トチーちゃん「あのう、一度、お雛様にお伺いしてみたかったのですけれど…おねがいドキドキ
お雛様は、どのようにお内裏様と出逢われて、結ばれましたの?ほんわかハート
いつ見ても、とてもお二人仲が良くて、お幸せそうなので…ラブ
 
 去年のバレンタインデーのお内裏様&お雛様🎎💖

 

お雛様「さよう…実はわらわは、我が背の君とは、妹背(いもせ)の誓いを交わすまで、顔を合わせたことは一度も無うてのにっこりコーヒー
 
トチーちゃん「……へっ!?びっくりハッ
 
お雛様「我らよりも下位の身分の者たちの恋となると、互いの顔を見て、伴侶を見定めるものなのかもしれぬがの。
我ら殿上に住まう者のしきたりとしては、御簾越しに歌を交わし、相手の胸の内を確かめ、心が通じ合った時、初めて、逢瀬という形をとりまするのでのおやすみ
ラーク「でも、あの…それで、不安になったりはしないんでしょうか。
結ばれるまでに、一度も相手の顔を見ないなんて…😟💦」
 
お雛様「無論、不安にならぬこともないが、…顔を見て相手を見極め、愛しみ合わば、相手の深き心の奥底が、必ずや解る…というものであろうかの?うーん
案外、それならそれで、相手の外見や肩書だけで、相手の性格まで理解し得た心地になってしまい、見目さえ麗しれば、全ての難を覆い隠すほどに、目の眩んでしまうものでもあろ。
『見目かたち』は、心の昏き闇を覆い隠す、恐ろしき御簾やもしれぬと、わらわは思うこともありまするおやすみ

トチーちゃん「なまじっか、顔なんて見ない方が、純粋な思いで、相手が本当に誠意ある人かどうかをを見定められる場合も、あるかもしれない、ということなのでしょうか…驚きあせる
 
おばあさん「私は、昔、亡き夫フェニックスの容姿に惹かれたわ。少なくとも、恋のきっかけは、間違いなくそうね。…彼は、今のラークにそっくりでね、とてもハンサムな青年だったのよおやすみキラキラ
もし、フェニックスの外見がパッとしなかったとしたら、私は彼に恋をしなかったのかしら。途中から、彼が全く違う姿になってしまったとしたら、私はあの人を愛さなくなったかしら🤔
今となっては、解らないわ。…兎に角、私は、あの人が全力で好きだったのよほんわかハート
でも…視覚に惑わされる恋も多い、というのは、その通りかもしれないわねおやすみ

ラーク「う…確かにそれを言われると、一言もありませんな…おねだり汗
相手の外貌やスペックだけを見て、本質を見誤って、失敗したという人が、古今東西、どのくらいいるか。
いや、国家の在り方や倫理観すら、それで大きく踏み誤った国々も…ダウンチーン
 
鉢かつぎ姫。元の名は初瀬姫。光輝くような美少女だったが、仏のお告げを受けた生母から、頭に鉢を被せられる。生母と死別後、その異様な姿の為、どこへ行ってもいじめられ、一時は入水自殺まで図るが、遂に、姫の見た目ではなく、心映えの優しさ美しさを一途に愛してくれる男性と巡り合い、幸せになる…という昔ばなし。日本版、美女と野獣。

 

太古の昔、茨城県の筑波山麓では、春秋、男女が酒肴を持ち寄り歌を詠み愛し合う、驚くべき性開放的な行事「歌垣(かがい)」が行われていました。
常陸風土記の「歌垣」の記述。「筑波嶺」は恋の枕詞。こちらは一般庶民の愛のかたち。

…面白豆知識を。

夫婦や恋人、兄妹を表す「妹背」という古語、女性の方が先になっているのに気づかれたでしょうか。他に「女男(めをと)」「母父(おもちち)」といった古語もあります。
儒教や仏教、後にはキリスト教といった「女性」を「穢れ」とする海外の男尊女卑思想が入り「女男(めをと)」が「夫婦(めおと)」に変わってゆく前の日本は、実は、女権・母権の強い社会だったのです。
最高神である天照大御神は女神、卑弥呼も女王。江戸時代に入っても、妻をおかみ(神)さん、山の神などと呼んでいたのも、日本人のDNAにのみ流れる、女性を神聖とし、崇め敬う意識から来ていました。
 

お雛様「何が正しきことかは、げに解らぬものじゃの。恋の道に、正も誤も無いのやも知れぬ。

…わらわはその時分、五人の公達と、恋歌を詠み交わしておりましてのにっこりラブレター

 
トチーちゃん「えっ、あらまあ。そんなに大勢の求婚者がおられたんですの?驚きハッ
まるで、竹取物語のようびっくりお雛様、殿方に大変な人気がございましたのね照れドキドキ
…では、その五人の求愛者の中でも、とりわけ歌詠みの上手であらせられたのが、お内裏様だった…ということなのかしらおねがいキラキラ

お雛様「否…我が背の君は、その五人の内でも、わけても、たどたどしい詠みぶりをしておられたのじゃ🤭」
 
ポムちゃん🍎🍏「ええっ…!?そうなの?驚き
 
トチーちゃん「おっ、お内裏様は、一番歌詠みが下手…いえ、お上手ではなかったんですの?滝汗
…では、一体何故…汗
 
お雛様「今でこそ、我が背の君も、一人前の歌人と世に認められるようになったがの。当時の我が殿には、詩作は、大学寮で学ぶ教養の内でも、特に不得手の科目であったようじゃ。
逆にわらわの方は、その時分には、歌詠みの名手と聞こえ高く、しかも見目も麗しく、小野小町の生まれ変わりやもしれぬと、都中に評判が立っておったそうでのにっこり…尤も噂ばかりが高く、話に長き尾ひれはついておるがの…汗
 
ポムちゃん🍎🍏「お雛様の方は、六歌仙の一人に例えられるほどの、詩歌の達人だったんだねロップイヤー

小野小町。六歌仙中、唯一の女流詩人。

百人一首の札にも、よくこの姿で描かれ、恋多き美女だったと言い伝えられていますが、この札絵のお陰で、大きな誤解が。

平安初期の人物とされる小野小町の時代には、十二単(平安中期頃に完成)はまだ無く、本当は小野小町は、下のような唐風の衣装↓でなくてはおかしいのです。…因みに持統天皇も。 

お雛様「次から次へと、新たな恋文が寄せられ、殿中の女房たちも、その対応に追われ、多忙で泣かんばかりになっておった。
わらわを妻に迎えんとて、都中の歌詠み人が、わらわの知らぬ所で、しのぎを削っておったのじゃろうの。このままおけば、女房たちの仕えにも差し障ることになる。
やむを得ず、それらの文の中から、わらわは五人の公達の文だけに、歌を返すことに致しましたのじゃおやすみ
 
ラーク「僕が文系じゃなく、田舎育ちの不粋な理系男だから、そう感じるだけかもしれませんが…
詩人として優秀でなくては、恋も出来ないなんて、何だか、物凄く理不尽なことのように思えてしまうのですが…えー?汗
歌の詠めない、甘い言葉の囁き方をしらない男は、勿論女性もでしょうけど…一体、どうしたら?とえーん
ポムちゃん🍎🍏「でも…よく考えてみると、良い大学を出て良い会社に就職して、高いお給料を貰えてないと、結婚に不利だとか、文化部じゃなくて、野球部やサッカー部なんかの『カッコいい部活』に入らないと、恋愛に不利だとか、ダンスやボーリングやカラオケが上手じゃないと、恋人を作れないとか、決闘で勝たなければ、恋愛に辿り着けないとかいうのと、それ、本質的には変わらないんじゃない…?ネザーランド・ドワーフ
その理不尽を、ポムたちは当たり前だと思って生きてるけど、それはお雛様の国に行ってみたら、仰天するくらい理不尽なことなのかもしれないし。
お雛様たちの国の文化では、その秀でてなくてはならない分野が『詩作』の能力だった…というだけで」
 
お雛様「我が日の本は、古来より海に囲まれ、他と争うことの多うない、和を重んずる国じゃからの。
恐らく『武』よりも、人同士の心を取り結ぶ『文』の能力の方が、価値が上であったのでおじゃろうのにっこり晴れ

ラーク「なるほど…アセアセ
 
おばあさん「それに…
お雛様は、五人の殿方の中で、一番おぼつかない詠み方をしていたお内裏様を、背の君としてお選びになったのでしょう?ニコニコ
だとすれば、最終的な判定基準は、詩作の巧拙では無かった…ということよねほんわか
 
お雛様「いかにも。
我が国には『言霊信仰』というものがありましてな。
まずはその言霊を交わし合い、互いに相手の思いを言葉で確かめ合い、通い合った時に、初めて結ばれるのでのラブラブ
 
ラーク「言霊?…ですか…アセアセ

トチーちゃん「兎に角、それで…
お雛様は、ひっきりなしに名乗りを挙げてくる大勢の殿方の中から、これなら長く交際を続けてもいいかもしれない、と思われた五名の公達を、まず、お選びになった…というわけですのねおねがい
 
お雛様「さなり。…どの殿方からの恋歌も、それぞれ大層、ゆかしきものでの。
枕詞を含む様々な技巧をちりばめて、わらわへの切なる思いを綴り、わらわが歌を詠めば、打てば響くような気の利いた返歌をくれる者、文には遠つ国の上質な紙を用い、それに香を焚きしめ、季節の花や枝などの雅やかな飾りを添える者、女心が揺さぶられるような、力強く熱情溢るる詩歌を詠む者、難しい漢詩や遠国の故事を巧みに歌に織り交ぜ、教養の高さ深さを伺わせる者。
大輪の花のように色鮮やかな、そのとりどりの文の中で…我が背の君の詠みぶりは、実に素朴で無邪気な、技巧も裏表もないものでの。
だのになぜやら、その幼子のように透明で、純粋な歌は、初めて目にした折から、わらわの心を妙にとらえて、離さなんだのじゃおやすみ

ラーク「……なるほど…🤔」
 
お雛様「…ああ、この文に添えられた草花は、この詩には合うておらぬ。この引用された漢詩は恐らく、他の詩と取り違えておる。

この歌に至っては『恋歌』ではなく、今日、御殿の外でかような珍しきものを見たという『報告』じゃえーんこは何てふ、安げ無き読みぶりであろ。

されどまあ、この殿御はさながら、野で見つけた小さき花を見せんとて、母の元に走り来る童、否、外の広き世界をば、我と共に見んとて、御簾の外より囀ずり呼ばう、小さき鳥のようじゃの🤭

…と、しばし辛き批評を下し、我知らず込み上げ来る笑みを堪えつつも、わらわの女房どもも、わらわも、誰ともなく、その一途で屈託なき若き殿御を、次第に憎からず思うようになり『鴬(うぐいす)の君』と密かに呼び慕うようになりました。

鴬の、澄んだ囀ずりの聴こえぬ日は…その殿の手紙の届かぬ日には、いかに心ときめく恋文が他に届こうとも、皆、何がなし、心虚しゅうてのおやすみハート

 

ラーク「…………」

我が園の 梅のほつえに うぐひすの 音に鳴きぬべき 恋もするかな  

~古今和歌集巻十一 四九八~ 
「庭の梅の小枝に鳴く鴬のように、ともすれば声をあげて泣き出してしまいそうな、切ない恋をしています」
 
お雛様「わらわの心の、遂に定まりしは、わらわが、忌むべき流行り病を患った折でおじゃりました。
日々、疎ましいほどに来ていた手紙や文が、燃え盛る炎に水をかけたかのように、はたと途絶えての。それまでは、迸る如き思い溢るる文を、日々寄越していた公達らは、わらわがいたつきに伏し、見る影なく痩せ衰えたという噂が立つや、一言の見舞いの文も、容態を訊ねる言の葉すらもなく、皆、散り散りに去りゆき申した。…ま、その重篤の噂もまた、相当に尾ひれのついたものであったのでおじゃるが。
…風のたよりに聞いたには、彼らには既に皆、それぞれに、多くの恋人たちや妻や子があったと。…無論、男女とも、常に複数の恋人のあるのが、当たり前の世であったのではあるがのおやすみ

トチーちゃん「まぁ……🥺」
 
お雛様「わらわが病みしより前に『あれほど心ときめきするお文を下さる方々なのですから、きっといずれも優れた公達なのでございましょう。遊び慣れた殿御でも良いではござりませぬか。仮寝の宿を貸し合うつもりで、一夜の色恋を楽しんでみられては…』と秘かに囁く、色恋ごとに長けた女房たちもあったのじゃが…わらわは、かかる火遊びは好かぬたちでな。
かの殿御らの不実の知れた後には、逆に、胸を撫で下ろしました。…煩わしき色恋のつばぜり合いに、巻き込まれずに済んだとぼけーDASH!
ラーク「そうでしたか。そんなことが…ショボーン
 
おばあさん「どれほど書きぶりが優れてはいても、甘く美しい言葉が並べられてはいても、その殿方たちの恋歌が、お雛様の心に響いてゆかなかったのは、魂が…言霊がそこに入っていなかったからだったのねおやすみ

お雛様「されど…その寂しき病の床にも、ついぞ変わることなく、朝ごとに一輪の草花を、恋文と共に届けてくれた公達が、ただ一人だけ、ござりましてのニコニコ
その文はいつも、朝露にそぼ濡れて、軒下に控え目に置かれておりました。添えられた草花はやはり、歌の内容とピタリとは噛み合うておりませなんだ。
だがわらわは、その素朴な鴬の鳴く懐かしき声に、どれほど、心慰められましたことかおやすみ恋の矢

ポムちゃん🍎🍏「お内裏様の『言霊』が、お雛様の心の深い場所に入って、溶け合った瞬間だったんだねうさぎハート
 
お雛様「いかにも、まことおやすみラブラブ

・・・
「梅に鶯」よく言われるけど、そう銘打たれた絵に描かれる「うぐいす色」の小鳥は、大体メジロ。
ウグイス、外見は本当に地味で、美声とのギャップが凄い鳥。そして藪の中を好み、人前には滅多に出てきません。梅の枝に留まる姿も、メジロと違い、ほぼ見かけることはない。
また、この「ホーホケキョ」という美しい「囀り」はオス特有のもの。メスは(オスも)「チャッチャッ」という「地鳴き」をします。

 

朝寝髪(あさいがみ) 我は梳(けづ)らじ 

愛(うつく)しき 君が手枕(たまくら) 触れてしものを

~万葉集 巻十一 二五七八~

 

「朝、寝乱れた髪を、私は梳きません。

愛しいあなたの手枕が触れて、乱れた髪なのですから」

 

「接吻(クリムト)」から構図を借りました。

・・・・・

 

「一番細い髪の毛で」F.オブラドルス

あなたのお下げ髪の中で

一番細い髪を選んで

私は鎖を編みましょう

あなたを私の傍に繋ぎ止めておきたいから

 

あなたの家の水瓶に

乙女よ 私はなりたいのです

あなたが水を飲むごとに、

あなたに口づけが出来るように

…ああ!