白色テロ(恐怖)期の台湾を舞台にした映画「大濛」が「霧のごとく」の邦題で5月8日から日本で公開される。妹の阿月が政治犯として銃殺された兄の遺骨を嘉義から台北へ引き取りに行く展開の同作は地味と評されても好評を得て、台湾で2025年11月に金馬奨で最優秀作品賞をとった。
農村から出てきた故に無垢な阿月が、台北の悪人に騙されそうになるのを広東から来た人力車夫の趙公道が救い、高額の手数料なしで遺骨を引き取れぬか否か探っていく。主役の兄が故郷のサトウキビ畑から連行されて処刑された政治犯で、軍人だった趙公道にもスパイ容疑で逮捕拷問された過去がある訳だが、その過去を後景に退かせて2人の関係性を強調し、結末を霧(濛=霧雨)のようにぼかしたのが賛否を呼んでいる。
陳玉勲監督は民国初期の中華農村を舞台にした台中合作映画「健忘村」を2017年に手掛けた。道士が神器の力で村民の不都合な記憶を消し去りつつ君臨していく筋書きが、二二八事件などの悪しき黒歴史を消し去る暗喩になっていると評された。だが、陳が太陽花学連(ひまわり運動)を支持しているとして、大陸から台独派認定され映画が公開直後に打ち切られ、合作最大級の大赤字となった。そこから宮藤官九郎が日本版を出すほどの「1秒先の彼女」を出して復活した。
参考
世界2月号の特集「台湾という問い」の栖来ひかりの記事から。台湾有事の憂いと沖縄基地問題と中国論を並立させるのは、左派論壇にとってのアポリアだ。