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[精子の機能を左右するミネラル「亜鉛」]

(Medエッジ  2014年8月8日)


<男性の生殖能との関係をイタリアの研究グループが解析>
亜鉛はトタンのメッキに使われる金属だが、体にとっても大切な役割を持って
いる。
精子の機能と深く関わると、イタリアの研究グループが解析して報告した。
この6月に生殖医療の国際的医学誌であるヒューマン・リプロダクション誌で
発表している。



<「オタマジャクシ」になるための亜鉛>
イタリア・パドバ大学の研究グループは、オタマジャクシのような形をした
精子に成熟するまでの過程で亜鉛がどのような役割を果たしているかを
調べた。

精子は精巣で作られて、精巣上体と呼ばれる場所で成熟して、射精される。

精子は、成熟する間に亜鉛を取り込んだり、亜鉛を排出したりしており、
その状況から亜鉛の必要度を推定した。
調べたのは、亜鉛を精子の内部と外部から出し入れするタンパク質だ。
精子の内部から外部への亜鉛排出に関係するタンパク質「ZnT」と、精子の
外部から内部への亜鉛取り込みに関係するタンパク質「Zip」だ。

この結果、精巣で精子に成熟する前の段階では、精子に亜鉛取り込みに関わる
タンパク質であるZipが多く、成熟が進んだ精巣上体の段階では亜鉛排出に
関わるZnTが多くなっていた。

亜鉛の含有量を調べると、精巣と精巣上体の中の精子は、射精した後の
精液内の亜鉛と比べると20分の1~3分の1となっていた。

射精した後の精液内の精子の動きの良さと卵子と接触した時に融合を始める
先体反応は亜鉛が減っていると起こりやすいと分かった。


妊娠のしやすさに亜鉛がどのように関わるか今後さらに検証する必要はある
ものの、精子の機能と亜鉛が密接に関わることは確かでありそうだ。





http://www.mededge.jp/a/xyst/673




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[魚の油から作られる成分、失明や脳梗塞を防止、遺伝子の相互作用を解明]

(Medエッジ  2015年2月24日)


<細胞の生死を決定する「ニューロプロテクチンD1」>
なにげなく食べている寿司や刺身にも関係するかもしれない話だ。

魚の油は、頭を良くするなどと言われることもあるが、実際、魚の油から
生まれる成分が脳のダメージを抑え込むようだ。
視力低下や脳の血管が詰まる脳梗塞に効果を発揮すると見られている。



<魚の油から作られるもの>
米国ルイジアナ州立大学医学部の研究グループが、細胞および分子生物学の
専門誌セル・デス&ディファレンシエーション誌のオンライン版で2015年
1月30日に報告した。

研究グループが注目したのは、魚の油に含まれている「ドコサヘキサエン酸
(DHA)」。
体内で「ニューロプロテクチンD1(NPD1)」という物質に変えられる。

研究グループはニューロプロテクチンD1が神経細胞の変化、脳梗塞といった
病気で細胞保護の効果があるという基礎的な研究結果を得ていた。

今回は2つの遺伝子に働きかけて、ダメージを抑え込むというメカニズムまで
解明した。



<加齢黄斑変性と脳梗塞でどう働く?>
研究グループは、失明と脳梗塞の状態を人工的に作り出して検証している。

失明については、加齢黄斑変性という病気で検証している。
加齢に伴って目の内部にある「黄斑部」と呼ばれる場所で「網膜色素上皮」を
構成する細胞が壊される病気だ。
失明の主な原因になっている。

研究グループは、人間の網膜色素上皮の細胞と脳梗塞の影響を受けた細胞を
対象として、ニューロプロテクチンD1の機能を調べていった。



<細胞死を防ぐ>
ニューロプロテクチンD1は、2つの遺伝子の相互作用を促して、細胞の
生死に影響を及ぼしていた。

ニューロプロテクチンD1は「cREL」と呼ばれる転写因子の合成を促し、
「BIRC3」という細胞死を防ぐ「抗アポトーシス(細胞死)関連遺伝子」の
発現を増やしていた。

細胞では、遺伝子の遺伝情報に基づいてタンパク質が作られている。
ニューロプロテクチンD1を起点として、細胞死を防ぐ作用のあるタンパク
質が作られていたわけだ。

網膜と脳では必要に応じてニューロプロテクチンD1が作られるようになって
いた。



<DHAから神経の回復につながる>
病気やけがで必要に応じてこのネットワークが起動する。



今回の研究では、動物実験で人工的に脳梗塞を起こしたときに、DHAから
ニューロプロテクチンD1が作られると、神経の回復が促進される減少を確認
している。
加齢による視力喪失、脳梗塞からの回復を助ける薬への可能性が開けるかも
しれない。

 




http://www.mededge.jp/b/tech/9293

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[新生児黄疸が出た子はADHDが多かった]

(MEDLEY  2015年6月1日)


<台湾で9万人を追跡>
注意欠如・多動性症候群(ADHD)は、集中が続かない、うろうろ動き回って
しまうなどの症状がある、子どもに多い病気です。
原因は不明ですが、どんな場合に発症する確率が高いかが最近研究されて
います。

台湾の子どもを対象にした研究から、生まれたときに「新生児黄疸」があった
子どもはその後ADHDを発症する確率が上がっていたことが報告されました。



<新生児黄疸とは?>
黄疸は、皮膚や白目が黄色くなる症状で、「ビリルビン」という物質が血液の
中で多くなったときに起こります。

ビリルビンは寿命が尽きた赤血球が壊された後にできる物質です。

新生児はビリルビンを代謝または排出するしくみが未熟なので、生後数日の
間、ビリルビンが多くなるのが普通です。

その結果、黄疸の症状が表れている場合を新生児黄疸と言います。
多くは治療の必要がないと考えられていますが、重度の場合、まれに脳に
ダメージを与えることがあり、光線療法という治療がなされます。

 

<台湾の子どもの追跡調査>
研究班は次のように対象者を選びました。
2000年から2004年にかけて、新生児黄疸があった24,950人の子どもと、
マッチングした69,964人の新生児黄疸がなかった子どもを同定した。

新生児黄疸があった子ども24,950人と、比較のため性別や親の職業などが
揃うように選んだ子ども69,964人の情報を統計解析しました。

 

<新生児黄疸があるとADHDが2.48倍>
解析から次の結果が得られました。

研究期間中のADHDの発症数は、黄疸がなかった群に比べて黄疸があった群で
2.48倍多かった(10万人年あたり3.84例 vs 1.51例)。

ADHDを発症するリスクは、血清ビリルビン濃度が高く光線療法が必要だった
場合、また入院日数が多いとき高くなっていた。


新生児黄疸があった子どものほうが、なかった子どもよりも2.48倍多く
ADHDを発症していました。
また、光線療法が必要とされた子ども、また入院日数が多かった子どもで
ADHDが多くなっていました。

 
研究班はこの結果から「新生児黄疸の診断のあとは神経学的帰結についての
リスクに注意を促すことが強く求められる」と結論しています。



ADHDの原因はわかっておらず、この結果からも新生児黄疸が原因かどうかは
わかりません。
生まれつきADHDが発症しやすい未知の要因の結果として新生児黄疸が増えて
いた可能性も考えられます。
ADHDと新生児黄疸がどのようなしくみで関係しているのかは、今後の解明が
待たれます。




http://medley.life/news/item/556845990bfa225001a866d7




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[こんなにも面白い医学の世界 第4回 新生児黄疸はどうして必要なの?]

(レジデントノート  2015年01月号掲載)


ビリルビンは過度に血中に存在すると、血液脳関門を通って、大脳灰白質の
大脳基底核に沈着し核黄疸という中枢神経系の異常を起こします。

一方で、新生児には新生児黄疸という生理学的な黄疸があることは知って
いると思いますが、なぜ新生児は強い毒性をもつビリルビンをわざわざ増やす
必要があるのでしょうか?


哺乳類は胎生期の間、胎盤を通して臍帯から酸素の供給が行われますが、
この胎盤を通しての酸素分圧は依然低く、胎児はいわゆる低酸素状態に
さらされています。
それが産声と同時に肺呼吸に転換され、空気中の酸素を吸入すると、
活性酸素が過度に産生され、酸化ストレスと呼ばれるさまざまな障害を
引き起こします。
特に、未熟児の網膜の血管は、酸化ストレスに対し感受性が強く、血管内皮
細胞が障害されると未熟児網膜症という病態になります。

トロント小児病院のグループは、未熟児128名を検討し、血中ビリルビン
濃度が9.4 mg/dL未満の小児では、それ以上の群より視野障害が有意に
多かったという臨床データを報告しています。
同様にHeymanらはビリルビン濃度と未熟児網膜症の程度には負の相関が
あるという結果を報告しています。

つまり、われわれは、生まれてくるときの酸化ストレスから身を守るために、
あえて毒性をもつビリルビンを増やしているのではないか、という仮説を
たてることができます。


ビリルビンは、赤血球のヘモグロビンから体内で恒常的につくられ、
哺乳類でのみみられます。

両生類、爬虫類、鳥類では、卵の殻を介して大気から酸素を吸収するため、
あらかじめ平衡になっており、出生の際にビリルビンを使って抗酸化作用を
発揮する必要がないのかもしれません。


実験室で、ビリルビンが活性酸素を抑える力を測定すると、ビタミンCなど
他の抗酸化剤に比べてはるかに強い抗酸化作用をもつことがわかりました。
また、実験動物にビリルビンを投与すると、虚血再灌流障害などが軽減する
ことも証明されています。

また、成人糖尿病患者においても、血中ビリルビンの値が高い方が、
糖尿病性網膜症の発生率が低いことがわかっており、どうやら仮説のとおり、
われわれはビリルビンを使って活性酸素による酸化ストレスを防御して
いるのだと思われます。


中国では6世紀以前から、ビリルビンを多く含むゴオウ(牛黄)や熊の胆と
いう漢方薬が用いられており、鎮痙、鎮静、強心、解熱、解毒などに効果が
あるとされています。
古代中国では、経験的にビリルビンに抗酸化作用があることがわかって
いたのかもしれませんね。





https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758115445.html



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[おしゃぶり代わりに野菜!]

(元東京医科歯科大学教授エッセイ)

(読売新聞  2007年9月28日)


最近、野菜ソムリエなんて資格も現れ、健康志向の日本では野菜ブームの
ようである。
肉好きは野蛮人みたいな扱いで、肩身が狭い。日本より先にというか、ずっと
昔から野菜を大切にしていたのは、フランスである。


パリにいた頃の野菜話。
乳母車の幼児の手にセロリが握られているのをはじめて見た時は、何かの
見間違いかと振り返った。
でも人参をにぎっている子もいて、どうやら野菜がフランスの赤ん坊や幼児の
おしゃぶり代わりと、気づいた。

野菜スティックは、バーかスナックでの酒のつまみのイメージが強く、また、
日本での散歩の幼児は、専用のビスケットなどをあてがわれているせいか、
私には意外に思えた。

お菓子を安易に与えず、歯によし、適度な硬さがあごの発達によし、そして
そうやって、本来の野菜の旨味をインプットされた赤ん坊は、今頃、立派な
大人である。
三つ星レストランのシェフ?
それとも、味にうるさいお客になっただろうか。


そういえば、学生時代の歯周病の講義。
教授が自分の息子にはおしゃぶり代わりに、セロリを与えていると言っていた
のを思い出した。
セロリに含まれる繊維がちょうど歯ブラシ代わりになっていたのかもしれ
ない。


江戸時代には房楊枝といって柳の枝の先を砕いて、ブラシのようにして歯を
磨いていたし、古くはお釈迦さまが弟子達に広めたとされる「歯木」
(しぼく)の話もある。
古代インドでニームという木の枝の先をくしゃくしゃにして繊維を出し、
祈りの前の清めに口をすすぐと言う習慣に使われていた、あの歯木である。


おじさん達の食後のおしゃぶりとして、若い女性から忌み嫌われる爪楊枝。
「シーハーシーハー」という音とともに下品の代表格のように言われる。
しかし、爪楊枝は別に日本の専売特許でもなく、世界中どこにでもある。
ほとんどが、断面形態が三角形で、食後の歯と歯の間の清掃用具としては、
極めて機能的で優れたものである。
まっ、たしなみとして人前でやるのも如何と思うし、もちろん、くわえながら
街路を闊歩することは紳士的ではない。


野菜スティックおしゃぶりのもうひとつの効能としては、砂糖などがほとんど
含まれていないからむし歯になり難い。

子どもの頃に甘いものを多く摂取して育つと、大きくなってから、生半可な
甘さでは満足せずに次々と甘いものを欲しがる、と言う弊害もない。

前述の教授の息子、大きくなっても、セロリのうまい、まずいの嗅ぎ分けには
才能を発揮したそうだ。

そう考えると、セロリをおしゃぶり代わりに与えるのは、実に理にかなった
ものかもしれない。
お子さん、お孫さんに野菜スティックをおやつ代わりにあげたらいかがで
しょうか。





http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/karadaessay/20070928-OYT8T00164.htm
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[致死率ほぼ100%の狂犬病から生還した少女―米国]

(あなたの健康百科  2012年2月9日)
(ABCニュース公式サイトより)


米疾病対策センター(CDC)は2月3日付の週報で、カリフォルニア州郊外に
住む8歳女児の狂犬病発症例が報告されたことを発表した。

狂犬病はいったん発症するとほぼ100%が死亡するといわれているが、
この女児、プレシャス・レイノルズちゃんは52日間の小児集中治療室入室、
入院を経て生存退院を果たしている。

プレシャスちゃんは海外への渡航歴がなく、狂犬病ワクチン未接種だった。
米国内においてワクチン未接種で狂犬病発症からの生還が報告されたのは、
これで3例目だという。

米国内では、ABCニュースなどのメディアが大きく報道している。



<受診から集中治療室入室まで7日要す>
CDCによると、狂犬病発症からの回復は、発症前に暴露後免疫(感染後の
ワクチン接種)が行われなければ、たとえ強力な支持療法を行ったとしても
かなりまれだという。

プレシャスちゃんは当初、喉の痛み、嚥下困難、衰弱の状態が1週間続いたと
訴え、かかりつけの小児科を受診。
しかし、当時は日常生活に大きな支障を来していなかったという。

その後、嚥下困難や水分の摂取困難が改善せず、地域の救急外来を3度受診。
3度目の受診時には気分不良の状態で、脈拍は1分間に108回、血圧は収縮期
(最高)が112mmHg、拡張期(最低)87mmHg、体温は35.9度で、頭部
および腹部CTによる目立った所見はなし、胸部CTでは一部に無気肺(肺に
空気が入っていない状態)が見られたという。
また、水分を飲み込む際の喉頭痙攣や呼吸窮迫状態が見られ、集中治療室に
入室、人工呼吸管理を開始。
この時点では2011年5月1日で、最初に小児科を受診した4月25日から
7日が経過していた。

集中治療室では、弛緩性麻痺や意識レベルの低下を来したプレシャスちゃんに
対し、抗生物質や抗てんかん薬による強力な治療が行われたが、この時点では
細菌性肺炎あるいはマイコプラズマによる脳炎などが疑われたとされている。

5月4日、カリフォルニア州の公衆衛生当局の要求で、エンテロウイルスや
ウエストナイルウイルスなどに関する検査が緊急実施されたが、一部を除き
陰性との結果だった。

その後に行われた検査で、狂犬病ウイルスが確認された。

狂犬病の潜伏期間は1~2カ月とされるが、感染初期の生前診断は難しく、
確定診断は死後の剖検によるのが一般的なようだ。
そのため、流行国などではワクチンによる予防やウイルス保有動物への接触を
避けることが勧められている。
           (参考:国立感染症研究所、感染症の話 狂犬病)



<感染源は野良猫か>
プレシャスちゃんの診断後、麻酔薬のケタミンなどによる鎮静療法や、
抗パーキンソン病薬のアマンタジンなどによる脳血管攣縮の予防療法が
行われたが、抗狂犬病ガンマグロブリンや狂犬病ワクチンの投与は行われ
なかった。

一方、プレシャスちゃんの唾液に接触した可能性のある 27人には、暴露後
免疫が実施されたという。
この中にはプレシャスちゃんの治療に当たった医療関係者のほか、学校の
レスリングの授業を一緒に受けた生徒も含まれている。

プレシャスちゃんは発症6カ月以内に地域外に旅行した経歴もなかったほか、
狂犬病ワクチンの接種歴もなかった。
通学する学校近くの野良猫数匹との接触歴が確認されたが、発症4~9週間
以内の咬傷歴はなかったという。

調査の結果、1匹を除き、狂犬病ウイルス感染が疑われた猫はいなかったと
しており、当局は野良猫だったのではないかと推定している。

プレシャスちゃんは5月8日に自発的に頭を動かすなど、徐々に回復。
6月22日に生存退院を果たした。
今のところ、認知機能障害の徴候はなく、日常生活を送っているという。


同報告では、米国におけるワクチン未接種下で狂犬病発症後の生存例は
3例目で、強力な支持療法による生存例としては2例目と記されている。


なお、この症例に関するニュースは昨年6月、米国では大きく報道された
ようで、ABCニュースやCBSのニュースでは本人の様子を見ることもできる。





http://kenko100.jp/news/2012/02/09/01

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[「狂犬病危機」予防接種率20年で99%→71% 
                      台湾では半世紀ぶり感染も]

(産経新聞  2016年2月23日)


<飼い主の意識と責任は>
飼い犬の狂犬病予防接種率が、減少の一途をたどっている。
平成5年には全国の登録犬の99%以上が接種していたが、平成26年には
71%まで減少した。
ウイルスに感染した犬にかまれて人間が発症すれば致死率はほぼ100%だが、
国内では昭和31年を最後に犬の発症例がなく、危機意識の低下から予防接種を
受けさせないケースが増えているという。

隣の台湾では半世紀ぶりの感染も確認され、「過去の病気」と油断する
日本にも危機が忍び寄っている。
(大森貴弘)



<「未登録犬」の存在>
「『狂犬病なんて日本では終わった病気でしょ』といわれることもしばしば。
なかなか危機意識を持ってもらえないと感じる…」
狂犬病の予防対策に携わる大阪府職員は、犬の飼い主の現状をこう指摘する。

厚生労働省によると、平成26年度、全国の市区町村に届け出のあった飼い犬
662万匹のうち、予防接種を受けたのは474万匹で、接種率は71.6%。
平成5年ごろまでは99%以上で推移していたが、平成8年に90%を下回り、
以降急激に低下している。

府の担当者は「狂犬病への関心の低下に加え、小型犬を室内で飼う人が増え、
外に出さないからと、予防接種の必要性を感じないのかもしれない」と分析
する。

狂犬病予防法では、犬を飼う際には市区町村への登録が義務付けられて
いるが、「未登録犬」の存在も問題を深刻化させている。

ペットフード協会(東京)の調査によれば、平成26年度の国内の犬の飼育数は
推計1034万6千匹で、登録数を372万匹も上回る。
多くが未登録犬とみられ、こうした犬を含めれば接種率は50%を切っている
のが実態だ。



<海外から国内に>
狂犬病は国内では半世紀以上発症が確認されず、撲滅されたとの認識が
広まっている。
だが、世界的には現在進行形の感染症であり、常に感染リスクにさらされて
いる。

実際、日本同様に半世紀以上発症がなかった台湾では2013年、野生の
アナグマへの感染が確認され、厚労省が国内の野生動物の調査に急遽
乗り出したことがあった。
幸い感染例は確認されなかったが、国内でも感染の危険が消えたわけでは
ない。
同省結核感染症課は「狂犬病は必ず死ぬ病気で、対岸の火事と座視して
いられない」と今後も調査を続ける方針だ。

野生動物の狂犬病感染がたびたび確認されているロシアでは犬を「船の
守り神」とあがめる習慣があり、北陸地方などではロシア漁船が犬を乗せて
寄港するケースが後を絶たない。
密輸などによって、感染した野生動物が国内に入ってくる可能性も否定
できないという。

仮に野生動物を通じて国内にウイルスが入り込んだとしても、人と接触する
可能性が高い飼い犬への感染を防げれば、人が罹患するリスクは大幅に
減らせるだけに、予防接種率の向上が大きな課題になっている。

狂犬病に詳しい岐阜大応用生物科学部の杉山誠教授(人獣共通感染症学)は
「狂犬病は日本では忘れられた病気になっているが、海外から流入する
可能性は捨てきれない。社会に安心を与えるため、飼い主には予防接種を
済ませる責任があると自覚してほしいし、それが社会に欠かせない存在に
なった犬と共生する道だろう」と話している。




http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160223-00000095-san-soci


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[狂犬病による死者は世界で1日160人

(HealthDay News  2015年4月16日)


世界では、イヌから感染する狂犬病によって1日160人、年間約5万9,000人
が死亡しているとの研究報告が、「PLOS Neglected Tropical Diseases」
4月16日号に掲載された。

狂犬病制御世界同盟(GARC)狂犬病予防パートナーグループの研究。


GARCのLouis Nel氏は、同グループのプレスリリースのなかで「狂犬病は
たいていの場合死に至るが、ほぼ100%予防可能でもある。ヒトの狂犬病を
予防する最良かつ最も費用対効果の高い方法は、イヌに予防接種を行う
ことだ」と述べている。
ヒトへの狂犬病ワクチンの接種を進めることでも、予防を推進できる。


研究では、狂犬病による10万人当たりの死亡率はサハラ以南のアフリカ諸国で
最も高いが、死亡数はインドが最も多く、年間2万人以上にのぼることが判明
した。
アフリカおよびアジアのほぼすべての国で、イヌの狂犬病ワクチン接種率は
疾患をコントロールするのに必要な接種率をはるかに下回る。

ヒトにおける狂犬病の経済的コストは、早期死亡、収入の喪失、ヒトへの
ワクチン接種費用などの要因により、合計で年間約86億ドル(約1兆230億
円)になる。

Nel氏は、「今回の草分け的研究は、狂犬病のコントロールを改善し、
最終的に排除するための極めて重要なステップである。実際にかかる負担を
理解することで、この致死的疾患に立ち向かうために必要な資源を明らかに
し、提唱することにつなげられる」と述べている。





http://www.healthdayjapan.com/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[バリ島で狂犬病予防策、展開中]

(AFPBB News  2008年12月01日)
(発信地:ジンバラン/インドネシア)


【12月1日 AFP】
インドネシア保健省当局は、バリ島のジンバランで狂犬病ウイルスに感染した
4人が死亡したことから、周辺地域で感染予防対策を開始。


世界保健機関(WHO)によると、毎年世界で5万5000人以上が狂犬病で
死亡しており、地域別ではアジアとアフリカが95%以上を占める。



http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2543679/3564375
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ドラキュラは、なぜニンニクや光を避けるか?]

(朝日新聞  2011年7月20日)(早川智:歴史上の人物を診る)


<話題の人>
10月31日のハロウィーンの夜に新宿や六本木など盛り場を歩くと、
ドラキュラ伯爵に出会う。
赤い裏地の黒マント、蒼ざめた顔色で犬歯をむき出した長身の紳士という
イメージは、19世紀の小説『吸血鬼ドラキュラ』(ブラム・ストーカー作)
から生まれた。


ストーカーのドラキュラのモデルとなったのは、ルーマニア東部トランシル
ヴァニア地方ワラキア公国の領主ヴラド3世(1431〜1476)。

父ヴラド2世は神聖ローマ帝国の竜騎士団長でドラクル(竜)とうたわれた
勇将だったが、長男とともにオスマントルコに謀殺される。

跡を継いだヴラド3世は、敵のトルコ軍将兵を捕虜にすると串刺しで処刑し、
敵味方を震撼させた。
だが数々の非情な行いのため、弟ラドシュを擁立した貴族たちの謀反にあい
失脚、ハンガリー王の支援を得て王位奪還を目指すが志半ばで戦死した。


一方、吸血鬼の伝説自体は古くからヨーロッパ各地に伝えられていた。
西欧では12世紀に消滅したものの、東欧では20世紀に至るまでその存在が
信じられてきたという。
吸血鬼が最も現実味を帯びて語られたのは18世紀の初頭。フランスの哲学者
ヴォルテール(1694〜1778)は、「1730年から1735年の間、吸血鬼は人
々の最大の話題であった」としている。



<その正体は・・・・・>
近年、スペインの神経医学者Juan Gomez-Alonsoは、吸血鬼は単なる伝説
ではなく現実の反映であろうこと、吸血鬼のモデルとなった気の毒な人々の
異常行動の原因は狂犬病であるという仮説を提唱した。

民間伝承による吸血鬼の特徴は、
 (1)犬や狼とともに現れる
 (2)村々の犬を殺す
 (3)農村に住む貧しい男性である
 (4)夜間に行動する
 (5)他人(特に若い女性)や家畜の生き血を吸う
 (6)墓場に住む
 (7)吸血鬼に襲われると吸血鬼になる
 (8)犠牲者が現世にさまよう
 (9)犬や猫、こうもりに荒らされた死体が吸血鬼になる
 (10)ニンニクや鏡、水(聖水)、煙、十字架を恐れる
 (11)死後、遺体の保存状態が良い
 (12)寿命は約40日間である

彼はこれを医学的に解釈し、ほとんどすべてが狂犬病で説明できるとして
いる。


狂犬病はRNAウイルスの1つである狂犬病ウイルスによる人獣共通感染症だ。
犬、狼が最も主要な宿主だが、ネコ、キツネ、コウモリ、リスなどあらゆる
哺乳類に感染する。
感染動物は狂暴となり、咬傷から侵入したウイルスは末梢神経から上行し、
中枢神経に到達して狂犬病を発症。
最初は感冒のような症状から始まり、末梢の傷から、1日数ミリずつ
ウイルスによる神経の変性が進行してゆく。
したがって傷が手足なら数週間から数カ月、顔などならば数日で中枢神経系に
達し、ここで情動を司る大脳辺縁系に感染すると行動異常を起こす。
すなわち、著しい攻撃性や、性欲亢進、夜間の徘徊、知覚過敏(故に匂いの
強いニンニクや光、大きな音を避ける)、飲水による喉頭の痙攣(故に水を
怖がる)・・・・・まさしくドラキュラ、ということになる。



<日本にも襲来>
1721〜1728年、ハンガリーでは犬や狼に狂犬病が大流行し、人間にも
広まったという。
「吸血鬼は人々の最大の話題」であった1730年代の背景として、こうした
事実も無視できない。

日本でも1732年(享保17年)、狂犬病が長崎から全国に広がったとの記録が
ある。
オランダ人によってもたらされたこの時の流行は、日本狼の絶滅の端緒と
なったようだ。


吸血鬼伝説の説明としては他にポルフィリン症説や統合失調症説があるが、
いずれも行動異常を伴うとはいえ、人畜共通感染という大きな特徴を説明
できるのは狂犬病だけだろう。


幸いなことに日本では1958年以降、国内感染例はない。
しかしながら近くのアジア諸国にはまだ多い病気なので、予防接種や万一
咬まれた時の対応などはあらかじめ準備しておいたほうがよい。

歴史上の人物ならぬ伝説からの教訓である。


(早川智 日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授)


この連載コラムでは、豊富な文献と現代の知見を交えて歴史上のあの人を診断
します。
筆者の専攻は産婦人科感染症、生殖免疫学、感染免疫学。医史学にも造詣が
深く著書に『源頼朝の歯周病』『ミューズの病跡学I、II』があります。





http://www.asahi.com/health/rekishi/TKY201107190417.html