『ベイビー・ブローカー』 | アディクトリポート

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『ベイビー・ブローカー』

2022/06/30 ユナイテッド・シネマ テラスモール松戸 7スクリーン D-07

 

『PLAN 75』鑑賞後に、

同じシネコンの別スクリーンで鑑賞。

 

ところが、

『PLAN 75』を気合いを入れて鑑賞した疲れもあったのか、

加えて猛暑をはるばる電車/バスでたどりつき、

快適な室内冷房環境に身を置いた結果だろうか、

『ベイビー・ブローカー』の上映開始からしばらくの記憶がないほど寝落ちしてしまい、

気がつくと主人公たちの乗ったクルマが、田舎道でパトカーに停められている場面だった。

 

その後は寝落ちせず最後まで見通して、

いくつかのシーンに心揺さぶられ、

作品には好印象しかなかったが、

とにかくこれではまともなレビューが書けない!

 

なにしろ登場人物の導入、紹介場面をことごとく見逃しているため、

その場に居合わせている人たちが何者で、

いかなる経緯で共に行動しているのか全くわからず、

「きっとこうなんだろうな」と、勝手に推測するしかないんだから!

 

そういやこの前、ディズニープラスで、

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)を観てみたら、

ほとんど初見のように、

全く隅々を覚えてなくてガクゼン。

 

改めて当時のレビューを見返したら

案の定、ほとんど寝落ちだった様子だけが伝わって来た。

 

まさか『ベイビー・ブローカー』も、そこら辺をしらばっくれてレビューを書くわけにも行かず、

これまで保留にしていたが、

2022年7月7日に、

近場のイオンシネマ越谷レイクタウンで再見し、

いおん

2022/7/7 イオンシネマ越谷レイクタウン スクリーン4 B列 6席

 

今度こそは最初から最後まで寝ないで見通したので、

ようやく今頃レビューを書きます!

 

是枝裕和(これえだ・ひろかず)作品といえば、

『誰も知らない』(2004)にせよ、

だれしら

『空気人形』(2009)にせよ、

づな

『そして父になる』(2013)にせよ、

『万引き家族』(2018)にせよ、

 

眠くなることなど一度たりともなかったが、

どうして『ベイビー・ブローカー』は、冒頭のかなりの部分を寝過ごしてしまったのか?

 

作品のせいじゃない、きっと夏の暑さのせいだ!

 

そういえば世間的には大好評、大絶賛だった、

やはり韓国映画で、本作と同じソン・ガンホが主演の『パラサイト 半地下の家族』(2019)も、

2020/1/10 TOHOシネマズ新宿 スクリーン7 F-19

 

冬の暖房の快適さに負けて、

しこたま寝たっけな。

 

……。

夏は冷房が快適、

冬は暖房が快適で寝落ちするって、

もはや基本的な映画観客としての資質が失格だろ!

——ってことは白々しく棚上げして、

『ベイビー・ブローカー』は、

私が初回鑑賞の前半をごっそり寝過ごしてもなお、

じゅうぶんに映画館での鑑賞に値する佳作としてオススメできる。

 

映画館で観るべし!

に関しては、

私とは異なる観点ながら、

こんな自分のクソブログよりもよほど核心を突いている、

この方(小林でび)の、このブログをご参考に!

 

 

さてさて、是枝作品で描かれる劇中の出来事は、

凄惨や陰惨、猟奇的で常人の理解を超えるものばかりだが、

だからといって劇中の登場人物たちは常人の理解を超える異常者ではなく、

むしろどこにでもいそうな一般人なのに、

どこかで運命の歯車が狂ってしまったために、

とんでもない事態に陥ってしまうのが通例。

 

この、事件の凄惨さや猟奇さと、

事件当事者の当たり前の庶民ぶりのギャップが大きいからこそ、

ドラマは驚きに満ちながら観客の共感を誘うわけ。

 

つまり、事件だけを取り沙汰すれば、

「とんでもないことをしでかした犯人はきっと、とんでもなくけしからんヤツに違いない」

と言う先入観と心理的な反発が生じても仕方ないはずが、映画を観ていくうちに、

「同じ立場に立たされたら、自分だってそうなってもフシギはない」

という共感に変わっていくのだ。

 

ところが表層的にしか作品を捉えられない人たちは、

「国や公共団体から助成金を受けて作った映画で、よりによって国や政府の落ち度を暴き立てたり、国の制度や規則に従わない、けしからん奴らの様子を描いて正当化するとはどういうことか!」と叱責、恫喝したりする。

 

『万引き家族』が助成金を受けながら、年金の不正受給者を描いたことで、是枝監督は日本国内での映画製作ができなくなり、

  • 2019年、カトリーヌ・ドヌーヴやジュリエット・ビノシュらをキャストに迎え、撮影監督のエリック・ゴーティエらとともに全編フランスで撮影した映画『真実』を発表(未見)。この作品は2011年にジュリエット・ビノシュに「何か一緒に映画を撮りませんか?」と誘われたのがきっかけで8年の構想かけ実現に至り、第76回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門でオープニング作品として上映され、日本人監督として初の快挙となった。
  • 2021年には『ベイビー・ブローカー』で初めて韓国映画の監督を務め、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、さらに『空気人形』でもタッグを組んだぺ・ドゥナといった韓国の映画俳優が出演。ソン・ガンホは本作で第75回カンヌ国際映画祭男優賞を受賞し、韓国人俳優としては初の快挙となった。
————という経緯を重ねている。
 
『ベイビー・ブローカー』では、韓国各地での名所ロケも映画を引き締めており、
さらにチョン・ジェイルのピアノを基調とした音楽が出色で、観覧車でのはかなげで美しい名シーンが強く印象に残る。
 
 
皆様もぜひ映画館でご覧ください。
 
今回は以上です。