ドイツのミステリ「刑事オリヴァー&ピア・シリーズ」の第3作で邦訳1作目。最初に第8作『森の中に埋めた』を読んだ頃(2021年1~2月頃)に、原作刊行順と翻訳刊行順が少し違うという話を聞いていたはずなのに、すっかり忘れて読んだのが2023年2月のこと。手元にあった第9作『母の日に死んだ』の次に読んだのでした。もう順番がしっちゃかめっちゃかよ……!

 まあ1冊で1つの事件が完結するので順番通りでなくてもいいんですけどね。新しい方を読むと、旧作の事件の話が出てきたりして多少ネタバレがあるぐらいのもので。

 このころ病気をしたこともあり、心身ともにだいぶへたっていて、本作については読書メーターや旧Twitterに感想を書く元気もなかったようです(読了記録だけはつけていた)。読んだのは覚えているし面白かったんですけどね。

 

 少し前に『銃弾の庭』を読んで『ミレニアム 1 ドラゴン・タトゥーの女』を思い出し、ミレニアム読んだときに第二次世界大戦の記憶ってまだまだ生々しいんだなと思ったのを思い出したのですが、本作もそういう印象。

 ホロコーストの生き残りのユダヤ人と思われていた人物が、実はナチスの武装親衛隊員だったという驚愕の事実が露見するところから始まります。死んだのは一体誰で、手を下したのは誰なのか、関係する人物の誰もが身元を偽っていて、嘘また嘘の中、真相に辿りつくまで、粘り強く捜査をしていく、パワフルかつ読み応え十分のお話でした。

 本作が邦訳1作目とされたのは、翻訳の酒寄進一氏いわく作者の真価がわかる作品を紹介することにしたからだとのことですが、まさにまさに。第1作でも(そしておそらくその後の作品でも)後ろ暗いところのありそうな人物が山と出てきて、その嘘を他の証言や記録、物的証拠などから丹念に解きほぐすという流れだったんですけど、本作ではそのスコープが第二次世界大戦時にまで伸びるので、スケールが大きく感じました。歴史ミステリの趣もあり、隠された事実がまた衝撃を齎す力作でした。

 原作での刊行順で読み始めたら、順番通りに行くことにして、もう1回読んでもいいなぁ。