『ダークナイト ライジング IMAX』(後編)/それまくる話(38) | アディクトリポート

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注意:今回は完全にネタバレです。
今後、まっさらな状態で先入観なく、
『ダークナイト ライジング』をご覧になりたい方は、
映画本編を観てからでないと、
今日の記事を読んではいけません。


この前のような、「釣り」や「誘導」ではありません。
せっかくの映画鑑賞の妨げやぶち壊しは、絶対にしたくないからです。
作り手が丹精込めて完成させた映画の醍醐味を、たかがブログごときで台無しにして良いわけがありませんので。


※今回の画像と文章は、シンクロしてません。

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-pod2

前回、「最後は感涙にむせび泣き」と書いたが、
中には「はぁ、あの結末で?」
と思われる方もいるでしょう。

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ひかり

だけど、まさかああいう結末だとは、最後ギリギリまで思いませんからね。

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-あっぴ

というよりも、私は1回目の鑑賞では、結末を見誤っていたんです。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ぽっど

これもまた、

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-machi

「はぁ? あんなに明々白々たる事態を、どうしたら間違って受け止めたりするのかね?」
と思われる方もおられましょうが、

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-battle

それなりの経緯があるので、とにかく説明させてください。

〈警告〉ここから本当のネタバレです。

私はドラマの主役や準主役が、
危機的状況の打破のために、
自らの命を賭けるという自己犠牲的展開のドラマが大好きで、自分の作品にも、その要素を盛り込んだものがあります。

映画で言えば、
『スタートレックII カーンの逆襲』(1982)とか、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-spock

随所にこの『カーンの逆襲』の影響が顕著だった、
『X-MEN2』(2003)とか、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-えっくす

あまりうまく行ってないけど、
『スター・ウォーズ/エピソード1』(1999)
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ware
とかが、この「自己犠牲」の例として挙げられますね。

なので今回のバットマンも、スポックやジーン・グレイと同じ運命をたどるんだろうと思ってた。

準主役でなく、まぎれもない主役中の主役が、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ぁきとう
そういう究極の自己犠牲の運命をたどるのは、最近見かけない。

やったら、シリーズ終わっちゃうしね。

だから鉄腕アトム(1963~1966)も
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-あとむ

$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ろぼ
ジャイアントロボ(1967~68)も
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ろぼ2

ファイヤーマン(1973)も、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ふぁいや

そういう運命をたどるのは、最終回と決まっていた。

番組の途中でそれをやったのは、
↓ライダーマン(左)、君だけだ!
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-きみ
なので仮面ライダー4号の称号を君に与えよう。

『ライジング』は、今回のバットマン三部作の最後と
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-らいじんぐ
公然と宣言されていた事も手伝い、
「ああ、こうやって終わるんだ」
と、その潔(いさぎよ)くも、あまりに報われない主人公の運命が不憫に思えて、もうしゃくり上げ、嗚咽の涙でかすみがちなIMAXのバカでかいスクリーンを見つめ続けてましたよ!

でもまあ、それが本来、自分が一番見たいドラマなんで、
最後に「そうじゃないんだよ」を明確に示されても、
脳内補正が効かずに、
オレの中では、
バットマンは、お亡くなりになったままだった。


たとえ新型飛行メカ〈バット〉に、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-うぃど
プログラムの修正パッチが適用済みで、自動操縦が可能だったと、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ふりーまん
↑フォックス(モーガン・フリーマン/左)が、エンジニアから伝えられても、
「お悔やみモード」に没入している自分には、話が頭に入ってこないし、
↓アルフレッド(マイケル・ケイン/右)が、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-あるふれっど2
かつて主人のブルースに伝えた、夢に出てくる町に隠居し、
そこで夢そのままに、ブルース・ウェインの姿を目にしても、
「それはアルフレッドの心理的補償で、脳内妄想が幻覚化してるんでしょ」と、勝手に思い込んでいた。

IMAXは素晴らしくても、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-これやこれ
あまりスクリーンに近すぎると、全体に目が行き届かないため、初回鑑賞(プレミアシートの2列前)では、ブルース・ウェインにしか目が向かず、彼の手前に座っている女性が誰なのか、気づかなかったってこともある。

で、立て続けに観た2回目のプレミアシートで、
自動操縦のパッチのくだりで、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ばt
「あれ?」

ブルースの手前に座るセリーナ・カイル(アン・ハサウェイ)
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-sered
(ピンボケ気味だが、顔のパーツがのきなみ大きいのではっきりわかる)に
「あれれれれれ!」

そして最後に出る、ようやくのタイトルは、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-たいとる
THE DARK KNIGHT RISES
(再起した闇の騎士=ダークナイトの復活)


なんでRISE(勃興・出現・台頭)で「再起」や「復活」なのかって?

ホントは
THE DARK KNIGHT RISES AGAIN
だけど、AGAINをつけたらネタバレだから、タイトルからは外されてるね。

んでもって、なんで邦題は「RISES」が「ライジング」なのかっていうと、
RISESはホントは「ライジズ」(より正確には「ライズィズ」)なのに、
日本では、セガ・エンタープライゼズ
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-せが
みたいに、「ライゼズ」とするべきかで迷って、
だったらどっちでもない、「ライジング」(RISING)に落ち着かせたってことなんだろうな、きっと。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-まいっちんぐ
まいっちんぐ。

んでもってクリストファー・ノーラン監督は、この結末をかなり強引に持ってくるために、
相当無理がある負荷を、話に大きくかけている。

それは核融合炉なんだけど、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-reactor
これは、今まさに日本で大問題の原発みたいに、原始的な仕組みの核分裂炉(放射性のゴミが大量に出る)じゃなくて、太陽が燃えてるのと同じ原理の核融合炉なんだけど、
それを兵器に転用すると、なぜだか(笑)中性子爆弾になるそうな。

ここまででも、およそ現実にはあり得ないので、
劇中ではロシアの科学者の独自発明ってことになってる。

この科学者、映画の冒頭でベインに奪還されるが、死体袋に詰められた遺体に輸血したのは、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-てつ
なんでだろう?→※答はこちら

もしかして核融合(fusion)と輸血(transfusion)をかけたギャグ?
まさかね。
急激な気圧の変化に耐えられるように、血圧を低下させるために血を抜いたんでしょうか?

で、「結局ブルースは、ぎりぎりで脱出しても、核爆発の爆心地から遠くない距離で被爆してるから、どのみち長くは生きられないんじゃ?」という仮説を立てた人もいるが、
このことを真剣に突き詰めて考えても、それに耐えられるような堅牢なプロットにはなってない。

中性子爆弾というのは、核爆弾の一種ではあるが、高熱と爆風で建物を物理的に破壊するよりも、目に見えない必殺の中性子線をまき散らして、生物を死に至らしめる方に重点が置かれているという、かなりたちの悪い非人道的兵器であり、おそらく劇中の状況なら、バットマンは生き延びられるはずがない。

これもまた、真面目に映画を観ていた私が、「バットマンお亡くなり」を確信した理由の一つ。

ノーラン監督は、最後に観客を裏切る快感がやみつきになってしまい、『インセプション』でも、ラストで回転し続けるコマ(=非現実。意識化で作り上げられた仮想現実の象徴)に、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-koma
「だったら、今まで延々と見てきた本筋に意味ねえじゃん!」
と思わされたが、今回もたしかにアッと驚いたけど、自分の場合はそれも2回目でようやくだし、そうまでしてプロットをねじ曲げる必要は、あったのかなあ?
「オレの嗚咽と号泣を返してくれよ!」って気がしないでもない。

前作のジョーカーとの意地の張り合いでもそうだったけど、この監督はバットマンの勝ちに徹底的にこだわっていて、彼が死んだら、悪が勝つことになっちゃうわけで、信条的にそれは絶対選び取れないってことなんだろう。

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-usiri
バットマンは、「8年もなりを潜めてたんだから、さすがにほとぼりも冷めただろう」と思っていたが、姿を現した途端に、デント殺しの犯人として大追跡劇が始まったことで、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ついせき
状況は8年前と何も変わっていないどころか、むしろ悪化していることを思い知る。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-がや
だから今回がゴッサム・シティでの最後の戦いであり、この街では自分が「死んだこと」に持って行くことで、彼なりの街との訣別を図ったわけだ。

ゴッサムの外にも世界は広がり、
第二のバットケイブ(秘密基地)も、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-uxe-ruzu
↑その外観は、ウェールズの滝で撮影されたそうです。
ゴッサムとは別の場所にある。

というわけで、ブルース・ウェインの悪との戦いは今後も続く、たぶん。

それが映画になるかどうかは、また別の話だが、『スパイダーマン』みたいに近々のリニューアル、再出発はないと思われ。

そういや『ダークナイト』の時に、単にバットマンが出てくるってだけで、いまだにティム・バートン版と比較したがる人がいたけど、そんなの、比べる方がどうかしてやしないか?

どんなにリアルにやったところで、実景にコウモリ装束の男が出現すれば、いくばくかの滑稽さを感じさせずにはおかないわけで、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ふたり
本作『ライジング』でも、融合炉を積んだトラックの大破した運転席をながめるバットマンとキャットウーマンの「えづら」を、そこだけ切り取って見たら「ウププ」感を拭えない。

$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ひょうし

だけどすでに『ビギンズ』の時から、ノーラン版のバットマン映画を見通して、滑稽さを感じる人は誰もおらず、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-sann
あまり語られないが、これはすさまじい功績だと考えるし、わずか数年のスパンで、この革新を超える人が出てくるとは思えない。

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を観る限り、来年公開予定の新スーパーマン“Man of Steel”のザック・スナイダー監督に、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-はあ
映像スタイルはともかく、「まともな話の中身」は期待できないしね。

長くなったけど、ようやくこの話はおしまい。