絵柄刷新に込められた意図/ルパン三世展〈26〉 | アディクトリポート

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前回の続きで、年またぎで残された課題は、

*『DEAD OR ALIVE』で絵柄を刷新した意図
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*TVスペシャル総括



では行ってみよう!

送り出し側が自ら、“『カリ城』を超える傑作”と位置づけた
『くたばれ!ノストラダムス』(1995)
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から、わずか1年後に、
立て続けに公開された
『DEAD OR ALIVE』(1996)
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-rairoeu
は、なぜ成功作の前作『ノストラダムス』の絵柄や作風を継承せずに、
わざわざ完全独立路線で、新たに再出発を図ったのか?
↓以下の組写真は全て、上が『くたばれ!ノストラダムス』、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-るぱーーn
↑下が『DEAD OR ALIVE』


この時期、東京ムービー(新社)や、東宝、TVスペシャルを継続している日テレ等の、ルパン三世をコンテンツ(保有タイトル)として管理、運営している側は、(『ノストラダムス』の作画担当だった)テレコム・アニメーションフィルムの扱いや位置づけに苦慮していたのではないか。

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ふじこー

テレコムは本来、純然たる東京ムービーのための作画スタジオだった
…はずなのに、『カリ城』(1979)の時期に在籍していて、その後『風の谷のナウシカ』(1984)からは、自分のアニメスタジオ(後のスタジオジブリ)を擁する道へと歩み始めた、宮崎駿のカラーが、いつまでも抜けなかった。

テレコムの創始期から指導者として在籍していた大塚康生もまた、なんとなく立ち位置が不明確だった

『ノストラダムス』のエンドクレジットには、「協力」として、「スタジオジブリ」と「大塚康生」が別々にクレジットされている。

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-じげごえ

とにかくテレコムは、固有で独自の絵柄というのが確立できず、いつまで経ってもジブリっぽかったり、大塚康生風を脱けきれずにいた。

10年ぶりの劇場版として『ノストラダムス』が製作されたのは、1989年からのTVスペシャルが順調に継続中で、映画ルパン三世の興行価値が、再び見込めると判断されたため。

あわよくばTVスペシャル同様、毎年公開できれば良いが、それには(再出発)第1弾が、確実に成功しなければならない。

そこで、この時期までには名作の名をほしいままにしていた、『カリ城』路線を踏襲する安全策が講じられ、(基本的に)同じ絵柄を供給できるテレコムが作画陣に選ばれた。

だが一方で、この時期にはすでにジブリが、『天空の城ラピュタ』(1986)『となりのトトロ』と『火垂るの墓』(1988)『魔女の宅急便』(1989)『おもひでぽろぽろ』(1991)『紅の豚』(1992)『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994)までの公開を終えており、『ノストラダムス』のテレコムの絵柄は、

$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-あっぷ

10年以上前の経緯を知らない若い世代には、
「なんで(東京ムービーの)ルパンが、
スタジオジブリの顔つきなの?」

と、疑問を持たれかねなかった。

これは東京ムービーの立場からすれば、なんとも都合が悪い。
自社に貢献するための制作会社が、実質上は他社の応援部隊に成り下がってしまっている(=独立国だったはずが、属国に落ちぶれている)わけだから。

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ぜに

それはこれまでの経緯からしてしかたなく、テレコムの現状は変えられないにせよ、とにかく翌96年公開の『DEAD OR ALIVE』では、ルパン三世とジブリ風の絵柄の分断を図る必要に迫られた。

ストーリーの方だって、『カリ城』時代とは別の、(TVスペシャル第1弾から続投の)脚本の柏原寛司で心機一転を図ったんだから、絵柄だって、やってできないはずはない。

ということで、
*(TV 1st以来の流れをくむ)テレコム風でも、
*手垢のついたTV 2ndPART Ⅲ風でも、
*(95年から再開した)劇場版と時期が近すぎ、区別のつきにくい(パイロット版からの流れをくむ)TVスペシャル風でもない、
全く新しい絵柄が必要になり、その結果、誰も見慣れない、よそよそしいキャラクターが登場することになった。

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-だれ2

だけどこんなの、社内事情だから、おおっぴらに公表できず、世間は今度は、キャラ刷新の理由を当然いぶかしむ。

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-よこなが

なので、「原作の絵柄です」と、本当は事実と異なる建前を成立させるために、原作者のモンキー・パンチ氏を、名目上の監督に祭り上げたわけである。
↓時期によっても様々だが、モンキーパンチの絵柄と『DEAD OR ALIVE』のそれとは、まるで異なる。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-gennsaku

これで思惑どおり新キャラが世間に浸透して、実に約20年ぶりの完全リニューアルが成功すれば良かったが、どっこい世間は、「聞き慣れたキャラなのに見慣れない絵柄」の新ルパンに違和感を覚え、拒否反応を示すだけだった。

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-しょうち

こうしてこの路線が引き継がれることなく、最初の劇場版が「マモー」「カリ城」のたった2年続きで中断してしまったのと同じ事態が、約20年後に再びくり返されるにとどまったわけである。

※憶測ですので、事実と異なる可能性がありますので念のため。

と言うわけで、次回は
TVスペシャル総括
です。