「ウルトラセブン」への道・シリーズ成立(5)/遅れてきたウル伝(11) | アディクトリポート

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久々に、シリーズ成立の過程に話を戻します。

ウルトラQ」も、
$オレたちがやる! 作家集団Addictoeデビュープロジェクト-33

ウルトラマン」も、
$オレたちがやる! 作家集団Addictoeデビュープロジェクト-kuusou
当初は別タイトルだったことからもわかるように、
「ウルトラシリーズ」は
円谷プロにとっては偶然の産物でも、
放送局のTBSにとっては、多分に意図的だった。

スポンサーの意向もあってか、

TBSの日曜午後7時は、武田薬品が単独スポンサーのタケダアワーと呼ばれ、最初の「月光仮面」から最後の「隠密剣士」まで、同局の看板番組が勢揃いしていた。

超人気番組「ウルトラマン」が、(かさむ製作費と逼迫するスケジュールから)3クールで終了やむなしとなって、次回作もウルトラを冠したいTBSは、東映に「キャプテンウルトラ」の制作を依頼。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-きゃあ

「ウルトラマン」の副題
「空想特撮シリーズ」
と紛らわしく、子供には、瞬時には見分けがつかない、
「宇宙特撮シリーズ」
と銘打たれていた。

この番組の画像はこちらで。

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東映ビデオ (2003-05-21)
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「キャプテンウルトラ」はしかし、前番組「マン」とのあまりのギャップに、2クールに2話足りない全24話で終了。
本家、円谷プロ制作の次回作に座を明け渡すことになり、
それが「ウルトラセブン」だった。
$オレたちがやる! 作家集団Addictoeデビュープロジェクト-sebunn

タイトルが「セブン」に落ち着くまでの紆余曲折は複雑なので、
Wikiの記述(青字表示・一部編集)に沿って、解説していこう。

企画時の番組タイトルは『ウルトラアイ』でスタートし、

↓ウルトラアイの名称は、変身用の小道具に受け継がれ、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-gtrふぇds
↑必殺武器が、セブンスラッガーではなく、アイスラッガーと呼ばれるところに、名残が見て取れる。

主役ヒーローの名は「レッドマン」とされた。

ただし「レッドマン」は、「ウルトラマン」の時にも仮タイトルに使われ、
↓より正確には「科学特捜隊レッドマン」
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-domann
後に、すでにそのタイトルの5分帯番組が存在したにもかかわらず、
$オレたちがやる! 作家集団Addictoeデビュープロジェクト-33
「レッドマン」1972年4月24日~10月3日

「ファイヤーマン」の仮タイトルにも再起用されている。
$オレたちがやる! 作家集団Addictoeデビュープロジェクト-123
『ファイヤーマン』1973年1月7日~同年7月31日

2011年12月より、「ミラーマン」「ジャンボーグA」「ファイヤーマン」等の一部円谷タイトルのDVD発売元が、東映ビデオに変更されている。

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その後、タイトルは『レッドマン』に変更されるが、

上述どおり、あくまでもこれは仮の名前で、商標登録を盗まれないための作戦だった。

↓レッドマンの名が表紙に躍る場合、必ず(仮)と断られていることに注目。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-こっち


『レッドマン』(の仮タイトルのまま)撮影開始後に、当時別進行で企画されていた、7人の原始人が活躍するコメディ作品『ウルトラ・セブン』のタイトルが新ヒーローに譲られる形で『ウルトラセブン』が誕生した。

「我らご先祖様ウルトラ・セブン」は、円谷一の個人的な企画で、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-さる
七人の原始人の日常をコミカルに描く実写番組。

試作品の着ぐるみが
戦え!マイティジャック」の
$オレたちがやる! 作家集団Addictoeデビュープロジェクト-maimai
1968年7月6日~12月28日

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発売元を東映ビデオに変更して、2013年5月21日に発売予定。

宇宙猿パッキーに流用された。

$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ばっき

ヒーローにセブン(7)という数字がついているのは、「ウルトラ警備隊の7番目の隊員」だからと、こじつけられた。

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-seven
↑タイトルの意味が如実に記されている、放送当時の番宣ビジュアル(ポスターかハガキ?)

これこそが、
「ウルトラセブン」であって、
「ウルトラマンセブン」ではない
(=7番目のウルトラマンではない)
所以(ゆえん)である。

『ウルトラマン』放映時に、宇宙冒険ものとして『ウルトラ警備隊』という作品が企画されている。
だが『ウルトラセブン』に直接つながる企画ではなく、チーム名や宇宙ものとしての設定が部分的に引き継がれている。


作家集団Addictoe オフィシャルブログ-222
↑「ウルトラ警備隊」「ウルトラアイ」「レッドマン」「ウルトラセブン」と、タイトルの変遷が見て取れる、各種企画書や脚本の表紙。

『ウルトラマン』放送終了後、『キャプテンウルトラ』放送中に練られた「ウルトラ警備隊」の企画案は、宇宙時代に活躍する地球防衛軍隊員たちと侵略者の戦いを描いたもので、
変身ヒーローは登場しない設定だった。

「さらばウルトラマン」での「地球は地球人自らが守る」と言う決意が引き継がれているのかも知れない。(そしてこの決意は、「セブン」最終話でもくり返される)

何種かあったプロットの中には、
普段はウルトラ警備隊の運転手の諸星弾(もろぼし・だん)は、地球人とR星人の混血で、レッドマンに変身する特殊能力を持つ
というものもあった。


「ウルトラ警備隊レッドマン」というタイトル案の時点では、
ウルトラカーの運転手である諸星弾少年はR星人とのハーフで、危機に陥るとウルトラ・アイでR星人レッドマンに変身するという設定だった。

この時点で多用されている「ウルトラ」は、「ウルトラQ」「ウルトラマン」で、その用語が意味する事とは無関係で、あくまでも便宜的な、「スゴイ」「ずば抜けた」「チョー(超)」の意味合いでしかない。

とはいえ、この「ウルトラ」と言う言葉を多用し、強引にこじつける傾向は、すでに「ウルトラマン」第1話のタイトルにも見て取れる。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-だいいち
↑これは科学特捜隊の作戦名で、ヒーローのウルトラマンとは、まるで無関係だった。


主人公を「ウルトラマン」の息子の「ウルトマンジュニア」と呼んだり、カプセル怪獣として『ウルトラQ』『ウルトラマン』の怪獣を起用する案や、バルタン星人の再登場、実制作後にも未発表作品「宇宙人15+怪獣35」で、多数旧作の怪獣の登場が検討されていた。

『宇宙人15+怪獣35』

脚本:上原正三・川崎高(←実相寺昭雄のペンネーム)
準備稿台本43、第4クール未制作。

皆既月食の夜、四度地球に来襲したバルタン星人を追跡したセブンは、地球に接近する怪獣群と出くわして対戦。怪獣たちを倒すが自らも傷ついてしまった。そして傷ついたセブンを尻目に円盤群は続々と地球に結集し、やがて東京に怪獣軍団が集まった。これは地球侵略に失敗した15人の宇宙人たちが手を組んで、やはり今までに敗れ去った35匹の怪獣を蘇生させて結成した「宇宙連合軍」であったのだ。
この情報をなぜか蘇生したピグモンから得た地球防衛軍は、宇宙連合軍の東京壊滅計画を阻止すべく行動を開始するが、いかんせん35匹もの大怪獣群の前ではなす術もない。傷ついたセブンも怪獣に向かうが、力尽きてしまった。地球のピンチである。その時セブンは黄金に輝く大怪獣ゴードを召集する。天空から舞い降りたゴードは怪獣群を退治して、また天空に帰っていった。

予定監督:実相寺昭雄

登場宇宙人等:バルタン星人、メフィラス星人、ペガッサ星人、ゴドラ星人、スペル星人、イカルス星人、ボーグ星人など15体。
ケロニア、ギガス、ギャンゴ、キーラ、ウー、レッドキング、テレスドン、ジェロニモン、ペギラ、スカイドン、ザンボラー、サイゴ、ゴルゴス、トドラ、ネロンガ、ギラドラス、ガンダー、エレキング、ゲスラ、ペスター、ウインダム、アギラ、ピグモン、金星怪獣ゴードなど怪獣35体。

元情報と、このシナリオの経緯は、こちらを参照


実際に制作された作品中では、主人公の故郷がM78星雲であること以外、それまでのウルトラシリーズとの接点はない。

つまり、上原正三や実相寺昭雄にまでは周知徹底されなかったが、金城哲夫や成田亨レベルでは、「ウルトラセブン」は「ウルトラマン」のグレードアップ版の意気込みだった。

「ウルトラマン」を実験台に始めたこの路線で、処女作では不完全だったり、やり尽くせなかったところをやり直す意図だったから、「ウルトラセブン」の世界観では、「ウルトラマン」は「なかったこと」にされていて、2作品には何の関連もない。

同じM78星雲、光の国の出身でも、
ウルトラマンは宇宙警備隊員。
ウルトラセブンは恒点観測員と、配属も役職も異なる。

「似てはいても、別の世界の別の話なんですよ」は、同じ俳優を起用しながら、別の防衛チームの別の隊員になっているところにも、暗にほのめかされている。
毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)が、1968年12月15日の改名前に、本名の石井伊吉(いしい・いよし)名義で演じた、
↓科学特捜隊のアラシ隊員。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-あらし
↑同じく改名が間に合わず、石井伊吉名義のままで演じた、ウルトラ警備隊のフルハシ隊員。


この「ウルトラマン」の否定に伴い、「マン」と地続きだった「Q」の世界観も、「セブン」では芋づる式に否定されることになった。

↓(左)「Q」のメスのラゴン/(右)「マン」の巨大化したオスのラゴン。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-kさいじゅう
↑(左)「Q」のケムール人/(右)「マン」のケムール人。
「マン」世界の住人は、「Q」登場怪獣を目にすると、たちまちその名前を認識しており、両作品の世界がつながっていることを示した。


だから「セブン」に、「Q」や「マン」の怪獣や宇宙人の再登場はありえない。

しかし用語で一つだけ、「チルソナイト」という、「Q」と「セブン」で共通のものがある。

「Q」第16話「ガラモンの逆襲」
↓ガラモンを操る隕石型の電子頭脳は、チルソナイトという未知の物質で作られており、地球の技術では破壊することができない。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ちるそ
↑ダンは、宇宙ステーションV3から戻ってきたイシグロ隊員の家の庭に、地球には存在しないはずの金属「チルソナイト808(ハチマルハチ)」が置かれているのを見ていぶかしむ。
「セブン」第2話「緑の恐怖」。
ちなみに「チルソ」とは、韓国語で七夕のことなので、チルソナイトとは「七夕の夜」の意味らしい。


とにかく「ウルトラセブン」は、
「本作は『Q』とも『マン』とも関係ありません」
の精神を貫き通して、1968年(昭和43年)9月8日に全49話で放送を終了。
↓後期のオープニングタイトル
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-saa

だがこの精神は、後年には次第に忘れ去られ、セブンのウルトラシリーズへの同化現象は少しずつ進んで行く。

「ウルトラファイト」(1970)では、セブンは「マン」登場怪獣と戦ってしまい、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-てれす
「ウルトラマン」登場の地底怪獣テレスドンと戦ってしまうウルトラセブン。

「帰ってきたウルトラマン」(1971)では、ウルトラ兄弟構想が出来上がって、無理やり三男に組み込まれて宇宙警備隊員に転属、2回も新マンを救ってしまう。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-きょうえん
「ウルトラマンレオ」(1974)では、セブンもモロボシダンも、「セブン」以外のウルトラシリーズにも「存在していた」と既成事実化されて、ダンは準レギュラー出演してしまう。

と、いうところまでで、つづく。