2026年4月21日 茨城新聞クロスアイ
水戸刑務所(茨城県ひたちなか市市毛)は、飼い主がいない犬を世話することで、受刑者の更生につなげる「保護犬育成プログラム」に力を入れている。誰かの役に立つ喜びや思いやりの心を育むのが狙い。犬にとっても、人への信頼を取り戻して譲渡先が決まるまでの訓練になる。昨秋から試験的に導入し、外部団体と連携して新たな更生の在り方を模索している。
受刑者と触れ合う保護犬のゼロ=ひたちなか市市毛の水戸刑務所内(画像の一部を加工しています)(Ibarakishimbun)
■悲しげに鳴く
高い塀に囲まれた施設内で3月中旬、緑の作業服を着た7人の受刑者が、3匹の保護犬とボールで遊んだり、菓子をあげたりして約1時間過ごした。
3匹は、飼い主に捨てられたり、動物愛護センターに保護されたりした犬たちだ。雄のジャーマンシェパード「ゼロ」(8カ月)は、飼育放棄されて引き取られたばかり。この日が初めての参加で、見慣れない受刑者におびえて悲しげに鳴き、更生プログラムの講師の足にしがみついていた。
「鼻にボールを近づけて持ち上げると、犬は座る。できたら褒めて」。講師の助言を受け、受刑者はゼロにとって初となる「お座り」の練習に挑んだ。失敗を繰り返しながらも、最後には成功。「よくできた。利口だな」と目を細め、優しくなでた。
■「誰かの役に」
法務省は、全国9カ所の刑務所と刑務支所で同様の更生プログラムを導入している。水戸刑務所は昨年9月から、犬の保護や譲渡に取り組む一般社団法人「ワンダフルパートナー」(水戸市)と協力。高齢者や障害のある受刑者が月1回、保護犬と触れ合い、しつけや世話に当たっている。
交流の最後の頃には、ゼロも受刑者のそばに寄り添うようになった。名前を呼ばれると、うれしそうに受刑者の顔をじっと見つめた。
人間を恐れていた犬と、罪に向き合う受刑者。思い通りにいかない交流の中で、受刑者は責任感や自尊心、思いやりの心を育む。参加した受刑者は「子どもの頃を思い出した」と笑顔を見せ、別の受刑者も「相手の気持ちが分かるようになった気がする」と手応えを語った。
同刑務所の担当者は「誰かの役に立っているという感覚に気付くきっかけになってほしい」と期待を寄せる。講師を務めた磯崎正悟さん(37)は「失敗を乗り越えようと頑張る犬の姿を通じ、自分たちも次の一歩へつなげていこうという思いになるといい」と話した。





