【夕顔171-2】古文知識の総合☆和歌解釈☆
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源氏物語イラスト解釈
【これまでのあらすじ】
天皇(桐壺帝)の御子として産まれ、容姿・才能ともすぐれていた光源氏は、幼くして母(桐壺更衣)を亡くし、臣籍に降下した。帝の後妻である藤壺宮(ふじつぼのみや)が亡き母に似ていると聞き、思い焦がれるようになる。
ただ今、「4.夕顔(ゆうがお)」の巻。中流階級の空蝉(うつせみ)との仮初めの恋を経て、現恋人の六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)にも、正妻の葵上(あおいのうえ)のもとにも心が向かないでいる光源氏は、惟光(これみつ)の実家の隣家にひっそり住まう、夕顔の君に心惹かれ、こっそり通うようになりました。いざよう月の中、光源氏は夕顔を連れ出し、なにがしの廃院に向かいます。
【今回の源氏物語】
「…慣らひたまへりや」
とのたまふ。女、恥ぢらひて、
「山の端の心も知らで行く月は
うはの空にて影や絶えなむ…」
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☆ 今回の古文オリジナル問題~和歌~ ☆
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「…慣らひたまへりや」
とのたまふ。女、恥ぢらひて、
「山の端の心も知らで行く月は
うはの空にて影や絶えなむ…」
問)傍線部の和歌の説明として、最も適当なものを1つ選べ。
1.今回のように男に連れ出された経験はあるかという光源氏の質問に対して、女は恥じらいながら、自身を月によそえて、そんな経験はないと誇り高く詠んでいる。
2.あなたは男慣れしているのかという光源氏の侮蔑的な質問に対し、女は恥じ入って、自分の身が見透かされたように感じ、羞恥心に消えてしまいたいと思っている。
3.今回のような男女の旅寝などを経験したことがあるかという光源氏の探りに対して、女は恥じらいながら、曖昧な返歌でこたえ、男が消えてしまう不安な心情を訴えている。
4.あなたは男女の仲を経験したことがあるかという光源氏の直接的な質問に対し、女は自分の過去が見透かされたと感じ、羞恥で消え入りそうになっている心情を訴えている。
5.今回のように夜道を男と二人で出歩いた経験はあるかという光源氏の質問に対し、女はそんな経験があったかどうかも上の空で忘れてしまったと、間接的に返歌を拒んでいる。
この歌の解釈は、いくつかあるようです。
『日本古典文学大系』(岩波書店)では、
山の端(源氏)の本心も知らなくて、誘われるままについていく月(私)は、途中の大空で、きっと捨てられて消えてしまうことでございましょう。
『古典セレクション』(小学館)でも、
山の端がどういう気持でいるのかも知らずに、そこを目ざして渡ってゆく月は、 もしかしたら空の途中で姿が消えてしまうのかもしれません。
と、光源氏を「山の端」に、夕顔を「月」にたとえています。
たしかに、月は山の端をさして西へ向かうので、
この解釈は、妥当と言えますね。
このように 「月」を夕顔、「山の端」を光源氏と解釈し、
「影や絶えなむ」は、夕顔の死を暗示する
と捉えるのが、一般的なようです。
光源氏の「経験したことがあるか」という質問に対して、
なんだかちぐはぐな返歌になっているのも、
光源氏と夕顔との、気持ちの隔たり、とか、
夕顔の「上の空」とかいう説明がされています。
…ですが、その説明を除いたとしても、
「山の端」を光源氏にたとえる、というのは、
なんかちょっと、違うような気がしました。
(;・`ω・´)
光源氏を「山の端」にたとえるのは、
紫式部の和歌として、駄作のような気がします。
たしかに夕顔は、光源氏の身分を知らないという設定ですが、
それにしても、夕顔のような身分の女が、
光源氏のような貴公子を、「山の端」にたとえるのは、
非常に失礼ですよね。
( ゚Д゚)クワッ
…なので、昨日のイラスト訳では、
…と、
夕顔=「山の端」
光源氏=「月」
と捉えました。
あの山の端にいざよっている月のように、
どこかにふらふらとあくがれて行く貴方――。
やがてそのお姿は、私の前から消えて(=私を捨てて)しまうのではないでしょうか。
…ですが、この解釈でも、
光源氏の「経験したことがあるか」という質問に対する答えになっていませんよね;;
(;゚;∀;゚;)
私がよく参考にさせてもらっている「国語教員Hiro様のBlog」によると、
「月」は、夕顔の元から消えてしまった頭中将を指すのではないか、という、斬新な解釈をされておられました。
私がどういう気持ちでいるかも知らずに、山の端から月が離れていくように夫は離れていき、上空で雲に隠れるように消え去ってしまいました。あなた様もそうなるのではないかと不安でたまりません。
これなら、確かに光源氏の質問の答えになってますねっ!
いずれの解釈にせよ、
夕顔は、光源氏の愛に浸りながらも、不安を払拭できずに
光源氏に導かれて、不安におののいているのは間違いないですね。
【うはのそら(上の空)】
【名詞】
①天空。空中。そら
②あてにならないこと。根拠がなく不確かなこと。また、そのさま
③他の事に心が奪われて、そのことに注意が向かないこと。また、そのさま。心が浮ついて落ち着かないさま
*goo国語辞書より
Weblio古語辞典には、①の意味しか載っていませんが、
②や③の意味も重ねてみると、
夕顔の心情が推察できますね。
(灬ºωº灬)
以上をふまえて、選択肢の正誤を吟味しましょう♪
(o^-')b
1.今回のように男に連れ出された経験はあるかという光源氏の質問に対して、女は恥じらいながら、自身を月によそえて、そんな経験はないと誇り高く(×ズレ)詠んでいる。
2.あなたは男慣れしているのかという光源氏の侮蔑的な質問(△スギ)に対し、女は恥じ入って、自分の身が見透かされたように感じ(△ナシ)、羞恥心に消えてしまいたいと思っている。
3.今回のような男女の旅寝などを経験したことがあるかという光源氏の探りに対して、女は恥じらいながら、曖昧な返歌でこたえ、男が消えてしまう不安な心情を訴えている。
4.あなたは男女の仲を経験したことがあるかという光源氏の直接的な質問に対し、女は自分の過去が見透かされたと感じ(△ナシ)、羞恥で消え入りそう(△ズレ)になっている心情を訴えている。
5.今回のように夜道を男と二人で出歩いた経験はあるかという光源氏の質問に対し、女はそんな経験があったかどうかも上の空で忘れてしまった(△ズレ)と、間接的に返歌を(×)拒んでいる。
正解……3