清少納言を振興する | 歴史ニュース総合案内

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 随筆『枕草子』を著した清少納言(生没年不詳)を振興する試みが、大河ドラマ「光る君へ」に合わせて展開されている。父が周防国の国司として赴任していた山口県防府市が特に乗り気になっている。

 防府市文化財郷土資料館(旧市立図書館)では2月1日から7月7日までスポット展「周防国府と清少納言」を開催。後撰和歌集の編纂に加わった清原元輔(908~90)が娘を連れて974年にやってきた頃の時代を紹介する。このコーナーは最初から特筆されており、その後も市の通史を扱う常設展示に組み込まれるだろう。

 片渕須直監督(「この世界の片隅に」)は枕草子と平安時代を素材として新作アニメ映画「つるばみ色のなぎ子たち」を公開時期非公表で制作している。タイトルや副題が橡色で暗く枕草子の世界とは縁遠そうだが、防府市を舞台とする高樹のぶ子の半自伝小説を原作とした「マイマイ新子と千年の魔法」を2009年に公開した時から、片渕はあけぼのの山に登ったりして(歴史探偵5月15日の清少納言回でやっていた)調査を続けてきた。1950年代が舞台の同作だが、清少納言が「清原諾子」(なぎこ)の名で登場する。

 

 本名不明の清少納言は「光る君」では「ききょう」の名を与えられて出演。文献上は面識がないはずの紫式部まひろとも交友し、宮中に仕える自分は民衆の子女よりも優れているとの思いを、農民の子女に漢字を教えてその父親に怒られたりした紫式部に見せつけたりした。宮中に仕えているが故に高慢な性格に造形されている。

 橘則光との離婚や父の死を経た清少納言が中宮の藤原定子(977~1001)に仕えていた995年頃に枕草子(319節 岩波文庫で400頁弱)の祖型ができあがり、退官後の1004年頃に完成した。「春はあけぼの」などと自分の好みが羅列されている場面が特に著名だ。だが、兄の藤原伊周や隆家が藤原道長との権力闘争に負け(長徳の変)、定子ともども影響を失っていく現実が描かれていないとの非難がある。紫式部は日記で漢語を表面的にしか理解できていないと難じた。清少納言のその後は理想像と離れていたようだ。