今日も動物に関するニュースを検索していると酷いニュースが多く、気持ちが非常に落ち込みました。
ひとつは、奈良県御所市でトラバサミにかかったネコが保護されたのちに死亡したという記記事です。
トラバサミは原則使用禁止ですが、例外として行政の許可を受けて設置が可能だということです。
原則禁止であっても、トラバサミはネットやホームセンターなどで販売されています。
トラバサミを規制するといいながら、このような中途半端な状態ではトラバサミを使用する人はいならないですよね(泣)。
そして、滋賀県大津市で猟友会の猟犬3頭が民家に入り込み、その民家に住む女性と女性が飼育しているイヌが負傷したという記事です。
わたしが住む市の鳥獣対策課の担当者は「猟犬は絶対に人やペットに危害を与えない」と言い切っており、わたしはその主張に以前、全力で意見をしました。
動物を追う、襲うように「訓練」されたイヌが野生動物以外の動物を絶対に襲わないということはあり得ないとわたしは思っています。担当者の上記の主張はイヌの習性に反する内容であり、無責任なことを言わないでほしいと強く思っています。
野生動物の捕殺や狩猟に関しては、この国の鳥獣法は抜け道だらけで、狩猟者たちが活動しやすくするための法律と言っても過言ではないかと思います。野生動物たちを守るための「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」ではない、というなんとも時代にそぐわない内容の法律となっています。
ところで、シカ慢性消耗性疾患(CWD)の拡大が続くアメリカ。先日、イエローストーン国立公園で初の感染例が確認されました。
●記事
シカの慢性消耗性疾患(以下:CWD)は、アメリカでは「ゾンビ鹿病」として知られています。第3の名前は「狂鹿病」です。
CWDは狂牛病と同じで、異常タンパク質のプリオンが原因となり発症します。
現在、CWDの治療方法はなく、プリオン病が土壌に定着すると除去はほぼ不可能と言われています。
CWDはおおよそ2年~4年の潜伏期間の後に発症し、発症後シカは、3~4ヶ月で死に至るそうです。
CWDの最初の証言は、1967年コロラド州フォートコリンズのフットヒルズ野生動物研究施設で飼育下のシカが死亡し始めたことからだそうです。驚くことにその後、一部のシカが野生に戻されたということです。
当時は原因不明の末梢性疾患と報告されており、1978年に伝染性海綿状脳症(TSE)であることが明らかにされました。
野生のシカへの感染報告は1981年と記載している資料もあれば、2001年と書いてある資料もありました。
1996年にはカナダのシカ農場で感染の報告があり、その後アルバータ州などで感染が発生したということです。
CWDは狂牛病と同じく、ヒトに感染しうることから、カナダ政府は勧告を発し住民にシカ肉の消費を避けるように要請したということです。
CWDはリスザルやヒトの遺伝子を持ったマウスなどへの感染が示されており、研究者らによると、CWDは進化している可能性があり、人間に感染するのは時間の問題かもしれないと述べています。
CWDは、肉の消費、感染したシカの唾液や血、糞尿などに接触するだけでも拡散しうるということです。
国立感染症研究所感染症情報センターのサイトに気になる内容が書かれていました。
以下引用です。
「狩猟後のパーティーに参加した男性の神経変性疾患、 2002年-米国・ウィスコンシン州
(Vol.24 p 92-93)
神経変性疾患のひとつの原因であるプリオン病は、 プリオン蛋白が中枢神経を侵すことで起こる病気である。最近の知見では、 プリオン病は種を越えて感染が成立するとされ、 ウシからヒトへの感染(新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病:vCJD)が報告されており、 慢性消耗性疾患(chronic wasting disease:CWD)として知られているシカやヘラジカの伝染性海綿状脳症もヒトへ感染する可能性が指摘されている。
1993~99年の間に、 ウィスコンシン州北部で開催された狩猟後のパーティーに参加した3人の男性が神経変性疾患によって死亡していたことが明らかになった。この3人のうち1人だけがCJDの確定診断を受けた。CJDとCWDの間の関連性は明らかでないが、 CWDがヒトへ感染する可能性を評価するために、 引き続きCJDとCWDのサーベイランスを実施する必要がある。
3人の中の1人が開催するパーティーに参加した53人中45人の調査を行ったが、 45人のうち34人は狩猟に参加していた。34人中7人が死亡していた。この中に今回報告された3人が含まれており、 シカ肉を食べていた。7人のうちの4人には神経症状はなかった。今後、 vCJDと同様の経路でCWDがヒトに感染する可能性を検討していかなければならない」。
(CDC、 MMWR、 52、 No.7、 125-127、 2003)
CWDが人間の飼育下にいるシカたちから発現したことも非常に気になります。一度発現した異変は時間をかけてジワジワとアメリカやカナダに広がっています(韓国は少数の輸入病例)。
シカ肉を食べるのであれば、感染しているか感染していないか検査を行うなど、ハンターへ呼びかけているそうですが、感染を広げるのも人間活動が大きく関係しているので、ハンティングやジビエ消費などをやめて、野生動物と距離を取って人間は生きる選択をすべきではないでしょうか。
ちなみに無症状のCWD感染シカからも、マカク属のサルはCWDに感染したそうです。
CWDは日本では今のところ発生していませんので、このまま病原体が日本に持ち込まれないことを願っています。
このようなことからも、自然動植物保護の観点からも、今の時代「ジビエ」消費を促すのは賢い選択とは言えないのではないかと思います。
野生動物たちの搾取はわたしたちが予期できない問題を発生させる可能性があることをよく理解してほしいと思います。
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一部の参考文献
file:///C:/Users/tomom/Downloads/kai20171024fsc_200.pdf 食品安全委員会、(最終閲覧日2023年11月20日)。
Takashi Onodera、Katsuaki Sugiura、Akikazu Sakudo
https://www.researchgate.net/publication/332077477_History_of_chronic_wasting_disease_in_deer ResearchGate、(最終閲覧日2023年11月20日)。