【夕顔311-2】「はふれ」って…なぁに?
このイラスト解釈では、毎回1問ずつ、
古文の問題を載せています。チャレンジしてみてねっ!
源氏物語イラスト解釈
【これまでのあらすじ】
天皇(桐壺帝)の御子として産まれ、容姿・才能ともすぐれていた光の君は、幼くして母(桐壺更衣)を亡くし、臣籍に降下、「源氏」姓を名のり、左大臣の娘葵(あおい)の上を正妻にもらいました。一方、帝の後妻である、亡き母によく似た藤壺宮(ふじつぼのみや)への恋慕、そして、中流の女空蝉(うつせみ)との一夜限りの情事、プライドの高い六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)との逢瀬…。光源氏は尽きせぬ恋を重ねていくのでした。
ただ今、「4.夕顔」の巻です。17歳の光源氏は、五条にひっそり住まう夕顔の君に恋をし、彼女を廃院に誘いますが、夕顔は物の怪に襲われ急死してしまいました。部下の惟光(これみつ)に命じて夕顔の葬儀を終え、光源氏は失意のまま二条院へと戻ります。
【今回の源氏物語】
いみじく御心地惑ひければ、
「かかる道の空にて、はふれぬべきにやあらむ。さらに、え行き着くまじき心地なむする」
とのたまふに、
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☆ 古文オリジナル問題~法政大版:現代語訳~ ☆
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いみじく御心地惑ひければ、
「かかる道の空にて、はふれぬべきにやあらむ。さらに、え行き着くまじき心地なむする」
とのたまふに、
問)傍線部現代語訳として最も適当なものを、次の中から1つ選びなさい。
1.きっと夕顔はさまよっているにちがいない。
2.夕顔をこのまま葬り去るべきではないだろう。
3.無事に帰り着くことができないにちがいない。
4.きっと自害してしまいそうになるのではないか。
5.のたれ死にしてしまおうというのであろうか。
法政大学2009年度の入試古文では、
源氏物語の「東屋」巻の一節が出てきていました。
上の問題は、その中で問4に即した、現代語訳の問題です。
法政大は、けっこうこのような、基本の問題も多いですので、
きっちり知識をかためて入試に臨みましょうね♪
ただし、5択のうち、残り2択は、
文法などの基本事項では絞りきれず、
文脈判断や古文常識に頼らざるを得ない部分も出てきます。
このブログで、出てきたものから文脈判断や古文常識の知識・読解力を身につけていきましょうね!
さて、今回出て来たなかで、特に選択肢の識別に絡む古語は、
「はふる」という動詞です。
「はふる」という動詞は、私の手持ちの辞書には
「溢る」と「放る」が書かれています。
傍線部は「はふれ―ぬべき」と確述用法で続くので、
「はふれ」が連用形だとわかりますね。
ならば……
【はふる(溢る)】
【自動詞:ラ行四段活用】
…(上代語)あふれる
【はふる・はぶる(放る)】
【他動詞:ラ行四段活用】
…放ち捨てる。追放する
【自動詞:ラ行下二段活用】
①よりどころもなくさまよう。さすらう
②落ちぶれる
※『全訳古語例解辞典(小学館)』より
このうちの、ラ行下二段動詞である「放る」の意味となります。
ちなみに、確述用法とは、
完了+推量と助動詞が続く場合で、
この完了の助動詞「つ」「ぬ」の文法的意味は、強意です。
光源氏は、馬からすべるように下りて、
「放」り出されたような気分にひたっているのですね!
【解答】 5