注目すべき経済政策 -49ページ目

日銀が国債の直接引受をしてもインフレやハイパーインフレにはならない

政府の中でも復興債の発行を認める考え方もあります。


そして、自民党や民主党の経済に明るい議員が

超党派で日銀の直接引受を提言しています。



問題は日銀がこれを承認するかどうかですが、

肝心の白川方明総裁は否定的な見解を示しています。



与謝野馨経済・財政担当相、野田財務大臣、民主党の岡田克也幹事長も

「財政規律を乱す」という理由で導入に否定的です。


当然、その結果出てくるのがインフレやハイパーインフレに対する懸念です。


これは、お決まりの文句にもなってきた感がありますが、

以下のように反論をすることができます。


まず、現在はデフレ経済です。


そして、失業者や遊休設備をフル稼働させた時に達成されるGDPと

実際のGDPとのギャップであるデフレギャップは、

震災前で20兆円ありました。



つまり、日銀が国債の直接引受をしたとしても、

20兆円まではインフレになりません。


30兆や40兆を投入したとしても、インフレは高くても数%程度です。

心配するレベルではありません。


ましてや、ハイパーインフレになる確率は極めて低いと言えます。



ハイパーインフレは年率数百%を超えるものですが、

経済学者の高橋洋一氏の推計では、

国民一人当たり一億円を配らない限り起きないとされています。


「財政規律が乱れる」というのは、平時でも継続して実施した場合であって、

震災などの非常時では話は別です。



また、被害相当額プラスアルファにとどめておけば、

過度なインフレになることはありません。


インフレ目標値を設定することで、財政規律を保つことができます。


さらに国債の日銀引受は、国家に資金が入ります。


金利負担は、すべて国庫に入るので財政にも優しい制度です。


財政法5条では、日銀の直接引受は原則禁止されていますが、

「特別な事由」によって国会で議決を経れば、いつでも発動ができる但し書きがあります。


未曾有の被害が発生している現状が「特別な事由」にあたらずして、

何が「特別の事由」にあたると言うのでしょうか?



政府首脳や白川総裁は固定観念や前例主義によって反論しているに過ぎません。


今こそ非常時であり、十分に「特別な事由」にあたる震災なのですから、

ためらうことなく復興債の日銀直接引受を断行すべきではないでしょうか。

震災復興税は、国民の財布の紐を閉める

政府は14日、「復興構想会議」の初会合を開き、

五百旗頭議長は「震災復興税」の創設等の基本方針を明らかにしました。


6月末に第一次提言が出される予定です。



「復興税」導入を主張している経済学者やエコノミストは少なくありません。


一橋大学経済研究所の小黒一正准教授は、

「今回の震災により財政破綻確率は高まった」と指摘し、

対策として「復興税の導入と社会保障改革の同時推進」を主張しています。


緻密なシミュレーションを紹介しているので、一見説得力があるように見えます。


小黒氏の場合は、本年度は復興支援による経済成長の可能性は高いので、

震災の影響は限定的だと推計。


来年度以降は、国債の発行はさらに財政赤字を膨らませるので、

復興税を導入して財源を確保すべきだという論理です。


但し、氏が推計しているように、本当に震災の被害は「限定的」だと言えるのでしょうか。

たとえ、復興債の日銀引受を実施したとしても、効果が表れるには1年程度はかかります。


さらに、もともとデフレギャップが20兆円もあったことを考慮すれば、

来年度に復興税を導入するというのは早すぎると言わざるを得ません。


来年度に増税をしたとしても、税収が確定するのは翌年です。


現在は震災復興を急ぐべき時であり、増税を急ぐ理由はありません。



氏の研究を読むと

「財政赤字が将来の世代の負担になることを回避する」という発想が強く出ています。


実際に、財政赤字が将来世代の増税に繋がるという理論はありますし、

このまま無策であれば可能性は高いでしょう。


しかしながら、現在は未曽有の震災被害を食い止める方が優先順位は高いのです。


財政再建を急ぐ気持ちは理解しますが、

経済の復興には時間がかかることや、

震災による人々のマインドが消費や投資を冷え込ませている状況を考えれば、

氏の見解は結果的に国民の財布の紐を閉める結果を招き、

逆説的に財政破綻確率を高めかねません。

増税は日本経済を停滞させる

東日本大震災の復興計画が進みつつありますが、

依然として消えないのが復興財源の確保を狙いとした「復興増税」です。


自民党の谷垣総裁が震災直後に言及したことから始まり、

今では有名な経済学者が民間シンクタンクのエコノミストが

一斉合唱のように「復興税」について触れています。



高名な伊藤元重東京大学大学院教授は、

復興財源としての「復興債」発行を認めています。


しかしながら、同時に伊藤教授は「復興税導入」も提言しています。


当面は、復興財源として消費税を5~10%に引き上げ、

復興後は社会福祉の財源に回すという案です。



あるいは、炭素税の課税を強化して、将来的には環境税にするとも言及しています。


はたして、この政策は正しいのでしょうか?



東日本大震災の被害額は確定していませんが、

おそらく20兆円以上はかかるとの試算も出ています。


被害を受けた地域のインフラが破壊されたこともあり、経済損失は計り知れません。



同時に、福島の原発事故とそれに伴う風評被害、自粛ムード、計画停電等が輪をかけており、

経済のダメージは相当なものになるという予測が出ています。



伊藤教授は、財源の数字合わせをしたのでしょう。


ただ、現実には、不況に加えて震災被害が出ている中での増税は、

ますます消費を冷え込ませ、日本経済を停滞させる可能性の方が高いと言えます。



増税論者達は、日本経済が増税しても税収が増えていない実態や、

消費税増税によって財政が改善していない実態をどう捉えているのでしょうか。


「復興税」導入を主張している経済学者やエコノミストは、

実体経済が分かっていないのではと思えます。