【若紫37-2】☆理由説明問題の解き方☆
源氏物語イラスト解釈
【これまでのあらすじ】
天皇(桐壺帝)の御子として産まれ、容姿・才能ともすぐれていた光の君は、幼くして母(桐壺更衣)を亡くし、臣籍に降下、「源氏」姓を賜り、左大臣の娘葵(あおい)の上を正妻にもらいました。一方、帝の後妻である、亡き母によく似た藤壺宮(ふじつぼのみや)への恋慕、そして、中流の女空蝉(うつせみ)との一夜限りの情事、プライドの高い六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)との逢瀬、物の怪による夕顔の急死…。光源氏の恋は成就することなく、尽きせぬ恋慕を重ねていくのでした。
ただ今、第五帖「若紫の巻」です。夕顔が亡くなった翌年、光源氏18歳の3月(春)に、瘧病にかかって、その加持祈祷のために、北山に訪れます。そこである僧都の屋敷を垣間見ることとなります。
【今回の源氏物語】
かく言ふは、播磨守の子の、蔵人より、今年、かうぶり得たるなりけり。
「いと好きたる者なれば、かの入道の遺言破りつべき心はあらむかし」
「さて、たたずみ寄るならむ」
と言ひあへり。
↑
―――――――――――――――――――
☆ 古文オリジナル問題~理由説明問題~☆
―――――――――――――――――――
かく言ふは、播磨守の子の、蔵人より、今年、かうぶり得たるなりけり。
「いと好きたる者なれば、かの入道の遺言破りつべき心はあらむかし」
「さて、たたずみ寄るならむ」
と言ひあへり。
問)傍線部の理由として最も適当なものを1つ選べ。
1.五位に昇格した自分も、いずれは明石入道の娘の婿候補として名前があがるはずだと思い、その前に明石に乗り込んで、名声を得ておこうと思っている。
2.五位に昇格した自分は、父親の時とは違い、明石入道の娘との婚姻を果たせるはずだから、明石にこっそり出向いて、入道の遺言書を破り捨てておこうと思っている。
3.五位に昇格した自分は、気位の高い明石入道と同類になったはずだから、娘の婿候補としてゆくゆくは地元で力をつけておこうと、時々明石に出向いている。
4.五位に昇格した自分は、明石入道の希望に添う身分ではないけれど、なんとか婿候補として名乗りを上げたいと思い、事あるごとに明石に出向いている。
5.五位に昇格した自分も、明石入道の娘と釣り合いが取れる身分となったはずだから、たとえ入道が反対しようと、強引に娘を奪おうと明石に時々出向いている。
古文読解には次の3つの力が必要です。
⑴ 古文単語を覚える
⑵ 古典文法を理解する
⑶ 古文常識を把握する
今後の入試は、思考力・判断力が重視されます。
中でも、理由説明問題は
大学入試のラスボスです!
きっちりポイントを押さえて、
理由説明問題の極意をマスターしましょう♪
【たたずむ(佇む)】
【自動詞:マ行四段活用】
①しばらく立ち止まる
②その辺をぶらつく
【よる(寄る)】
【自動詞:ラ行四段活用】
①接近する。近寄る
②一箇所に集まる。寄り合う
③訪れる。立ち寄る
④頼りにする。すがる
⑤気持ちが傾く。心ひかれる
*『全訳 古語例解辞典』より
まずは、傍線部の一語一語をきっちりつかんで
文脈の内容を掌握していきましょう。
では、なぜ
「たたずみ寄る(=明石の辺りをぶらついている)」
のでしょうか?
【理由説明問題のポイント】
● 傍線部前後の状況を確認する。
● 直前の「已然形+ば」などから、傍線部の根拠となる状況を探る。
直前部分に、
「いと好きたる者なれば」とあります。
【すく(好く)】
【自動詞:カ行四段活用】
①異性に興味を抱く。好きになる
②浮気である。好色である
③風流にふける。こる
【他動詞:カ行四段活用】
…よいと思って求める。このむ
*『全訳 古語例解辞
つまり、この男は
「好色だから」⇒「明石をぶらついている」
という因果関係となります。
播磨守の子の、蔵人より、今年、かうぶり得たるなりけり。
播磨国の国司(国守)は、基本的に六位なので
地下(ぢげ)と呼ばれる、殿上に昇殿を許されない
中流階級以下の身分です。
明石入道は、そのために
代々の国司からの縁談を断っていたのでしょう。
しかし、この男は、
今年、蔵人(くらうど)として五位に叙せられた
(=かうぶり得たる)とあります。
だから、
地下でなくなったこの男は
こういう気持ちが根拠となって
明石をぶらついていると読み取れますね。
1.五位に昇格した自分も、いずれは明石入道の娘の婿候補として名前があがるはずだ(×ナシ)と思い、その前に明石に乗り込んで、名声を得ておこう(×ナシ)と思っている。
2.五位に昇格した自分は、父親の時とは違い、明石入道の娘との婚姻を果たせるはずだ(△スギ)から、明石にこっそり(△ナシ)出向いて、入道の遺言書を破り捨てておこうと思っている。
3.五位に昇格した自分は、気位の高い明石入道と同類になったはず(×ズレ)だから、娘の婿候補としてゆくゆくは地元で力をつけておこう(△ズレ)と、時々明石に出向いている。
4.五位に昇格した自分は、明石入道の希望に添う身分ではない(△)けれど、なんとか婿候補として名乗りを上げたいと思い、事あるごとに明石に出向いている。
5.五位に昇格した自分も、明石入道の娘と釣り合いが取れる身分となったはず(△)だから、たとえ入道が反対しようと、強引に娘を奪おうと(△ナシ)明石に時々出向いている。
五位蔵人は、明石入道の念願に添う身分なのでしょうか?
直接的には書いてないけれど、
「遺言を破りつべき」とあることから、
入道の意向には、まだ添う身分になっていないと考えるのが妥当ですね。
【答え】…4