7)川島素晴《スライドホイッスルのための超絶技巧練習曲集》

 (2024 / 新作初演)

  Slide Whistle : 川島素晴

 


 

 今回、改めてスライドホイッスルの楽器としてのポテンシャルを探求してみると、これはまだまだ可能性があるな、と感じました。X(旧Twitter)で投稿した「基礎練習」では、3曲ほど既成曲の練習風景をお見せしております。

 

 白鳥 熊蜂 赤とんぼ

 

 もちろん、普通の楽器には遠く及ばないものの、何かこの楽器特有の表現力を極める可能性を感じなくもありません。(あと、片手持ち演奏しながらピアノ伴奏するのは、実際なかなか難しいんですよ・・・)

 

 ということで、この機会に、いまだ探求されていないこの楽器の、様々な奏法的可能性を汲み尽くすことを目論見ました。いわば、「ここからはじまるスライドホイッスルによる現代音楽史」ということですね。

 

I ) Manic

 

 私自身が30年以上取り組んでいる作品シリーズのアイデアをスライドホイッスル版で。特殊奏法は用いないけれど、倍音、タンギング、グリッサンドなど、様々な演奏技巧を高速で旋回させます。

 

II ) 2本吹きのエチュード

 

 2本持ちによる可能性の探求。リコーダー2本を鼻で同時に吹いてポップス演奏するとか、よくバズってますね。この「呼子笛状吹口」による発音原理の最大のメリットは、息さえ通過すれば発音できてしまう、つまり同時吹きが可能であることです。それこそ、リコーダーでは前例もあり、鈴木俊哉さんのレパートリーにもまさに超絶技巧が展開する作品が幾つかあります。ここではまず、2本のスライドホイッスルでできる可能性を探求します。

 

III) 5本吹きのエチュード

 

 5本持ちによる可能性の探求。

 あんなチラシを作ってしまった手前、実際にやらないと詐欺だな、と思いまして・・・。

 両鼻1本ずつと口に3本、計5本を装着した状態でできることを探求しました。

 

IV) 多重音とノイズのためのスタディ

 

 先般、ハインツ・ホリガー《多重音のためのスタディ》の、宮村和宏さんによる名演奏が行われました。(その感想を投稿したものはこちら。)で、そのオマージュというわけですが、いかんせん、指穴の無い楽器なので、通常の重音奏法には限界があります。声との重音も駆使し、2本吹きも駆使し、、、さらに、ノイズ奏法の探求も加えて、ようやく作品らしい姿になりました。

 

V ) スライドホイッスル独奏とスライドホイッスルを持つ聴衆のための協奏曲

 最後は皆さんで盛り上がりたいな、と思いまして。。。

 今回、入場チケットに代えて、ご来場者にストローと綿棒で作った簡易スライドホイッスルを配布致します。(写真のようなものです。)これを皆さんにも演奏して頂きたいのです。ソリストである私の合図に対応する演奏をお願いします。いわば、「聴衆との連携のエチュード」ということになります。

 ぜひご参加ください!


 


 

*ここを最後までお読み頂いた方だけにネタバレしておきますが、アンコール演目として、ラヴェルの《ボレロ》ダイジェストをスライドホイッスル8名のために編曲しました。

 私には《強撚ボレロ》といった、「ボレロ」を下敷きにした作品が幾つかありますが、これはむしろ「正攻法」のアレンジとなっています。ただ、正攻法にアレンジしたからこそ、普通の楽器と異なる「強撚状態」となるかもしれませんが・・・。

 今回、唯一のクラシック名曲の上演となりますが、結果やいかに!

 


 

曲目表

→1)山本哲也《スライドホイッスル三重奏曲》(2011)→解説
→2)山本裕之《木管三重奏曲》(2009)→解説

→3)山本和智《Air》(2022 / 初演)→解説

→4)山内雅弘《OBOE Concerto!》(2021)→解説

→5)山田奈直《15本のスライドホイッスルのための修羅》(2024 / 委嘱新作初演)→解説

→6)山邊光二《アイデンティティ、尻っ尾のディテール》(2024 / 委嘱新作初演)→解説

→7)川島素晴《スライドホイッスルのための超絶技巧練習曲集》(2024 / 新作初演)→*本投稿

→8)大蔵雅彦《Active Recovering Music # 7, #10》(2012)→解説