2025年3月24日 読売新聞オンライン
笑みを浮かべているような顔つきから、「世界一幸せな動物」として愛されるクオッカが埼玉県こども動物自然公園(東松山市)に来園して、今月で5周年となる。これまでは1日数時間しか公開できなかったが、新しい展示施設が完成したことで、開園中はほぼいつでも会えるようになった。国内でクオッカを見られるのは同園だけで、さらに人気が高まりそうだ。(住友千花)
クオッカのつがい2組が来園したのは2020年3月。繁殖に成功し、現在は9匹を飼育している。
今月13日に新設した屋内展示室は、夜行性のクオッカが活発に動けるよう、照明の調整機能を備えた。約15平方メートルの2部屋を用意。来園者はガラス越しに観察できる。口角が上がった顔を下からのぞき込めるように、床面を高く設計するといった工夫も凝らしている。
新設のために園は昨年6月から募金を開始し、集まった約1150万円が整備費用に使われた。
園には、クオッカを目当てに県外からも多くの人が訪れている。ぬいぐるみやトートバッグなど約20種類のクオッカグッズを販売しており、動物別の売り上げはトップという。
クオッカグッズを見せる田中園長(11日、県こども動物自然公園で)(読売新聞)
すっかり人気者になったクオッカだが、迎え入れるまでの道のりは長かった。1986年から園に勤務する田中理恵子園長(61)が、豪州南西部の島でクオッカと出会ったのは2002年。いつかは園に迎えたいと思ってきた。
10年以上が過ぎた17年、クオッカを飼育展示する企画が持ち上がった。だが絶滅危惧種に指定されている動物を譲渡してもらうのは簡単ではない。田中園長は、豪州の動物園や水族館関係者が集まる会議に出席。英語で書いた約70ページの提案書を豪政府に提出した。
飼育スペースの写真を送ったり、獣医師や飼育員を豪州の動物園に研修に送り出したり、万全の受け入れ態勢を取っていることをアピールした。活動が認められ、来園が実現した。
園内には、クオッカの生態や生息環境を紹介するパネルなどが展示されている。田中園長は「『かわいい』だけではなく、クオッカが暮らす環境などに目を向けて、動物たちの未来も考えてほしい」と話している。
園は5周年を記念して、「私の推しクオッカ」をテーマにフォトコンテストを実施している。クオッカの写真とエピソードなどをインスタグラムに投稿する。5月末まで。優秀作品に選ばれた人には、豪州行き往復航空券が贈られる。詳細は園ホームページ(https://www.parks.or.jp/sczoo/)。
◆クオッカ=豪州南西部に生息するカンガルーの仲間で体長40~55センチ、体重2・7~4・2キロ・グラム。国際自然保護連合は絶滅危惧種に分類しており、世界に7500~1万5000匹が生息しているという。