確認すぐ国宝の道長直筆写経 | 歴史ニュース総合案内

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 文化庁の文化審議会は3月16日、藤原道長(966~1027)が自ら写経した「金峯山経塚出土紺紙金字経」を国宝に指定するよう答申した。計279紙のうち191紙は2023年12月になって新たに直筆と確認されたものだ。

 この金字経の大半は2015年に奈良県吉野町の金峯山寺で納戸の木箱の風呂敷から発見されたもので、文化庁などが長く調査してきた。道長が吉野の金峯山に1007年登り、紺色の紙に15巻分の経典を金字で書写し、大峰山寺(天川村)もある奥千本の山上ヶ岳の本堂の金銅灯楼の下に埋めたと伝わる金字経は元禄期に掘り返され、多くが所在不明になっていた。確認されたものの中は曽孫の藤原師通が1088年に埋めたものもある。

 金峯山寺で見つかった金字経は9巻分(法華経7巻、阿弥陀経と観普賢経が各1巻)だが、地下水での腐食により下半分はなくなっている。それでも経典の文字を読むのはまだ可能であり、仏典を埋める経塚の風習が広まった端緒とされる。五島美術館にある3巻分の金字経ともども2023年6月に重要文化財となり、1年で国宝に昇格する。大和国金峯山経塚出土品のものでは既に経筒や経箱3合が国宝に指定されている。

 

 平安時代関連では他に、藤原公任の「和漢朗詠集(雲紙)」の写本も国宝にするよう答申された。