引き起こすことになる。そんな健康被害のリスクがありながら、ボランティアを受け入れていることも問題だ。

 

動物保護という分野では、「保護している」という言葉だけで信頼を得やすい。しかし実際には、保護していることと、適正に飼育管理していることは全く別の問題である。

 

さらに、5月には、東京都品川区で活動していた動物愛護団体「保護犬猫の家ななちゃんのおうち」の代表による多頭飼育崩壊が大きく報じられた。

 

保護したはずの動物たちは劣悪な環境に置かれ、多くが衰弱し、命を落としたと報じられている。報道では、39匹が保護されたが、一時は同時に70匹飼っていたそうだ。それもそのはず。各社報道によると、室内からは計約100匹分の骨や死骸が見つかったそうだ。自分1人で世話をするのが馬鹿バカしくなったと言っているから、みな衰弱し次々と餓死していったのだろう。生き延びていた犬は、飢えから目の前の死骸を食べていたそうだ。また、室内からは悪臭防止法で住宅地に適用される規制基準(1ppm)を大幅に超える濃度のアンモニア数値133ppmが検出されたという。人間より優れた嗅覚を持つ動物にとって、どれだけ苦痛であったか想像に難くない。

 

しかも、この逮捕は、近所の方々からの通報だ。取材では、舞ってくる毛が肺に入ったら困るから、毎日毎日ご近所の皆さんで我慢して掃除していたと。そして周囲にはいつも悪臭が漂い、昼夜を問わず、犬の大きな鳴き声が聞こえていたそうだ。品川区がこの団体に行政指導を行っていたそうだが、問題を認識していたにもかかわらず、改善させることができなかったのだ。

 

保護団体による問題というと、悪意をもった人物が動物の保護をうたい金だけ集め、動物のためには使われていないというケースを想像する人もいるだろう。確かにそのような例も存在する。しかし実際には、もっと複雑なケースも少なくない。当初は純粋な善意から活動を始めた人が、次第に保護依頼を断れなくなり、飼育頭数が増え続ける。資金が不足する。人手が足りない。休むこともできない。やがて生活が破綻し、精神的にも追い詰められ、気づいた時には自分自身では管理できない状態に陥っている。本人は「救っている」と思っていても、結果として動物たちは不衛生な環境で暮らし、適切な医療も受けられず、ネグレクトに苦しむことになる。つまり問題は、一部の悪質な団体だけではない。善意だけでは動物は守れないという現実だ。

 

現在、保護団体の多くは動物愛護管理法上の「第二種動物取扱業」として活動している。しかし第二種動物取扱業は、基本的に届出制であり、第一種動物取扱業のような登録制度ではない。そのため、飼育管理に重大な問題があったとしても、行政が事業の登録を取り消して活動停止させるという仕組みが存在しない。届出さえ行っていない団体も少なくない。これは制度上の大きな欠陥である。もちろん、真面目に活動している保護団体まで過度な規制で苦しめるべきではない。しかし、だからといって現状を放置する理由にはならない。動物を預かる以上、一定の飼育基準や管理能力を満たしていることを第三者が確認する仕組みは必要だ。むしろ、適正な活動を続けている団体ほど、そのような制度を歓迎するのではないだろうか。信頼できる団体と、そうでない団体を社会が見分けられるようになるからだ。

 

私は次期動物愛護管理法改正において、第二種動物取扱業も第一種動物取扱業と同様に登録制を導入すべきだと考えている。行政による定期的な確認。飼育頭数や人員体制の把握。改善命令に従わない場合の登録取消し。こうした仕組みがあって初めて、動物たちを守るためのセーフティネットになる。

 

動物保護は尊い活動である。しかし、善意だけでは動物は守れない。どれほど崇高な理念を掲げていても、飼育管理が破綻すれば、そのしわ寄せはすべて動物たちに向かう。だからこそ、保護団体にも適切な監督とチェックの仕組みが必要なのだ。保護活動を評価する基準は、活動者の熱意や理念ではない。そこにいる動物たちが健康で、安全に、尊厳を守られながら生きられているかどうかである。その当たり前を担保するためにも、第二種動物取扱業のあり方を見直す時期に来ている。保護団体への信頼を守るためにも、そして何より、これ以上「保護」の名の下で苦しむ動物を生まないためにも、制度の見直しは待ったなしの課題なのだ。(Eva代表理事 杉本彩)

 

⇒「杉本彩のEva通信」をもっと読む

 

※Eva公式ホームページやYoutubeのEvaチャンネルでも、さまざまな動物の話題を紹介しています。

 

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 杉本彩さんと動物環境・福祉協会Evaのスタッフによるコラム。犬や猫などペットを巡る環境に加え、展示動物や産業動物などの問題に迫ります。動物福祉の視点から人と動物が幸せに共生できる社会の実現について考えます。

2026年6月30日 日テレNEWS

 

 

県内で2025年度に殺処分された犬と猫の数が、初めてゼロだったことが、県のまとめでわかりました。

県によりますと、2025年度に動物愛護管理センターで保護した犬と猫について、収容中の死亡と安楽死を除いた殺処分数が、初めてゼロとなりました。

県ではこれまで、野犬が多いことなどを背景に、犬の殺処分数が全国ワーストとなるなど、大きな課題となっていました。

しかし2025年度は、収容数703頭のうち譲渡数が483頭で、譲渡率が過去最高となるなど、動物愛護団体と連携し、野犬の人馴れ訓練や県外への譲渡ネットワークの活用など、譲渡推進に向けた取り組みを進めてきたということです。

県は「今後も殺処分ゼロを維持・継続できるよう努める」とコメントしています。