三角関数の微分は、
物理でいうところの“位相”とかげを使って、書ける。

  とかげ高校物理の教科書か参考書で、
    波の方程式のところを見てみましょう。








n階導関数を書かないといけないときは、
位相を使った表現の方が簡単ですね。

証明は、
n=1,2,3,4のときは、一個一個、単位円を見ながら確かめます。
n=4でもとに戻り、あとは繰り返しになるので、
n≧5のときは、明らかです。あえて言うなら帰納法。。
入試問題で、

 Aを2次正方行列、を2次元ベクトルとして、
   A
 がなんたらかんたら・・・


という問題を見たことはいないだろうか?

筆者は、その昔受験生だった頃、一度これに出くわし、
珍しく行列の抽象的な(代数的な)問題だ!と感動するとともに、
なんでこんなものを考えるんだろう?と疑問に感じた。

行列を作用させたやつ(A)と、作用させる前のやつ()の
内積である。

なかなかきれいな形であるが、なにを意味するのかはよくわからない。


大学に入って、線形代数を勉強していたら、教科書に出てきた。
“二次形式”の章に出てきた。たとえば、



のようなもので、
行列Aは、右辺の多項式を表していると考えられる。。
行列を使って、2次式を系統的に扱えないかという話である。



なんだけど、
今回は、
を“二次形式”としてではなく、
“数域半径”と見て簡単な不等式を示す。

“数域半径”とは、

 xの大きさが1のときの、|A|の最大値

のことである。もちろん、Aは固定している。「| |」は絶対値。
上で見たように、Aは、xとyの2次式だから最大値があるはずである。
2次式z=Aのグラフは、三次元空間(x軸、y軸、z軸!)の中の曲面になる。
このグラフのうち、xy平面の単位円の真上にあるところでのzの最大値というわけ。



うまく描けてないけど、上図で、緑色のネットがz=Aグラフ。
青色は、xy平面上の単位円(の大きさが1なところ!)と
グラフ上でその真上にあたるところ。ここでのzの最大値が数域半径である。

数域半径は英語では、numerical radious。
“数域”というのが何を意味するのか、筆者は今のところよくわかっていません。

しかし、たとえば、
Aとして、回転行列R(θ)を考えると、
||=1のとき、R(θ)=cosθだから、
数域半径はcosθとなる。(行列は固定しているからθも固定されていることに注意!)
このことから、数域半径というのは、
がAによって“どれくらい振られるか”を表しているらしいことがわかる。
最大値を考えることによって、いわば最大振幅を求めているわけである。
の大きさを1にしているのは、が好き放題でかくなると、
もどんどんでかくなって、∞になってしまうのを防ぐためだろう。と推測できる。


一般には、“数域半径”と呼ばれているけど、
以上のことから、我々は、これを行列Aの“振幅”と呼びたい。

行列Aの振幅を表す記号を導入しよう。
振幅は(今調べたら)英語でamplitudeだった。
頭文字のaを採りたいところだが、Aと紛らわしい気がするので、
記号だけは、一般の数域半径のものを借りよう。

  w(A)=(|A|の||=1における最大値)

とする。カッコよく書いたら、



なんでwかは不明だが(波waveのwか?)、こないだから
たびたび登場してる『日合、柳』でもwである。



さて、
この記事の目標は、不等式



を証明することである。

――これは、『日合、柳』では練習問題になっている・・・

が、||A||とはいったいなんのか。
絶対値は縦棒一本“|”だったが、これは、縦棒二本“||”。

これは、行列Aの“ノルム”といって、Aの“倍率”のようなもの。
とりあえず、“倍率”と呼ぶことにしよう。

  ( 次から次へと説明ばかり。。

倍率とはどういうものか、式で書くと



である。確かに、「もとのの大きさに対して、Aの大きさはどれだけですか」
という“割合”を表していて、まさに倍率である。
ちょっと考えると、次のようにも書けることがわかる。



これで、だいたい準備はできた。

さっきの不等式を証明しよう。

ただし、
次のことは、証明なしに認めることにする。

  Aがエルミート行列のとき、w(A)=||A||

すごいじゃないか!エルミート行列!
振幅と倍率の一致!

エルミート行列がなんなのか分からない人は、
まあ「行列のエリート」とでも思っておいて下さい。
また、いつか、記事にしたいと思います。


しかし、ここに来て、やはり、
いろいろ「前提知識」がいることがわかってきた。
証明を書いても、はっきりいって、
高校数学の知識で、全部をしっかり理解するのは無理である。

というわけで、証明を期待しておられた方には、
ここまで読んでいただいたのに申し訳ないが、
証明は、“概略”だけを書くことにする。ごめんなさい。



まず、

  w(A)≦||A||

の証明であるが、
コーシー・シュワルツの不等式(2次元なら=||||cosθからわかる)を
使えばできる。

 |Ax・x|≦|Ax|・|x|≦||A||・|x|・|x|

一つ目の≦がコーシー・シュワルツ不等式。
二つ目の≦は、倍率の意味(定義)をよーく考えるとできます。
今、|x|=1として考えているので、

 |Ax・x|≦||A|| (|x|=1なるすべてのxで成立。)

ということは、

 w(A)=max|Ax・x|≦||A||


次に、

 ||A||≦2w(A)

の証明。
これは、概略だけ示す。
こないだの記事で出てきた、デカルト分解を使うと、

 A=S+iT (S、Tはエルミート行列)

と書けるのだった。これより、

 ||A||≦||S||+||T||=w(S)+w(T)≦w(A)+w(A)

一つ目の≦は、倍率の定義と、ベクトルの三角不等式から出る。
=は、エルミート行列では、倍率と振幅が同じだから。
二つ目の≦は、振幅の定義と、複素数の三角不等式から出る。

よって、



が証明された。(概略だけど。)



さて、
注意しておきたいことがある。

それは、デカルト分解を使ったとき、虚数iを使ったことだ。

高校では、行列とかベクトルといったら、ふつう成分は実数だったが、
iTをとかを扱う以上、行列のスカラー倍の定義より、
iが行列Tの中に入ってもいいことになる。
つまり、成分として、複素数を許さなければならない。

実は、上の証明では、
実数の2次元空間ではなく、複素数の2次元空間で議論している。

したがって、実数の空間で上の不等式は成り立つことは証明されていない。
(し、実際、実数の空間の場合、不等式が成り立たないことがある。)

あと、
上の証明は、3次元以上、というか無限次元でも成り立つ。
行列といわず、一般に“作用素”で通用する。



今回の記事の、もっと詳しく考えたいところを
「問題」としてまとめておこう。


<問題>

(1)二次形式の話1。
 A=(x+y)^2
となるためには、Aをどんな行列にすればよいか。

(2)二次形式の話2。
この記事では、2次正方行列Aと2次元ベクトルxによって、
がx、yの2次式を表すことを見た。
x、y、zの3文字からなる2次式を表すためには、
どうすればよいだろうか。

(3)三次形式の話。
行列Aとベクトルxを使って、二次形式ならぬ
三次形式(x、yの3次式)を表すためにはどうすればよいだろうか。


(4)振幅の話1。
実数の2次元空間では、
不等式w(A)≦||A||≦2w(A)は、成り立つとは限らない。
成り立たないような2次正方行列Aの例を挙げよ。

(5)振幅の話2。
複素数の2次元空間(つまり、成分が2つとも複素数)で考える。
不等式w(A)≦||A||≦2w(A)において、
Aがエルミート行列なら、左の≦が=になることが知られている。
では、右の≦が=になることもあるだろうか。
  ||A||=2w(A)
となるような2次正方行列Aの例を挙げよ。


偉そうに、問題まで出してしましました。すみません。
5問とも筆者が実際に取り組んでみた問題です。
すべて答えがあります。(筆者の思い違いでなければ。)
(3)はちょっと変わってますが、(2)と併せて、
二次形式の“二”がどこから来るのか、という疑問に答える問題です。
問題

複素数zが与えられた時、zを

  z=a+ib (a,bは実数)

の形に表せ。




zが具体的にどんな複素数かわからないとき、
zの実部と虚部を求められるだろうか?


ちょっと実験。

z=a+ib・・・①と書けたとしよう。
複素数らしく、zの複素共役z*をとってやると、

   z*=a-ib ・・・②

である。①②をa,bに関する連立方程式だと思って、
解いてみると、
①+②より、z+z*=2a
①-②より、z-z*=2ib

したがって、

となる。


この実験から、

与えられたzに対して、

を計算すれば、これらが、それぞれ
zの実部、虚部になるのではないかと期待される。

実際、これらの数をそれぞれ実部、虚部にもつ複素数wを考えると、

となり、wはzに他ならない。

よって、zの実部、虚部は、確かに上で出てきた形に書ける。
問題の解答としては、

である。



ちなみに、
同じ方法で、行列の実部、虚部なるものを考えることが出来そうである。
ただし、行列の複素共役とはなんなのか、定義しておかなければならない。
成分が実数の場合は、「行列の複素共役とは転置のことである」とすると、
具合が良い。

実際、複素共役の著しい性質として、

というものがあるが、
転置を横ベクトルに適用して、同じ計算をすると、

となり、類似の関係が現れる。

これだけでは、転置を使う根拠がよくわからないかもしれないが、
今回は、これ以上続けない。



こないだ出てきた『ヒルベルト空間と線型作用素』(日合、柳)では、
この分解を「デカルト分解」と称している。
もっと簡単な本では、斎藤正彦の線型代数の本にも載っていると思う。
筆者が使っていた本には載ってなかった。
斎藤本は、二種類あるみたいだが、どちらでも載ってるでしょう。