次世代格闘アクションスターのトップをひた走るスコット・アドキンズ主演のバイオレンスアクション。

とある病院にやってきた顔面傷だらけの男。護送の警官に固められてやってきた彼はガンによって危篤の母親を見舞いにきたのだが、時既に遅く、母は亡くなったあとであった。
亡骸だけでも確認したいと安置室にやってきた彼は冷たくなった母親を顔を確認する。

しばらくしてエレベーターから出てきたその男。彼の後ろには血祭りにあげられた警官たちの姿があった。
意を決して脱獄した男は自身が生まれ育った街中にあるバー『ジョーカー』にやってくる。
扉にいた用心棒たちを殴り倒し、店内に入ってきた男は店主のベスにビールを頼むと周囲の噂話に耳を傾ける

店内では麻薬の売人らしき仲間たちが仲間のルークが殺された時の話をしていた。
そこに居合わせたというチューンはルークを殺した殺人鬼を追いかけたが逃げられたと話し込むと、カウンターできいていた男は笑い出す。
チューンが詰め寄ると男は自分はリンカーンの友人だと言い放つと、チューンに向かってルークを殺したのは自分でお前は真っ先に逃げ出した臆病者だとなじる。

怒号が上がり、チューンたちは男に襲いかかるのだが、男はおもむろにショットガンを構えると奥から騒ぎを聞き付けた店のボスのハイドが出てくる。
ハイドは男を見ると、彼はリンカーンの弟のカインだと気づき、チューンたちに教える。
その最中で仲間の一人がカインに襲いかかるが、カインは彼の膝を銃で撃ち抜いて破壊。さらに切り取ったルークの手首を彼らに見せ、ハイドにリンカーンを呼び出せと迫る。

ハイドがリンカーンに電話し、バーに呼び出すとカインは彼が着くまで、自分のこれまでの経緯を語り始める。

元ボクサーであったカインは、八百長試合に勝ってしまい、リンカーンたち関係者に多額の損害を与えてしまっていた。
そんなカインは引退してジムを経営したいと兄であるリンカーンに金の都合を着けてもらおうと訪ねる。
リンカーンは金の都合をつける代わりに部下であるハイドのところへ行き仕事をするようにいわれる。

言われるままハイドの元を訪ねたカインにハイドは小袋をみせ、この袋を渡した中年女性のあとをつけてころあいをみて袋を奪いここに戻ってこいという。
言われた通りに現れた女性から袋を奪ったカインだが女は執拗に追いかけてきた末に目の前で車にはねられ死亡してしまう。
カインは呆然としているところを駆けつけた警官たちに取り押さえられ逮捕されてしまう。

カインは強制的に凶悪犯たちがひしめくベルマール刑務所へと移送される。
そこで彼はいきなり囚人たちに襲われ、命を狙われ始める。
必死に戦い抗うカインであったが、アゴを砕かれ、ナイフで刺され、更にはナパーム液で顔を焼かれるたびにその刑期は延長を重ねていく。
唯一の心配は気遣ってくれる母の存在であったが、再び面会がかなうまでには三年の月日が流れていた。

自分の命を守るのは自分しかないと覚悟したカインは向かってくるもの全てと戦いねじ伏せてきたが、ある日襲ってきた囚人のひとりからカインに懸賞金がかけられていて、殺したものには二万ドル払われるという。そしてその懸賞金をかけたのは兄のリンカーンであった。

三年ぶりに面会できた母に真実を聞こうとするカインであったが、そんな母はガンに侵されており治療のためにリンカーンに頼ることを告げられる。母に心配させまいとリンカーンへの復讐を心に封印するカインであったが、母の死に顔すら出すことのなかったリンカーンに対して、カインは数時間の母への面会のための外出許可を利用して脱獄し、復讐を開始したのだった。

さらに逮捕時、取り調べ担当の刑事からリンカーンのあくどいやり口を聞かされ、カインにもその犯罪の片棒を担がせる駒として利用しただけと告げ、リンカーン逮捕のために全てを話せば免責すると持ちかけられたが、兄弟の絆を信じたカインはそれを拒否。
そこで代わったエバンス刑事によって暴行を受けたあげく、調書をとることなくベルマール刑務所へと送られたのだった。

やがてハイドの連絡を受けたリンカーンが手下を連れて店内にやってくる。
しかしカインはハイドの後頭部に銃を突きつけたまま冷静に待ち受けていた。

リンカーンの説得にも応じず、カインがその経緯を話すと、リンカーンはカインが自分を売ったとエバンスから聞いたと言う。
カインが否定するとリンカーンはエバンスを呼ぶように言うが、彼が兄のいう警察内の内通者と知っていたカインはエバンスを既に殺害していた。
さらにカインはリンカーンによって人生を破滅に追いやられた147人もの被害者の件について問い詰めるとリンカーンは言い訳を始め、開き直ったハイドは被害者はクズ同然の奴らと非難。怒ったカインはハイドの頭を銃で吹き飛ばして殺害する。

カインは既に復讐のためリンカーンの金庫番であったストークスを脅迫し、リンカーンの全資産に相当する200万ポンドをとある所に送金させ、1500ポンドだけ残させていた。
そのやり口に怒り狂うリンカーンに対して、147人の被害者の名前をひたすら覚えて復讐のために生きてきたカインは、何よりも母の間際にも金のことしか考えないリンカーンに対して全てを終わらせると銃口を向ける
しかしその隙をついてベスがカインの頭をビール瓶で殴打。怯んだところでリンカーンは手下たちをけしかけて殺そうと襲いかかる。

しかし刑務所で鍛えられたカインは傷を負いながらも彼らを全滅させ、リンカーンと対峙する。
カインの壮絶な骨肉の復讐の行方は…


スコット・アドキンズが企画段階から参加した骨太な格闘バイオレンスアクション

ハリウッドでも稀有な身体能力をもつアクションスターとして認知度も高まってきたスコット・アドキンズ。
彼の格闘アクションのポテンシャルはこれまでにも述べてきたが、そうしたハリウッド系への出演の一方でインディペンデント系のアクション作品にも精力的に主演を重ねている。

本作はそうしたインディペンデント系のアクション作品のひとつであり、アドキンズのアクションをありきで作られた内容である。

ストーリーは兄弟同士の復讐劇で、端的にベルトスクロールゲームのように次々と主人公が仇敵から放たれる刺客を倒していくもので味気ないものかと思いきや、なぜ主人公が脱獄までして復讐に駆り立てたのかが、時間経過するごとにエピソードが追加されていくため、最後に向けて主人公が単なる悪なのか、真の狙いが何なのかが判明していく組み立てとなっているため、意外に引き込まれやすくだれることなく観れる。

ひねった作りにしているためか、この辺り単にアクション好きにはちょっと戸惑うところではあるが、単純明快なアクション作品の多いアドキンズとしてはチャレンジだったのではと思われる。

アクション面においては、アドキンズのトレードマークでもあるアクロバティックなマーシャルアーツアクションは抑えられており、ボクシングベースのストリートファイトスタイルという泥臭い格闘アクションがメイン。
キックも出してはいるものの、いつものアドキンズと比べたら物足りないかもしれない

反対に実戦的要素の高い格闘シーンで背後からナイフで刺されたり、不意打ちを食らったりとまさに『生死をかけたケンカ』を見せている。
しかしそれが主人公のおかれた過酷な環境で体得したファイトスタイルであり、主人公のマウスピースのような銀歯に顔中傷だらけの様相さながらの凶暴性高い格闘アクションが本作の味といえるだろう。

惜しむらくは強敵らしき人間がいないのが格闘シーンの盛り上りとしては残念ではあるが、殺傷能力高い武器をめちゃくちゃに振り回しながら襲いかかる複数の敵を相手に戦う際のリアルなヤバさは伝わるだろう。

追加されていくエピソードと極限まで尖った暴力的で残虐性高い格闘アクション。
華麗なだけじゃないアドキンズの新たな魅力発見という意味でも意外に掘り出し物であったといえる作品である


評価…★★★★
(凶悪な風貌のアドキンズさんが悪なのか、正しいのかとにかく復讐に駈られたら止まらない)