ヨルダン南部のトール・エル・ハマム遺跡でこのほど、3600年ほど前の隕石落下により崩壊した痕跡が出土した。旧約聖書に記されるソドムとゴモラの滅亡物語の元ネタといえよう。
死海北方の渓谷部にある遺跡を米ベリータス・インターナショナル大学などの共同調査チームが発掘。4階建ての神殿(52m×27m)が崩壊している地層からイリジウムや衝撃石英のような隕石成分のほか衝撃石英やありえぬほどの高温で生成されるダイアモノイドの炭素結晶分子を検出した。
そこから推定すると、直径50m級の隕石が爆発し、シベリアに20世紀降ってきたツングースカ大爆発を上回る規模の核爆発が起き、当時最大級の都市が崩壊したという。クレーターを残さぬこの隕石はエリコのテル・エッスルターン遺跡にも打撃を与えたが、メソポタミア水準では局所的な被害に収まった。
(科学番組「フロンティア」で4月4日に紹介されたが、発見時期は2021年)
ソドムとゴモラの滅亡譚は聖書だと創世記に登場する。ハマム遺跡とは違って死海の南にあり、同性愛などの悪徳によりヤハヴェの怒りを買って滅ぼされたという。隕石のような天災から逃れられたのはアブラハムの甥ロト一家だけだったが、名のない妻は焼け落ちる炎を見てしまい塩となった。
アブラハムの活動した年代は4000年ほど前であり、遺跡の崩壊時期とは合わない。神話を合理的に考えると、道徳ゆえに天災が起きるはずはなく、滅んだ町に後付けで同性愛の汚名を着せたのである。