マルコムXを紹介した日本人の資料 | 歴史ニュース総合案内

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 米国で黒人による革命を訴えたマルコムX(1925~65)を日本に紹介した長田衛(1933~97)の収集資料の展示会「長田衛の仕事 マルコムXと急進的黒人解放運動」が、4月10日から5月5日まで東京上野の「古書ほうろう」で開かれた。長田と石谷春日の夫妻は、ニューヨークでの1965年2月21日の演説会で起きたマルコムXの暗殺に立ち会い、日本読書新聞で第一報「マルコムX暗殺の背景」を伝えた。

 古書ほうろうの宮地健太郎社長は2023年に石谷から段ボール10箱分の蔵書を買い取った後、すぐ売り出さずに特別の展覧会を開いた。長田が刊行したマルコムXの演説集『黒人は抵抗する』や晩年の『評伝 マルコムX』などの著書、訳書や評論集、夫妻がマルコムXの秘書やブラック・パンサー党(BPP)から託された資料などが展示された。展覧会では当時のアジビラや愛好者の音楽も紹介した。

 ニューヨークに住んでいた夫妻がマルコムXの思想に触れたのは1961年秋。そこからハーレム地区に通い週ペースで演説を聞いた。翌年の暗殺事件は一観衆として目撃した。夫妻は秋に帰国し、『黒人は叛逆する――マルコムX その人と思想』(三一書房)などの著作を出した。

 

 牧師の家に生まれ、白人に引き取られて育ったマルコムXは、優秀な学業成績ながらも不良行為に走って牢獄行きとなった。獄中でブラック・ムスリム運動に出会い、イライジャ・ムハンマドのネイション・オブ・イスラーム(NOI)に入信した。黒人至上主義のイスラム運動に邁進するが、次第に正統的なイスラムに回帰し、OAAUを組織して穏健化するが、NOIに憎まれて暗殺された。