鑑賞記『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』〈その2〉 | アディクトリポート

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この記事(映画『ハン・ソロ』経過報告〈その1〉)の続き。

 

 

前回は、

SW映画はファンなら必ず観るので、

作品の善し悪しと客の入りは無関係

と信じ、

アメリカの『ハン・ソロ』興行不振は、

前作『最後のジェダイ』がファンの拒否反応を買った余波

と推測したが、

実際に映画『ハン・ソロ』を観てみたら、

なるほど不入りが頷ける、

どうにも褒められない出来だった。

——というところまで。

 

今回は、私の評価基準にあてはめて、

低評価にはそれなりの確固たる根拠があることを例証しておこう。

 

話の展開に興味関心が持てない

 

とにかくタイクツで、終始睡魔に襲われた。

もう一度観れば、眠って欠落した箇所を補えるだろうが、

長年の映画鑑賞の経験から、

初回の印象がくり返しの鑑賞によって覆(くつがえ)ったりはしない。


まずは何と言っても、

ハン・ソロの行動動機がさっぱり読めない。

 

そもそも帝国軍に入隊するのは、

故郷コレリアに置き去りにしたカノジョのキーラ(エミリア・クラーク)を救うため…

なのに、

結局キーラは自力で脱出していて、うんと後で偶然、まったく別の場所で再会する。

キーラはドライデン・ヴォス(ポール・ベタニー)という悪党の有能な手下になっていた。

 

ハンはパイロットになると豪語するも、

軍では地上歩兵に配属されて、

宇宙船を操縦する腕もさっぱり磨けず。

 

ケッセル行きが急務となり、

高性能の宇宙船が必要となっても、

それをチャーターする段取りも整えず、

ハンはファルコンの持ち主ランド・カルリジアン(ドナルド・グローヴァー)と、

ギャンブルの勝負に出る。

 
このように、ドラマが段階を追って積み重ならず、
一段一段ふみしめていたはずの、
足元の土台はすくわれまくり。
 
かくして劇中の出来事はブツ切れに並んでいながら因果関係が皆無。
都合良くあちこちがかろうじてつながっているが、
これじゃあ、映画としての全身の血の流れ=有機的な関連やうねりがないので、
観ている方は「ここまで押さえてきた話は反故(ほご)かよ!」とガッカリ。
さすれば話に興味関心が持てず、
ていねいに筋を追う気力も失せるし、
なにより話がスンナリ飲み込めず、
ただただつまらなく、
ひたすらタイクツ。
 
味方と信じた相手に裏切られ、

突然無造作に銃口を向けられる場面なんか「どこかで見た」感バリバリ。

「たしかこの流れ、どっかで見て、その時から感心しなかったよな」

と思い出すのは、

ディズニー駄作の悪しき先例、

『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズにやたらと出て来る、

さっきまで味方だったはずの面々が、

すぐに寝返って、互いに武器を向け合うという、

単なる場面つなぎやグダグダな引き伸ばし手段。

 

「なんでSWが、あんなもの(パイカリ)をマネするんだよ」

とさらに幻滅。

 

『スリー・ビルボード』の時に、

良い映画の評価基準を挙げて、

(良い映画は)

  • 話がスンナリ進まない。
  • 驚きを誘うのは意外性。

「どうせこうなるんだろ」と先読みできるパターン化や予定調和がなく、

まったく予測不能なドラマ展開が続けば、

「この先どうなるんだろう」と興味関心が持続するから、

アクビも出ないし眠くならないので高く評価する。

 

と書いたから、

『ハン・ソロ』にもなんだかあてはまりそうな気がするが、

どっこい、ことごとく外しまくっているんだよ〜。

 

そういうことじゃないんだよ〜!

 

もう一つの評価ポイント、

意外な驚きでポカンと口を開ける

も全くなかった。

 

IMAXは3Dで見たのに、

画面になんの驚きもなかった。

 

いや、口は時々開きましたよ。

眠気を誘われたアクビで。

 

見たいものを見せてくれない

 

『ハン・ソロ』鑑賞でイライラが募(つの)るのは、

ドラマ展開のダメダメさに加え、

映像のダメダメさにも起因する。

 

とにかく、ズバリそのものを見せてくれずに、

AVのボカし処理みたいに、ごまかされ続ける。

 

暗い画面が多く、

たとえIMAXの大画面でも、

チューイーのウーキー同族の女性男性下記コメント参照)サグワ(Sagwa)も、

マンダロアの甲冑(かっちゅう=装甲服)も、

アップで鮮明に映し出されることはない。

 

スター・デストロイヤーも霧?の中、

タイ・ファイターも新型機(armored TIE/rb)の機種の形が把握できないばかりか、

翼の小さい「オモチャ型」なのがいただけない。

新型兵のマッドトルーパーも、

劇中ではその姿が不鮮明と、

観客の欲求不満が募る画面の連続。

 

IMAXの大画面ですら満足に映らなかったんだから、

通常版じゃ推して知るべし。

 

脚本もそうだが、

映像も雑で杜撰(ずさん)。

 

石塔をロケ現場に設置するための引っかけ輪が、

デジタル処理で消されていないみっともなさ。

 

 

隠れ設定や裏キャラの濫用

 

チューバッカがらみで話を進めると、

映画より他メディアでの設定がまかり通っている例に行き着く。

 

メロディー・チューバック(Melody Chubak)という、

天才てれびくんMAX』てれび戦士(2007年度 - 2009年度)だった

現役歌手は、

 

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昔から名前をチューバッカと呼び替えて、からかわれ続けた。

 

彼女はSW映画は観ていないが、

チューバッカについてさすがに調べたところ、

「奴隷状態を救われた」

と、映画では語られていない裏設定だけを知っていた。

 

ちなみに『ハン・ソロ』では、この設定はそのものズバリではなく、

かろうじて“かする”形で映像化された。

 

そのほかにも本作には、

等々のSWゆかりのワードもたくさん出て来るが、

ほとんどセリフ処理だけで、

ビジュアルが提供されず、効果が上がらぬ不発弾。

 

でもってこれなんだが、

これまで顧(かえり)みられなかった、

スピンオフ小説とかのファンにはウケてるそうだが、

私としては猜疑的。

 

なぜなら、どれもほとんど後付けの穴埋め。

映画SWシリーズを観ていただけではわからないことなんだからオマケや蛇足に過ぎず、

そんなことに気を配る前に、

他にやるべきことがあった気がして仕方ない。

 

そういうので喜べる人は、

『秘宝』でも読んでれば?

 

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これは『ハン・ソロ』に始まったことじゃなく、

『エピソード2 クローンの攻撃』(2002)で、

ボバ・フェットの映画外メディア設定が完全無視され、

新設定が披露されたが、

こんなの、

「史実はホントはこうだった」ではなく、「今度こういうことになったんで、ひとつよろしく」

みたいな押しつけに過ぎない。

 

戦犯は誰だ?

 

『最後のジェダイ』の責任者(戦犯)が脚本/監督のライアン・ジョンソンだったように、

『ハン・ソロ』の戦犯も、脚本と監督になるだろう。

 

本作の脚本は、

ローレンス・カスダンと息子のジョン・カスダン。

 

父ローレンスと言えば、

『帝国の逆襲』(1980)

『レイダース/失われたアーク〈聖櫃〉』(1981)

『ジェダイの帰還(復讐)』(1983)

三連発で名を馳せたルーカス+スピルバーグ秘蔵の脚本家。

 

どんだけすごい脚本家やねん!

『白いドレスの女』(1981)

『再開の時』(1983)

『シルバラード』(1985)

等も観はしたが、

『SW』『インディ』シリーズほどの冴えはついぞ見られず。

ホイットニー・ヒューストンの「♪エンダー♪」で有名な『ボディガード』(1992)も、

 

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監督作の『ワイアット・アープ』(1994)も観ていない。

『ドリームキャッチャー』(2003)だけは、ちょっとよかった。

 

スピルバーグは、

よくも『Oh!ベルーシ絶体絶命』(1981・未見)なんぞで、

カスダンの才能を見出したものよ。

 

ジョージ・ルーカスは、

自分の脚本が褒められたできではないと言う自覚があったので、

新三部作『エピソード1/2/3』(1999・2002・2005)の時に、

カスダンに脚本を依頼したが断られた。

 

しかし『エピソード7 フォースの覚醒』(2015)でのカスダン再起用は、果たして成功だったのか?

 

脚本の印象は、ひと言で言えば「雑」

日テレ放送の吹替版は、「もう知ってる話」でもあって、

TV放送の途中でウトウトという空前の体験をし、

CMが入るところで、思わず「つまんねー!」と叫んだ自分に驚いた。

 

思うに、物語の骨子をルーカスとスピルバーグが先に組み立ててくれれば、

カスダンはそれを脚本で軽やかに流すわけだが、

ドラマの骨子を紡ぐ創作力・ドラマ構築力を持ちあわせていないので、

SW経験者だから、うまくやれるというわけでもないのがバレた。

 

ましてや息子のジョン・カスダンなんて、

単なる親のコネで抜擢されただけで、

『ハン・ソロ』を観るかぎり、

脚本の向上に貢献したかはかなりアヤシイ。

 

彼は『インディ5』の脚本も担当予定と知り、

今から思いやられる。

 

監督のロン・ハワードに話を移すと、

作品の出来不出来には波がある。

というわけで、私が観た同監督作では、

初のバツ印がついてしまった。

 

ハン・ソロの若き頃や、

現在に至る因縁をざっと描くなら、

『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989)

の冒頭でスピルバーグが、

インディ・ジョーンズの若き頃(リバー・フェニックス)を、

よほど手際よくまとめていて、

今回のオルデン・エアレンライク(※記述は独自基準)のキャスティングも、

それに準じたものであろうに、

どうにももたつき、効果も上がらず。

 

もっとも、前任の脚本・監督

  フィル・ロード
クリストファー・ミラー
を引き継いだので、
ハワード監督だけを責められはしないが。

 

ただし、くりかえしになるが、

あくまでも私見で、

けっこう気に入っている人も多いらしいので、

さすがに良かった点も挙げておくと、

  • 帝国軍の勧誘ビデオのBGMに『帝国マーチ』が流れていたおふざけ
  • ハン・ソロ役オルデンがハリソン・フォードとイメージがかぶらないのに対し、ランド役のドナルド・グローヴァーは、ビリー・D・ウィリアムスをしっかり連想させる。
様々なレビューがあるが、
私の感想に最も近いのは、
↓これだろう。

 

 

次回はまた観点を変えて、

〈その3〉をお伝えします。