主人公にあまり感情移入できないのが欠点だけど、終盤は泣けてくる一作

 

「ありきたりな言葉じゃなくて」は映像業界で起きた実話をもとにしたドラマ映画。ドキュメンタリー映画「LE CHOCOLAT DE H」で注目を集めた渡邉崇さんが監督・脚本を務め、前原滉さんが主演した。出演は小西桜子さん、内田慈さん、奥野瑛太さんら。

 

ストーリー:32歳の藤田拓也は中華料理店を営む両親と暮らしながら、テレビの構成作家として働いている。念願のドラマ脚本家への道を探るなか、売れっ子脚本家・伊東京子の後押しを受け、ついにデビューが決定した。しかし、浮かれた気持ちの拓也は泥酔してキャバクラを訪れてしまう。そこで出会った女性「りえ」と意気投合した拓也だった。次の日の朝、ホテルで起きた拓也。そこにりえの姿はなく、連絡がつかなくなる。ようやく連絡がつき、会いに行くと、そこにはりえの彼氏を名乗る男が現れ、「拓也にりえが襲われた」と告げる。テレビ局にバラされたくなかった拓也はその示談をのんでしまうが……。

 

良い映画だったと思います。特に終盤は自然と涙が流れてくるくらい、心の機微を丁寧にすくい取った作品でした。

が、個人的にはあんまり合わなかったです。

というのも、主人公の藤田拓也が全然受け入れられなくて。マジで自業自得じゃねえか!って思ってしまったんですよね。

まず泥酔して自分の正体をなくしてしまうっていう時点ですごく嫌でした。そんな浮かれているから足元すくわれるんだよ!って思いましたし、テレビ局からもらった脚本を出会ったばかりのりえに渡してしまうところとか、プロ意識も危機感もなすぎです。

正直、ありえないと思いました。本気で脚本家目指してるのに、こんな軽率なことしてしまうのか?って。

よくこのレベルの意識でプロの現場行けるな。って思いました。昨今はいろいろと情報漏洩に対して厳しいので、この危機管理って脚本家としての第一歩だと思うんですよ。それをおろそかにしているのに、デビューのチャンスをつかめるなんて信じられませんでした。

で、自分の言葉ではなくて、他人から言われた言葉で物事を語るし、何でこんな奴がドラマかけるんだよ、って思いました。

もちろんこの拓也の緩さが物語の進行には不可欠なんですが、これがちょっと受け入れられず。

厳しい状況になっても人に相談もせず、自分一人で突っ走って、結局窮地に陥るってパターンばかりで、全然応援できないんですよね。

りえが何故こんなことをするのか、とかを考える以前に、拓也に隙がありすぎて観てられないって感じでした。

ただ、そこが気にならない人にとっては全然問題ない映画だったと思います。

演技とか上手かったし、映像も良かった。話のテンポも良くて、どんどん物語が展開していくのも良かったです。

なので、とにかく主人公が無理だったというだけなんですよね。

窮地に陥る主人公を、普通に応援したかったんですよ。だけど、これなら仕方ないね。これはもう干されて当然だよね、って思っちゃいました。そうなるとあんまり物語に興味を持てなくなってしまうので、うーんって感じになっちゃいました。

良い映画だったと思うんだけどなあ。題材も良かったし。

 

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