【夕顔125-2】「狩の御衣」を「たてまつり」?
源氏物語イラスト解釈です
【これまでのあらすじ】
天皇(桐壺帝)の御子として産まれ、容姿・才能ともすぐれていた光源氏は、幼くして母(桐壺更衣)を亡くし、臣籍に降下した。帝の後妻である藤壺宮(ふじつぼのみや)が亡き母に似ていると聞き、思い焦がれるようになる。
ただ今、「4.夕顔(ゆうがお)」の巻。中流階級の空蝉(うつせみ)との仮初めの恋を経て、現恋人の六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)にも、正妻の葵上(あおいのうえ)のもとにも心が向かないでいる光源氏は、惟光(これみつ)の実家の隣家にひっそり住まう、夕顔の君に心惹かれ、こっそり通うようになりました。
【今回の源氏物語】
いとことさらめきて、御装束をもやつれたる狩の御衣をたてまつり、さまを変へ、顔をもほの見せたまはず、
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☆ 「たてまつり」の解釈 ☆
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敬語の中でも、
「たまふ」「たてまつる」は、特に重要!
なぜって…
尊敬語と謙譲語、
両方が重要なんですから!
(;゚;∀;゚;)
では、ここで、対策問題をひとつ☆
いとことさらめきて、御装束をもやつれたる狩の御衣をたてまつり、さまを変へ、顔をもほの見せたまはず、
問)傍線部の説明として、最も適当なものを選べ。
1.「与ふ」の謙譲語で、光源氏に対する敬意を表す。
2.「食ふの尊敬語で、光源氏に対する敬意を表す。
3.「着る」の尊敬語で、光源氏に対する敬意を表す。
4.「遣る」の謙譲語で、惟光に対する敬意を表す。
5.「贈る」の尊敬語で、惟光に対数敬意を表す。
実は、この前半部分の説明――
全部、辞書的には、正しい内容なんです。
【たてまつる(奉る)】
【他動詞:ラ行四段活用】
①差し上げる(「与ふ」の謙譲)
②お伺いさせる。参上させる(「遣(や)る」の謙譲)
③召し上がる(「飲む」「食ふ」の尊敬)
④お召しになる(「着る」の尊敬)
【自動詞:ラ行四段用】
…お乗りになる(「乗る」の尊敬)
【補助動詞:ラ行四段用】
…お~申し上げる(謙譲)
*学研全訳古語辞典(Weblio古語辞典)より
…辞書ではややこしいので、
整理すると、こういうことです。
(*^o^*)↡
つまり、
「たてまつる」には、
尊敬語も、謙譲語もあるんです。
「狩の御衣」とは、
貴族が平服として着る狩衣(かりぎぬ)のこと。
「狩衣」については、
明日の重要古語で、詳しく説明しますねっ♪
☆^(o≧▽゚)o
「狩の御衣を」という目的語なら、
考えられるのは、次の2つ。
A.狩衣を―献上する(「与ふ」の謙譲)
B.狩衣を―お召しになる(「着る」の尊敬)
1.「与ふ」の謙譲語で、光源氏に対する敬意を表す。
3.「着る」の尊敬語で、光源氏に対する敬意を表す。
では、どちらが正しいのか?
(゚_゚i)
こうして選択肢を絞ってから、
文脈判断するようにしましょう。
いとことさらめきて、御装束をもやつれたる狩の御衣をたてまつり、さまを変へ、顔をもほの見せたまはず、
読点(、)部分、
すべて、単純接続または連用中止法ですね!
つまり、すべて主語が同じになります。
この場合は、
最後の部分「ほの見せたまはず」が尊敬語であることから、
主語は、すべて光源氏です。
…ならば、
1.「与ふ」の謙譲語(×)で、光源氏に対する敬意を表す。
3.「着る」の尊敬語(○)で、光源氏に対する敬意を表す。
謙譲語が述部にあるはずがありませんね。
(^~^)
正解…3