【夕顔235-2】古文常識☆乳母子「惟光」☆ | 【受験古文速読法】源氏物語イラスト訳

【夕顔235-2】古文常識☆乳母子「惟光」☆

古文読解する際、「いつ」「どこで」「だれが」のイメージをしっかり持てるかが大切。そういう意味で、古文常識が必要になってくるんです。

今回は「だれが」に着目☆

腹心の部下惟光から、従者というものをイメージしよう♪

源氏物語イラスト解釈ラブラブ

 

【これまでのあらすじ】

天皇(桐壺帝)の御子として産まれ、容姿・才能ともすぐれていた光の君は、幼くして母(桐壺更衣)を亡くし、臣籍に降下、「源氏」姓を名のり、左大臣の娘(あおい)の上を正妻にもらいました。一方、帝の後妻である、亡き母によく似た藤壺宮(ふじつぼのみや)への恋慕、そして、中流の女空蝉(うつせみ)との一夜限りの情事、プライドの高い六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)との逢瀬…。光源氏は尽きせぬ恋を重ねていくのでした。

ただ今、「4.夕顔」の巻です。17歳の光源氏は、惟光(これみつ)の実家の隣家にひっそり住まう夕顔の君に執心し、女の家で一夜を明かした後、彼女を廃院に誘いますが、夜半、夕顔は物の怪に襲われて急死してしまいます。

 

【今回の源氏物語】

「惟光、とく参らなむ」と思す。ありか定めぬ者にて、ここかしこ尋ねけるほどに、夜の明くるほどの久しさは、千夜を過ぐさむ心地したまふ。

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 ☆ 古文常識~腹心の部下 惟光~ ☆

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平安王朝文学の場合、

よく貴人の身のまわりの世話をする従者が出て来ます。

 

 

今回出て来た随身(ずいじん)は、

光源氏に国がつけた従者で、身分はそれほど高くなかったでしょう。

 

 

…廂の間にも入れなかったくらいですからね;;

 

 

一方、光源氏が、早くやって来るのを願っている惟光は、

「惟光朝臣(これみつあそん)」とも言われるように、

五位以上の貴族であったと考えられます。

 

 

 

実は、この惟光――。

 

『源氏物語』の登場人物の中で、

フルネームで出て来る数少ない登場人物の一人です。

びっくり

 

藤原惟光(娘の呼称が「藤典侍」ということから)は、

光源氏乳母子(めのとご)です。

 

【乳母子(めのとご)

【名詞】

①乳母の子。乳兄弟

②後見役の人の子ども

 ※Weblio古語辞典より

   矢印

乳母子というのは読んで字のごとく、乳母の子どものこと。

 

乳母子の役割は、性別、階層、時代によっても異なりますが、


惟光のように男性貴族なら、

主人の走り使いから、女性のあっせんまで務める、

腹心の部下となります。

 

 

貴族の子どもが誕生したとき、

ちょうど同時期に子どもを産んだ女性の中から、

乳母(めのと)が選ばれます。

 

 

光源氏は、帝の子ですから、

乳母も、ある程度の身分の女性が選ばれたんでしょう。

なので、乳母子も「惟光朝臣」なんですね。

ニヤリ

 

乳母は、母乳が出ている最中なので、

乳母子は、主人よりも少しだけ誕生が早いと考えられます。

 

惟光も、光源氏と同年齢か、少し上の年齢でしょう。

そして、同じ乳を飲みながら、主人の遊び相手になり、

ともに育ちながら、家族的な主従関係を築いていくのです。

 

 

乳母一家は主人一家と一蓮托生なうえに、

兄弟同然に育った「情」も加わり、主従の絆はさらに強くなります。

 

 

このような、忠実で頼れる惟光は、

光源氏にとって、なくてはならない存在のようです。

 

 

また、この惟光

 

光源氏の好色ぶりを不快に思いながらも、

光源氏と夕顔を引き合わせるために奔走しています。

 

 

…なんて、不謹慎なことを思いながらも、

献身的に主人に尽くし、ささっと気配りができる人です。

 

主人の恋の暗躍をしつつも、ちゃっかり夕顔の侍女と仲良くなったりして…、色好みが良しとされた当時では、有能だと言えるでしょう。

 

 

このような有能な側近、惟光――☆

 

光源氏が、早く来てほしいと心底頼っている状況は、

納得できますよね~。

チュー

 

 

 

ところで、

「惟光」の「惟」という字には、いろいろ説があります。

 

 

①「唯々諾々」の「唯」と同じ意味

 「惟惟(いい)」で、「はいはい」という承諾の返事で

 「命令にはいはい従うさま」につながるため、

 「光のイエスマン」だったのではないかという説。

 

 

②「唯一」の「唯」と同じ意味

 「唯一(ゆいいつ)、光源氏のみ」という意味で、

 ただ、光源氏だけを主人としてあがめる、という説。

 

 

③「惟(おも)う」という字義

 「惟光」という名は、「光(源氏)を惟(おも)う」と読める。

 つまり、常に光源氏の忠実な家来であることを示すという

 意味が込められているとする説。

 

 

ちなみに、三省堂の『デジタル大辞林』によると、

 

【惟光(これみつ)

【名詞】

①源氏物語の主人公光源氏の家来の名

②(①が主人の機嫌をとり忠実にその命を守ったところから)幇間(ほうかん)。たいこもち

 

 

 

今後も惟光の忠臣ぶりが、多く出てきますが、

 

彼の人となりをイメージすることで

平安当時の主従関係のあり方

理解してほしいと思います。

ヽ(*・ω・)人(・ω・*)ノ

 

 

 

 

 

 

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