当麻曼陀羅が奈良県を初めて出る | 歴史ニュース総合案内

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 奈良県葛城市の当麻(たいま)寺が誇る「当麻曼陀羅」が初めて奈良県外へ出され、東京国立博物館で展示された。特別展「法然と極楽浄土」の目玉として、前期の4月16日から5月6日に展示された。

 特別展は浄土宗を開いた法然房源空(1133~1212)と浄土の世界を4章構成で紹介する。南無阿弥陀仏と唱えれば往生できると「選択本願念仏宗」などで説いた法然の生涯から始め、阿弥陀仏の世界、弟子たち、江戸時代の浄土宗へと展開する。国宝の「綴織當麻曼陀羅」(当麻曼荼羅 縦横4m)は3章で展示された。

 藤原豊成の娘の中将姫が一夜で織ったという伝説が折口信夫『死者の書』でモチーフにされた当麻曼陀羅(浄土宗系の陀 真言宗系だと曼荼羅)は奈良時代に織られたと伝わるものなので、法然とは時代が異なる。しかし、浄土三部経の一つである観無量寿経の世界を図像化した当麻曼荼羅は浄土教の世界に取り込まれ、当麻寺(當麻寺)の本尊に据えられた。日曜美術館での法然展回(5月18日放送)も韋提希(イダイケ)夫人の物語を描くこの曼陀羅を中軸に構成され、当麻寺で僧侶が菩薩に変装する4月14日の練供養も映した。当麻寺にある原初の「古曼陀羅」は公開できる状態になく、綴織の方は奥院本堂で11月に公開されている。

 これ以外では京都市の知恩院が誇る法然上人絵伝や修理後の初公開品となる早来迎(阿弥陀二十五菩薩来迎図)を前期限定で展示。久留米の善導寺を拠点に九州で浄土宗を弘めた西山派の証空にも九州巡回のためスポットを当てるが、最も高名な弟子の親鸞(綽空)は宗派違いからか出てこない。関東代表は常陸の聖冏や江戸で増上寺を開いた聖聡である。

 

 東京では4月16日から6月9日までの法然展は、10月8日から12月1日まで京都国立博物館へ巡回し、九州国立博物館でも2025年10月7日から11月30日まで開催される。当麻曼陀羅もまた東京と同じく公開される予定。